Lv.1のチートな二人

Amane

文字の大きさ
5 / 23
episode1

仲間

しおりを挟む

▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼

「私ら、友達でしょ。」

そんなありきたりな言葉に、感動した事があった。

誰も自分を知らない所。そんな思いから、幸香とも離れて寮のある高校を選んだ。
オタクな事がバレないように、比較的大人しく無難に過ごした。
誰とも深く関わらず、毎日適当に過ごして、退屈だった。でも、私は信じてた。
いつか幸香のように、大切な親友が出来るはずだと。アニメの見過ぎと言われれば、そうかもしれないのだが。
この頃の私は、信じていれば必ず報われるのだと、そう思っていたのだ。

「ねぇ、小鳥遊さんって、もしかして“マジカル☆ネネカ”好きなの?」

放課後、日誌を付けていた私に話しかけたのは、春日茉莉という、同じクラスの女子だった。
彼女はクラスの中心にいるような、明るく元気な性格。大人しく生きてきた自分とは正反対の人間だった。
当時ハマっていたマジカル☆ネネカのボールペンを使っていた私。グッズとはいえ、普通に売っていても可愛いデザインのボールペンなので、ほとんどの人がキャラクターグッズだと気が付かない。だから選んだのに、まさかそれが分かる人がいるとは。

「…貰い物。」
「へぇ、じゃあそのネックレスは?ネネカのヒーロー、ユウキのネックレスと同じでしょ?」
「…よく知ってるね。」
「私も好きなんだ。」

マニアじゃないと分からないようなグッズまで、言い当てられてしまう。予想もしていなかった言葉に、思っていた会話にならなかった。
ニッコリ笑顔を向けられると、言葉に詰まった。信じていた存在が、急に現れたのだ。
そう。彼女もまた、アニメ好きを隠している仲間だった。

「よかったらこの後アニメルトに行かない?欲しい漫画の発売日なんだー。」
「でも、私なんかとで良いの…?」
「なんで?私ら、友達でしょ。」

その日をきっかけに、私は茉莉とよく話すようになった。
部屋で一緒にゲームしたり、夜通しカラオケに行って寮長に怒られたりもした。
退屈な毎日が、楽しくなった瞬間だった。
ほらね、やっぱり人を信じると良い事あるんだよ。そうみんなに言いふらしたかった。
だけど、そんな楽しい日々も長くは続かなかった。

「ねぇ茉莉、あんた最近小鳥遊とよく連んでるよね?仲良かったっけ?」

昼休み、たまたま茉莉といつものメンバーが会話している所に出会した。出会したと言っても、教室には入らず、廊下でその会話を聞いてしまったのだが。

「え?そんな訳ないじゃん。だってアイツ、オタクだよ?」
「嘘、マジ?」
「マジマジ。部屋なんかゲームと漫画で汚いし、私服も超ダサい。アイツの使ってるボールペン、全部キャラグッズなんだよ。」
「うっそ、ちょっと引くわ。」

今思えば、彼女がオタクな事は自分が一番知っていた。
だって、言わなきゃ分からないようなキャラクターのグッズが分かったんだから。だって、カラオケで夜通し出来るくらいに歌を知っているんだから。だって、沢山同じゲームをしたんだから。
だけど、今更彼女の本心に気付いたって、もう遅い。あの時失った友情は、もう戻らない。

お互いがお互いの事を喋らないのが条件だった。だから、茉莉が普段友達とどんな会話をしているのか知らなかった。
普段の茉莉は、私の事をあんな風に貶すんだ。そう思った瞬間、怖くて一緒に居られなくなった。
どの言葉を信じたら良いのか、分からない。

私は翌日から不登校になり、そのまま茉莉とは顔を合わす事なく中退してしまった。

△▲△▲△▲△▲△▲

あの時あの子の言葉を信じなきゃ良かったと、何度も後悔した。だけど、友達にならなきゃ良かったとは思わない。
結果、幸香の大切さを再確認が出来たのだから。
ただもう少し、お互いがお互いの気持ちを理解し合えていたら、今の未来も変わっていたのかもしれない。

「ー…ねぇ、ゼロ。」

目の前にティアの顔が現れて、驚いて我に返った。
今になってそんな昔の事を思い出すなんて、思いもしなかった。心のどこかで、仲間なんて要らないと感じているのかもしれない。
信じられない仲間を作って後悔するくらいなら、普通の職に就いた方が良いのかもしれないと。

「大丈夫?」
「あぁ、平気。」

視界に三人の男女が映る。今日の授業は、パーティを組んで魔物狩り。
クラス中の連中はほとんど、俺達とパーティを組む事を反対した。
しかしリアンだけは、今でも変わりなく接してくれ、なんとパーティにも誘ってくれたのだ。

「せっかくオレ達がパーティに誘ってるのに上の空なんて、良い御身分だね。」

リアン・ミル・インフィニート、赤い髪と瞳が印象的なイケメンだ。ぱっと見の印象は日本にもよくいるチャラ男。
しかし以外にもこのクラスのトップ5で、実力はかなりあるようだ。

「アタシらのジャマだけはしないでよ。」
「シロ達の成績落としたら許さないんだから。」

[クロエ・オン・ターナー 17歳
魔人族 Lv.55 エスポワール学園 2年 Sクラス
HP/20041  MP/24023]

[シロナ・ユキ・ユニティア 17歳
擬人族 Lv.53 エスポワール学園 2年 Sクラス
HP/25232  MP/13219]

紺色ポニーテールの角娘クロエと、桃色ショートの猫耳娘シロナ。オセロのような名前だが、見た目は全く関係がない。
彼女達は1年の後半から、リアンとパーティを組んでいた二人。リアンの情けでパーティに入れてもらう事になった俺達だが、どうやら彼女達には歓迎されていないようだ。
それもそのはず。Sクラスの授業は課題の成功具合で成績が決まる。この世界における最弱の俺達は、きっと足手纏い以外にはならないだろう。

「大丈夫だって。この子達、良いスキル持ってるから。」

嬉しそうにリアンが語ると、クロエ達だけでなく、近くにいた生徒達はみんな驚いた顔を向ける。何故か敵視しているような鋭い眼光だ。
クロエは俺の前の机をバンッと叩いて、身を乗り出す。

「アンタ達、ダンジョンに行ったの?そのレベルで?どうやって帰って来たの?」

この世界にはいくつかのダンジョンが存在し、攻略した報酬としてスキルが手に入るようだ。途中で引き返すことは出来るが、ダンジョン攻略はそう簡単ではない。

「Sクラスではスキル持ちはオレを含めて5人しかいないんだよ。それだけ、スキルは貴重って事。」

ダンジョン一つ攻略につき一つのスキルなので、三つのスキルを持っているリアンは3つダンジョンを攻略した事になる。
俺達はスキルを披露した訳ではないが、辺境の地で育ちLv.1のままこの王都まで辿り着いた。一般的に有り得ないその状況を作り出したのが、スキルなのではないかとリアンが予想したのだ。
この世界で生まれ育った住人達に、違う世界から転生した時に貰ったスキルだと言っても信じてもらえそうにもない。ここは話を合わせた方が得策だろう。

「スキルの話はまた後でしましょう。今は色々教えてほしいわ。」

気を利かせたティアの提案に、5人は移動を開始した。




.
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...