【R18】私の担当は、永遠にリア恋です!

はこスミレ

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本編

35・S.O.S

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予想以上に怖がっていて、驚いた。
それが可愛くてグッと来てしまった。反則だよ、電話口の声が震えてるって、庇護欲そそる。
早く安心させたくて、共演者とスタッフさんに挨拶をし、急いで劇場を出た。離れたところでタクシーを捕まえて、カフェから少し離れた場所で一旦止めてもらう。
電話で呼び出すと、すぐに姿が見えた。
舞台中、ステージの上からも目視できる位置にいた彼女を確認だけして、あとは一度も見ずにカーテンコールまで走り切ったから、表情までは分からなかった。どれくらい怖かったんだろう。パタパタと走って来た彼女を乗せて、タクシーを再び走らせてもらう。
街の灯りが差し込んで、彼女の横顔がキラキラと照らされている。
「大丈夫?」
「…はい、すみません。ワガママ言って。」
「全然」
ワガママなんかじゃない。
まだ怖いのか、緊張しているのか、震えている指先を手のひらで包む。
ビクッと震えて、伺うように俺を見た。
「俺の服、着て来てくれたんだね。」
こくん、と頷く。
無理やり言いくるめて渡した服。似合うと思ったから、どうしても着て欲しかった。
ちゃんと、ベルトもしてくれてる。うん、可愛い。
暗くても分かる、上気した頬、潤んだ瞳。ここがタクシーじゃなかったら、キスしてるんだけどな。
「あの、どこに行くんですか?」
「あー…俺の…部屋?」
明るくて落ち着く、人がいなくてちゃんと話せて、急にお腹が空いてもご飯が食べられるところなんて、自分の部屋しか思い浮かばなかったんだよ!ごめん!
もし、もしも、交際を断られても、タクシー呼んで家までちゃんと帰すから!人としてそこだけはちゃんとする…けど、違う場所が良いって言われたら、一旦タクシー止めて考えるよ。
「…分かりました。」
えっ、本当?!
驚いて顔を見れば、目元まで真っ赤にして俯いている。
この顔、絶対に誰にも見せたくない。何この可愛い生き物。たまらなくなって、上から握った手を返して手のひらを合わせる。彼女の指の腹をツツッとなぞると、我慢するような顔をして、ビクッと肩が震えた。
うわあ…何その反応、やっば…俺が。
これ以上したらおかしくなりそうだから、そのまま手を握りしめてやめた。

