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8P《外伝 吉備からの使者 阿止里の思い》
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季節も6月に入った頃である。
瑞歯別皇子の宮にある連絡が入ってきた。
皇子の補佐に当たる稚田彦がその伝言を聞き、そのまま皇子の元へとやって来た。
『何、吉備からの訪問とは珍しいな。それは去来穂別大王の元に行くついでにここに来ると言う事か?』
瑞歯別皇子は、稚田彦からの伝言を部屋で仕事をしながら聞いていた。
大和の皇子で、大王の皇太子である彼は政り事や大王の補佐等で、日々忙しく過ごしていた。
『はい、どうもそのようです。まぁ、大王の元にだけ行くなら分かりますが...』
稚田彦も今回の吉備からの訪問は少し不思議に思えた。
彼も前に葛城の嵯多彦の事件の事は聞いているので、少し心配している。
『ちなみに吉備から来るのか。それとも佐由良の実家の吉備の海部からの訪問か。』
吉備と言っても、その中にも族が分かれている。普段は吉備と一括りには呼んでいるのだが。
『あぁ、失礼しました。海部からの方ですね。ただこれが海部単独なのかは分かりませんが。』
『もしかすると、乙日根が大王の元に行くついでに、こちらの様子も見てくるよう指示を出したのかもしれん。ここには佐由良がいるからな。』
前に物部伊莒弗の元に行った時に、佐由良の母親の話しを聞いたので、乙日根がそんな指示を出していてもおかしくはない。
それに佐由良にその訪問者を確認させれば、その者が怪しいかどうかは直ぐに分かるだろう。
『とりあえず、今回来る訪問者が怪しくないかどうかは、佐由良に見てもらう。前の葛城の嵯多彦のような事は懲り懲りだからな。』
だがあれがあったお陰で、瑞歯別皇子と佐由良の関係に変化が起こったのも事実なので、彼自身は内心複雑だ。
(ただあの事件が無ければ、俺は未だに佐由良を憎んでたかもしれない。自分の気持ちにも気付かず、その思いが変な方向に行っていたかもしれない...)
『確かに、佐由良に確認してもらえば安心ですね。でも、佐由良は確か実家では余り良い待遇を受けてなかったと聞いてますが...』
元々吉備の海部内で、佐由良は妨げられていた。それは佐由良の父親が誰かも分からず、乙日根自身が彼女を避けていたのが原因だ。
だが実際、乙日根は佐由良を気にかけていた可能性がある。
『佐由良に嫌な思いをさせる事がないよう、そこは俺がしっかり見ているさ。最悪、あいつには訪問者の確認だけしてもらえたら良いからな。』
(あいつを傷つけるような事なんて、絶対にさせない。)
瑞歯別皇子はそう心に誓った。
『とりあえず、今回の吉備からの訪問の件は俺から佐由良に伝えておく。』
『分かりました。ではそちらは皇子にお任せします。』
(皇子は本当に佐由良を守る気でいるようだ。だが1つ気になるのは、吉備の連中は本当に皆佐由良を嫌っていたのだろうか。
あれだけ綺麗な娘のだから、吉備内でも彼女に惹かれていた者がいてもおかしくはないと思う......まぁ、こんな事皇子に話したら、またややこしくなるので黙ってておこう。)
稚田彦が思うに、瑞歯別皇子は意外に嫉妬深い所がある。それはこれまでの経緯が色々あったので、仕方のない事なのかもしれないが。
『あぁ、分かった。稚田彦にも悪いが、そう言う事なので、吉備の対応をお願いする。』
『はい、分かりました。準備はこれから取り掛かる事にします。』
そう言って、稚田彦は瑞歯別皇子の部屋を後にした。
(まぁ、何事も問題が起こらなければ良いが。)
瑞歯別皇子もふと、今回の訪問に思いを巡らせた。
『さてと、時間も出来たから、今回の吉備の訪問の件をこのまま佐由良に話しに行くとするか。』
そう言って瑞歯別皇子も佐由良の元へと向かった。
『え!吉備の海部から訪問があるんですか!』
佐由良は瑞歯別皇子の知らせにとても驚いた。今まで実家の海部からは殆ど音沙汰が無かった状態だ。
確かに大王の元に行くなら理解出来るが、この宮に来るのは意外だと思った。
まさか自分の様子を見に来る訳でもないだろうに。
『あぁ、恐らく大王の訪問のついでだろうが。それで前回の嵯多彦の件もあるから、その訪問者の中に怪しい奴がいないか、見てもらえないか。』
(あぁ、確かに。私なら海部の人達を良く知っているから、それは直ぐに分かるはずだわ。)
『分かりました。それは問題ありません。』
佐由良は瑞歯別皇子にそう言った。
まさか海部が謀反なんて起こすとは中々考えにくいが、用心するには越した事はない。
『でも、私が気になるのは一体誰が来るんでしょうね。お祖父様自身が来るとは中々考えにくいし、恐らく代理を立てるはず...』
佐由良は吉備からの訪問者が誰だろうかと、1人頭の中で色々と考え込みだした。
『とりあえず誰が来るか分からないので、無理にお前は挨拶しなくても良いからな。訪問者の確認だけで構わない。』
(瑞歯別皇子......そうか、皇子は私の事を心配してくれてるんだ。)
『皇子、心配して下さって有り難うございます。とりあえず、私の方で出来る事はさせて頂きますので。』
そう彼女は笑顔で答えた。
それを聞いた瑞歯別皇子は、佐由良を自分に引き寄せて言った。
『有り難う、佐由良。お前に辛い思いをさせるなんて事は絶対にしない。』
佐由良はそんな皇子の言葉を聞いて、なんて自分は守られてるんだろうと、とても幸せな気持ちになった。
(どうか、この訪問が上手く行きますように......)
