大和の風を感じて2〜花の舞姫〜【大和3部作シリーズ第2弾】

藍原 由麗

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「では、そろそろ決着を付けさせてもらう」

  そう言って彼は再び大炯でひょんに向かって行った。
  大炯も思わず剣を振りかざしたが、稚田彦わかたひこに跳ね返されてしまい、そのまま剣は飛ばされてしまった。

(しまった、俺とした事が!)

  大炯は思わず、その場に座り込んでしまった。

  そんな彼に稚田彦は剣を向けた。

「勝負あったな。この勝負お前の負けだ」

  この瞬間に、大炯と稚田彦の勝負の決着がついた。

(何て事だ。この俺がこんな青年に負けてしまうとは)

  その時だった。大炯は腰から隠し持っていた短剣で稚田彦の剣を払いのけた。

「な、何?」

  流石の稚田彦もこれには油断してしまった。

  そして、大炯は素早く立ち上がってその場から少し離れたところまで走った。

「今回の勝負は貴様の勝ちだ。だが次回は必ず俺が勝って見せる」

  そう言って、素早くその場から走って逃げてしまった。

「とりあえず、これで全てが終わったの?」

  忍坂姫おしさかのひめはその場で、思わずそう言った。


  しかしどこからか1人の男の呻き声が聞こえて来た。それはどうやら嵯多彦さたひこのようだった。
  他の同伴者達は既に息を引き取っているみたいだが、辛うじて彼はまだ息があったようだ。

(くそ、俺もこのまま死んでしまうのか)

  先程の雄朝津間皇子おあさづまのおうじから受けた傷であれば、もう彼は助からないだろう。

  そんな時だった。

  誰かがこちらに歩いて来ているようだ。

  嵯多彦は傷の痛みに必死で耐えながら、その人物を見た。それはあの瑞歯別大王みずはわけのおおきみだった。

  彼は無言で嵯多彦の前までやって来て、そこで立ち止まった。

  そんな彼を嵯多彦は見上げた。

(6年前と全く変わらない面影だな……)

  あの時はまだ10代だったが、それでも彼はとても凛々しく、皇子としての風格が十分にあった。
  自分は実家の葛城でも満足出来る地位は得られず、必死の思いで生きてきたと言うのに。

「はは、まさか最後に見るのがお前だったとはな。み、瑞歯別皇子みずはわけのおうじ……」

  そう言って、嵯多彦はその場で息を引き取った。
  これでこの彼の復讐劇も終わりを告げる事となった。


  すると、忍坂姫の横にいた阿佐津姫あさつひめは思わず、佐由良さゆらの元に掛けよった。

「お、お母さま~」

  阿佐津姫は母親の佐由良の元に行くと、彼女の元に飛び付いた。彼女も酷く怖がっていたようだ

  するとそんな彼女らの元に、夫の瑞歯別大王がやって来た。

「佐由良、阿佐津姫。大丈夫だったか」

  そして彼はその場に腰をおろした。

「はい、大丈夫です。雄朝津間皇子や稚田彦が守ってくれましたから」

  そして、彼女の目から思わず涙が流れた。
  きっと今まで、必死で耐えていたのであろう。

  そんな彼女を見て、瑞歯別大王も目を潤ませて言った。

「佐由良、来るのが遅れて本当に済まない」

  そう言って、彼は佐由良と阿佐津姫をそのまま抱き締めた。


  そんな状況を忍坂姫も何となく見ていた。

(本当に、佐由良様達も皆無事で良かったわ)

  そしてふと隣にいる雄朝津間皇子を見た。彼も大王達を見ているようだ。
  だが実際に見ているのは、どうやら佐由良の方だった。
  そしてその表情は少し切なそうに見える。

(雄朝津間皇子は、佐由良様を見ている?)
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