新月神話伝 第二世代

鴉月語り部

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後期

懐かしき天上の記憶、エンディミオンとセレーネ(宵の回)

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執筆日 2020/10/29
宵の記憶探しの旅、宵×神久夜(出てこない)
宵のお話

宵はウーヴェの曾孫であり本人、記憶探しの旅に出る
恋人神久夜は再従兄妹であり前世の妻

登場人物は新月神話伝第二世代(後期)
宵、鳳凰ユエイ、桜花、ウーヴェ、胡蝶舞

烏王創世記のネタありですが「ウーヴェと唯舞が夫婦、ゲオルグが8人の妻を得ようと唯舞と相討ち心中した」という事を把握していただければ読めるかな?


 鳳凰に呼び出され、ちびるかと思った

「唯舞ちゃんとは、やっぱり結婚するの?」
「は?唯舞とは、曾祖母のことでしょうか?
そんな初月じゃないんだからマニアックな……いってぇ!!」

桜花にぶたれた

「そう
そして君の奥さんだった女性
唯舞ちゃんは今は、君と同じく神を務めるあの子・十六夜の巫女だよ」

「……神久夜が?
七柱の十六夜神久夜が、わたくしの曾祖母だったのですか?」

「そう、そして君はボクの大好きなマブダチ・ウーヴェ
今度、唯舞ちゃん……神久夜ちゃんも連れてきてね」

 暫く呆然とした
桜花に追い出されて、長い長い鳳凰殿の廊下を歩く。


「……神久夜と、夫婦だったと?
神久夜とつまりつまり子作りしたと?
○○突っ込んでかき回……」

 鳳凰の神子である桜花にぶっ飛ばされて壁に激突した
ウブだねぇこの女官さん

(……そうですよ、宵
わたくしは貴方で、貴方はわたくしの曾孫であり同一なる魂)

瞑想すると心の中でウーヴェが話しかけてくる
前世の記憶と会話するということは二重人格みたいな感じかな
スピリチュアル~!

(実に永かった……魔界で、ずっと彼女を見続けていました…
大金払って再婚後の彼女とザンさんのね……行為を覗き見するのはなかなか燃えましたよ
寝取られ属性無かったんですけど、割とありですね)


「ふざけるのやめてくれない?お前の性癖心底どーでもいいからさ……
つーかプライバシー侵害だろ」

「……我等の祖であるお前にずっと聞きたかった
何故、烏王を殺したりするんですか

あんたのせいで、うちは天上で没落したんですよ……結局また唯舞を悲しませてるじゃないか
再婚したザドウの家は栄光を掴んでるのに、最初の夫であるウーヴェの血統は落ちぶれる一方だ」

 長年の怒りを自分にぶつける
自分である、曾祖父である男に
顔は仮面を付けていてよくわからない
声色と佇まいでなんとなく哀愁が漂っている

(……大人には色々あるのです
さあ、今こそ烏の都であるレイウに行きなさい
貴方が散々嫌がっていた天上の烏達の故郷……記憶探しの旅ですよ

フィアンセの為に素敵な男性になるのでしょう?)

愉快そうに手を叩き、予の肩を抱く
悪魔のような囁き……こいつ魔界に堕ちたんだよな確か

「……なんか、ちょっと恐いよ
あんたの記憶、ろくなことしか思い出してねぇからさ……」

(……妻や家族たち、仲間との素敵な思い出も沢山あるのですよ
貴方にはそれを思い出してほしい……曾祖父の我儘、聞いてくださいな
愛する唯舞……神久夜姫の為にもね)

 ――――天上レイウに着いた
烏たちの楽園……今はザドウ(ザンの子孫)とエタンセル家(ノックスの子孫)の政争ばっかで真っ黒だけどな
何が楽園だ…やっぱり三世以降は駄目だね世の中
予もシン・ユエイではホトオリとキサラの三世だからさ

(まずは、そうですね…マヒナの家はどうなってますか?)

