7 / 68
7P《見えない物を写す鏡》
しおりを挟む
忍坂姫はその後、1ヶ月間もの間、雄朝津間皇子の宮で過ごす事になった。
彼女自身はてっきり数日間だけの滞在と思っていたが、話しがどんどん進んでいきその結果1ヶ月もの長期になってしまった。
これは父親の稚野毛皇子と瑞歯別大王の力の入れようが伺える。
「何で、こんな事になってしまったのかしら。別にすぐ近くだからわざわざ皇子の宮で過ごさなくても……」
忍坂姫は元々、母親の百師木姫の実家である息長で暮らしていた。それが数年前から母と妹の衣通姫と一緒に、父である稚野毛皇子の元で暮らすようになった。
とりあえず1ヶ月の期間と言う事もあり、姫のいる宮の使用人の女達数名が、いそいそと出発の準備をしてくれていた。
そして出発はいよいよ明日となった。
そんな時だった、忍坂姫の母親である百師木姫が彼女の部屋へとやって来た。
「忍坂姫、ちょっと良いかしら」
忍坂姫は何かの用事かと思い、立ち上がって母親の元に駆け寄った。
「お母様、どうかしたの?」
忍坂姫がふと百師木姫を見ると、彼女の手には何か布に包まれた物が持たれていた。
「ちょっとこれをあなたに渡そうと思って持ってきたのよ」
そう言って、百師木姫はそのまま布に包まれた状態で彼女に渡した。
実際に持ってみると、少しだけ重さを感じる。
忍坂姫は一体何だろうと、その場で中身を見てみる事にした。
布を取ると中には鏡があった。大きさにすると彼女の手より一回りほどの大きさだ。
見た目は少し古いが、特にそれ程珍しい感じには見えない。
「これは鏡のようだけど、これがどうかしたの?」
忍坂姫は色々角度を変えて見たが、特別変わった感じはしなかった。
「これは私が実家から持ってきた鏡よ。忍坂姫、あなたも15歳になってそろそろ婚姻の時期に差し掛かったので、渡そうと思ってね」
「ふーん、そうなの……」
忍坂姫は不思議そうにその鏡を見ていた。
「この鏡は不思議な話しがあって、見えない物を写す鏡と言われてるの。私が皇子の元に嫁ぐ時に母から受け取ったもので、いずれは忍坂姫に引き継ごうと思っていたのよ」
「つまりは花嫁道具って事?それに見えない物を写す鏡って一体どういう意味?」
婚姻がまだちゃんと決まってもないのに、こんな物が渡されるとは思ってもみなかった。
「えぇ、私も花嫁道具として貰っていたのだけれど、余り布から出す事はなかったわ。だからその見えない物を写す鏡って言うのは実際は何なのか良く分からないのよ」
つまりこの鏡は、単なるお飾りみたいな物と言う事だろう。確かに古い割には余り使われた形跡は見受けられない。
「お母様、分かりました。とりあえずこの鏡は受け取っておきます」
そう言うと、忍坂姫はそのまま鏡を再度布に包んだ。折角の母からの贈り物だ、これは大事に持っておこう。
「じゃ明日が出発だから、今日はしっかりと休みなさい」
百師木姫はそう娘に言って、彼女の部屋を後にした。
たかが1ヶ月と言えども、初めて親元を離れる事になる。忍坂姫も全く不安が無いと言ったら嘘になる。しかも行き先がもしかしたら嫁ぎ先の相手になるかもしれない男の元だった。
「あ、そうだ。一応この鏡も磨いておこうかしら。かなり古い物で、お母様もずっと布に包んだままだったようだし」
そう思った忍坂姫は、台の上に置いて中から鏡を取り出した。
「そんなに目立った汚れは無いわね。とりあえず、布で拭いておきますか」
そして部屋の中にある布を取ってきて、鏡を拭こうとした丁度その時だった。
鏡に自分とは違う人物が浮かんでるように見えた。
「へぇ?何これ!?」
彼女は思わず鏡を手から離して、少し後ろに下がった。
鏡には、少し暗くてはっきりとはしないが、男性が映ってるように見えた。しかも割りと若い青年のように思える。
(な、何で、知らない人が映ってるの……)
彼女はすぐさま後ろを振り返ったが、そこには誰もおらず、部屋の中には忍坂姫しかいなかった。
そして恐る恐る再度鏡を見てみると、鏡には元の自分の姿が映っていた。
「あれ、気のせい?」
それでもしばらくその状態で様子を見ていた。しかしその後も特に何の変化もなかった。
「変ね、気のせいだったのかしら?」
鏡にも特に異常は見られない。何か目の錯覚だったのだろうか。
「とりあえず、拭くだけ拭いて布に戻しておこう」
それから忍坂姫はさっさと鏡を拭き、布で包んだ。もしかすると何か変な影でも入ってしまったのかもしれない。
「そう言えばさっき、お母様がこの鏡は見えない物を映す鏡って言ってたわね。まさかね……うん、きっと気のせいだわ」
(もしかしたら、さっきそんな話しを聞いたから、そんな物が目の錯覚で見えたと思っただけなのかも)
こうして、忍坂姫は明日に備えて身の回りの荷物を再度確認し、明日に備えて今日は早く寝る事にした。
彼女自身はてっきり数日間だけの滞在と思っていたが、話しがどんどん進んでいきその結果1ヶ月もの長期になってしまった。
これは父親の稚野毛皇子と瑞歯別大王の力の入れようが伺える。
「何で、こんな事になってしまったのかしら。別にすぐ近くだからわざわざ皇子の宮で過ごさなくても……」
忍坂姫は元々、母親の百師木姫の実家である息長で暮らしていた。それが数年前から母と妹の衣通姫と一緒に、父である稚野毛皇子の元で暮らすようになった。
とりあえず1ヶ月の期間と言う事もあり、姫のいる宮の使用人の女達数名が、いそいそと出発の準備をしてくれていた。
