銀髪美少女JKの清楚で無口な昼と変態で囁く夜

黒兎しろ

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1話 銀髪美少女の意外な声

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 見慣れぬ校舎の入口に咲く桜が、春風にざわざわと揺れたのを、俺は少しの間眺めていた。

 俺は、首によれていたネックウォーマーを鼻元まで持ってくる。爽やかで日の出を告げる優しい光のような匂いがした。

 そして俺は、校舎の門に足を踏み入れた。

 校舎の門の石壁には、東京都立浅村高等学校と刻み込まれている。

 俺は、今日、東京都立浅村高等学校に、入学する新高校一年生、並木 充だ。

 そう、今日は入学式だ。

 俺と同じように、新一年生が、レンガ造りのヨーロッパ風校舎に向かってぞろぞろと歩いていく。その顔達は、見知らぬ顔だ。

 俺と同じように、今日心を躍らせながら、あるいは心を不安の煙で胸いっぱいに溜めながら登校してきているのだろうと考えられる、強ばった表情を浮かべた生徒が多かった。

 そんな中、なにやら、噂話が聞こえてきた。

「見ろよ、あの子」

「うわ、すっげー!可愛い」

 恐らくだが、中学が同じである友人同士の男二人の新一年生が同じくある新一年生を指して可愛いと口を揃えていた。

 俺はそいつらの目線の先に焦点を合わせると、白銀の雪景色のような美しい銀髪と煌めくような琥珀色の目をした美少女が、目を地面の方へ伏せながら、顔を俯かせながら、粛々と歩いていた。

 俺はそんな彼女の姿を見て、頬を冷たく冷やす雪のような印象を受けた。よく言えば、 慇懃いんぎん 畏かしこまった、悪く言えば、冷徹で堅苦しいクール系ド真面目生徒会長キャラのような印象を受けた。

 俺は向き直り、そのまま歩を進め、もうそろそろ、校舎の中へ入ろうとする時に、肩を叩かれた。

 それは俺の中学時代の友達である渡辺だった。

「おい、見たか?あの銀髪美少女!あれ一年だよな?な?最高じゃね?」

「あぁ、見たよ。見たけど、別に俺は」

 俺はそう、素っ気なく答えた。

「はぁ?お前、あんな美少女なかなかいねえぞ!?あれは芸能界でも上位レベルの顔だ!マジでこの高校にして良かったわ~」

「判断がはええよ。まぁ確かに顔はいいかもな。でも俺は顔なんでどうでもいい。俺は声だ。声が大事なんだ」

「あー出たよ出たよ。ASMRオタクさん」

呆れたように渡辺はそう言った。

「うるさいな。いいだろ別に」

 そう、俺は大のASMRオタクであり、声フェチであり、そして、絶対声感の持ち主である。

 絶対声感とは、例えばアニメのキャラの声を聞いただけそのキャラので声優が当てられるというものだ。

 俺は、中学時代、アニメにハマり、そしてそこから声優にハマり、そしてそしてASMRやASMR配信にハマった。そこで様々な声を聞くうちに会得した特殊能力だった。

 俺と渡辺は、自動ドアから浅村高校の校舎に入った。

「なんだっけ?お前の好きなASMR配信者。お前、アイツ一筋だもんな」

  校舎に入ると渡辺の脳天気な声が、反響した。

「アイツじゃなくて、星霜 冷な」

「そうそう星霜 冷な。俺にはどーも理解できねぇなあ、なんで顔もわからないやつのことを好きになれるんだ?星霜 冷も声はいいかもしんねぇけどよ、顔はとんだドブスかもしんないだろ?」

「失礼だなお前。星霜 冷がそんなブスなわけないだろ。俺は絶対声感を持ってるが、声で何となく顔が分かる能力だって持ってるんだ」

「は?ほんとかよ」

「ごめん、それは嘘だ。まぁブスでもなんでもいいよ。俺は声フェチなんだから」

「やっぱり変わってんなぁお前」

「変わってて結構、じゃあ俺はあそこのクラスだから」

 俺は仮に入学式で割り当てられたクラスを指さしてそう言った。

「おう、またな。同じクラスになれるといいな」

 渡辺とはそこで別れた。

 そして、クラスで少し待機したあと、長ったらしいどうでもいい入学式は始まった。生徒入場以外は寝て過ごし、クラス割り当ての時間になった。

 俺のクラスは、A組だった。

 教壇には背の高い女が立っていた。担任は、若い女教師で、おそらく見た目的に20代後半から30代前半だ。

「おー、並木!同じクラスになれたな!」

   渡辺は元気にそう言った。

 俺と渡辺は同じクラスになれた。

「やったな」

「おう、でもそれ以上にグッドニュースがあるぜ」

「なんだよ?」

「あの、銀髪ハーフ美少女と同じクラスだぞ!おい!」

「あ、ほんとだ」

 あの銀髪美少女は、廊下側の後ろから二番目の席に座っていた。

「やべぇよなぁ、誰も近づかないぜ?てか近づけねぇよなぁあれは」

「なんでだ?」

「なんでって、あのオーラだよ。人を寄せつけないクールで、氷のトゲのような。俺みたいなやつが話しかけたら刺されそうじゃんか。みんなそうなんだよ」

「ふーーん、、まぁー確かにな。人を寄せつけないオーラは感じるな」

「しかも俺の前の席だぜ?やべえだろ?俺怖くて席に座れねぇよ」

「お前はまったく。あの子と仲良くなりたいんじゃねぇのか?」

「なりたいけどよぉぉ!」

「はーいみんな、盛り上がっているところ悪いけど、一旦静かにー!着席してー」

 担任は何かの準備を終えたみたいで、号令をした。

 俺達はぞろぞろと座っていった。渡辺も結局渋々と座っていた。

「このクラスに揃ったみんながこれから一年間仲良くする相手だから早く顔を覚えられるように、名簿呼んでくねー」

 そう言って担任は名前を呼んでいく。俺はまずアンタの名前を名乗った方がいいのではと思ったが。

 まぁ、配られたクラスの名簿と席の位置が載っている紙には担任の名前は書いてあったからいいか。

 担任の名は、佐々木 囁子しょうこと書かれている。珍しい漢字を使っているなと思った。

 渡辺の前の席が、あの銀髪美少女だったよな。確か名前は、、

 雪本 雪菜せつなか。なんかイメージ通りの名前だな。冷たそうだ。

「並木 充くーん。並木くーん、並木!」

「は、はい!」

「もう、入学早々なにか考え事でもしてたの?困ったことがあったら先生相談乗るからな?」

 クスクスと乾いた笑いが少し起こった。

 ついついやってしまった。もう俺の名前が呼ばれる番になっていたとは。

 俺の名前が呼ばれ、どんどんと引き続き名前は呼ばれて言った。

 そして、雪本 雪菜の順番になった

「雪本 雪菜さーん」

「はい」

 雪本 雪菜がそう返事をした瞬間、クラスの全員が、に驚き、ギョッと雪本 雪菜の方向を向いた。

「え、えぇっと、渡辺 鍋太くーん」

「はっ、はぁい!」

 最後の順番の渡辺は、雪本 雪菜のに驚くように、声が裏返って返事をした。

雪本 雪菜のは、なんとも表現しがたい低い声で、男の子よりも男の子らしいあの見た目からは想像できないえげつない声だったのだ。

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