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終章・二人のこれから

82・お城へGO

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リビングへ行くと、差し込む陽に照らされて燦然と輝く、王子様がいた。
モーニングのような丈の長いシルエットのジャケットは、細かい刺繍が施されており、中に着ている詰襟はそれこそ王子様そのものと言わんばかりのデザインだった。
白手袋してるー!やばーい!
ソーヴィめっちゃかっこいい…映画から出てきたみたい。
きぬ擦れの音に気がついて振り向いたソーヴィが、目を見開く。
「アユリ…すごく…きれいだ。」
声は甘く、私の胸を高鳴らせる。
「そ、そうかな。メイドさん達のおかげっていうか…ソーヴィもすごくかっこいいよ。」
白い手袋をした手が伸びて、私の腰を引きつける。
「このままキスして押し倒したいけど、メイドさんに迷惑かけるからやめとく。」
「うん、戻すの大変だよ。」
「でも、ちょっとくらい乱しておいた方が…この美しさに声を掛けてくる男共が増えるし…」
何を言ってるんだ、君。
「いやいや、ないでしょ。それに、既婚者だから。」
「見た目で既婚者なんて分からないからね。そっちの方が好きっていう貴族もいるんだよ。」
さすが、狂ってるなあこの国。いや、前の世界でも一定数いたか。
「ソーヴィの方が心配だよ、かっこよすぎて…女の人みんなソーヴィのこと好きになっちゃう。」
「俺は、アユリ以外どうでもいい。」
「そんなの、私だって…」
お互い見つめ合い抱き合うと、視界の端にそーっと部屋を離れていくメイドさん達が見えて、慌ててソーヴィから離れた。
「ソーヴィ、もう時間じゃない?!」
「…まだちょっと余裕あるけど。」
口を尖らせて不満そうにしている。
これは、私を独り占めしたいってことなんだろうな。可愛いなあ…
口紅が落ちない程度に軽くキスをして、ぎゅっと抱きしめる。
「不安だから、ずっと隣にいてね。」
「もちろん。」
ソーヴィが腕を出してきたので、それを掴んで歩き出す。
外にはメイドさんが並んで待っていて、みんなニコニコ笑っていた。
ああ、生暖かい視線を感じる!
「城門まで転送するから、掴まったままでいて。」
「メイドさん達は?」
「私共は、各自で転送いたしますので、大丈夫ですよ。」
そうだよね!みんな魔法使えるよね!便利だなあ。
ソーヴィに改めて掴まり体を寄せる。
「行くよ。」
ソーヴィが足を踏み鳴らすと、景色が変わった。
来たことはあるけど、来たことがない場所。
大きな白亜の宮殿、城門の前には門番がいて、入場していく貴族達をチェックしている。
「はああ…すご…」
経験したことのない場違いさに、圧倒されてしまう。
「行こうか。」
心なしかソーヴィも表情が硬くて、久しぶりだから緊張してるのかな?とか考えてた。
門番はソーヴィに気づいて敬礼をすると、特にチェック無しでそのまま入り、お城へと向かう道を歩く。
「顔パスだね。」
「一応、王子なんでね。」
「私はチェックしなくて大丈夫なの?」
「シャロンが伝えてくれてるんでしょ。」
そっか、シャーリーってそういうの細かく気を使ってくれそうだもんね。
それにしても、気後れする…
ソーヴィと一緒だからまだ生きてるけど、これ…こういうイベント開催だと思って過ごさないと、意識失いそう。
「ソーヴィ…吐きそう…」
「えっ、大丈夫?!」
「大丈夫じゃない、無理…緊張して胃がひっくり返る。」
ソーヴィが少し笑って、背中をさすられながら宮殿に入った。

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