【第1部完結】佐藤は汐見と〜7年越しの片想い拗らせリーマンラブ〜

有島

文字の大きさ
19 / 253
Chapter01 - Side:Sugar - A

14 > 佐藤・飲み会の帰宅後ー2(嫉妬)

しおりを挟む
 


 なぁ〈春風〉。
 ……その【夫】は誰ですか?

 俺は君の【夫】を知ってる。
 君以上に知ってるよ。

 本当のあんたの【夫】はあんたのために死ぬほど働いてる。

 なのに、あんたが【夫】に仕立ててるその男はなんなんですか?
 そんな男に入れ上げて、別れさせられたのにまたよりを戻して不倫して?

 そんなに楽しいんですか?不倫って。
 婚外恋愛?って言うらしいですね。

 不倫するくらいなら、今の【夫】と別れればいいじゃないですか。
 なんで【夫】と別れないでよその男と夫婦ごっこしてるんですか?

 あんたの日常を守るために働いてる誠実な男はバカだと言いたいんですか?
【夫】とは結婚してる配偶者のことじゃないんですか?

 将来を誓い、一生添い遂げる覚悟で結婚した相手なのではないですか?
 その写真の男を【夫】と呼ぶのなら、なんでその男と結婚しなかったんですか?

 その男と結婚できなかったから、汐見と結婚したんですか?
 汐見と結婚して家庭を作るのが夢だと言ってなかったですか?

 ……結婚したくせに……汐見と……

 俺の汐見と……結婚して……

 俺から、俺の汐見を……

 いや……その男と結婚してくれさえすれば……!

 なんで……
 なんで、こんな女が……

 こんな人たちが存在するんだ……
 平気で人を傷つけて、傷つけたことすら理解できない。

 ストーキングなんてものは大概が相手が好きすぎるあまりの過剰行動だ。

 だが、俺は今、その好きな相手にする手法を、全く好きでもなんでもない〈春風〉相手にやっている。

 好きどころじゃない。
 俺は、会った瞬間、最初から『春風紗妃』が大っ嫌いだった。

 当然だろう?
 見た目だけ上等な、高級そうな女。

 自分の見た目を飾ることでどれだけ魅力的に見えるか、見られるか、異性がどこを見て自分を判断しているか、全てが計算し尽くされている女。

 そんな女のどこが良いんだ。
 そう叫びたくても叫ぶことなんかできなかった。

 汐見が、俺の隣で一目惚れした瞬間を目の当たりにして……

 その時。
 俺がどれだけ傷ついたか〈春風〉、お前にわかるか?

 わからないだろう?
 知らないだろう?

 ただ、女である。
 ただそれだけで。

 お前は選ばれ、俺は、汐見の恋愛の範疇にすら入らない。
 常に、汐見潮の恋愛対象【圏外】だ。

 そのことでどれだけ俺が傷ついても、汐見は何も気づかない。

 だけど、気づいていない汐見にホッとするんだ。
 まだ傍にいられる。まだ嫌われてはいない……

 だが同時に、なぜ俺は女じゃないんだと、なぜ汐見は俺を選ばないんだ、と汐見の気持ちに歯軋りする。

 その度に、俺は妄想の中で潮を手ひどく抱く。
 潮がやめてくれと、もう許してくれと、懇願するまで何度も潮の中に吐精する。

 そういう妄想と夢を見るんだ───

 汐見は真面目だったり、丁寧な仕事をする人間には誠実に対応する。
 だが、そうでないやつには基本的に塩だ。

 だから、有能な女性に、汐見は優しい。
 汐見が好感を抱いている女性は見てわかる。
 汐見が女性に優しくするのを見る度に、俺は横でギリギリと心臓を締め上げられていた。

 常に。
 常に、だ……

 部署が同じじゃなくて良かったとその度に思った。
 塩対応じゃない時の汐見は、あの主張しない顔で穏やかに微笑む。
 そうすると女性はみな大概、驚いた顔をして頬を赤らめる。

 イケメンじゃないかもしれない。
 だが、汐見の表情には人を惹きつけてやまない魅力がある。

 それをあいつは全然わかってない。
 わからないからこそそういう表情をするんだということは俺もわかってる。

 だが……

 その表情を誰にも見せないでくれ、そんな顔を見せるのは俺だけにしてくれ、他の人間にそんな表情を見せてお前が選び、選ばれる可能性がある女どもに見つからないでいてくれ!

 そう言いたくても言えるはずがない。

 だからこそ、俺は……
 あいつの傍にいられるなら、それだけで良い、と自分の中に終止符を打ったんだ。

 打ったのに……

 俺が好きな相手は……俺が、その時すでに5年も想いを温めていた相手は────

 今、この画面で笑顔で裏切り行為をしている〈春風〉と出会って1年もせずに────

【女性である】という、ただそれだけで……

 俺の───この世でたった一つの存在を────

【結婚】という形で奪い去って行ったんだ────





しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!

中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。 無表情・無駄のない所作・隙のない資料―― 完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。 けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。 イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。 毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、 凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。 「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」 戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。 けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、 どこか“計算”を感じ始めていて……? 狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ 業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...