大和の風を感じて2〜花の舞姫〜【大和3部作シリーズ第2弾】

藍原 由麗

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25P《1人の青年の恋》

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  そして忍坂姫おしさかのひめ一行はようやく会場となる場所にやって来た。
  そこは少し小高い場所に設置されていた。

  その場には使用人達が先にやって来ていて、食事やお酒等が置かれていた。

  そして今日は天気も良く、桜も満開だった。

「わぁ、本当に綺麗な桜ね。今日来て本当に良かったわ」

  忍坂姫は余りの桜の綺麗さにとても感動した。
また少し小高い所なので、遠くの方まで割りと見渡す事が出来た。

「まさか、君がそこまで喜ぶとは思っていなかったよ」

  忍坂姫の隣に座っている雄朝津間皇子おあさづまのおうじが、彼女にそう言った。
  ちなみに忍坂姫の反対側には市辺皇子いちのへのおうじが座っている。

  席順に関して言えば。
  瑞歯別大王みずはわけのおおきみの右側に雄朝津間皇子がいて、そのさらに隣に忍坂姫と市辺皇子が座っている状態だ。
  瑞歯別大王の左側にはまだ誰も座ってはいなかった。

(大王の反対側には誰が座るんだろう?見た感じだと、大王の后は来られてないようだし)


  それから暫くして大王の横に1人の男性がやって来た。

「大王、遅くなって済みません」

  そう言うなり、その男性は瑞歯別大王の隣に座った。見た目的に、大王と差ほど歳の離れていないぐらいの年齢の男性のようだ。

稚田彦わかたひこ、お前も忙しいのに誘って済まないな」

  瑞歯別大王は彼にそうに言った。
  そして瑞歯別大王は、彼に忍坂姫を紹介した。

「稚田彦、こっちが稚野毛皇子わかぬけのおうじの皇女の忍坂姫だ」

  忍坂姫は急に自分の事が言われたので、慌てて稚田彦に挨拶をした。

「始めまして。稚野毛皇子の娘の忍坂姫と言います」

  それを聞いた稚田彦は思わず「あぁ、この方が」と言った。
  彼女の事はどうも瑞歯別大王から聞いていたようだった。

「あなたの事は大王から聞いております。私は大王の補佐に携わっている、稚田彦と申します」

  そう言って彼は忍坂姫に挨拶をした。

  忍坂姫はそんな彼を見て、ふと違和感を感じた。

(何だろう、この人誰かに似ているような?)

  忍坂姫は稚田彦の顔をじっと見ながら首を傾げた。
  そんな彼女を見て、稚田彦は少し不思議に思った。

「あのう、忍坂姫。どうかされましたか?」

「いえ、あなたの顔、誰かに似ているような気がして……」

  忍坂姫は誰だったかなと色々頭の中を巡らせてみた。だが中々該当の人が浮かんでこない。
  この稚田彦と言う人は、恐らく今日初めて会っているはずだ。

「忍坂姫、君はずっと息長にいたんだろう?そんな君がどうして大和の人間なんかと知り合うんだ」

  雄朝津間皇子も、忍坂姫のそんな突然の発言に少し驚いていた。




「うーん、息長の姫……」

  稚田彦もふと考え込んでいた。そしてある事を思い出した。

「実は私には既に亡くなってはいますが、元々1人兄がおりました。兄の名は挂波弥かはやと言います。
  その兄が昔息長に行っていた事があります。」

「挂波弥……あ、そうよ、挂波弥だわ。思い出した!」

  忍坂姫は稚田彦の発言でやっと思い出す事が出来た。

「忍坂姫?一体どういう事だ」

  雄朝津間皇子が彼女に言った。
  稚田彦の兄と忍坂姫が過去に会っていたとは本当に驚きである。

「あれは私が確か10歳ぐらいの時だったかしら。ある日、家の近くで1人の男性が倒れているのを見つけたの。
  その男性は酷く高熱で、それから急いで使用人を呼んで、宮に運んでから看病をしたわ」

  忍坂姫は、稚田彦や他の皆が聞いている中、続けて話しをした。

「私とてもその男性が心配だったから、付きっきりで看病したわ。それから数日してやっと熱が下がって、それで初めて彼と話しが出来たの」

「で、その人が稚田彦の兄だったと言う事?」

  雄朝津間皇子は、とても真剣な表情で彼女の話しを聞いていた。

「その、その人が稚田彦の兄なんて事は当時知らなかったけど、彼は自分の名前を挂波弥と名乗ったわ。
  今回は用事があって大和から来たと言っていた。その後身体も回復して、私や私の宮の人達にとても感謝し、そしてその後彼は帰って行ったわ」

  それを聞いた稚田彦はどうやら思い当たる事があったようで、彼女にその事を話した。

「その話しは聞いた事があります。こんな所で話す事でもないんですが。
  私と兄の挂波弥の父親は、瑞歯別大王みずはわけのおおきみの父上にあたる大雀大王おおさざきのおおきみの異母兄弟でした。
父はさらに、私の祖父にあたる誉田大王ほむたわけのおおきみが通っていた豪族の姫の使用人の女との間に出来た子供です。
  その為に、父は異母兄弟の大雀大王のような身分は約束されませんでした」

  稚田彦はさらに続けて、忍坂姫達に話した。

「その子供である私と兄の挂波弥は、さらに立場が低く、当時は中々苦労が耐えませんでした。
  そんな中当時使えていた皇族の人からの指示で、兄は息長に出向く事になりました。
  ですが、向かった先で熱に倒れてしまい、意識がもうろうとしていた中、ある小さな姫に助けられたと言ってました」

  それを聞いた忍坂姫は思わずハッとした。つまりその小さな姫と言うのが、自分の事だったんだろう。

「それでさらに兄が言っていたのですが。そんなどこの誰かも分からない自分に、その姫はとても懸命に看病してくれたそうです。その事は、当時の兄にとってどんなに嬉しかった事か……」
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