夢幻の飛鳥~いにしえの記憶~

藍原 由麗

文字の大きさ
18 / 105

18

しおりを挟む
  その後2人が倉庫にやってくると、どうやら宮人達が数名で、倉庫の片付けを始めていたようだ。

  その中に古麻もいたので、稚沙は彼女に話しかける。

古麻こま、遅くなってごめんなさい!その後は大丈夫?」

  古麻は稚沙の声に気が付くと、彼女の元に急いでやってきた。

「もう、稚沙。あなたいきなり走ってどこかに行って。一体何が……」

  古麻はふと稚沙の横にいる椋毘登くらひとに、思わず目をやる。
  だが彼が誰なのかは知らないらしく、少し不思議そうにして彼を見る。


「突然で、本当に申し訳ない。俺は蘇我椋毘登そがのくらひと蘇我馬子そがのうまこの甥にあたる者です。
  今日は叔父の代理で小墾田宮おはりだのみやにきてました」

  椋毘登は古麻の前で急に愛想よくなり、彼女にそう挨拶をする。

「それで先ほど俺がこの近くを歩いているのを、彼女に見られていたようです。なのでその時のことを聞きたいと、彼女に言わたもので」

「まぁ、稚沙、それで急にここから走って行ってしまったのね」

  古麻は椋毘登の話しを聞き、とりあえず彼女の行動には納得出来たようだ。

「それで俺自身は、特に怪しい人影は見ませんでした。
  ただこの件がちょっと気になり、それで彼女にお願いして、倉庫まで連れて来てもらったという訳です」

  そう言って彼は、ふと稚沙に目を向ける。

(これは私の行動も、旨く誤魔化してくれたってこと?)

  稚沙はそれを聞いて、彼の頭の回転の早さにとても感心してしまった。

「まぁ、そうでしたの。でも蘇我馬子様のお身内の方に、このような場面を見せてしまい、本当に申し訳ないわ」

  古麻から見ても、蘇我一族の彼の方が自身よりも身分が高い。しかも彼は蘇我馬子の甥にあたる人物である。

  そんな古麻を見た蘇我椋毘登は、少し彼女に歩み寄ってきた。

「いえ、あなたの方こそ、こんな場面に遭遇してさぞ驚かれたでしょうね」

  椋毘登は古麻にとても優しい口調でそう話した。

  彼は見た目は割りと良い青年だ。そんな彼に優しく言われたため、古麻は少し顔を赤くした。

(この人、人当たりだけは相当良い……)

  稚沙は彼のそんな変貌を、何とも言えない気持ちで見ていた。

  それから彼は稚沙に向き直って言った。

「じゃあ、稚沙。中には入らないから、外から少し中を覗かせてくれないか?」

  稚沙もそれぐらいなら大丈夫だろうと思い「分かった」と言って、彼を倉庫の入り口まで案内する。

  それから彼は興味深く倉庫の中を覗く。

  倉庫内は片付けが始まっているので、最初の時よりも今はだいぶ綺麗になっていた。

「なる程、この倉庫にはこのような物が色々と置かれてあるのか」

  彼も炊屋姫の倉庫を見るなんてことは早々出来るものではない。なのでとても関心しながら、中を見ているみたいだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

因果の糸、断ち切り申す

クリヤ
歴史・時代
お江戸の町に、一匹の妖かしを連れた男がフラリと現れる。 大きな不幸に嘆き悲しむ人の前に。大きな不幸に見舞われた家の前に。 その優男は、フラリと現れる。 『その因果の糸、俺ァ、断ち切れるが、どうしやす?』 男の言葉に頷けば、悲しみを引き起こす因果の糸は断ち切られる。 どこまでも過去を遡って。 ただし……。 因果の糸に絡まっているのは、不幸だけじゃあない。 幸せだった思い出も、一緒に断ち切られることになる。 男に出会った人が選ぶ運命の選択は? 男が糸を断ち切って歩く目的とは? 男が連れている妖かしにも、何やら事情がありそうで……。

秘書と社長の秘密

廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。 突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。 ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...