【第1部完結】佐藤は汐見と〜7年越しの片想い拗らせリーマンラブ〜

有島

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Chapter08 - Side:EachOther - C

125 > 佐藤宅 ー21〜 この先 [Side:Other]

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【Side:Other】



 佐藤は汐見のその笑顔を見て、暗澹あんたんたる思いを抱いた。だがそれを表情には表さない。

〝あぁ……しおみ……〟

 心の中では項垂れるもののそれを汐見に知られるほど表に出すわけにはいかないと感じていた。
 佐藤にだって、汐見のその意思がこれからの汐見に必要なことだというのはわかっている。だが───

〝お前のその決断で、俺は……俺との関係は…………〟

 汐見は佐藤の心情を半分も理解していないかもしれない。だが、汐見はそれでも佐藤を思ってその言葉を吐いた。

〝オレにできないことがお前にはできる。だから……〟

 汐見は自分にも、そしてそれ以上に佐藤にも今の距離を保つことは良くないことだと感じている。

 一方の佐藤は、これ以上汐見と離れたくないと感じている。

 双方が全く逆の思惑で動いているだろうことを知っているのは今回ばかりは鈍い汐見の方だった。

〝オレは、オレの人生を、お前は、お前の人生を……〟

 佐藤とは離れた方がいい、お互いのこれからの人生のためにも離れなければ、と思っているのに。
 それでもこの唯一無二の存在である佐藤と離れたくない、これまでと同じように、と願う自分もいる。

 この先の人生で、佐藤以上に自分が心を開ける人間には会えないだろうと思う。きっと佐藤もそうなのだろう。
 なのに、お互いの気持ちが別の意味を持っていて、佐藤を苦しめるのが自分自身だと知ったからには。

〝……佐藤と離れて……お前を開放しないと……お前に応えられない……オレ、では……〟

 感情の回路が混線してショート寸前で、自分でもよくわからない感情が込み上げて。
 汐見は目元に熱いものを感じた。

〝オレは……オレ、は……〟

 双方が異なる感情で相手を見ていることをようやく認識したのは汐見で。

 離れていこうとしている汐見をどうやって引き止めればいいのかと考える佐藤で。

 二人の気持ちは膠着こうちゃく状態に入ってしまった。

「佐藤……」
「……なんだ?」

「明日……その、面談が終わったら、お前に話すことがある」
「!!」

「……オレにとっては大事な……転職以上に大事な話、で……」
「……俺に今は言えない、って言ってたあのことか?」

 少しの沈黙で佐藤を見る汐見。

〝それ、聞いたら、なんか……〟

「い、急がなくてもいいぞ。別に、まだ時間あるし……」

 佐藤はその話を聞くと更に決定的になってしまう気がして、今は聞きたくないと思った。
 だが、汐見はもう時間切れだと感じていた。

「そうやって先延ばしにしていたからこういう事になったと思ってる」
「こういう、こと、って……」

 汐見がなんの話をしているのか佐藤にはにわかに理解できなかった。

「紗妃と、警察沙汰になった事」
「!?」

〝どういうことだ?!〟

「とにかく、紗妃がああなってしまったからには、いま紗妃に告げることは無理だ。だけどお前には……」
「……紗妃ちゃんとの話で、俺に関係ある、ってことか?」

「……関係あるといえばあるし、無いと言えばないのかもしれない。けど、お前には伝えないといけないと思ってる」
「……」

「紗妃は……紗妃のことは……対処できなかったオレも悪いんだ……」
「……紗妃ちゃんの【心】のことなら……」

「そうじゃない。じゃない、んだ……」

 千々に乱れる気持ちを抱いた汐見は、佐藤を話さなければならないこと──紗妃に話すべきだったのに話せなかったこと、紗妃の逃げ道が自分じゃなくなってしまったこと──それらを一つずつ解決していかなければならないと思った。

 的を得ない汐見の話を聞いた佐藤は、それでも何かを自分に訴えてくる汐見に

「……わかった。ゆっくり、な?」
「……すまん……」

 ゆったりとした笑顔で応えて思った。

〝まだ、汐見に笑えてるよな、俺……〟



 就寝時間になって、汐見が一人で考えながら寝たいから、とソファで寝ようとしていたため、佐藤がそれを制止して

「怪我人が変な場所で寝るな。それなら俺がソファで寝るから」

 部屋の主がソファに追いやられ、客人がバカでかいベットに一人で寝るという事態になった。

 当然それは佐藤の気持ちに配慮した汐見の提案だったのだが。

 そこまで気づいていない佐藤はソファに寝転びながら

〝明日……午前中はアレだけど、午後からまたバタバタだ……汐見の体調が心配だな……〟

 汐見の心配ばかりしていた。

 当の汐見は、佐藤がいないベッドで一人、紗妃のこと、佐藤のことを考えたあと

〝オレが動かないと……この先を……考えて……〟

 そう思い、明日に備えて今日は休もうと、気持ちを切り替えて目を閉じた。







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