【第1部完結】佐藤は汐見と〜7年越しの片想い拗らせリーマンラブ〜

有島

文字の大きさ
194 / 253
Chapter12 - Side:Other - D

190 > 決戦の日−09(他の愛人たち)

しおりを挟む
 


「……志弦さん?」
「はいはい。とりあえず私の方から、もう少し説明させていただきますわ」
「?」

「池宮先生なら不倫の慰謝料の金額に根拠が具体的な根拠が不要なのはご存知ですよね」

〝えっ?!〟

「精神的苦痛の算定なんてどうやってやるのか、という話なので。ただ、一応、事実として根拠はあります」
「……」

「夫・隆が、私の銀行口座を引落口座に指定しているブラックカード。そちらから算出いたしました」
「!!」

「こちらです」

 そう言って、志弦はテーブルの書類から何かを引き抜いて見せる。それはクレジットカードの明細をコピーした書類だった。

「彼、そういうことに本当に無頓着なので。明細を私が管理・確認してるなんて知らなかったと思いますわ」

〝そ、そこまで金銭管理に杜撰ずさんな人間て……〟

「宝飾店やブランド店、ビスポークの服や靴店など……いわゆる贅沢品しか置いてないお店の利用金額を過去4年分、全て洗い出してみたら、3千万強でした」

「!! ……そ、それは、融資した金額とは別に?」
「ええ、それとは別に」

「……」

 汐見と池宮が呆気に取られていると、大石森が右手でオールバックの前頭部をカリカリと掻く。

「こう言ってはなんですが、隆さん……志弦さんの夫の隆氏は愛人に金を直接渡すような人じゃなくてね。なので、逆に足がつきやすい。おかげで今回は助かったんですが」
「そういうところがおバカなのよね」

「な、なんでそんなこと……」

 志弦は皮肉っぽい表情を混ぜたまま、またしてもニッコリと微笑んだ。

「お金を渡しちゃうと、相手が何に使ったかわからないでしょ? 高級品を贈ると自分が買ったものだとすぐにわかるし、身につけていると感謝されてる気持ちにもなって気分がいい。愛人たちが自分が買い与えたものを身につけたり持ち歩くのを見るのが趣味だったの」
「……」

 汐見は絶句してしまった。愛人を抱える金持ちの本当の意味でだ。

 要するに吉永隆は、愛人に買い与えた物を彼女たちが身につけたり持ち歩いているのを見ることで、彼女たちが自分の所有物であることを都度、確認していたということで……

 そしてそれは紗妃も。

〝オレと出歩く時には着てくれない花柄のフレアスカート、お洒落な場所に行くときだけよく履いていた赤いパンプス……あの時はそれに……初めて見たバッグが……〟

 先々週の木曜日に起こった出来事を走馬灯のように思い出してしまった汐見は

〝き、もち、悪い……〟

 込み上げてくる嘔気おうけを感じ始めていた。

「あと。定期的に "あのカバン、最近見ないね" とか "こないだあげたネックレス、気に入らなかった?よく似合ってたから今度見せて欲しいな" とか言って、質流ししてないかも確認してたそうですわ」

 吉永隆と出かける際、彼から贈られたものを愛人が身につけるのは半ば強制だった。そうでないと一緒にいる間、ずっと不機嫌だからだ。そのため、愛人たちは細心の注意を払って彼からの贈り物とそうでないものを判別し、隆と会うときは彼からの贈り物で身を固めてから出る習慣も身につけていた。

〝しかも、を身につけさせて、換金されていないことを確認する、って……〟

 その醜悪な束縛と顕示欲と独占欲が見える吉永隆の行動と、それに従っていたであろう紗妃を思って汐見は苦しくなる。

〝紗妃……そんなことをしてまで……〟

「こういうことを言うのは大変失礼かと思うのですが……」
「?」

「……夫は……離婚したとしても、紗妃さんと結婚するつもりは毛頭ないと思いますよ」
「え?!」

「そもそも離婚するつもりがなかったと思います。私の夫業やってるほうが遥かに楽だし、金回りも都合もいい。……別居してからは、30代の一般女性のアパートに転がり込んでヒモみたいに生活してるようですし……」

 憐れむような表情を見せる志弦が汐見に

「最近、遊び仲間と会う度に連れ歩いて自慢してるお相手は、170cm近い長身の女子大生モデルのようですから」

 最後通牒つうちょうを言い渡した。





しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

貢がせて、ハニー!

わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。 隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。 社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。 ※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8) ■2025.12.14 285話のタイトルを「おみやげ何にする? Ⅲ」から変更しました。 ■2025.11.29 294話のタイトルを「赤い川」から変更しました。 ■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました! ■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。 ■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

処理中です...