【第1部完結】佐藤は汐見と〜7年越しの片想い拗らせリーマンラブ〜

有島

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Chapter14 - Side:Salt - D

207 > 後日ー01(想起)

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 慰謝料減額交渉の日から3日後。

 病院から電話がかかってきた時、何事かと思って少し警戒してしまった。

『昨日、池宮さん?という方から病院に私宛で直接ご連絡をいただいたのですが……』

 原口医師は怪訝そうな声でオレに話しかけてきた。
 夫であるオレとは別の人間が紗妃の件で問い合わせたことに疑念を感じたんだろう。YGDC社からの帰り道、池宮さんに紗妃の入院先である病院の電話番号と担当医の名前を伝えてあったから……

「あ、はい……その、紗妃のことで相談に乗ってもらってる弁護士の先生で……」
『そうでしたか』

 明らかにホッとしたような声が聞こえてきた。

『その方から「紗妃さんの意識が正常に戻り次第、連絡が欲しい」と言われたんですが、それは汐見さんもご承知おきの事ですか?』

 一瞬、なんのことかわからなかったが、池宮さんがなんの考えもなしにそんなことをするわけがない。とりあえず話に乗っておいた後、連絡して確認しようと思って同意を伝える。

「はい。承知してます」
『……わかりました。……今はまだ不安定な状態なのですが……安定した状態が長く保持できるようになったら再度、連絡しますね』

「あ……はい! お願いします!」

〝そうか……池宮さんはもう動いてるんだ……〟



 交渉の日も入れて3日の間。
 オレはバタバタと家にあるものの整理を始めていた。

 今週1週間は有給を延長したので、できる限り思いつくことを片付けていこうと思っていた。
 フラッシュバックが起きそうな動画と音声データの整理保存作業は中身を確認することなく日毎のフォルダに入れて、さらにそれを週毎のフォルダに入れ、月毎のフォルダに、と手早く済ませて外部メディアにバックアップを取る。

 紗妃の相続財産の件については検索しやすいよう表計算ソフトを使ってメモを残しつつ、データ化しておく。
 それから、これまでに撮り溜めた写真や動画を整理してそれらもバックアップしつつ───

 結婚して以来、ほとんどしてこなかった家事をやりながらだと意外と時間がかかることが判明し、その作業だけで2日費やしてしまった。

 その翌日、つまり病院からの連絡は木曜日に来た。

〝こうなると……全部片付けてから出勤した方がいいのかもな…………それに……佐藤との、ことも……〟

 やるべきことはわかっている。
 自分の気持ちも少しずつ整理できてきた。

 だが、肝心の引っ掛かりがまだ───

〝何かを……忘れてる、気が……する……〟

 そう思いつつ佐藤のLIMEへの返信が、最も忌み嫌っている「先延ばしリスト」に追加されていることも頭の片隅にありながら……日々を過ごしていた。

 紗妃とのことは今後どう動くかわからない。
 だが、もし長期入院ということになるならその準備もしないといけないだろう。

 それに、入院に必要な費用とか───

〝夫婦共同の預金通帳とか、は……紗妃の部屋だな……〟

 その紗妃の部屋には鍵がかかっていて紗妃本人でなければ開けることができない。

 室内の部屋にしては異常なくらい頑丈な鍵が、夫であるオレを拒絶していた。そのことについて何か質問すると険悪なムードになるので、部屋についての質問は夫婦の間でも触れてはいけない禁忌事項になっていた。

「は~~っ……」

 1人でいるとため息ばかり出る。
 そして、ふと、外に気配を感じてスマホを起動して、目当てのアプリをタップすると……

〝いる、なぁ……昨日と月曜は来てなかったと思うが……〟

 室内にあった監視カメラの一つを移動して、屋外の電信柱を映すようにしてある。暗闇でも動くものを察知して録画撮影する暗視機能付きなので、佐藤の行動はオレからは丸見えだった。

〝……オレの行動もストーカー行為に当たるのか?〟

 そう考えながら、画面越しに見える佐藤に面映おもはゆさを感じていた。

〝……バカだなぁ……オレなんか…………そんな価値、オレにない、だろう……〟







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