54 / 81
54
しおりを挟む
椋毘登はそれを聞いて、思わずその場で大きくため息をついた。そしてさらに手を上げて頭を抱える様子を見せる。
「はぁー、本当に叔父上のいいそうなことだよな」
「え、椋毘登は違うの?」
「別に全てが間違ってるとはいわないけど。俺自身がどういう立場でいれば、蘇我の為になるかは常に考えているさ。だけどそこに額田部は関係ないよ」
「じゃあ、やっぱり立場とかは関係ないってこと?」
「まぁな。というか単にお前がたまたま額田部の生まれの子だった。ただそれだけのことだ」
「椋毘登、そうなのね。それを聞けて私安心したわ」
それを聞いて稚沙はほっと胸を撫でおろす。やはり最初から椋毘登に直接確認すれば良かったのだ。
それから椋毘登は、稚沙に顔に顔をくっつけてきていった。
「だが稚沙、今後も人から何かいわれたり、不安になることがあれば、俺に直接聞いてくれ。俺だってお前が辛い思いをするのは嫌だから」
「うん、椋毘登分かった。これからはそうするね」
これでどうやら稚沙の悩みはすっかり無くなった。そして今後も似たようなことがあれば、椋毘登に直接全部聞くことにしよう。
「よし、せっかく蛍を見にきたことだし、もう少し近くで見ることにするか」
「え、近くで見れるの?」
「あぁ、そうさ。じゃあ、とりあえず川の側まで行ってみよう」
椋毘登はそういうなり、彼女の手を掴んで川の側まで歩いて行った。
そして稚沙を石橋の所に座らせると、彼は袴を膝くらいまで折り曲げて縛った。そしてそのまま川の中に入っていく。どうやら素手で蛍を捕まえるつもりらしい。
(え、蛍を捕まえるなんて出来るの?)
彼は川の中で止まると、動きをやめてしばらく蛍を観察してみる。
そしてその後に両手で勢いよく掴もうとするも、動きの早い蛍を、そうそう簡単に捕まえることはできない。
「くそ、やっぱり素早く手で捕まえるのは難しいか...」
そこで彼はやり方を変えることにした。手を横に真っ直ぐ伸ばして、自身は全く動かないようにする。そしてそこに蛍がとまるのを待つことにしたようだ。
(椋毘登、頑張って...)
それからしばらく待っていると、ついに一匹の蛍が椋毘登の手元にとまってきた。
(よし、今だわ!)
稚沙も静かに石橋に座ったまま、固唾を呑んで椋毘登の行動を見守る。
すると椋毘登がもう片方の手をゆっくり近づけて、一気に蛍を捕まえることができた。
「椋毘登、やったわね!」
稚沙も彼の成功に喜び、思わずその場で万歳をして見せる。
彼女がひどく喜んでいるなか、椋毘登は蛍を逃がさないようゆっくりと歩きながら、川の中から戻ってきた。
そして彼女の目の前でそっと手を緩めて、中の蛍を見えるようにしてくれた。
「わぁ、凄いー!」
そして彼は蛍が落ち着くのを待ってから、さらに手を広げてみせる。
すると中からぱっと蛍が外に出てきて、稚沙の目の前をビューンと飛んで行った。
「稚沙、どうだ。近くで見れただろう?」
「うん、すっごく綺麗だった。椋毘登ありがとう!」
それからさらに蛍の数が増えだし、2人の顔も互いにはっきりと見えるほどになってきた。
「はぁー、本当に叔父上のいいそうなことだよな」
「え、椋毘登は違うの?」
「別に全てが間違ってるとはいわないけど。俺自身がどういう立場でいれば、蘇我の為になるかは常に考えているさ。だけどそこに額田部は関係ないよ」
「じゃあ、やっぱり立場とかは関係ないってこと?」
「まぁな。というか単にお前がたまたま額田部の生まれの子だった。ただそれだけのことだ」
「椋毘登、そうなのね。それを聞けて私安心したわ」
それを聞いて稚沙はほっと胸を撫でおろす。やはり最初から椋毘登に直接確認すれば良かったのだ。
それから椋毘登は、稚沙に顔に顔をくっつけてきていった。
「だが稚沙、今後も人から何かいわれたり、不安になることがあれば、俺に直接聞いてくれ。俺だってお前が辛い思いをするのは嫌だから」
「うん、椋毘登分かった。これからはそうするね」
これでどうやら稚沙の悩みはすっかり無くなった。そして今後も似たようなことがあれば、椋毘登に直接全部聞くことにしよう。
「よし、せっかく蛍を見にきたことだし、もう少し近くで見ることにするか」
「え、近くで見れるの?」
「あぁ、そうさ。じゃあ、とりあえず川の側まで行ってみよう」
椋毘登はそういうなり、彼女の手を掴んで川の側まで歩いて行った。
そして稚沙を石橋の所に座らせると、彼は袴を膝くらいまで折り曲げて縛った。そしてそのまま川の中に入っていく。どうやら素手で蛍を捕まえるつもりらしい。
(え、蛍を捕まえるなんて出来るの?)
