ただ1枚の盾に。

小隈 圭

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1章

サイモン。

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 汗が舞い上がる。

 熱が伝わる。

 匂いが立ち込める。

 そして男達が舞い踊る。

 あぁ、・・・・・・男臭い。







 扉を開いた俺は立ち止まり、その光景に動けずにいた。

 タンクとしての技を得るためにこの場に来たはずだ、それが何故こうなった?

 マジェ、カッチェ、そしてじいちゃん。

 俺、今日大人の階段を上がるかもしれません。



 目の前の現実を受け止める事が出来ずに立ち尽くす俺に誰かが近づいて、声をかけてきた。

 「ようこそ~! 男達の鍛錬所へ! はじめての方でしょうか~?」

 その声を聞き、現実へと意識が戻った俺はすぐ近くに女性が立っている事に気づき、質問をされたのだと思いだし、返事をする。

 「あ、すいません!ちょっとぼっとしてました、来るのは初めてです、ギルドカードを提示すると初回は無料だと聞いてるのですがあってますか?」

 大事な事だ、金に汚いと思われるかもしれないが今の俺には死活問題なのだ、確認は必要だ。

 「はい、初回の方は無料とさせて頂いています! 確認しますのでカードの提示をお願いします!」

 袋の中からカードを出し手渡すと、女性はカードの裏を確認した後、いちど頷きカードを返してくれた。

 「確かに確認しました、ではまずは中へどうぞ、担当者をご紹介させていただきますね!」

 女性はそう言うと俺の前を歩く。

 その後を追い周囲を見ながら歩き、すぐにその人物は表れた。

 女性の向かった先には一人の年配の男性が立っていた、肩幅に足を開き、腕を組、その目は真っ直ぐに俺を見ていた。

 「ご紹介しますね、コウさんの担当者、サイモンさんです!サイモンさんは上級冒険者のタンク職で、クエストやダンジョンの遠征以外の時に指導してくださっています。
サイモンさん、こちらはコウさんで、今日初めてここに来た方です!指導の方お願いしますね!」

 女性はそういい歩いて来た道を戻っていった。

 この場に残された俺をまだ正面から見続けるサイモン。

 どうしたものかと考えようとしてまだ自分から挨拶すらしていない事を思いだし、まずは話す所からはじめてみた。

 「はじめまして、駆け出しの冒険者ですが名前はコウといいます! ご指導の方よろしくお願いします!」

 「はじめまして、私はサイモンだ、今日一日君の指導をさせてもらう、まずはじめに、呼び方だがコウと呼ばせてもらうがかまわないかな?」

 「はい、大丈夫です!」

 「うん、では次にコウはタンクの技を学んだ事はあるか?」

 タンクの技、俺は町につき、なんとなくで選んだのがタンクという職種だ、何もわからないし知らないのだ。

 「いえ、すいません、ありません。」

 「そうか、わかった。ではまず基礎から始めよう、タンクの中でも大切なこと、仲間を守り、敵を倒す為の技の基礎、叫ぶ事だ!! さぁ私と共に叫べ! 逝くぞ!!」

 え!? ちょっと待って! まだ心の準備が・・・!!

 「あさ、叫べ!あああああぁぁぁぁ!!!」

 「あああぁぁ・・・・。」

 「声が小さい! もっとだ! もっと声を出せ! 腹からだ! さぁもう一度だ! ああああぁあぁ!!!」

 「あああぁぁぁ! ゲホゲホ・・・。喉が痛いです。」

 「喉が痛いのがなんだ! いいか!! 敵に囲まれた時に痛みのせいで出せなくて仲間を死なせたらどうする!!仲間を守れないタンクなぞいる意味はない!!」

 確かにそうだ、仲間を守る。
 マジェや、カッチェを守る、その為にここに来たんだ!この程度では終われない!

 俺は息を限界まで吸い込み全力で叫ぶ!

 「あああああぁぁぁぁ!!」

 「まだまだ全然足りないぞ!そんなものでは敵を押さえる事なんてできん!! 貴様は喉が痛いと言いながら死ぬつもりか!? そうなった場合貴様の墓標には喉チンコ痛くて死んだ者と刻まれる事になるぞ!」

 その言葉を聞き創造して見ると、なんとも情けない墓標が出来上がる。

 それは嫌だな・・・

 「それだけじゃないぞ!! そんな理由で死んだタンクなぞこの場所の恥だ!! そんなもの容認出来ん! 貴様の墓石に刻まれた文字の喉の部分だけを削りとり、チンコ痛くて死んだ者に変えてやるからな! 覚悟しろ!!」

 「ふざけんなぁぁぁぁ!!!」

 「出せるではないか!さぁもっとだ!もっと叫べ!!!」


 こうして俺の修行ははじまった。
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