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第9話 南高校文化祭 メイド喫茶!

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文化祭当日、僕は、メイドになっていた!

今日は、僕が通う進学校、南高校の文化祭、二年C組は、男女逆転執事メイドカフェをやることになっていた。その名の通り、男子がメイドになり、女子が執事となる。

「ちょっと男子ー、前半は男子がメイド喫茶運営するんだから早く準備してよー」

文化祭の午前中は、男子の担当で、午後からが女子の担当となっていた。

僕は早速、メイド服を着て、仕事の準備に取り掛かる。他の生徒も準備も始める中、一部の生徒は違った。

進学校でも、ごく一部いる頭のいい陽キャ達。そいつらは、準備を始めていなくて、まだメイド服すらを着ていないやつもいた。

「はぁ、、」

自然とため息がひとつ、僕の口から吐き出される。

きっとこれまた、仕事を押し付けられるパターンなんだろうなぁ。

午前9時半、文化祭が始まり、メイド喫茶が開店した。

僕含め陽キャじゃない真面目生徒たちは、真面目に働きお客さんを向かい入れた。

「お帰りなさいませ、ご主人様」

そう僕が挨拶すると、そのお客さんの先頭に、なんと、古賀さんはいた!

「こ、古賀さん!?」

「よっ、渡くんっ。メイド服、似合ってんじゃん」

一緒に挨拶したメイドの何人かが、ザワつく。が、僕は気にしない。古賀さんの他に二人のギャルもいた。恐らく古賀さんのギャル友だろう。何やら、古賀さんが小声で、ギャル友に僕を紹介してる風だった。

僕は古賀さん達を席へと案内した。

「へぇー、結構外装こだわってんねぇ~」

「はい、文化祭中、完璧を求めていたので」

「ふはは、渡くんキャラ演じてて面白い」

彼女はそう言って笑った。古賀さんに笑われるのは悪い気分はしないけど、さすがにちょっと恥ずかしすぎる。

「ご注文何にしますか?」

僕は気を取り直して、三人に注文を伺った。

「うーん、ウチは、この、ラブラブ大ハートジュースっていう物騒なものを!」

「じゃあ、アタシは、リア充大爆発ビッグパンケーキを!」

「じゃあ、あーしはこれかなぁー、熱烈!アツアツ!赤い恋の糸オムレツってやつ」

「かしこまりました!すぐ準備致します」

と言って、僕は調理場へ向かった。

僕が接客したのに、なぜ調理まで。アイツらまだサボっててソシャゲしてる、、はぁ、、これだから陽キャは。と内心思いつつ何も言えない。弱い立場の陰キャは、陽キャを咎《とが》めることが出来ない。こういう窮屈な生き方をしていかないといけないのだ。