「……ザドウ家を嫌がったホトオリが住んでたんだっけ、その後は子らが所有してるけど空き家みたいなもんかな」

 ――――肖像画の間は……やっぱなーんも思い出せぇな
これがノックスとリノン……太股触ってヤリ目かよ
キサラの両親だから予のひい祖父さんとひい祖母さん

 あれ、ウーヴェの肖像画は?
ザンとユイムは写ってるのに

(………訳あって、移動されてしまいましてね
あっちの白雪姫の塔の地下に行ってくださいな)

 ……へーこれがね……
肖像画、こんなんだったんだ
ウーヴェの遺品の時計にさ、これと同じウーヴェとユイムの肖像画写ってたんだよ

 第二世代の神無衹(かんなぎ)の謀反の際に、時計持ってた千夜(せんや)がヤクサノイカヅチ(鳳仙)の雷撃を受けて負傷した時に時計が命を守ったけど…
肖像画の顔の部分が燃えちまってなかなかミステリアスになっちまったんだとよ。


(直せますよ、ウーヴェ本人なのですから
ね、宵くん
というか前に八朔くんが直しましたよ、あの子わたくしのお父様の転生で時計作った張本人ですし)

……確かに神久夜に似ているな
ウーヴェはうちの母親・鵺千代っぽいかな

「そこで何をしている!!」
なんかスゲー姉ちゃんに斬りかかられたぞ、なんだこのガードウーマン…

「……肖像画を拝見しておりました、何故こちらの肖像画は日の目を見ずに隔離されているのです?」
「……そいつは裏切り者の疑惑があるからだ」

姉ちゃんが仮面を外すと唖然とした

(……唯舞!会いたかった唯舞……!!)
おいおいやめろよ、勝手に予の体で姉ちゃんに抱き着くんじゃねぇ
挙句キスしようとするから予がぶっ飛ばされて壁を突き破ったぞ

驚いた理由は、姉ちゃんは唯舞に瓜二つだった

「……おっと、申し訳ございません
今のは紳士として失格でしたね
素敵なお嬢さん、貴女のお名前は?」

(勝手に体乗っ取りやがって…別に良いけど変な事すんなよ)

宵の体でウーヴェが話す。

「……不審者め、貴様から名乗れ」
「わたくしはエンディミオン・ウーヴェ・レイヴンスワン」

 今のレイウは誰が誰の血統かわかるようにミドルネームに先祖の名を入れるしきたりがあるのです
なので、ウーヴェ入れときました……覚悟してください宵くん

「……ハハハ……!!まさか懲りずにのこのこやってくるとはな……実に愚かな血統だ
高貴な私があえて名乗ろう、我が名は胡蝶舞(こちょうのまい)・ザン・キサナドゥ
祖母はユィム・セレーネ・マヒナ

お前とは種違いの姉弟みたいなものだな、何世だ?」

「おやおや、わたくしはウーヴェの三代孫です
唯舞は曾祖母に当たるので女系の親戚ですね……」

(マジかよ……この姉ちゃん本当に唯舞瓜二つだぜ、今更こっちが唯舞本人とか言わねぇよな)

 違うと思いますよ……血縁だから容姿が似ただけでしょう
貴方の叔父・蘭月くんも唯舞そっくりでしたし……同性なら抱いてたんですけどね……惜しい

(お前人の体でそういうことすんのやめろよ……予にそういう趣味ねぇぞ
神久夜一筋だぞ!
唯舞と重ねて身内の同性犯そうとすんのマジやめろ)


「ウーヴェの子孫は問答無用で逮捕しろと父ヤツルギから命を受けている
さあ刑務所送りだ」

ねっ、言ったでしょう宵くん……この法律ができてから天上に行き来しにくくなったのですよ…
初月くんなんてこの子の弟・巍巍(ぎぎ)に犯されちゃってから行きたくないって泣いてたみたいですよ……

(おいおい此処どうなってんだよ……法律がおかしいだろ、なんで何もしてねーのに逮捕されるんだよちきしょおー!!!
ケーサツ腐り過ぎだろ……なんでケーサツやってんだよコイツらぁ)

 ――――事情を話すと事情聴取に役に立つからとか言って、コチョウの同行の元・自由が許された

(……中々記憶の扉が開きませんね、じゃあ宵くん
王城の庭園に行ってください
今日は月が出て星空が綺麗でしょう?きっと…)

 エンディミオンの衣装を着て、ザンの孫でヤツルギの長女・胡蝶舞に唯舞の役をやってもらった
こいつ唯舞そっくりだからな……

「……我に変な気を起こしたら斬り殺すから」
「……なんもしねぇよ、お前みてーな冷血姉ちゃん全くタイプじゃねぇし
あれはウーヴェが勝手にやっただけだから

予には地上にフィアンセがいんの!!
ムカつくし可愛くないし先に年上になっちまったけど……それでも好きなの!」

踊った時に、思い出した……
幻覚か……?

