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101《終章~いにしえの記憶をめぐり~》
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前回の稚沙の告白から、さらに数週間がたっていた。
その後、やはり椋毘登の曖昧な発言に納得がいかなかったので、本人をかなり攻め立て、何とか婚姻の約束まではさせることが出来た。
とはいっても、稚沙自身婚姻に関してはまだ今一つ実感がわかない。なので当分は恋人同士のような関係で構わないと彼女は思っている。
「椋毘登、本当に分かってるのかな?」
稚沙はその場で思いっきりため息をついた。
そして今日は小野妹子が再び、遣隋使として隋に出発する日でもあった。
そのため彼女は、そのお見送りの場に参加させて欲しいと、炊屋姫に必死でお願いしていた。
「妹子殿には、もう一度会いたかったのよね」
お見送りの場までは、椋毘登が連れていってくれるそうで、今は彼の迎えを待っている状態だ。
最初は彼も、自分と小野妹子が顔見知りということに、若干不機嫌そうだったが、それでも何とか納得はしてくれたようである。
(まぁ、流石にそれぐらいは許して欲しいもの)
「あ、稚沙、こんな所にいたのね?」
稚沙は誰かに名前を呼ばれ、ふと相手を見る。するとそこにいたのは古麻だった。
彼女は稚沙と違って、今日は宮で普通に仕事をしている。
「古麻、どうかしたの?」
「あなたが今日、小野妹子殿達の見送りに行くって聞いたから。それでもう間もなく出発しそうよ?」
やはりもうそんな時間になっていたのか。であれば自分も早く行きたいが、肝心の椋毘登がまだ来ていない。
「私は、椋毘登の馬に乗せてもらうつもり。でも肝心の彼がまだ来てないのよ」
「え、あなた椋毘登殿と一緒に行くの。本当に彼はまめね」
稚沙と椋毘登の関係は、余り大っぴらには話していない。
特に目上の女官の人達には、一番年下の自分に恋人が出来たなんて話は、早々出来るものでもない。
なので古麻も含め、知ってるのはほんの数人程度である。
「うーん、もうそろそろ来る頃だと思うんだけど……」
稚沙がどうしたのかと心配していた頃、やっとその本人が彼女らの元にやって来た。
「稚沙、悪い!遅くなった!」
彼は2人の前に来ると「ぜーはーぜーはー」と息をきらしていた。余程急いでここまで来たのだろう。
「椋毘登がこんな出発直前にくるなんて、本当に珍しい」
とはいえ、これで自分達も無事に出発できる。とりあえずはひと安心といったところだろう。
「ねぇ、椋毘登。皆もう出発するみたいよ!」
「あぁ、分かってる。だから急いでいこう。えぇーと……古麻だっけ?悪いが稚沙を借りていく。
帰りもここまで俺が連れて戻るので、心配はいらない」
彼も余程焦っているのだろう。その場にいた古麻にも、酷く手短に説明をした。
「はい、分かってますから。さぁ、早く行って下さい。稚沙のことくれぐれもお願いしますね」
古麻はそんな2人に、少しクスクスと笑いながらそう話す。
「あぁ、それは大丈夫だ。じぁ稚沙急いで行くぞ!」
椋毘登はそういってから、稚沙の手を握り、そしてそのまま早歩きで歩きだした。
「じゃあ、古麻ちょっと行ってくるー!」
稚沙も古麻に手を振りながら、必死で椋毘登の早さに合わせて歩きだした。
「稚沙、行ってらっしゃいー。本当に気をつけるのよー!」
こうして稚沙と椋毘登は古麻に見送られながら、その場を後にした。
その後、やはり椋毘登の曖昧な発言に納得がいかなかったので、本人をかなり攻め立て、何とか婚姻の約束まではさせることが出来た。
とはいっても、稚沙自身婚姻に関してはまだ今一つ実感がわかない。なので当分は恋人同士のような関係で構わないと彼女は思っている。
「椋毘登、本当に分かってるのかな?」
稚沙はその場で思いっきりため息をついた。
そして今日は小野妹子が再び、遣隋使として隋に出発する日でもあった。
そのため彼女は、そのお見送りの場に参加させて欲しいと、炊屋姫に必死でお願いしていた。
「妹子殿には、もう一度会いたかったのよね」
お見送りの場までは、椋毘登が連れていってくれるそうで、今は彼の迎えを待っている状態だ。
最初は彼も、自分と小野妹子が顔見知りということに、若干不機嫌そうだったが、それでも何とか納得はしてくれたようである。
(まぁ、流石にそれぐらいは許して欲しいもの)
「あ、稚沙、こんな所にいたのね?」
稚沙は誰かに名前を呼ばれ、ふと相手を見る。するとそこにいたのは古麻だった。
彼女は稚沙と違って、今日は宮で普通に仕事をしている。
「古麻、どうかしたの?」
「あなたが今日、小野妹子殿達の見送りに行くって聞いたから。それでもう間もなく出発しそうよ?」
やはりもうそんな時間になっていたのか。であれば自分も早く行きたいが、肝心の椋毘登がまだ来ていない。
「私は、椋毘登の馬に乗せてもらうつもり。でも肝心の彼がまだ来てないのよ」
「え、あなた椋毘登殿と一緒に行くの。本当に彼はまめね」
稚沙と椋毘登の関係は、余り大っぴらには話していない。
特に目上の女官の人達には、一番年下の自分に恋人が出来たなんて話は、早々出来るものでもない。
なので古麻も含め、知ってるのはほんの数人程度である。
「うーん、もうそろそろ来る頃だと思うんだけど……」
稚沙がどうしたのかと心配していた頃、やっとその本人が彼女らの元にやって来た。
「稚沙、悪い!遅くなった!」
彼は2人の前に来ると「ぜーはーぜーはー」と息をきらしていた。余程急いでここまで来たのだろう。
「椋毘登がこんな出発直前にくるなんて、本当に珍しい」
とはいえ、これで自分達も無事に出発できる。とりあえずはひと安心といったところだろう。
「ねぇ、椋毘登。皆もう出発するみたいよ!」
「あぁ、分かってる。だから急いでいこう。えぇーと……古麻だっけ?悪いが稚沙を借りていく。
帰りもここまで俺が連れて戻るので、心配はいらない」
彼も余程焦っているのだろう。その場にいた古麻にも、酷く手短に説明をした。
「はい、分かってますから。さぁ、早く行って下さい。稚沙のことくれぐれもお願いしますね」
古麻はそんな2人に、少しクスクスと笑いながらそう話す。
「あぁ、それは大丈夫だ。じぁ稚沙急いで行くぞ!」
椋毘登はそういってから、稚沙の手を握り、そしてそのまま早歩きで歩きだした。
「じゃあ、古麻ちょっと行ってくるー!」
稚沙も古麻に手を振りながら、必死で椋毘登の早さに合わせて歩きだした。
「稚沙、行ってらっしゃいー。本当に気をつけるのよー!」
こうして稚沙と椋毘登は古麻に見送られながら、その場を後にした。
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