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20《倉庫荒らしの犯人》
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その日の夕方になり、だんだんと辺りも暗くなってきていた。
仕事を終えた稚沙は、自身の住居に戻るため、宮内を歩いて移動していた。
女官の住まいは小墾田宮のすぐそばにあり、彼女はそこから宮まで歩いて通っている。
「さて、仕事も終わったし。暗くなる前に早く家に戻らないと」
彼女が自身の住居に戻ろうと歩いている時だった。誰かが早足で移動しているような音が聞こえてくる。
(誰の足音だろう?まだ完全に暗くなってる訳でもないから、そこまで急ぐこともないのに)
だがその足音は、なぜか宮の外とは逆の方向に走っているように聞こえる。
「この向こうは炊屋姫様の倉庫だし、また誰かが用事でもあるのかな?」
ふとその時、彼女の脳裏に今日起こった倉庫荒らしのことがよみがえる。
(まさか、また荒らしが入ろうとかしてないわよね)
だがもう少しで日がすっかり落ちて暗くなる。もし倉庫に侵入するなら今が一番良い時だ。
「ち、ちょっと見るだけなら、だ、大丈夫なはず……」
稚沙も少し怖くはあったが、少し離れた所から倉庫を見るだけである。
であれば、そこまで心配することもないだろう。
そこで彼女は急遽行き先をかえ、そのまま倉庫の様子を見にいくことにした。
そしてようやく倉庫が見えてきた時である。誰かが倉庫の中に入って行くのが見えた。
(誰かが倉庫の中に入ったみたい。でも割りと小柄そうだったから、多分女性だわ)
稚沙は相手が女性ということで、そこまで危険性はないと考えた。
そこで彼女は、そのまま倉庫の側まで実際に行ってみることにした。
それから彼女が、あともう少しで倉庫に辿り着くといった時である。
急に後ろから誰かに声をかけられた。
「おい、こんな所で何をしている?」
稚沙は一瞬『ひぃー!』と悲鳴を上げそうになったが、直ぐさま自身の手で口をふさいだ。
そしてそのままの状態で、彼女はゆっくりと後ろを振り向いた。
するとそこには蘇我椋毘登が立っており、彼は少し不思議そうな顔をしながら彼女を見ていた。
(ま、まさか、蘇我椋毘登にまた会うなんて……)
そんな稚沙を見て、椋毘登はそのまま彼女のそばまでやってくる。
「お前どうしたんだ?口なんか塞いで」
(まずい、このままでは自分が怪しまれてしまう)
「ちなみに俺は、今日の寝床で使う部屋に行く途中だった。だがお前がまたこの辺りをうろうろしてる風に見えたんでね」
彼は彼で、稚沙には何かと疑われていた。なのでとりあえず説明だけはしておきたかったようだ。
それを聞いた稚沙も、ここは諦めて彼に倉庫のことを話すことにし、口から手を離して言った。
「今ちょうど誰かが倉庫の中に入ったみたいなの。それで今日の荒らしの件のこともあったから、少し気になって」
椋毘登もそれを聞いて少し驚いたようで、思わず倉庫の方を見る。
そして音を漏らさずにしていると、確かに倉庫の中から「ゴソゴソ」と何か音のようなものが聞こえてくる。
「確かに中に誰かがいるみたいだ……」
椋毘登は少し表情を厳しくさせ、低めの声でそう答える。
それから2人は暫くの間、倉庫を見ていることにした。
だが一向に倉庫から人が出てくる様子はない。
「よし、分かった。なら俺が中の様子を見に行ってくる。お前はここで待っていてくれ」
そして彼は、余り音を立てないようにしながら、ゆっくりと倉庫の入り口まで向かった。
そして入り口の前までくると、彼は一呼吸おいてから、中に入ろうとした。
すると丁度その時、急に倉庫の中から人が出てきた。
椋毘登は中から出てきた相手の顔を見るなり、思わずその場で叫んだ。
「お、お前は!!」
続いて稚沙もその人物を見て、椋毘登同様にとても驚いた。
