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Chapter01 - Side:Sugar - A
14 > 佐藤・飲み会の帰宅後ー2(嫉妬)
しおりを挟むなぁ〈春風〉。
……その【夫】は誰ですか?
俺は君の【夫】を知ってる。
君以上に知ってるよ。
本当のあんたの【夫】はあんたのために死ぬほど働いてる。
なのに、あんたが【夫】に仕立ててるその男はなんなんですか?
そんな男に入れ上げて、別れさせられたのにまたよりを戻して不倫して?
そんなに楽しいんですか?不倫って。
婚外恋愛?って言うらしいですね。
不倫するくらいなら、今の【夫】と別れればいいじゃないですか。
なんで【夫】と別れないでよその男と夫婦ごっこしてるんですか?
あんたの日常を守るために働いてる誠実な男はバカだと言いたいんですか?
【夫】とは結婚してる配偶者のことじゃないんですか?
将来を誓い、一生添い遂げる覚悟で結婚した相手なのではないですか?
その写真の男を【夫】と呼ぶのなら、なんでその男と結婚しなかったんですか?
その男と結婚できなかったから、汐見と結婚したんですか?
汐見と結婚して家庭を作るのが夢だと言ってなかったですか?
……結婚したくせに……汐見と……
俺の汐見と……結婚して……
俺から、俺の汐見を……
いや……その男と結婚してくれさえすれば……!
なんで……
なんで、こんな女が……
こんな人たちが存在するんだ……
平気で人を傷つけて、傷つけたことすら理解できない。
ストーキングなんてものは大概が相手が好きすぎるあまりの過剰行動だ。
だが、俺は今、その好きな相手にする手法を、全く好きでもなんでもない〈春風〉相手にやっている。
好きどころじゃない。
俺は、会った瞬間、最初から『春風紗妃』が大っ嫌いだった。
当然だろう?
見た目だけ上等な、高級そうな女。
自分の見た目を飾ることでどれだけ魅力的に見えるか、見られるか、異性がどこを見て自分を判断しているか、全てが計算し尽くされている女。
そんな女のどこが良いんだ。
そう叫びたくても叫ぶことなんかできなかった。
汐見が、俺の隣で一目惚れした瞬間を目の当たりにして……
その時。
俺がどれだけ傷ついたか〈春風〉、お前にわかるか?
わからないだろう?
知らないだろう?
ただ、女である。
ただそれだけで。
お前は選ばれ、俺は、汐見の恋愛の範疇にすら入らない。
常に、汐見潮の恋愛対象【圏外】だ。
そのことでどれだけ俺が傷ついても、汐見は何も気づかない。
だけど、気づいていない汐見にホッとするんだ。
まだ傍にいられる。まだ嫌われてはいない……
だが同時に、なぜ俺は女じゃないんだと、なぜ汐見は俺を選ばないんだ、と汐見の気持ちに歯軋りする。
その度に、俺は妄想の中で潮を手ひどく抱く。
潮がやめてくれと、もう許してくれと、懇願するまで何度も潮の中に吐精する。
そういう妄想と夢を見るんだ───
汐見は真面目だったり、丁寧な仕事をする人間には誠実に対応する。
だが、そうでないやつには基本的に塩だ。
だから、有能な女性に、汐見は優しい。
汐見が好感を抱いている女性は見てわかる。
汐見が女性に優しくするのを見る度に、俺は横でギリギリと心臓を締め上げられていた。
常に。
常に、だ……
部署が同じじゃなくて良かったとその度に思った。
塩対応じゃない時の汐見は、あの主張しない顔で穏やかに微笑む。
そうすると女性はみな大概、驚いた顔をして頬を赤らめる。
イケメンじゃないかもしれない。
だが、汐見の表情には人を惹きつけてやまない魅力がある。
それをあいつは全然わかってない。
わからないからこそそういう表情をするんだということは俺もわかってる。
だが……
その表情を誰にも見せないでくれ、そんな顔を見せるのは俺だけにしてくれ、他の人間にそんな表情を見せてお前が選び、選ばれる可能性がある女どもに見つからないでいてくれ!
そう言いたくても言えるはずがない。
だからこそ、俺は……
あいつの傍にいられるなら、それだけで良い、と自分の中に終止符を打ったんだ。
打ったのに……
俺が好きな相手は……俺が、その時すでに5年も想いを温めていた相手は────
今、この画面で笑顔で裏切り行為をしている〈春風〉と出会って1年もせずに────
【女性である】という、ただそれだけで……
俺の───この世でたった一つの存在を────
【結婚】という形で奪い去って行ったんだ────
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