そして出発はいよいよ明日となった。
そんな時だった、忍坂姫の母親である百師木姫が彼女の部屋へとやって来た。
「忍坂姫、ちょっと良いかしら」
忍坂姫は何かの用事かと思い、立ち上がって母親の元に駆け寄った。
「お母様、どうかしたの?」
忍坂姫がふと百師木姫を見ると、彼女の手には何か布に包まれた物が持たれていた。
「ちょっとこれをあなたに渡そうと思って持ってきたのよ」
そう言って、百師木姫はそのまま布に包まれた状態で彼女に渡した。
実際に持ってみると、少しだけ重さを感じる。
忍坂姫は一体何だろうと、その場で中身を見てみる事にした。
布を取ると中には鏡があった。大きさにすると彼女の手より一回りほどの大きさだ。
見た目は少し古いが、特にそれ程珍しい感じには見えない。
「これは鏡のようだけど、これがどうかしたの?」
忍坂姫は色々角度を変えて見たが、特別変わった感じはしなかった。
「これは私が実家から持ってきた鏡よ。忍坂姫、あなたも15歳になってそろそろ婚姻の時期に差し掛かったので、渡そうと思ってね」
「ふーん、そうなの……」
忍坂姫は不思議そうにその鏡を見ていた。
「この鏡は不思議な話しがあって、見えない物を写す鏡と言われてるの。私が皇子の元に嫁ぐ時に母から受け取ったもので、いずれは忍坂姫に引き継ごうと思っていたのよ」
「つまりは花嫁道具って事?それに見えない物を写す鏡って一体どういう意味?」
婚姻がまだちゃんと決まってもないのに、こんな物が渡されるとは思ってもみなかった。
「えぇ、私も花嫁道具として貰っていたのだけれど、余り布から出す事はなかったわ。だからその見えない物を写す鏡って言うのは実際は何なのか良く分からないのよ」
つまりこの鏡は、単なるお飾りみたいな物と言う事だろう。確かに古い割には余り使われた形跡は見受けられない。
「お母様、分かりました。とりあえずこの鏡は受け取っておきます」
そう言うと、忍坂姫はそのまま鏡を再度布に包んだ。折角の母からの贈り物だ、これは大事に持っておこう。
「じゃ明日が出発だから、今日はしっかりと休みなさい」
百師木姫はそう娘に言って、彼女の部屋を後にした。
たかが1ヶ月と言えども、初めて親元を離れる事になる。忍坂姫も全く不安が無いと言ったら嘘になる。しかも行き先がもしかしたら嫁ぎ先の相手になるかもしれない男の元だった。
「あ、そうだ。一応この鏡も磨いておこうかしら。かなり古い物で、お母様もずっと布に包んだままだったようだし」
そう思った忍坂姫は、台の上に置いて中から鏡を取り出した。
「そんなに目立った汚れは無いわね。とりあえず、布で拭いておきますか」
そして部屋の中にある布を取ってきて、鏡を拭こうとした丁度その時だった。
鏡に自分とは違う人物が浮かんでるように見えた。
「へぇ?何これ!?」
彼女は思わず鏡を手から離して、少し後ろに下がった。
鏡には、少し暗くてはっきりとはしないが、男性が映ってるように見えた。しかも割りと若い青年のように思える。
(な、何で、知らない人が映ってるの……)
彼女はすぐさま後ろを振り返ったが、そこには誰もおらず、部屋の中には忍坂姫しかいなかった。
そして恐る恐る再度鏡を見てみると、鏡には元の自分の姿が映っていた。
「あれ、気のせい?」
それでもしばらくその状態で様子を見ていた。しかしその後も特に何の変化もなかった。
「変ね、気のせいだったのかしら?」
鏡にも特に異常は見られない。何か目の錯覚だったのだろうか。
「とりあえず、拭くだけ拭いて布に戻しておこう」
それから忍坂姫はさっさと鏡を拭き、布で包んだ。もしかすると何か変な影でも入ってしまったのかもしれない。
「そう言えばさっき、お母様がこの鏡は見えない物を映す鏡って言ってたわね。まさかね……うん、きっと気のせいだわ」
(もしかしたら、さっきそんな話しを聞いたから、そんな物が目の錯覚で見えたと思っただけなのかも)
こうして、忍坂姫は明日に備えて身の回りの荷物を再度確認し、明日に備えて今日は早く寝る事にした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
(学園 + アイドル ÷ 未成年)× オッサン ≠ いちゃらぶ生活
まみ夜
キャラ文芸
年の差ラブコメ X 学園モノ X オッサン頭脳
様々な分野の専門家、様々な年齢を集め、それぞれ一芸をもっている学生が講師も務めて教え合う教育特区の学園へ出向した五十歳オッサンが、十七歳現役アイドルと同級生に。
子役出身の女優、芸能事務所社長、元セクシー女優なども登場し、学園の日常はハーレム展開?
第二巻は、ホラー風味です。
【ご注意ください】
※物語のキーワードとして、摂食障害が出てきます
※ヒロインの少女には、ストーカー気質があります
※主人公はいい年してるくせに、ぐちぐち悩みます
第二巻「夏は、夜」の改定版が完結いたしました。
この後、第三巻へ続くかはわかりませんが、万が一開始したときのために、「お気に入り」登録すると忘れたころに始まって、通知が意外とウザいと思われます。
表紙イラストはAI作成です。
(セミロング女性アイドルが彼氏の腕を抱く 茶色ブレザー制服 アニメ)
題名が「(同級生+アイドル÷未成年)×オッサン≠いちゃらぶ」から変更されております
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる