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11話 モヤモヤの正体とは……?
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今日も、学校が始まった。
時は、5月後半。
既に、もうクラスでは彼氏彼女などの色恋沙汰を話している奴らがいて、もうそういう関係になっている。
早いな。まだ友達すらも出来てない奴もいるだろうに。
そういえば雪本はどうなんだろう。雪本はクラスで他の誰かと親しくしているところは見たことがない。しかしながら、学校以外で、例えば配信者の知り合いでとかであるかもしれない。もし、今恋人がいないとしても、あのルックスだ。恋人がいた経験はあるかもしれない。
俺は放課後、そのことを聞いてみることにした。
「雪本、恋人いる?」
「え!?な、なんですか?急に」
雪本は、驚いた声を上げてそう言った。
「いや、クラスでそういう奴ら増えたなって」
「まぁ、もうすぐ2ヶ月経ちますからね。入学式から」
「2ヶ月って言っても、まだ2ヶ月じゃん」
「私もそう思いますけど、多分ファッション感覚なのでしょう」
「ファッションねえ」
「正直、高校生の恋愛なんて、遊び感覚か優越感を満たすためにすぎないんですよ」
「まぁ一理あるな」
俺は雪本の意見にそう同意した。同意したのに何故か雪本は残念そう見える表情をするのだった。
「ところでお前さ、好きな人いる?」
「えっ……?」
そう俺が雪本に聞くと、彼女は、一瞬だけ目を見開いて、俺と目が合った。その後彼女は目を逸らし、顔が赤くなっているように見えた。
「その反応、いるの?」
「え、えっと、、ま、まぁ」
「へぇ、意外だな。誰とも関わらないお前にそんな相手がいるなんて」
もしかして、俺の事か好きなんじゃないか?そんな軽率な発想が浮かんでくる。
でもこれまでの行動から考えられる雪本の俺への好感度は低いこと間違いないので有り得ないだろう。
「それは学校でいるの?それともそれ以外で?」
「学校ですね」
「ふぅーん、俺?」
「んっ!?ち、違います!」
「そんなに即答せんでも……」
いくら俺への好感度が低いからってその言葉に0.1秒で返す反応速度は俺でもさすがにヘコむ。
「まぁ、上手くいくといいな。それにしてもお前は付き合ったことあるのか?」
「今までですか?無いですよ。あなたは?」
「俺も無いな。めんどくせぇしそういうの」
「そうですか……」
「渡辺にももうそろそろ、声優や配信者から離れろって言われてるんだけどな。俺は2次元オタクに向いてるのかもしれねえ」
「並木くんはただ、声フェチなだけでしょう」
「まぁ、それもある」
「好きな声優とかいるんですか?ASMR配信者でもいいですけど。星霜 冷以外で」
「うーん、星霜 冷以外か」
俺は少し考えてから口を開いた。
「んー、まぁ、声優なら花園沙耶香だし、ASMR配信者なら、星霜 冷の他だったら、水蒼 羅々かな」
「なるほど……」
雪本は、少し考え込むようにそう言った。
「一応、私、水蒼 羅々と通話したことあります」
「まじか!すげぇな!!」
俺は興奮してそう言った。
「その、、星霜 冷と水蒼 羅々どっちが好きなんですか?」
雪本は何故か怪訝な顔をしてそう聞いてくる。
「うーん、どっちも違った良さがあるから比べられねえし、甲乙つけがたいくらいどっちも好きなんだが、思い出補正で、星霜 冷かな」
「そ、そうですか」
「雪本は好きな声優とか憧れの人とかいたの?」
「うーん、私は正直あんまり詳しくは無いですね。憧れの人もいません。でも、やっぱり花園沙耶香さんとかはすごいって思いますけど」
俺はやはり、花園沙耶香か。と思い、深く頷いた。まぁ、人気声優ランキングTOP10には毎回入ってるし、間違いは無い声優だ。
「まぁ、あの人は歴も長いし、色んな声出せるからな」
「それだけじゃありません。ちゃんと自分の声を持ってるんです」
「自分の声?」
「はい。自分の声を操ると言うんでしょうか。地声に近い声で無理なく、色んな声を操れるってことです」
自分の声を操るか。確かに色んな声を出しているように見えて、彼女の声は一般人でも聞き分けられるほど、特徴的であり、彼女の色があり、それでいて様々なキャラの声を使い分けることが出来ていた。
そう考えていると、チャイムが鳴った。5時のチャイムだ。
「なるほどな、、お、もうこんな時間か」
「そろそろ帰りますか」
「ああ、じゃあまた……」
俺はそう言って、帰ろうとした瞬間、急に綺麗な雪の結晶のような銀髪が、俺の視界を覆った。
「並木くん、またあした……」
「お、おう」
雪本は、急に俺に体を近づけて、そう、耳元で囁いた。
俺は、彼女の“急接近”に、ただたじろぐことしかできなかった。
心の中に、小さなモヤモヤが現れる感覚を俺はそこで初めて覚えていた。
<雪本 雪菜サイド>
「『ところでお前さ、好きな人いる?』ってなんなんだあああああっ!!」
私は家に帰って、自室に入り、開口一番そう叫んだ。
「ちょっとは、、意識してくれてると思ったのに、こんな質問を、あんな軽い態度でするなんてまだ脈ナシって事じゃないですか……!」
「でも、、まだ諦めない……!」
そう言われた時は少し落ち込んでしまったけれど、私はその後立ち直って、彼の耳元でそして肩に触れて、挨拶できた。
私が、男の人とあんなに近く触れ合う機会なんて今までに一度もない。あの時は緊張して、顔も赤くなっていただろうけど、、勇気をだしてやった。そんな自分を褒めたいと思った。
ただ、彼に効いているかは分からない。このまま<ASMRラブラブピュアハート告白大作戦>を続けるとしても、これだけじゃ多分、並木くんには届かない。
もっと、違う攻め方も、自分で考えないといけない。私は、真っ向からぶつかる攻めじゃなくて、少し遠回りで、逆に引いてみるくらいの攻めもやってみようと思った。
<並木 充サイド>
翌日の放課後、今日も俺は、雪本に屋上でASMRの事やらを話そうと思い、RISEをした。
『今日も聞きたいことあるから、屋上集合で』
『ごめんなさい。今日は用事あるから』
珍しいな。雪本が用事なんて。
『ああ分かった。ぼっちの雪本にしては珍しいな』
『そうですね』
それだけだった。いつもなら、もっと怒ったように返信をしてくる。
何だかモヤモヤとした。
それから俺は、雪本とは一週間くらい話さなかった。RISEのやり取りさえ止まっていた。俺はついに避けられたのだろうか。
そんなふうに思った頃の放課後、雪本からRISEが来た。
『久しぶりに屋上で話しませんか?』
俺は、そのRISEが来て、少し嬉しく思った。俺は、もしかして、雪本と話すことを内心とても楽しみにしているのかもしれない。
屋上へ行くと、雪本はもうそこにいた。
「久しぶり。なんか忙しかったのか?」
「久しぶり。並木くん。ちょっといろいろね。ごめんね!」
雪本は、普通のJKらしい顔の前で手を合わせる素振りをした。それは雪本らしからぬ素振りだ。
「その声真似、花園沙耶香じゃん!」
「はぁ~バレちゃったか。さすがは並木くんだね。それにしてもどう?このモノマネも、上手くいってる?」
「す、すげぇ!今度は水蒼 羅々だ!」
気だるそうに少し低音のキレのある声で雪本はそう言った。まさに、この声は水蒼 羅々の声そのものだった。
「ずっと誘いを理っていた償いとして、モノマネしました。その、喜んで頂けましたか?」
雪本は地声に戻してそう言った。
「あぁ、、ていうか雪本、モノマネこんな上手かったんだな。星霜 冷の時はどの役でも声質はあまり変わらなかったから気づかなかったよ」
「ふふ、これくらい私にだってできますよ」
そうドヤ顔をする雪本。
「それで、一週間何してたんだ?」
「別に何もしてませんよ」
「じゃあなんで、1日くらい会ってくれてもいいじゃないか。もしかして、俺の事普通に避けてた?」
「さぁどうでしょう。心のうちに聞いてください。私があなたと会わなかったのは、鈍感な誰かさんのせいですが」
雪本はそっけなく、俺を責めるかのようなトーンで曖昧に濁しながらそう言う。
またモヤモヤが溜まっていく。
「ど、どういうことだよ!」
「答えはもう、自分の中にあるんじゃないですか?」
雪本はそう言って微笑した。
「じゃあ、今日も声優について話しましょう」
そして、雪本は人が変わるように切りかえて明るいトーンでそう言った。
「お、おう」
俺は、ただただモヤモヤとした気持ちだけが残り、これはなんなんだろうかと考えた。答えはもう、自分の中にある。そう言われても、考えても俺には分からない。
ただ、ひとつ言えることは……
「どうしましたか?」
「いや?それにしても、最近の声優はさぁ……」
一週間ぶりに、雪本と話しながら見る、屋上の夕日はとても綺麗だということだ。
その夕日を見ると、俺はそのモヤモヤが少し薄れるような感覚を覚えるのだった。
時は、5月後半。
既に、もうクラスでは彼氏彼女などの色恋沙汰を話している奴らがいて、もうそういう関係になっている。
早いな。まだ友達すらも出来てない奴もいるだろうに。
そういえば雪本はどうなんだろう。雪本はクラスで他の誰かと親しくしているところは見たことがない。しかしながら、学校以外で、例えば配信者の知り合いでとかであるかもしれない。もし、今恋人がいないとしても、あのルックスだ。恋人がいた経験はあるかもしれない。
俺は放課後、そのことを聞いてみることにした。
「雪本、恋人いる?」
「え!?な、なんですか?急に」
雪本は、驚いた声を上げてそう言った。
「いや、クラスでそういう奴ら増えたなって」
「まぁ、もうすぐ2ヶ月経ちますからね。入学式から」
「2ヶ月って言っても、まだ2ヶ月じゃん」
「私もそう思いますけど、多分ファッション感覚なのでしょう」
「ファッションねえ」
「正直、高校生の恋愛なんて、遊び感覚か優越感を満たすためにすぎないんですよ」
「まぁ一理あるな」
俺は雪本の意見にそう同意した。同意したのに何故か雪本は残念そう見える表情をするのだった。
「ところでお前さ、好きな人いる?」
「えっ……?」
そう俺が雪本に聞くと、彼女は、一瞬だけ目を見開いて、俺と目が合った。その後彼女は目を逸らし、顔が赤くなっているように見えた。
「その反応、いるの?」
「え、えっと、、ま、まぁ」
「へぇ、意外だな。誰とも関わらないお前にそんな相手がいるなんて」
もしかして、俺の事か好きなんじゃないか?そんな軽率な発想が浮かんでくる。
でもこれまでの行動から考えられる雪本の俺への好感度は低いこと間違いないので有り得ないだろう。
「それは学校でいるの?それともそれ以外で?」
「学校ですね」
「ふぅーん、俺?」
「んっ!?ち、違います!」
「そんなに即答せんでも……」
いくら俺への好感度が低いからってその言葉に0.1秒で返す反応速度は俺でもさすがにヘコむ。
「まぁ、上手くいくといいな。それにしてもお前は付き合ったことあるのか?」
「今までですか?無いですよ。あなたは?」
「俺も無いな。めんどくせぇしそういうの」
「そうですか……」
「渡辺にももうそろそろ、声優や配信者から離れろって言われてるんだけどな。俺は2次元オタクに向いてるのかもしれねえ」
「並木くんはただ、声フェチなだけでしょう」
「まぁ、それもある」
「好きな声優とかいるんですか?ASMR配信者でもいいですけど。星霜 冷以外で」
「うーん、星霜 冷以外か」
俺は少し考えてから口を開いた。
「んー、まぁ、声優なら花園沙耶香だし、ASMR配信者なら、星霜 冷の他だったら、水蒼 羅々かな」
「なるほど……」
雪本は、少し考え込むようにそう言った。
「一応、私、水蒼 羅々と通話したことあります」
「まじか!すげぇな!!」
俺は興奮してそう言った。
「その、、星霜 冷と水蒼 羅々どっちが好きなんですか?」
雪本は何故か怪訝な顔をしてそう聞いてくる。
「うーん、どっちも違った良さがあるから比べられねえし、甲乙つけがたいくらいどっちも好きなんだが、思い出補正で、星霜 冷かな」
「そ、そうですか」
「雪本は好きな声優とか憧れの人とかいたの?」
「うーん、私は正直あんまり詳しくは無いですね。憧れの人もいません。でも、やっぱり花園沙耶香さんとかはすごいって思いますけど」
俺はやはり、花園沙耶香か。と思い、深く頷いた。まぁ、人気声優ランキングTOP10には毎回入ってるし、間違いは無い声優だ。
「まぁ、あの人は歴も長いし、色んな声出せるからな」
「それだけじゃありません。ちゃんと自分の声を持ってるんです」
「自分の声?」
「はい。自分の声を操ると言うんでしょうか。地声に近い声で無理なく、色んな声を操れるってことです」
自分の声を操るか。確かに色んな声を出しているように見えて、彼女の声は一般人でも聞き分けられるほど、特徴的であり、彼女の色があり、それでいて様々なキャラの声を使い分けることが出来ていた。
そう考えていると、チャイムが鳴った。5時のチャイムだ。
「なるほどな、、お、もうこんな時間か」
「そろそろ帰りますか」
「ああ、じゃあまた……」
