琥珀と二人の怪獣王 建国の怪獣聖書

なべのすけ

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第7獣

怪獣7-11

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 それは倒れ込むと、そのままぱたりと動かなくなる。
(もしかして……、人なのか……?)
 考えたくなかったことが、蘭と秀人の脳裏に浮かぶ。人が生きたまま焼け死んでいるだなんて。何かの見間違いだと、二人は自分に言い聞かせるが、漂ってくるこの匂いは何なのだろうか? 油と毛が焼けている、鼻と胸にこびり付いて、むかつきを感じさせる。
 火柱を見ると、小さく黒いものが周りを飛んでいた。
 瓦礫か何かなのかと、最初は思った。飛んでいたものが体に当たる。
 何だと思って、当たった物を手に取ると、思わず叫び声を上げたくなった。
「蘭! これっ……!」
「うわああっ! 秀人ッ!」
 銅像のように手足を縮こませ、ちりちりになった髪の毛、そして全身を黒く焼かれた、人間の死体だった。
 体の中から嘔吐感がこみあげて、吐き出しそうになるが、必死で堪えた。
 火柱の向こうを見ると、グリフォンが立っていた。
 熱の影響で姿は歪んで見えた、だがそれは、薄笑いを浮かべて、この様子を楽しんでいるようにも見えた。
「ふざけやがって! ぶち殺してやる!」
「蘭、気持ちは分かるけど、落ち着いて! どんな手段を取るのか分からない!」
『そうだ! まずは相手の出方を見ろ!』
 蘭の気持ちを察した、秀人とゴリアスが忠告する。
 特に秀人には、今の蘭がこれ以上なく怒っているの分かっている。それは中学時代に、いじめを見て、相手全員を病院送りにしたときと同じ感覚。正直、未だにトラウマになっていて、恐怖のを感じている。
「安心しろ……。前みたいなことは絶対にしない……」
 そうは言っていても、一抹の不安を抱えてしまう。
「さぁ、行くぞ……」
 火柱に向かって前進する。
 足を踏み入れると、全身を焼かれるかと思われるほどの痛みが襲ってきた。
 炎で焼け死ぬことは無いが、痛みが伝わってくるのは、正直辛い。
「あの野郎、絶対に許さねぇ……!」
 火柱を抜けて、腕を伸ばす。
「良くも、好き放題してくれたな! これでもう終わりだ!」
 グリフォンの体を掴みながら、近くにあった池の中に叩き落とした。
 池の水が舞い上がり、辺りに降り注ぐも熱のせいですぐに蒸発する。
「さぁどうだ!」
 蘭の言葉に応えるかのように、グリフォンは起き上がる。
 全身を水で濡らし、大ぶりの牙を打ち鳴らし、目は今にも飛び出んばかりに見開いている。二本の角は小さく痙攣し、相当怒りに打ち震えているのが伝わって来た。
「ひでぇツラだな。そんなことしたって怖くないんだよ!」
 蘭の言葉はゴリアスの咆哮となって周囲に響き渡った。それはグリフォンをここで倒す、決戦のゴングに聞こえた。
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