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第三部
Sky's The Limit・22-1
しおりを挟む吐きそう。
コンサートや舞台を観に行く時とは全然違う吐き気と闘いながら、通い慣れた道を行く。
話って何を話すんだろう、考えただけで憂鬱だ。それでも、行くしかない。
マンションのエントランスを抜け、エレベーターに乗る。上昇していくのに比例して、私の気分は落ちていく。
ああ、怖い。怖いし、不安だ。何をこんなに恐れているんだろう。
ドアの前で立ち止まり、何度も深呼吸をする。
なるようになれっ!
合鍵で部屋のドアを開けると、彼の匂いがした。条件反射、愛しい気持ちで一瞬心が満たされる。
「いらっしゃい」
柔らかくて優しい声がして、心臓が激しく動き出した。
「来てくれてありがとう」
ずっと違和感を感じていた、あのへにゃりとした笑顔で、彼が私の前に立つ。どんな顔も大好きだけれど、そんな悲しみを堪えるような笑顔なんて、させたくなかった。
「なんで」も、「どうして」も、言えない。言いたいのはそんなことじゃない。
「座って」
迎え入れられ、いつもの定位置に座る。
「お茶入れるね」
キッチンに立つ彼の後ろ姿を見つめる。
もしかして、痩せた?首が細くなってる。これは、確実に痩せてる!担当の体型はシルエットだけでも分かります!やだ、痩せちゃうのダメ……いつも最高のシルエットをキープしてるのに……
私にとって苦しい一週間は、彼にとっても辛い一週間だったんだと、まざまざと感じた。
マグカップを両手に持った彼が、それをテーブルに置き相向かいに座った。
よく見たら、目の下に薄っすらとクマが出来ているし、頬も少し痩けている。
「きいくん!ご飯は?ちゃんと食べた?作り置きしてったやつ」
作り置きだって、三日分くらいはあったはずだ。
「あー、うん…冷凍してある…ごめんね、腐らせてはないから」
そんなことはいい、痩せてしまっている方が心配だった。
「今日は?ちゃんと食べた?」
「なかちゃん、俺のことはいいから」
「絶対ダメ!そんなの許さない!」
勢いよく立ち上がって、冷蔵庫を開けた。味噌しか入ってない。冷凍庫には言った通りに作り置きが保存されていた。
それを取り出してレンジに入れて解凍する。お碗を出して味噌と顆粒だしを適当に、乾燥わかめを追加して、沸かしたお湯を注いだ。
テーブルに食事を並べて宣言する。
「食べて!話はそれからだ」
「…はい」
何かを堪えるように笑って、箸をつけた。私も一緒にご相伴に預かることにする。
さっき入れてくれたお茶を飲むと、いい感じに冷たくなっていた。
「お茶、せっかく淹れてくれたのに、ごめんね」
お碗を口元から離して、彼がにこりと笑った。
「ううん、お味噌汁が熱いからちょうど良くなったね」
私、この人がめちゃくちゃ好き…
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