俺はそう言って、帰ろうとした瞬間、急に綺麗な雪の結晶のような銀髪が、俺の視界を覆った。
「並木くん、またあした……」
「お、おう」
雪本は、急に俺に体を近づけて、そう、耳元で囁いた。
俺は、彼女の“急接近”に、ただたじろぐことしかできなかった。
心の中に、小さなモヤモヤが現れる感覚を俺はそこで初めて覚えていた。
<雪本 雪菜サイド>
「『ところでお前さ、好きな人いる?』ってなんなんだあああああっ!!」
私は家に帰って、自室に入り、開口一番そう叫んだ。
「ちょっとは、、意識してくれてると思ったのに、こんな質問を、あんな軽い態度でするなんてまだ脈ナシって事じゃないですか……!」
「でも、、まだ諦めない……!」
そう言われた時は少し落ち込んでしまったけれど、私はその後立ち直って、彼の耳元でそして肩に触れて、挨拶できた。
私が、男の人とあんなに近く触れ合う機会なんて今までに一度もない。あの時は緊張して、顔も赤くなっていただろうけど、、勇気をだしてやった。そんな自分を褒めたいと思った。
ただ、彼に効いているかは分からない。このまま<ASMRラブラブピュアハート告白大作戦>を続けるとしても、これだけじゃ多分、並木くんには届かない。
もっと、違う攻め方も、自分で考えないといけない。私は、真っ向からぶつかる攻めじゃなくて、少し遠回りで、逆に引いてみるくらいの攻めもやってみようと思った。
<並木 充サイド>
翌日の放課後、今日も俺は、雪本に屋上でASMRの事やらを話そうと思い、RISEをした。
『今日も聞きたいことあるから、屋上集合で』
『ごめんなさい。今日は用事あるから』
珍しいな。雪本が用事なんて。
『ああ分かった。ぼっちの雪本にしては珍しいな』
『そうですね』
それだけだった。いつもなら、もっと怒ったように返信をしてくる。
何だかモヤモヤとした。
それから俺は、雪本とは一週間くらい話さなかった。RISEのやり取りさえ止まっていた。俺はついに避けられたのだろうか。
そんなふうに思った頃の放課後、雪本からRISEが来た。
『久しぶりに屋上で話しませんか?』
俺は、そのRISEが来て、少し嬉しく思った。俺は、もしかして、雪本と話すことを内心とても楽しみにしているのかもしれない。
屋上へ行くと、雪本はもうそこにいた。
「久しぶり。なんか忙しかったのか?」
「久しぶり。並木くん。ちょっといろいろね。ごめんね!」
雪本は、普通のJKらしい顔の前で手を合わせる素振りをした。それは雪本らしからぬ素振りだ。
「その声真似、花園沙耶香じゃん!」
「はぁ~バレちゃったか。さすがは並木くんだね。それにしてもどう?このモノマネも、上手くいってる?」
「す、すげぇ!今度は水蒼 羅々だ!」
気だるそうに少し低音のキレのある声で雪本はそう言った。まさに、この声は水蒼 羅々の声そのものだった。
「ずっと誘いを理っていた償いとして、モノマネしました。その、喜んで頂けましたか?」
雪本は地声に戻してそう言った。
「あぁ、、ていうか雪本、モノマネこんな上手かったんだな。星霜 冷の時はどの役でも声質はあまり変わらなかったから気づかなかったよ」
「ふふ、これくらい私にだってできますよ」
そうドヤ顔をする雪本。
「それで、一週間何してたんだ?」
「別に何もしてませんよ」
「じゃあなんで、1日くらい会ってくれてもいいじゃないか。もしかして、俺の事普通に避けてた?」
「さぁどうでしょう。心のうちに聞いてください。私があなたと会わなかったのは、鈍感な誰かさんのせいですが」
雪本はそっけなく、俺を責めるかのようなトーンで曖昧に濁しながらそう言う。
またモヤモヤが溜まっていく。
「ど、どういうことだよ!」
「答えはもう、自分の中にあるんじゃないですか?」
雪本はそう言って微笑した。
「じゃあ、今日も声優について話しましょう」
そして、雪本は人が変わるように切りかえて明るいトーンでそう言った。
「お、おう」
俺は、ただただモヤモヤとした気持ちだけが残り、これはなんなんだろうかと考えた。答えはもう、自分の中にある。そう言われても、考えても俺には分からない。
ただ、ひとつ言えることは……
「どうしましたか?」
「いや?それにしても、最近の声優はさぁ……」
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