タクシーは家の近くで停めてもらい、少し歩いてマンションに入った。歩くたびに甘い香りがして、抱きしめそうになる手を抑えるのが大変だ。パジャマの匂いをかいでは自分を慰めていたから、なかちゃんの匂いで色々発動してしまいそう。
エレベーターで二人なんて、もう…密閉された空間で…良い匂いが…耐えろ、俺。人として耐えろ。
拷問のような至福の時を過ごし、部屋へ通す。
「好きなところ、座ってて。えっと…コーヒーと、インスタントのカフェラテと…お茶があるけど、何がいい?」
「あったかいものが良いです。」
「じゃあ、カフェラテかな。」
お湯を沸かしてマグカップを準備する。俺もカフェラテでいいや。
湯気の立つマグカップを持って行けば、膝の上に拳を置いて戦前の武士みたいに硬くなった、なかちゃんがいた。
えっ、俺…これから斬られるのかな。
そっとテーブルにカップを置けば、なかちゃんが頭を下げる。
「わざわざお時間をいただき、ありがとうございます。」
「あっ、いえ、こちらこそ。」
顔を上げたなかちゃんは怖い顔をしていて、こんな顔もするんだなと思って眺めてしまった。
本当に斬られそうだ。その際は、逃げずに、潔く前から斬られよう。
「あの…」
「うん?」
大きく深呼吸をして、言葉を探している。
わー…でも、会ってすぐ断られるのは、キッツイなー…
「舞台…すっごく怖くて…伴くんの演技力に度肝を抜かれまして…震えが止まらなくてですね…」
「…だから手をギュッとしてるの?」
「…はい。」
ぶるっと震えて強く手を握り直している。そんなに強く握ったら痛いだろうに。
「でも、タクシーに乗ってる時は、震えてなかったよね?」
俺のせいでビクビクはしてたけど。
「それは……伴くんが……手を…つないでくれてた…から…」
あっという間に真っ赤になって、怖かった顔も崩れて、泣きそうになっている。
今すぐキスして抱きしめたいのを、なんとか堪えた。
座ったまま、なかちゃんの隣に移動する。
握りっぱなしの両手をそれぞれ上から包んで、指を開かせた。ほら、やっぱり爪の跡がついてる。
跡を撫でて、ふっくらとした柔らかい手のひらをムニムニと押す。
「ほんとだ、震え止まったね。」
握った手が熱くて、柔らかくて、小さな爪が可愛い。
「伴くん…ずるい…」
泣き出しそうな声に、胸を掴まれる。なかちゃんだって、ずるいよ。
そんな可愛い表情しちゃってさ、こっちがどんな思いして耐えてると思ってんの。
触れていた手を持って、自分の頬を挟む。あったかい、なかちゃんの手。
びっくりして手を引きそうになってるけど、ごめんね離さないよ。
じっと、目を見つめる。潤んだ瞳に涙が溜まって、こぼれ落ちそうだ。
「そんなに怖かった?」
「…うっ…はい…」
俺のせいで忘れかけてたのか、一瞬間があった。
「脚本が?」
「…はい、お話も怖かったけど、伴くんの演技が…すごくて…最後の怖かった。」
ああ、あの顔か。監督や演出家さんに何度も指導されたんだ。演技としては良かったみたいだね。
「なかちゃんの前じゃ、もうしないから安心して。」
「いえ、演出として怖かっただけで、お顔はかっこよかったですー!」
えっ、かっこいいの?
なかちゃん、そんなに俺の顔好きなのか。
「えーっと、ありがとう。」
「こちらこそ、また違った素敵な面を見せていただき、ありがとうございます。でも怖かった…」
ぽろっと涙がこぼれて、頬を伝った。
あーやばい、何この可愛い子。
まだ我慢しなきゃダメなのかなー。
頬に当てていた手を外して、グッと引っ張ると、バランスを崩して俺の胸に倒れてきた。
「ひゃっ!」
顎の下に丸い頭がある。なかちゃんの手を俺の首に回して、俺は背中に腕を回し、頬ずりをするように抱きしめる。
「これで、もっと怖くなくなるんじゃない?」
「伴くん、待って…ちょっと…あの…」
胸に当たっているのが唇なのか、話す度に熱くなる。
「やだ、待たない。」
もう手放したくない。
「…伴くん…電話で待っててくれるって、言ったぁ…」
うわー…今ここでそれ言うんだ…ほんとずるいなあ。
ゆっくりと体を離して、顔を覗き込む。
すぐ泣くんだもんな、なかちゃん。泣き顔に興奮したことなんてないけど、なかちゃんのせいで目覚めそうだ。
「ごめん、待つよ。」
体は離したけど、腕は背中に残したまま。なかちゃんの手も、俺の首に回ったまま。
至近距離でお互いを見つめ合う。
いくらでも待てるけど、その分めちゃくちゃにしそうでは、ある。
なかちゃんがゆっくりと呼吸をして、言葉を選んでいる。
何を言うんだろう…ここまで来てお断りだったら、俺、もう女の子を恋愛対象に選ぶことがない気がする。
なかちゃん以外、好きにならない。
「…き………き…」
「き?」
苦しそうに息を吸って、吐き出すと同時にキスをされた。
押し付けられるような、圧の強いキス。
体中から光が駆け抜けて、末端から放出されていくみたいに、エネルギーが爆発した。
唇が離れて、泣いているなかちゃんが、俺の目を見ている。
「好きです!わ、わたし…を…彼女にして…ください…」
言い切る前には抱きしめてた。
すっげー、かわいい。
もう、待ってた間の苦しさとか、どっか行った。
頬を拭ってそこにキスをして、潤んだ瞳を見つめながら、唇を塞ぐ。
もう絶対に離してやるもんか。
唇をこじ開けて舌を絡めて、ザラザラの部分を擦る。上顎も舌先で撫でて、口内全部を舐め回すつもりで、キスを続ける。
背中にあった手は後頭部に移動し、もう片方の手で耳と首筋をゆるゆると撫でた。
「んー!んん!」
苦しいのか、背中を何度も叩かれるから、仕方なく唇を離した。離す間際に吸い付くのは忘れずに。
ぜえぜえと肩で息をしているなかちゃんを囲うように、ベッドを背に追い詰めておく。
倒れた時の体勢のままだから、俺の膝はなかちゃんの足の間にある。
「…あの…彼女にして…もらえますか。」
ああ、キスが答えのつもりだったけど、それじゃあ不安だったかな。
「うん。初めからそのつもり。」
「待たせて、ごめんなさい。えっと…きいくん。」
なかちゃんは、俺を殺す気なのかな。すっげー、煽られてる。
「今すぐ、抱かせて欲しいんだけど。いい?」
今世紀最高級の笑顔でお願いする。
びっくりしたのか、涙が止まったなかちゃんは、全力で首を振った。
「無理ですー!!!!絶対無理!!」
「えっ、何で?」
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「だって、無理…好きだけど…だって、ばんばんに裸見られるとか…無理…絶対無理…!自担とセックスとか無理!!」
「えー…そこでアイドルの俺が出ちゃう?俺、なかちゃんのリア恋じゃないの?」
「リア恋だけど、好きだけど、この世で一番愛してるけど、無理ですー!」
どうしたらいいの、俺。
また、待つやつ?
「俺に裸を見られなきゃいいの?」
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この際、欲望を全部言わせてもらった。
全身真っ赤にさせたなかちゃんが、しばらく虚ろな目をして、深呼吸をした。
「…えっと…あの…頑張ります。でも、ちょっと今日は無理です。覚悟が足りませんでした。彼女にさせていただくことに覚悟を使いきりましたので、少し貯めさせていただいても、よろしいでしょうか。」
なかちゃんの覚悟って貯蓄制だったんだ。
「…絶対だよ?約束だよ?」
「…はい。頑張ります。」
彼女になったし、約束したし、今日のところはこれで良しとしようか。
迫りすぎて、やっぱり彼女やめるって言われたら立ち直れないもんな。
「じゃあ、キスはいいよね。」
「えっ!」
言い終わらないうちに、もう一度キスをする。深く、深く。下で繋がれなくても、大丈夫なように。

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