とその時だった。

「ねぇ、君たちさ、なんでサボってんの?」

古賀さんは、サボる陽キャ連中に食ってかかっていた。

「あぁん?」

「他の生徒たちが頑張ってるのに、なんで働いてないのって言ってるの」

「別に客の君達には関係ないだろ?」

「それが関係あるんだよ」

「はぁ?なんのだよ...」

「ウチの渡くんに、接客も調理もさせて、君たちは何もしないのかって言ってんの。分かる?」

と言って、ものすごい形相《ぎょうそう》で凄む。その顔は見るからに、怒っているのが分かり、声のトーンもとても怖い。

「ひい、、、ってか渡?誰だそいつ」

「渡くんは私の彼氏だよ!覚えとけっ!分かったら働く!!!さもなければ、どうなるか分かってる!?」

古賀さんは僕が初めて見るような怖い顔で脅しを掛けた。とてつもないオーラを放っていた。

「アタシらの諒花怒らせると怖いんだぞー!」

「空手・柔道・キックボクシングなんでもいける諒花だからね」

それに追い打ちをかけるように、ギャル友二人も口を開く。

「ひいいいいいっ!」

「はい、働きます働きます」

古賀さんの説教に、陽キャたちは情けない悲鳴を上げて、慌ててメイド服に着替えたり、仕事に就いたりした。

凄い。あのいつも調子に乗ってるクソ野郎の陽キャたちを木《こ》っ端《ぱ》微塵《みじん》にし、退《しりぞ》けた。流石は最強ギャル古賀さんとその仲間達。

陽キャ連中が仕事に就いたのも効果があって、料理は思った以上に早く完成した。


「お待たせ致しました、こちらがラブラブ大ハートジュースと、リア充大爆発ビッグパンケーキ、熱烈!アツアツ!運命の赤い糸オムレツです!」

「おぉー美味しそう!」

古賀さんとギャル友からそう言葉が溢れる。

「えぇと...それでは料理がもっと美味しくなるために、愛情を込めたいと思います。 美味しくなーれ美味しくなーれ...萌え萌えきゅ」

僕と周りの陰キャメイドは、テンション低めにそうセリフを呟く。そのセリフはギャル友の声によって打ち切られた。

「ダメだね。それじゃ。中森くんだっけ?もっとこう、愛情込めて、美味しくなーれ♡萌え萌えきゅ~ん♡♡ってやらなきゃ!」

「ほーら、中森君の隣の君も、なんて名前?はい、山田君もこうやって、あーしを見習って萌え萌えきゅん♡ってやんな」

古賀さんのギャル友おふたりは、なかなかに癖があって手強いなぁ。見ると、一人はノリノリパリピ系ギャル、もう一人はダウナー系ギャルといったところか。

「美味しくなーれ、美味しくなーれ...」

「だめだめ!まだ全然気持ちが籠《こも》ってないじゃん!諒花、見本見せてやって!」

「えっウチが!?」

ざっと、古賀さんに全員の視線が集まる。

「ちょっ、そんな見られると恥ずかしいな」

「なーに、恥ずかしがってんの諒花~早くやりなよォ~」

「あーしも、諒花の可愛いとこみたいなぁ~?」

僕は、古賀さんが本当に萌え萌えきゅんをやるのか。それは可愛どころの話じゃないぞ。僕は急にドキドキしてきた。心臓が早鐘状態の一歩手前まで来ていた。

「おーい、おめえら、いつまでその席で接客してんだよ、早くこっちも手伝え」

しかし、古賀さん万事休す。僕達は、陽キャに呼ばれてしまった。
くそう、陽キャめ、せっかく古賀さんの萌え萌えきゅんを見れるところだったのに!

僕は、古賀さんに背を向け、踵《きびす》を返し、陽キャの手伝いへ向かうのだった。

その時、背中からこんな会話が聞こえた。

「諒花、なんでやらなかったの?」

とダウナー系ギャルの声。

「こ、こういうの慣れてないからだよ!」

「えぇ~?中森君に見られたくなかっただけじゃなくて?」
茶化すように、パリピ系ギャルは古賀さんに聞いた。

「ち、違うから。もう、やめてよ二人とも」─────「べ、別に他の誰でもやるのはずいし...渡くんだからってことは無いから!た、たぶんそう、だよね...」




なお、仕事が終わったあと、僕はメイド姿で古賀さんたちと写真撮影をした。
「はーい行くよー!はいチーズ」
古賀さんがなっがい自撮り棒を構えて、僕は女子三人と一緒に写真を撮る。メイド服姿ってのがあれだけど、こんなシュチュエーション、古賀さんと出会うまでは想像もつかなかっただろうな。
文化祭の準備含め、文化祭の仕事も煩《わずら》わしいことはあったけど、古賀さんと出逢えたおかげでいい思い出になった気がする。僕は、その写真を見て、そう思うのだった。



〈前回の美術館デート終了後、古賀家 自室にて〉[古賀 諒花 視点]

美術館での渡くんとの初デート楽しかったな。色々と話が出来たし。

ウチ結構、変わり者ってよく言われるけど結構共通点多かったな...

あっ、渡くんからRISE来てる。

『突然だけど、古賀さん嫌いな食べ物ってある?』

「ぶっ、何コレ、どういうこと?」

渡くんの思いがけない一言に、思わず、独り言が出る。

『いや、今日互いに共通点多かったから、嫌いなものももしかしたら同じかもって』

なるほどね。

確かに今までこんな共通点多い人と会ったことは無かったから、話も合いそうだし嬉しい。

そう思う反面、必ずしも全て同じなのは有り得ないし、もっと知らない一面とか新しい価値観とかそういった違いも付き合いの中で楽しめる関係がいいなと私は思う。

『確かに共通点が多いのは話しやすいしいいことだけど、ウチは違いも楽しみたいかな』

同じ価値観も、そのような違いも彼となら楽しめるんじゃないか。そう思えた一日だった。
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