Lv.1のチートな二人

Amane

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episode2

親友

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「鬼化。」
「!!」

そう呟いた瞬間、ロンの体が変化し始めた。ムキムキと体が大きくなり、頭に魔人族とは違う二本の真っ直ぐな角が生え、目が充血で赤く染まる。
鬼。日本の妖怪と考えられている、伝説上の存在。

「うそ…アイツ、鬼人だったの?」

ロンはステータス上、人間族になっている。俺の知っている種族以外にも、存在するのだろうか。

「他種族との間に生まれた子供の事を、忌子と呼ぶそうよ。鬼人はたしか、人間族と魔人族の子供。」

昨日の夜、ティアに頼まれて説明書を貸していた。それに、この世界の常識について書いてあった。適当にしか見ていない俺と違って、ティアはちゃんと読んでいたのだろう。

「災厄をもたらすとされていて、他種族との恋愛は禁止されてるんだって。」

その昔、人間族と擬人族との間に子供が生まれ、その子供は強大な力を制御する事が出来ずに暴走し、世界を脅かした。
それを知ったアナスタシアの王が他種族との恋愛を禁止したそうだ。

世界を作った神が人間という事もあり、人間族は最も弱く、最も強い一族として、この世界に存在している。
犬や猫等の獣は擬人族。二足歩行のトカゲやドラゴンは魔人族。エルフや天使は羽人族と、他三種族は沢山存在するが、人間族には人間しか存在しない。
それは、力を持つ器を持っていないか、力があり過ぎるのが原因だという。
ロンは人間族の血が濃いため、“人間族”という表記になるようだ。

「覚醒して暴走さえしなければ、その存在は認められるけど…その確率はかなり低いらしいわ。」

なるほど。だから禁止令が出されるのか。自我を持たない忌子は魔物と同じ。

「まさか、君がこんな賭けに出るなんてね。」

魔王にも匹敵するほどの力を持つ忌子。自我を保てばその力を全て味方に出来るが、暴走した場合自分の命さえ危うい。
自我を保つ確率が低いとされている中、忌子を仲間に置いているのには、何か理由があるのだろうか。

「お前を倒す。理由なんて、ただそれだけだ。」
「ここにいる全員の命を犠牲にしてまで、オレを倒す価値なんてないと思うけど。」
「戯言を…危険な芽は摘んでおく方が良い。お前が暴走でもしたら、それこそ世界の危機だからな。」
「……」

なんだか聞きたくない言葉だったな。リアンは鬼人より厄介な忌子なのか?
俺達に過去の話しを濁したのは、そんな理由があるからなのかもしれない。だけど、そんな理由で人を利用するのは解せない。

「関係ないよ…リアンくんはリアンくんなんだから…。」

あ、これは俺の出番はないかもな。


▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼

“後藤幸香は犯罪者の娘”。それが、私に貼られたレッテルだった。
私の家族は、幼い頃から母だけだった。
父が犯罪に手を染め捕まってしまい、私達は酷い嫌がらせを受けた。家の外壁は落書きされ、車や自転車はボロボロになり、歩いていると石を投げられた。
みんなが口を揃えて私を悪く言う中、一人だけ変わらず笑いかけてくれる人がいた。

「幸香ちゃん、おはよう。」

蒼空だった。小学生の高学年。初めて同じクラスになった蒼空は、なんの迷いもなく私に話しかけた。
その瞬間、どちらに投げたのか、小さな石が飛んで来て蒼空に当たった。
私は戸惑って、怖くなってその場を逃げてしまった。壁に隠れて、耳を塞いだ。聞きたくないのに、聞こえてくる会話。教室を離れたいのに、これ以上遠くに行けない足。

「話しかけない方がいいよ。だって、幸香ちゃんは…。」

私が何をしたって言うの?心の中でいつも叫んでる言葉が、現実では喉元で止まる。

「なんで?幸香ちゃんは何もしてないでしょ?」
「!!」

そのあと追いかけてくれた蒼空は、廊下を出てすぐの所に居た私に驚きながらも、笑いかけてくれた。

「私と仲良くしない方がいいよ。だって、蒼空ちゃんまでいじめられちゃう…。」
「うーん…でも、私は幸香ちゃんと仲良くなりたい。」

今思えば、蒼空はこの時から直感で動く人だった。遊びたいと思った人と遊びたい。適当な所もあったし、みんなの中心にいるような人は嫌いで、大人しい人とは仲良くしたい。
不思議と私達は気が合った。
誰もくっつきたがらない私の隣は、蒼空が埋めてくれた。
私にとって蒼空は、かけがえのない親友なのだ。

△▲△▲△▲△▲△▲

前世の俺は、主人公になりたい欲が高くて、見栄を張って周りから嫌われた。
だけど俺は、すぐに変わるお友達を作るより、ずっと一緒に居られる仲間が欲しかった。
彼女の父親の事は知っていた。初めて同じクラスになった時は怖かったけど、彼女も自分と同じ。笑うし、泣くし、怒るんだ。
虐めるのは違う。だって、彼女は何もしていなかったんだから。
助けた事に後悔もしていないし、最高の親友が出来たと思う。
きっと今の俺も、リアンに昔のティアを重ねているんだと思う。だから助けたい。
そしてティアも。

ブンッ

何かが横切る音がしたと思うと、リアンが超高速で壁に打ち付けられていた。

「かはっ…っ…」

その側には鬼化したロン。リアンが動く度に、ロンは先回りして叩く。その圧倒的な強さに、周りも唖然としていた。

「トップ5が無様だなぁ。」
「…」

その瞬間、頭に映像が流れる。リアンの記憶だろうか。古い建物の中で、傷付いた仲間がリアンを見下している。

ーリアン、お前をパーティから外す。ー
ーお前の優しさは俺達を弱くする。ー

《ユン…やっぱりダメだったよ…。オレだって、強くなりたかったけどさ…。》

これは…リアンの声か?