 星空を纏い月を飾る
皆が楽しそうに踊っている中で、二人だけ哀し気に踊っている
異様に背が高くスレンダーな白の騎士と、華奢で小柄な薔薇の眼帯をした薄い紫髪の花嫁……
花嫁が小さ過ぎて踊り辛いのだろう釣り合ってない花婿と花嫁……

 途中で花嫁が泣きじゃくって、踊りどころじゃなくなった
ウーヴェとユイムの姿……

『あなた、私のエンディミオン』
『セレーネ、愛しています…』
 星空の下で、月が翳った時に静かに誓いのキスをする……
花嫁がずっと泣いて、泣き止まないから花婿がずっとなだめてる

(ねっ、思い出せたでしょう……
哀しい哀しい、わたくし達の最期の結婚式を……
わたくしの死が決まっていたから、唯舞が大泣きして離れなかったのですよ
彼女を蘇生させる為に我が命を犠牲にした……そうまでして、彼女に逢いたかった)

「おい、おい……」

コチョウとキス寸前だったから、平手打ち喰らって我に返った

「お前なぁ!唯舞が得意だった平手打ちすんなよ!
お前の方が破壊力半端ねぇぞ!!」

「……その様子だと思い出せたみたいだな
で、罪の自白は?本当に烏王を暗殺したのか?」

「思い出したのそこじゃねぇんだよ……
結婚式だけだから
……クソ恥ずかしい台詞をよくもまあ……」

――――思い出したけど……唯舞、可哀想だったな
美しく戦死したのに旦那の都合で勝手に蘇生されて、泣かされて……夫の寿命を奪ったようなものだって責任感じちまうし
万年金欠の癖に嫁を束縛するわベタベタウザいわ…
予の前世ろくでもねー!!


(……それでも、最期まで仲が良かったのですよ。わたくしと唯舞は
レイウ103年6月16日に結婚し、807年1月25日にわたくしの病死で幕を閉じました

『来世でまた巡り逢う、何度でも巡り逢って惹かれ合う』と約束したのですから
そういう運命の元に魂が在り続けるのです
貴方と神久夜姫も……)

……大人の世界ってわかんねぇな、予も中身はもういい歳だけどよ

 (宵、貴方ならどうしますか?
神久夜を助ける為に大切なものを犠牲にできますか?
わたくしにはできた、所有物としか思ってなかったはずの妻の為に)

……まだわかんないよ
そもそも神久夜と続くのかすら、先が見えない
30年経って見違える男になって帰ったのに……あいつ、予に冷めちまって新カレ作ってた
だから、意を決して烏の風習で夜這いかけにいった……既成事実作って結婚しちまおうかと

(減点ですね……愛を知らない愚か者
そんな覚悟じゃ、わたくしの曾孫である神久夜が渡せません……
ヤリ目は地獄で初月にでも抱かれてきなさい)

こいつ、急に老害モード入って予と神久夜の初夜を邪魔したからな……
お陰で生涯魔法使いだったよ、予は

 (ゲオルギオス……奴に気を付けなさい)

誰そいつ……ああ、裏切り者で唯舞の従兄ね

(アレは今は神久夜の兄である不比等……
奴は神久夜を女として視ている、わたくしにはそう見えて仕方ない…
ゲオルギオスもそうだった

それまで兄の皮を被っていた癖に、最後の最後に唯舞らを欲して自滅した愚か者……
奴にだけは何としても渡してはなりませんよ)

……警戒しとくよ、予も不比等は好きじゃない
逆怨みで神久夜を殺しに来る暇人……詳しいことはわかんねぇけど、神久夜を泣かすから嫌いだ
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