彼は川の中で止まると、動きをやめてしばらく蛍を観察してみる。
そしてその後に両手で勢いよく掴もうとするも、動きの早い蛍を、そうそう簡単に捕まえることはできない。
「くそ、やっぱり素早く手で捕まえるのは難しいか...」
そこで彼はやり方を変えることにした。手を横に真っ直ぐ伸ばして、自身は全く動かないようにする。そしてそこに蛍がとまるのを待つことにしたようだ。
(椋毘登、頑張って...)
それからしばらく待っていると、ついに一匹の蛍が椋毘登の手元にとまってきた。
(よし、今だわ!)
稚沙も静かに石橋に座ったまま、固唾を呑んで椋毘登の行動を見守る。
すると椋毘登がもう片方の手をゆっくり近づけて、一気に蛍を捕まえることができた。
「椋毘登、やったわね!」
稚沙も彼の成功に喜び、思わずその場で万歳をして見せる。
彼女がひどく喜んでいるなか、椋毘登は蛍を逃がさないようゆっくりと歩きながら、川の中から戻ってきた。
そして彼女の目の前でそっと手を緩めて、中の蛍を見えるようにしてくれた。
「わぁ、凄いー!」
そして彼は蛍が落ち着くのを待ってから、さらに手を広げてみせる。
すると中からぱっと蛍が外に出てきて、稚沙の目の前をビューンと飛んで行った。
「稚沙、どうだ。近くで見れただろう?」
「うん、すっごく綺麗だった。椋毘登ありがとう!」
それからさらに蛍の数が増えだし、2人の顔も互いにはっきりと見えるほどになってきた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
花嫁
一ノ瀬亮太郎
歴史・時代
征之進は小さい頃から市松人形が欲しかった。しかし大身旗本の嫡男が女の子のように人形遊びをするなど許されるはずもない。他人からも自分からもそんな気持を隠すように征之進は武芸に励み、今では道場の師範代を務めるまでになっていた。そんな征之進に結婚話が持ち込まれる。
魔王の残影 ~信長の孫 織田秀信物語~
古道 庵
歴史・時代
「母を、自由を、そして名前すらも奪われた。それでも俺は――」
天正十年、第六天魔王・織田信長は本能寺と共に炎の中へと消えた――
信長とその嫡男・信忠がこの世を去り、残されたのはまだ三歳の童、三法師。
清須会議の場で、豊臣秀吉によって織田家の後継とされ、後に名を「秀信」と改められる。
母と引き裂かれ、笑顔の裏に冷たい眼を光らせる秀吉に怯えながらも、少年は岐阜城主として時代の奔流に投げ込まれていく。
自身の存在に疑問を抱き、葛藤に苦悶する日々。
友と呼べる存在との出会い。
己だけが見える、祖父・信長の亡霊。
名すらも奪われた絶望。
そして太閤秀吉の死去。
日ノ本が二つに割れる戦国の世の終焉。天下分け目の関ヶ原。
織田秀信は二十一歳という若さで、歴史の節目の大舞台に立つ。
関ヶ原の戦いの前日譚とも言える「岐阜城の戦い」
福島正則、池田照政(輝政)、井伊直政、本田忠勝、細川忠興、山内一豊、藤堂高虎、京極高知、黒田長政……名だたる猛将・名将の大軍勢を前に、織田秀信はたったの一国一城のみで相対する。
「魔王」の血を受け継ぐ青年は何を望み、何を得るのか。
血に、時代に、翻弄され続けた織田秀信の、静かなる戦いの物語。
※史実をベースにしておりますが、この物語は創作です。
※時代考証については正確ではないので齟齬が生じている部分も含みます。また、口調についても現代に寄せておりますのでご了承ください。
花嫁御寮 ―江戸の妻たちの陰影― :【第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞】
naomikoryo
歴史・時代
名家に嫁いだ若き妻が、夫の失踪をきっかけに、江戸の奥向きに潜む権力、謀略、女たちの思惑に巻き込まれてゆく――。
舞台は江戸中期。表には見えぬ女の戦(いくさ)が、美しく、そして静かに燃え広がる。
結城澪は、武家の「御寮人様」として嫁いだ先で、愛と誇りのはざまで揺れることになる。
失踪した夫・宗真が追っていたのは、幕府中枢を揺るがす不正金の記録。
やがて、志を同じくする同心・坂東伊織、かつて宗真の婚約者だった篠原志乃らとの交錯の中で、澪は“妻”から“女”へと目覚めてゆく。
男たちの義、女たちの誇り、名家のしがらみの中で、澪が最後に選んだのは――“名を捨てて生きること”。
これは、名もなき光の中で、真実を守り抜いたひと組の夫婦の物語。
静謐な筆致で描く、江戸奥向きの愛と覚悟の長編時代小説。
全20話、読み終えた先に見えるのは、声高でない確かな「生」の姿。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる