ただ1枚の盾に。

小隈 圭

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1章

心の在り方。

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「あなた・・・だれですか?」

助けられ、守られた、。

体も動かず、上からの叩きつけをくらう前に、自分はもう駄目だと諦めて、心が折れた。身を固くし、来るであろう死のその瞬間を恐怖し、絶望し、受け入れた。

でも、そうはならなかった。

片手で持つ盾で攻撃を防ぎ、俺が受けた時は後退させられる程の威力を目の前にいるこの人は軽く抑え込んで見せた。

助けてくれた人、その後ろ姿に俺はいるはずのない人を重ねたが、どうもしっくり来ない気がしたんだ。

何故なら―――。

あの人がこんなにかっこいい訳が・・・・・ない。


「なにを言っている、私に決まっているだろう! サイモンだ!!」

「嘘・・・だ、あのひ・・とがこんなに・・・かっこ・・いいわけ・・・ない。」

「コウ・・・後で覚えていろよ! とりあえず蠢く者、貴様は邪魔だ!!」

拳を受け止めていた盾でそのまま押し返し、弾き、地面から振動がくるのではないかと思う程の音を立てながら一歩踏みこみ、蠢く者、そう呼ばれた者を殴り付けて後退させた時だ。

「コウくん~生きてる~!? あ!いたいた!生きてるっぽいね~今行くから待っててね!。」

最深部の入り口、その方向から声が聞こえてきて、その声が広場で会ったサイモンさんの仲間、シーラさんみたいだが他にも声は聞こえてくる。

「おいおい・・・蠢く者じゃねぇか!!なんでこんなところにこいつがいるんだよ!? 」

「わからない、けどみんな生きてるみたいだね、サイモンの心配が無駄にならなかったのがなんともいえなけど。」

「とにかくサイモンをサポートするぞ! 行くぜクコ!」

「わかった、私の攻撃魔法とラグの弓でサイモンごとでもいいから仕留めるよ。」

「貴様らも後で覚えておけよ!!」

二人のやり取りを聞きながら腰を落とし、盾を構えながら蠢く者を見据えていたサイモンさんは、仲間の容赦ない言葉に答えながら再び殴りかかって来た所を盾で弾き、いつの間にか抜いていた剣で腕を斬り落とした。

「グヴァァァァ!!!!」

切り落とされた腕の痛みからだろうか、蠢く者は悲鳴を上げ、大きくジャンプし、後退した所で、クコさんが魔法であろう火炎の矢で追撃、同時にラグさんの弓による攻撃で足や手を串刺しにし、身動きが取れなくなった所をサイモンさんが駆け寄り、攻撃する。

「シールドバッシュ!」

魔法と弓による攻撃により蠢く者の敵意は二人に向いたが、サイモンさんが技名を叫びながら盾で顔を殴り付け、再び自分へと敵意を戻す、すごいチームワークだ。

「おまたせ~コウくん! 今治すね! 『ヒール!』」


いつの間にか隣にまで来ていたシーラさんが魔法を唱えると俺の体は淡い光に包まれ、少しづつ痛みが引き、傷が癒えていく。

「カッチェは? まだならあっちを先に・・・。」

「大丈夫だよ!向こうは先に直したし、今はハミィちゃん?君?がみてくれてるよ!」

シーラさんが来てからそれほど時間なんてたっていないのにもう直してくれていた様でその技量が凄まじいものだというのが魔法を使えない俺にも伝わって来るようだった。

ハミィとクエストに行った際、ヒールを使ってもらったことがあるが切り傷を治すだけでも時間がかかっていたのに、骨折を時間もかけずに治して見せた。

シーラさんだけではない、サイモンさん、ラグさん、クコさん、みんなの技量が自分達ろはまるで違う、別格。

上級冒険者。

その名前が伊達ではないことが垣間見えた気がする。

「コウ、いつまでそうしているつもりだ? 立て。」

倒れたままでヒールを受けていた俺に、蠢く者と戦っているサイモンさんから声が聞こえた。

「サイモン、まだ無理よ!もうちょっと待ってあげて。」

「シーラ、悪いがこれには口を出さないでくれ、さぁ、立てコウ!」

立てって・・・まだまともに回復もしていないのに無理だ。

「体が動かないか? でもな、私は何度でも言おう。」

「立て。」


サイモンさんは蠢く者を相手にしながらも俺にそう呼びかける、その意味が俺には理解出来なかった、まともに動く事もできない、怪我も治っていない、そんな相手に何を―――。

「コウよ、痛いだろ? 辛いだろ? しんどいだろう? だがな、それでもと立ち上がれ! 何度殴られようと、何度倒れようと、そんな物は些細なことだ! どんなにかっこ悪くても、どんなにボロボロになろうとも! 盾に・・・・タンクに倒れる事は許されない!!」

戦闘をしながらも語り掛ける、その言葉。それはあまりにも過酷な物だ。

怪我をしようとも、どんなにみじめな醜態を晒そうとも、それでも休む事を、倒れる事を許さない、そう言われてるのだから。

「ここでそうやって倒れていて、そんなお前になにが守れる? なにが出来る? 考えてみろ!今のお前は何ができた!?」


俺が出来たこと・・・・・。

仲間も守れず、盾としての役目も果たせず、みんなを逃がす事さえ出来なかった、みんなを残して、死を受け入れてしまった。何も、そう俺は何も出来ては・・・・いない、守れていない。

ただ殴られ、吹っ飛ばされて、倒れて―――。

何も、出来なかった・・・。

「盾とは、タンクとは仲間を守る為の壁だ、守る為に立ち塞がり、守るために道を切り開く! 非力な自分ではできない事を、仲間と成す為に立ち上がり、仲間の為に傷つき、仲間と共に生きる、それがタンクだ!、俺でも思うよ、なんで俺こんなしんどい事してんだろうな?って、鎧や武器には他の職より金が馬鹿みたいにかかるし、その修理やメンテナンスにも金がかかる、おまけに敵を後ろに流してしまった時は罵声を浴び、ダンジョンやラビリンスでは必ず先導し、一度行った場所ならその内部の道まで覚えておかなくてはならない、いいことなんて、はっきり言ってあんまりない。」

俺が言うのもなんだけど、扱いが酷すぎる気がするな。

「でもな、それでも仲間を、守りたいと思った人達を守る事、守り切った事を考えるとやってて良かったと、本当に思う、死なせずにすんで良かったってな。

いいか?俺達タンクは自分一人だけの命じゃねぇ!仲間の、みんなの命をも背負っている事を忘れるな!今回のお前は仲間を守れず、仲間より先に倒れた、俺達が来なければどうなっていた?」

・・・・・死んでいただろう、俺だけじゃなく、みんな、死んでいた。

そう、俺はあの時、倒れた時、自分の事だけしか考えてなかった、自分が倒れたことで仲間が・・・マジェやカッチェ、ハミィの身になにが起こるかも、どうなってしまうのかも考える事無く、ただただ、俺は心を折ってしまった。

「立て! サポートはしてやるからお前自身の手で仲間を守って見せろ!」

俺の手で・・・守る・・・。

「立て!!」

短い一言、しかしサイモンのその言葉は不思議と俺の折れてしまった心をもう一度奮い立たせる。

「立て!!!」

力強い一言、サイモンのその言葉は俺の体に不思議と熱い何かを注ぎ込む。

「さぁ、お前という存在を示してみろ!!立てぇぇ!!!!」

サイモンのその一言、その言葉は―――。

「やってやりゃぁぁぁぁ!!!!!!」


俺にもう一度立たせる力をくれる。
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