「…止めないのか、ティオ。死ぬぞ。」
「……。」

遠くでマークリフ先生とティオ先生の会話が聞こえた。
二人共、リアンの心配をしているのが分かる。そういえば、リアンはロゼ先生とも親しげだった。ユンという人物を含めて、勇者一行とは何か縁があるのかもしれない。

「ねぇ…どうして止めないの?」

あ、これはいよいよまずいな。

「リーダーが発言権を持ってるからだよ。」

ティアの機嫌にも気付けない二人は相変わらずの口調で答えた。
パーティのリーダーが降参と口にするまで、死ぬまで戦い続けるのが、このクラスの戦闘訓練。
実際に死んでしまった人達も今までには居たようだ。
ただし、現在のリーダーが死ねば、次にレベルの強い者に変わる。
そして次のリーダーが降参すれば、被害は最小に抑えられるという事だ。この場合、リアンが一言を「降参」と言えばいいだけの話なんだが…もしかして、リアンは死にたがってるのか?

「友達が死ぬのを待つあなた達の方が、鬼よりよっぽど非情ね。」
「なんですって?」

今までの空気が急に殺気に変わる。

「ティア、慎重に行けよ。」
「分かってる。」

仲間の殺気に気付かないフリをしながら、俺達はリアンの魔法陣を抜けた。
このパーティは腐ってる。自分が上がるために強い奴を仲間にして、そいつの経験を狙っている。だから“仲間意識”が生まれない。
強い奴は、その期待に応えるために必死なのに。

「さぁ、降参か?」
「…ぐっ…。」

ロンがリアンの首を締める力を強めた瞬間、地面が爆発し、砂埃で視界を塞ぐ。ティアの爆破魔法だ。
魔法に察したロンはリアンを離して引き下がった。崩れ落ちるリアンをティアが抱きしめた。

「っ…レティ、げほっ…。」
「喋らなくていいよ。」

ティアが優しくリアンの喉を撫でた。光の粒がリアンを優しく包み、傷を癒していく。あの二人、絵になるな。

「回復?Lv.1が魔法を使えるなんて、聞いた事がないぞ。」
「私も、生徒が授業で殺し合うなんて聞いた事がない。」

ティアが手を一振りし、砂埃を払った。目に見えないが、風の魔法だろう。クリアになった視界の端に、驚く他の生徒達の顔と先生達が見えた。
こんな目立ち方、するはずじゃなかったんだけどな。だけどアイツらの行動は、俺達を怒らせるのには充分だった。

転生して二日目。早くも俺達は、出来たばかりの仲間を失う所だった。
女神様…感謝の礼だというのなら、せめてもう少し俺達を平穏に暮らせるように配慮してもらいたかったです。
そう心で呟きながら、ティアの様子を眺めた。

水弾ウォーターバール。」
「!馬鹿なっ。武器も持たず、詠唱なしに魔法が使えるなど…っ?!」

ティアの手元から水が生み出され、丸い弾丸となってロンの元に飛んで行く。避けた先の壁が、それによって部分的に破壊された。
今の、技と外したんだな。ウォーターバールを投げる前に、視線がその後ろの壁に行っていた。

「怯むな、ロン!さっさと殺せば…っ?!」

気が付けば、先程リアンが使っていたような蔓がソラの足に巻き付いている。ティアがそこに先程の水を投げ、ロウソクの火を消すように息を吹きかけると、蔓はソラの口まで塞いで行く。
昨日まで、魔法すら知らなかった奴の技じゃないなぁ。まったく…俺がくたびれて寝ていた間に、どれだけ勉強したんだか。今後もティアには頭が上がらないな。

「私の親友の名で、非情な事を言わないで。」

ティアの目に涙が溢れた。こんな風に言って貰える親友がいるって、やっぱり良いもんだな。俺がして来た事は、間違ってなかったのかもしれない。

「Lv.1に俺が負ける訳ないだろう?」
閃光フラッシュ。」

ティアの指先から放たれた閃光が、ロンの角に直撃し破壊した。破壊したのが角だけなのは、ティアが力を弾いただけだから。全力でこの魔法を放てば、あんな奴一瞬で消えてしまうだろう。

ティアが魔法を使うたびに、ステータスがどんどん伸びていく。恐らく、ティアもそれを実感しているのだろう。
このままいけば、本当に神様にでもなってしまいそうだ。

「な、なんで…。」

角が折られた瞬間、煙を出しながら元の人間に戻って行くロン。これにはソラも驚いていた。いつの間にか蔓の拘束も解けていて、ティアを見つめて棒立ちになっている。

「まだ戦うの?」

ティアの手からピリッと電気が走る。

「…分かった…降参だ。」

溜め息を付いて、ソラがなんとか降参を口にした。
他人は殺せと言うくせに、自分は死にたくないと思う。やはりこのクラスは腐ってる。

「自分の欲のために、人の命を弄ばないで。」

そう冷ややかに言ったティアは、リアンを庇って立っている。すっかり傷も治っているリアンの背中に、また薄らと羽が見えた。




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