「こ、古麻!!どうしてあなたがこんな時間に?」
2人の前に現れたのは、稚沙と同じこの宮の女官である、あの古麻だった。
仕事を終えた稚沙は、自身の住居に戻るため、宮内を歩いて移動していた。
女官の住まいは小墾田宮のすぐそばにあり、彼女はそこから宮まで歩いて通っている。
「さて、仕事も終わったし。暗くなる前に早く家に戻らないと」
彼女が自身の住居に戻ろうと歩いている時だった。誰かが早足で移動しているような音が聞こえてくる。
(誰の足音だろう?まだ完全に暗くなってる訳でもないから、そこまで急ぐこともないのに)
だがその足音は、なぜか宮の外とは逆の方向に走っているように聞こえる。
「この向こうは炊屋姫様の倉庫だし、また誰かが用事でもあるのかな?」
ふとその時、彼女の脳裏に今日起こった倉庫荒らしのことがよみがえる。
(まさか、また荒らしが入ろうとかしてないわよね)
だがもう少しで日がすっかり落ちて暗くなる。もし倉庫に侵入するなら今が一番良い時だ。
「ち、ちょっと見るだけなら、だ、大丈夫なはず……」
稚沙も少し怖くはあったが、少し離れた所から倉庫を見るだけである。
であれば、そこまで心配することもないだろう。
そこで彼女は急遽行き先をかえ、そのまま倉庫の様子を見にいくことにした。
そしてようやく倉庫が見えてきた時である。誰かが倉庫の中に入って行くのが見えた。
(誰かが倉庫の中に入ったみたい。でも割りと小柄そうだったから、多分女性だわ)
稚沙は相手が女性ということで、そこまで危険性はないと考えた。
そこで彼女は、そのまま倉庫の側まで実際に行ってみることにした。
それから彼女が、あともう少しで倉庫に辿り着くといった時である。
急に後ろから誰かに声をかけられた。
「おい、こんな所で何をしている?」
稚沙は一瞬『ひぃー!』と悲鳴を上げそうになったが、直ぐさま自身の手で口をふさいだ。
そしてそのままの状態で、彼女はゆっくりと後ろを振り向いた。
するとそこには蘇我椋毘登が立っており、彼は少し不思議そうな顔をしながら彼女を見ていた。
(ま、まさか、蘇我椋毘登にまた会うなんて……)
そんな稚沙を見て、椋毘登はそのまま彼女のそばまでやってくる。
「お前どうしたんだ?口なんか塞いで」
(まずい、このままでは自分が怪しまれてしまう)
「ちなみに俺は、今日の寝床で使う部屋に行く途中だった。だがお前がまたこの辺りをうろうろしてる風に見えたんでね」
彼は彼で、稚沙には何かと疑われていた。なのでとりあえず説明だけはしておきたかったようだ。
それを聞いた稚沙も、ここは諦めて彼に倉庫のことを話すことにし、口から手を離して言った。
「今ちょうど誰かが倉庫の中に入ったみたいなの。それで今日の荒らしの件のこともあったから、少し気になって」
椋毘登もそれを聞いて少し驚いたようで、思わず倉庫の方を見る。
そして音を漏らさずにしていると、確かに倉庫の中から「ゴソゴソ」と何か音のようなものが聞こえてくる。
「確かに中に誰かがいるみたいだ……」
椋毘登は少し表情を厳しくさせ、低めの声でそう答える。
それから2人は暫くの間、倉庫を見ていることにした。
だが一向に倉庫から人が出てくる様子はない。
「よし、分かった。なら俺が中の様子を見に行ってくる。お前はここで待っていてくれ」
そして彼は、余り音を立てないようにしながら、ゆっくりと倉庫の入り口まで向かった。
そして入り口の前までくると、彼は一呼吸おいてから、中に入ろうとした。
すると丁度その時、急に倉庫の中から人が出てきた。
椋毘登は中から出てきた相手の顔を見るなり、思わずその場で叫んだ。
「お、お前は!!」
続いて稚沙もその人物を見て、椋毘登同様にとても驚いた。
「こ、古麻!!どうしてあなたがこんな時間に?」
2人の前に現れたのは、稚沙と同じこの宮の女官である、あの古麻だった。
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