瑞歯別皇子の宮にある連絡が入ってきた。
皇子の補佐に当たる稚田彦がその伝言を聞き、そのまま皇子の元へとやって来た。
『何、吉備からの訪問とは珍しいな。それは去来穂別大王の元に行くついでにここに来ると言う事か?』
瑞歯別皇子は、稚田彦からの伝言を部屋で仕事をしながら聞いていた。
大和の皇子で、大王の皇太子である彼は政り事や大王の補佐等で、日々忙しく過ごしていた。
『はい、どうもそのようです。まぁ、大王の元にだけ行くなら分かりますが...』
稚田彦も今回の吉備からの訪問は少し不思議に思えた。
彼も前に葛城の嵯多彦の事件の事は聞いているので、少し心配している。
『ちなみに吉備から来るのか。それとも佐由良の実家の吉備の海部からの訪問か。』
吉備と言っても、その中にも族が分かれている。普段は吉備と一括りには呼んでいるのだが。
『あぁ、失礼しました。海部からの方ですね。ただこれが海部単独なのかは分かりませんが。』
『もしかすると、乙日根が大王の元に行くついでに、こちらの様子も見てくるよう指示を出したのかもしれん。ここには佐由良がいるからな。』
前に物部伊莒弗の元に行った時に、佐由良の母親の話しを聞いたので、乙日根がそんな指示を出していてもおかしくはない。
それに佐由良にその訪問者を確認させれば、その者が怪しいかどうかは直ぐに分かるだろう。
『とりあえず、今回来る訪問者が怪しくないかどうかは、佐由良に見てもらう。前の葛城の嵯多彦のような事は懲り懲りだからな。』
だがあれがあったお陰で、瑞歯別皇子と佐由良の関係に変化が起こったのも事実なので、彼自身は内心複雑だ。
(ただあの事件が無ければ、俺は未だに佐由良を憎んでたかもしれない。自分の気持ちにも気付かず、その思いが変な方向に行っていたかもしれない...)
『確かに、佐由良に確認してもらえば安心ですね。でも、佐由良は確か実家では余り良い待遇を受けてなかったと聞いてますが...』
元々吉備の海部内で、佐由良は妨げられていた。それは佐由良の父親が誰かも分からず、乙日根自身が彼女を避けていたのが原因だ。
だが実際、乙日根は佐由良を気にかけていた可能性がある。
『佐由良に嫌な思いをさせる事がないよう、そこは俺がしっかり見ているさ。最悪、あいつには訪問者の確認だけしてもらえたら良いからな。』
(あいつを傷つけるような事なんて、絶対にさせない。)
瑞歯別皇子はそう心に誓った。
『とりあえず、今回の吉備からの訪問の件は俺から佐由良に伝えておく。』
『分かりました。ではそちらは皇子にお任せします。』
(皇子は本当に佐由良を守る気でいるようだ。だが1つ気になるのは、吉備の連中は本当に皆佐由良を嫌っていたのだろうか。
あれだけ綺麗な娘のだから、吉備内でも彼女に惹かれていた者がいてもおかしくはないと思う......まぁ、こんな事皇子に話したら、またややこしくなるので黙ってておこう。)
稚田彦が思うに、瑞歯別皇子は意外に嫉妬深い所がある。それはこれまでの経緯が色々あったので、仕方のない事なのかもしれないが。
『あぁ、分かった。稚田彦にも悪いが、そう言う事なので、吉備の対応をお願いする。』
『はい、分かりました。準備はこれから取り掛かる事にします。』
そう言って、稚田彦は瑞歯別皇子の部屋を後にした。
(まぁ、何事も問題が起こらなければ良いが。)
瑞歯別皇子もふと、今回の訪問に思いを巡らせた。
『さてと、時間も出来たから、今回の吉備の訪問の件をこのまま佐由良に話しに行くとするか。』
そう言って瑞歯別皇子も佐由良の元へと向かった。
『え!吉備の海部から訪問があるんですか!』
佐由良は瑞歯別皇子の知らせにとても驚いた。今まで実家の海部からは殆ど音沙汰が無かった状態だ。
確かに大王の元に行くなら理解出来るが、この宮に来るのは意外だと思った。
まさか自分の様子を見に来る訳でもないだろうに。
『あぁ、恐らく大王の訪問のついでだろうが。それで前回の嵯多彦の件もあるから、その訪問者の中に怪しい奴がいないか、見てもらえないか。』
(あぁ、確かに。私なら海部の人達を良く知っているから、それは直ぐに分かるはずだわ。)
『分かりました。それは問題ありません。』
佐由良は瑞歯別皇子にそう言った。
まさか海部が謀反なんて起こすとは中々考えにくいが、用心するには越した事はない。
『でも、私が気になるのは一体誰が来るんでしょうね。お祖父様自身が来るとは中々考えにくいし、恐らく代理を立てるはず...』
佐由良は吉備からの訪問者が誰だろうかと、1人頭の中で色々と考え込みだした。
『とりあえず誰が来るか分からないので、無理にお前は挨拶しなくても良いからな。訪問者の確認だけで構わない。』
(瑞歯別皇子......そうか、皇子は私の事を心配してくれてるんだ。)
『皇子、心配して下さって有り難うございます。とりあえず、私の方で出来る事はさせて頂きますので。』
そう彼女は笑顔で答えた。
それを聞いた瑞歯別皇子は、佐由良を自分に引き寄せて言った。
『有り難う、佐由良。お前に辛い思いをさせるなんて事は絶対にしない。』
佐由良はそんな皇子の言葉を聞いて、なんて自分は守られてるんだろうと、とても幸せな気持ちになった。
(どうか、この訪問が上手く行きますように......)
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