大和の風を感じて2〜花の舞姫〜【大和3部作シリーズ第2弾】

藍原 由麗

文字の大きさ
9 / 68

9P

しおりを挟む
(どうしよう、このままじゃ皆殺される……)

  忍坂姫おしさかのひめもさすがに体が固まってしまい、ブルブルと震え出した。

  そんな彼女を見た衣奈津いなつは、さらに強く彼女を抱きしめた。


  これで本当におしまいだと思ったそんな時だった。

「お前達、こんな所で盗賊してたのか。やっと見つけたよ」

「だ、誰だ。お前は!」

  思わず、盗賊の一人が叫んだ。

  忍坂姫が恐る恐る前を見ると、そこに1人の青年が立っていた。
  とても身なりの良い服装を来ていて、忍坂姫より数歳年上に見える。

「この辺りで盗賊が出ると言う話しを聞いて、それで張り込んでいたのさ」

  それを聞いた2人の盗賊は、その青年に向けて剣を取り出した。
  相手は1人だ、2人で掛かれば何とか倒せるだろう。

「お前みたいなガキに何が出来るって言うんだ。では先にお前から始末してやる」

  そう言って2人そのはその青年に斬りかかっていった。

  すると青年は素早く剣を取り出し、先にやって来た男の腹を一瞬で切った。

「き、きさまー!!」

  男は余りの痛みにその場に倒れ、動けなくなった。
  そしてその男に止めを刺す為に、さらにもう1回剣を刺した。
  すると一瞬男は声をあげたが、すぐに息を引き取った。

  それを見たもう1人は、恐ろしくなり1歩後ろに下がった。

  そして「こ、これは、やばい」そう言って逃げようと後ろを向いた瞬間、青年が素早くやって来て、後ろから男の背中を縦に剣で切った。

「ぎゃー!!」と言って、その男は足元をふらつかせた。

  男がふらついた隙に、さらにもう一振剣を浴びせた。
  するとその男もその場に倒れたのち、暫くして息を引き取った。

  それは本当にあっという間の出来事だった。

  そしてその青年は「ふぅーやれやれ」と言ってから、腰にあった布を取り出し、剣についた血を拭き取った。
  人を2人殺したと言うのに、表情は至って冷静だ。

  忍坂姫はその状況を呆然と見ていた。

(この人一体何者なの?)

  剣を拭いて腰に戻すと、その青年は忍坂姫達に向かって言った。

「最近、この辺りで盗賊が出ていると言う話しがあったんだ。あなた達もとんだ災難だったね。まぁ、これで盗賊はいなくなったから大丈夫だと思うけど」

  忍坂姫はとりあえずお礼を言わなければと思い、まだブルブルと震えている体を必死で押し退けて前に出た。

「あのう、本当に助けて下さって有り難うございました。もう本当に駄目かと思いました」

  忍坂姫はそう彼にお礼を言った。

  そんな彼女を見た、青年はにっこりとして言った。

「別に気にしなくて良いよ。元々そのつもりでこの辺りにいたんでね」

  そんな彼を見て、先程まで剣を使って人を殺したとは到底思えなかった。
  先程の彼は本当に恐ろしかった。

「とりあえず、この男達の処理を近くの村の人に任せるつもりだ。君達も移動中なんだろう?早く行った方が良い」

  そう言いながら、彼は既に死んでいる男2人を道の隅に動かし出した。

  忍坂姫達が歩けるようにしたいのだろう。

「本当に何から何まで、すみません。私の名前は……」

  彼女がそう言おうとすると、衣奈津が横から止めた。

「お名前を出すのは控えた方が宜しいかと」

  それを聞いて忍坂姫はハッとした。


(確かに、自分が皇女だと迂闊に言うものでもないわ)

  忍坂姫は折角助けてくれたこの青年に、名前すら出せない事にとても申し訳なく思った。

  そんな彼女の心境を察して、青年は気にする風でもなく言った。

「別にそんな事気にしなくて良いよ。逆にこんな状況で自分の身を明かす必要も無いしね。とりあえず君達が無事ならそれで良い」

  そう言って、彼は忍坂姫の前に来た。

  背もそれなりに高く、まるでどこかの皇子のようにも思えた。
  ただ皇子がこんな盗賊退治のような事をするはずもない。

(この人は本当に一体誰なんだろう?)

  思わず忍坂姫はジーと彼を見ていた。

  そんな彼女に気づき、彼はちょっと気まずそうにした。

「あんまりそうやって、俺の事をじろじろ見ないでくれるかな。そんな風に見られると、ちょっと恥ずかしいと言うか……」

  忍坂姫は彼にそ言うれて、思わず顔を赤くした。

「あ、私ったらごめんなさい、つい」

  それからしばらくして、衣奈津が横から声を掛けて来た。

「では、余り時間をかけるのも良くないので、先を進みましょう」

  彼女にそう言われたので、忍坂姫も渋々従う事にした。
  そして彼女は、引き続き雄朝津間皇子おあさづまのおうじの元に向かう事にした。

「では、本当に有り難うございました」

「いえいえ、どう致しまして。君みたいな女の子に危害が無くて本当に良かったよ」

  青年は忍坂姫に笑顔で優しく答えた。

  それを聞いた彼女はその青年に少しトキメキを覚えた。
  だが直ぐにその事から彼女は目を反らした。

(何変な事考えてるのよ。自分は皇女で、これから婚姻相手になるかもしれない人の所に行こうとしてるのに)

「では、これで」

  そして、そのまま彼女は雄朝津間皇子の元へと向かっていた。

  そんな忍坂姫達を青年はずっと見送っていた。

「でもあの一行は一体どごに行くんだろうな……まぁ、もう会うこともないから良いか」


  そして彼は、引き続き死体処理に取り掛かる事にした。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

(学園 + アイドル ÷ 未成年)× オッサン ≠ いちゃらぶ生活

まみ夜
キャラ文芸
年の差ラブコメ X 学園モノ X オッサン頭脳 様々な分野の専門家、様々な年齢を集め、それぞれ一芸をもっている学生が講師も務めて教え合う教育特区の学園へ出向した五十歳オッサンが、十七歳現役アイドルと同級生に。 子役出身の女優、芸能事務所社長、元セクシー女優なども登場し、学園の日常はハーレム展開? 第二巻は、ホラー風味です。 【ご注意ください】 ※物語のキーワードとして、摂食障害が出てきます ※ヒロインの少女には、ストーカー気質があります ※主人公はいい年してるくせに、ぐちぐち悩みます 第二巻「夏は、夜」の改定版が完結いたしました。 この後、第三巻へ続くかはわかりませんが、万が一開始したときのために、「お気に入り」登録すると忘れたころに始まって、通知が意外とウザいと思われます。 表紙イラストはAI作成です。 (セミロング女性アイドルが彼氏の腕を抱く 茶色ブレザー制服 アニメ) 題名が「(同級生+アイドル÷未成年)×オッサン≠いちゃらぶ」から変更されております

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...