大和の風を感じて2〜花の舞姫〜【大和3部作シリーズ第2弾】

藍原 由麗

文字の大きさ
49 / 68

49P

しおりを挟む
  忍坂姫おしさかのひめは思った。自分と雄朝津間皇子おあさづまのおうじもいとこ同士で、小さい頃に2人で遊んだ事があったが、皇子的には散々な目に合っていた。

  市辺皇子いちのへのおうじ阿佐津姫あさつひめもいとこ同士なので、将来自分達のように、婚姻を薦められたりするかもしれない。

  もし本当に将来そんな話しが出たら、この2人はどうするのだろうか。
  少なくとも市辺皇子と阿佐津姫には、自分達と同じ二の舞を踏ませる事だけはさせたくないと彼女は思った。

(出来れば今のうちから仲良くはして貰いたいけど、どうもお互いの事をかなり嫌っているみたいだから、今はそっとしておいた方が良いかもしれないわね)

  忍坂姫はふとそんな事を思った。この幼い姫と皇子の立場を考えると、ありえる話しだ。


  それから暫くして、佐由良さゆらが使用人との話しを終えて忍坂姫達の元に戻ってきた。
  彼女の感じだと、宮の使用人からの了承は得られたようだ。

「宮の人達に説明してきたわ。じゃあ早く準備をして行きましょうか」

  佐由良は、阿佐津姫に先程話した小高い丘に行く事を彼女に説明した。
  阿佐津姫もそれを聞いて、「わぁ、私も行きたい~」と上機嫌で言った。

「でも大王達がその間に戻って来られたりしないでしょうか?」

  忍坂姫は、ふと大王達の事を心配していた。

「大王には、もしする事が無くなったらその丘に行くかもしれないと、実は昨日話しをしておいたの」

  佐由良は忍坂姫にそう説明した。

  それを聴いた忍坂姫は、であれば大王もそこまで心配する事はないだろうと思った。
  それに宮の使用人に言付けておけば、大王達が戻ってきた時に伝えてもらえる。

(それにここからすぐ近くと言っていたから、直ぐに戻れるだろうし)

  こうして忍坂姫は、佐由良とその娘の阿佐津姫と共に、この宮から少し行った所にある小高い丘に行く事にした。




  【たかみのさと】と呼ばれる小高い丘は、本当に直ぐ近くにあるみたいだ。

  そこに忍坂姫達は使用人の女性2人と、従者の男2人を連れて徒歩で向かう事にした。

(今日は天気も良いし、とてもぽかぽかしていて気持ちが良いわ)

  忍坂姫はその場で大きく腕を伸ばして、背伸びをした。
  こんな日は、むしろ皇子達とも一緒に来てみたかったなと思ったぐらいだ。

  佐由良は阿佐津姫と手を繋いで歩いていた。彼女も宮の外に出られたので、とても機嫌が良さそうだ。

「ここら辺は、夫が大王に即位してから来たので、住み始めて意外と日は浅いのよね。でもとても良い所だと思ったわ」

  佐由良はそう答えた。ここに来る以前は、亡き父である大雀大王おおさざきのおおきみの宮から南に下った所に若宮を建てて、そこで暮らしていたそうだ。

「確かにのどかでとても気持ちの良い所ですね。それに今日大王達が視察に行った場所もここから割りと近いと聞いていますし、大王からした倭国の政り事だけでなく、他国との交流においても利便性がありそうですね」



  忍坂姫が佐由良達とそんな話しをしている時だった。
  彼女達から少し離れた所で、自分達を見ている人間がいた。

「あの娘、見たことがあるぞ。6年前に今の大王の元にいた吉備の娘だ。それで今は大王の妃になっている」

  そんな彼女達を見ていたのは嵯多彦さたひこだった。先程いた場所から離れて、瑞歯別大王の住んでいる丹比柴籬宮たじひのしばかきのみや付近に来ていたのだ。
  そんな彼と一緒に、大炯を含めた3人の同行者がついていた。
  幸い、彼女らは彼らの存在には気付いてはいないようだ。

「嵯多彦、どうかしたか?」

  隣にいる大炯でひょんが彼に声を掛けた。

「おい、大炯あれを見ろ。あそこを歩いてる奴の中に、女の子を連れて歩いている女がいるだろう。あの女が大王の妃だ」

  嵯多彦はそう彼に説明した。彼女に会ったのは過去1回だけだが、当時と変わらず、相変わらず綺麗な容姿をした娘だと思った。

「あれが、この国の王の妃か。少しここから離れてはいるが、容姿ははっきりと見える。何とも綺麗な娘のようだな」

  大炯も一緒に佐由良達を見た。どうやらどこかに向かっているみたいで、あの小さな女の子は恐らく彼女の娘だろう。

  そして嵯多彦は、そんな佐由良達を見てふと思い付いた。

「今は大王も側におらず、従者も数名。であればあの妃を拐いやすいな。そうすれば大王もかなり慌てるだろうよ」

  嵯多彦は思わずその場で笑いだした。大事な妃がいなくなったとすれば、あの男はどんな顔をするのだろうか。
  きっとかなり動揺して、政り事どころではなくなるはずだ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

(学園 + アイドル ÷ 未成年)× オッサン ≠ いちゃらぶ生活

まみ夜
キャラ文芸
年の差ラブコメ X 学園モノ X オッサン頭脳 様々な分野の専門家、様々な年齢を集め、それぞれ一芸をもっている学生が講師も務めて教え合う教育特区の学園へ出向した五十歳オッサンが、十七歳現役アイドルと同級生に。 子役出身の女優、芸能事務所社長、元セクシー女優なども登場し、学園の日常はハーレム展開? 第二巻は、ホラー風味です。 【ご注意ください】 ※物語のキーワードとして、摂食障害が出てきます ※ヒロインの少女には、ストーカー気質があります ※主人公はいい年してるくせに、ぐちぐち悩みます 第二巻「夏は、夜」の改定版が完結いたしました。 この後、第三巻へ続くかはわかりませんが、万が一開始したときのために、「お気に入り」登録すると忘れたころに始まって、通知が意外とウザいと思われます。 表紙イラストはAI作成です。 (セミロング女性アイドルが彼氏の腕を抱く 茶色ブレザー制服 アニメ) 題名が「(同級生+アイドル÷未成年)×オッサン≠いちゃらぶ」から変更されております

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...