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第8獣
怪獣8-7
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轟音と共に、体が地面にめり込んで、巨大なクレーターを作った。土砂と木々が舞って落ちていく。
全身を叩き潰すくらいの力を込めたのだから、当然だろう。クレーターの中で小さく痙攣したかと思うと、ピクリとも動かなくなった。
「やったかな……?」
秀人が思わず、口にする。
「まだだ、安心するのには早いぞ」
蘭の言葉を聞いた、ゴリアスは小さく頷く。
今までの戦いから、これくらいでグリフォンが死なないのを、知っている。
案の定、グリフォンは起き上がってきた。
クレーターの中から、ゆっくりと巨体を震わせ、よたよたとした危ない足取りで起き上がる。それは墓場の中から、棺桶と土をこじ開けて、復活したゾンビや吸血鬼を連想させた。
「こいつ……」
蘭がぎりりと歯を噛んで、グリフォンを睨む。
「何かを恨んでいるなら、グリフォンは悲しい奴だな……」
小さく秀人が呟いた。
これだけダメージを与えたのに、まだ生きていた。しかし体はボロボロになっている。それでも抵抗を続ける理由は何なのか? 我々のご先祖に、仲間を殺されて、土地を奪われた、恨みの力が突き動かしているのか?
だが、恨み辛みの力なんかよりも、誰かを守りたい方が強いことを、グリフォンに教えてやる。それが人間の出来ること。秀人には自然と笑みが浮かんできた。
「わかってる。俺たちで教えてやろうよ……」
秀人の気持ちを共有した蘭が言う。
グリフォンはゴリアスを睨んだまま、動かない。睨み合いが続く。それでも、何とか作戦を立てなくてはならない。秀人が考えていた時、あるアイディアが浮かんだ。
「蘭、場所を移動しよう。海にグリフォンを移動させるんだ!」
「何だって?」
『どういうことなんだ?』
二人が聞き返す。
「いいから、言う通りにして!」
頭の中に疑問符が浮かびながらも、ゴリアスは来た道を戻って、海へと向かって歩き始めた。
その後を追って、グリフォンがおぼつかない足取りで続く。
来た道を歩き、グリフォンは背中の羽をしならせて、空を飛ぼうとしていた。しかしダメージを大きく受けたのか、地面から数メートル浮かび上がることしか、出来なかった。
辺りにグリフォンの叫びが響く。
その恨みをぶつけてやると言っているかの如く、かぎ爪をむき出しにして、地面を蹴って飛ぶ。
しかし、ゴリアスにはすべて分かっていた。そのままターンして裏拳を顔目掛け叩き込む。
ぐしゃりと顔の潰れる音が聞こえて、グリフォンはひっくり返って動かなくなる。
「全部お見通しだ!」
グリフォンを見て、蘭が言う。
「海が見えた、このまま海の中に入って!」
「わかった!」
秀人に言われるがまま、海へと入って行く。入り込むと大きな波紋が出来て、それが大波となって陸地に溢れて、ゴリアスの頭が見えていたと思うと、水中の中に隠れてしまった。
グリフォンは海岸で立ち止まると、口から炎を吐いた。それは竜巻となって、海の近くへと迫る。
そこにゴリアスが海中から姿を現した。全身から海水を滴らせながら、炎の竜巻に巨体を揺さぶらせるように、体中の海水をぶつける。
水と炎が合わさった音が聞こえ、竜巻は消えるのと同時に、海岸線に蒸気で出来たカーテンが作り出される。即席の濃霧の層だ。
それはグリフォンの視界を一時的に奪う、カーテンの中からゴリアスが姿を現し、体当たりを食らわせて海の中に、グリフォンを落とした。
「これが目的だったのか?」
何がしたかったのか分からない、蘭が聞く。
「違うよ、地上で戦うのは建物の犠牲があるから、海中にしようと思ったんだ」
「そういうことか……」
秀人の優しい考えに蘭がほっとする。いつも周りに気遣っている。秀人らしいと言えばそれまでだが、さっきまでの戦いを経験していれば、そうなるのも当たり前だ。
全身を叩き潰すくらいの力を込めたのだから、当然だろう。クレーターの中で小さく痙攣したかと思うと、ピクリとも動かなくなった。
「やったかな……?」
秀人が思わず、口にする。
「まだだ、安心するのには早いぞ」
蘭の言葉を聞いた、ゴリアスは小さく頷く。
今までの戦いから、これくらいでグリフォンが死なないのを、知っている。
案の定、グリフォンは起き上がってきた。
クレーターの中から、ゆっくりと巨体を震わせ、よたよたとした危ない足取りで起き上がる。それは墓場の中から、棺桶と土をこじ開けて、復活したゾンビや吸血鬼を連想させた。
「こいつ……」
蘭がぎりりと歯を噛んで、グリフォンを睨む。
「何かを恨んでいるなら、グリフォンは悲しい奴だな……」
小さく秀人が呟いた。
これだけダメージを与えたのに、まだ生きていた。しかし体はボロボロになっている。それでも抵抗を続ける理由は何なのか? 我々のご先祖に、仲間を殺されて、土地を奪われた、恨みの力が突き動かしているのか?
だが、恨み辛みの力なんかよりも、誰かを守りたい方が強いことを、グリフォンに教えてやる。それが人間の出来ること。秀人には自然と笑みが浮かんできた。
「わかってる。俺たちで教えてやろうよ……」
秀人の気持ちを共有した蘭が言う。
グリフォンはゴリアスを睨んだまま、動かない。睨み合いが続く。それでも、何とか作戦を立てなくてはならない。秀人が考えていた時、あるアイディアが浮かんだ。
「蘭、場所を移動しよう。海にグリフォンを移動させるんだ!」
「何だって?」
『どういうことなんだ?』
二人が聞き返す。
「いいから、言う通りにして!」
頭の中に疑問符が浮かびながらも、ゴリアスは来た道を戻って、海へと向かって歩き始めた。
その後を追って、グリフォンがおぼつかない足取りで続く。
来た道を歩き、グリフォンは背中の羽をしならせて、空を飛ぼうとしていた。しかしダメージを大きく受けたのか、地面から数メートル浮かび上がることしか、出来なかった。
辺りにグリフォンの叫びが響く。
その恨みをぶつけてやると言っているかの如く、かぎ爪をむき出しにして、地面を蹴って飛ぶ。
しかし、ゴリアスにはすべて分かっていた。そのままターンして裏拳を顔目掛け叩き込む。
ぐしゃりと顔の潰れる音が聞こえて、グリフォンはひっくり返って動かなくなる。
「全部お見通しだ!」
グリフォンを見て、蘭が言う。
「海が見えた、このまま海の中に入って!」
「わかった!」
秀人に言われるがまま、海へと入って行く。入り込むと大きな波紋が出来て、それが大波となって陸地に溢れて、ゴリアスの頭が見えていたと思うと、水中の中に隠れてしまった。
グリフォンは海岸で立ち止まると、口から炎を吐いた。それは竜巻となって、海の近くへと迫る。
そこにゴリアスが海中から姿を現した。全身から海水を滴らせながら、炎の竜巻に巨体を揺さぶらせるように、体中の海水をぶつける。
水と炎が合わさった音が聞こえ、竜巻は消えるのと同時に、海岸線に蒸気で出来たカーテンが作り出される。即席の濃霧の層だ。
それはグリフォンの視界を一時的に奪う、カーテンの中からゴリアスが姿を現し、体当たりを食らわせて海の中に、グリフォンを落とした。
「これが目的だったのか?」
何がしたかったのか分からない、蘭が聞く。
「違うよ、地上で戦うのは建物の犠牲があるから、海中にしようと思ったんだ」
「そういうことか……」
秀人の優しい考えに蘭がほっとする。いつも周りに気遣っている。秀人らしいと言えばそれまでだが、さっきまでの戦いを経験していれば、そうなるのも当たり前だ。
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