ただ1枚の盾に。

小隈 圭

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2章 成長

ラビの内部進行3。

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 「しかしいきなり難易度が上がったな」

 「そうだね~、ここまでコーンとハニービーしか居なかったのにいきなりオーガだもんね」

 「本当ならオーガが出て来る前にゴブリンとかがいてもよさそうなんだけど……」

 「まぁやるって決めたんだし、言ってもしかたねぇだろ?」

 「そうなんだけどな~」

 通路を戻り、このラビリンスの主がいる部屋へと来た俺達は、入口の前で様子を窺いながら対象を観察していた、部屋の奥に無造作に置かれている箱、それはここまで進んで来た通路の途中にあった部屋、その中にあった物と同じものだ、唯一違うとすれば、その箱に腰かけている存在がいるということ、右手には棍棒を、左手には木でできた盾を持ち、鎖帷子の様な防具を身に纏い、兜を被った存在、人よりも大きい体格が離れた場所にいる俺達にも伝わって来る程の存在感を表していた。

 「せめてもの救いは部屋にあいつしかいないって事だな」

 ここまで来る途中で通って来た部屋、基本的な造りは他と同じだったのだが、その中のどの部屋よりも奥行きや横幅、それらの広さが全く異なり、戦うには十分な広さではあるがその部屋に敵が一匹しかいない、その状況が異常さを物語っている。

 「どれぐらいの強さかわからないけど他にもうろうろされてたらとてもじゃないけど戦うなんて選択肢は選べなかったと思う」

 明らかに他の敵とは強さが異なる存在と戦いながら周りにいる敵にも対処する、そんなこと今の俺達には経験も人数も足りないしできるわけがない、ある意味一匹だけしかいないこの状況は救いでもあった。

 「それでどうするよ? 作戦とか立てなくていいのか?」

 「いや、作戦もそうだけど、非常事態が起きた時の対処法も合わせて話し合おう、無策で突っ込むには相手が悪すぎる、コーンが相手ならもう適当でも倒せる様な気もするけどあれに関してはここでの話し合いがかなり重要だろう」

 「私もそう思う、戦うと決めた以上は勝つ為に最善の手を選ばないとひどい目にあう」

 ハミィのいう言葉にはとても重みがあった、かつて王と出会い、仲間を殺され、その身を呪いで汚された彼女、この場で唯一彼女だけが俺達他の三人よりも経験という情報を持っているからだ。

 「でもよ、作戦って言ってもコウにあいつを捕まえてもらって俺達は後方から攻撃と支援、それしかなくないか?」

 確かに戦いを進める上での立ち位置はそれで問題はないとは思う、でも今欲しいのはそれではない、戦う上での最善策を練る必要があるんだ、手持ちの装備、道具、それらを使う事になっても躊躇せず、勝つ為の状態を作り上げる、その為の作戦会議だ。

 「他にも何か使えたり出来る物がないか確認してみよう、皆は何か持ち物で使える物はありそう?」

 それぞれが自分の持ち物を確認していき、使えそうな物がないか確認していく、その中でラビに入って初めて見つけた宝箱の中にあったカード、それがあったなと自分の腰に付けている袋の中を探して取り出す。

 「駄目だ、俺の持ってるのは回復薬とかラビで見つけた魔鉱石ぐらいだな」

 「ん~こっちも同じ! 魔力回復薬と魔鉱石ぐらいしかない~」

 「私も同じかな、魔力回復薬ぐらい、ヒーラーって持ち物あんまり持てないしね……」

 「俺も回復薬ぐらいしかないな、後は見つけたカードぐらいしかない」

  今の俺達はそれ程金銭面に余裕があるわけでもないし、しかたないだろう。

 「コウ、そのカードちょっと見せてくれる?」

 「ん? いいよ、はい!」

 袋から取り出し、右手に持っていたカードをハミィに手渡し、様子をみる。


 「何かわかりそう? 箱に入っていた時もちゃんとは見てなかったし、使えそうな物なら助かるんだけどな」

 「うん、何となくだけどわかるよ! ここ見て!」

 そういいながら差し出したカードの裏側には星座の紋章が描かれているようだ。

 「見たけどわからんよ? これがどうかした?」

 「ここに描かれている星座は山羊座で、人によって解釈は違うと思うけど、象徴するのは責任感、忍耐力、疑り深いそういったものを表しているのだけど、このカードの場合、魔法が込められているって事も考えると忍耐力が関係するものじゃないかなって思う、ラビに入る前に言った事なんだけど、中で手に入る物は冒険者が消費する物が表れる、カードもそれに含まれていて鍛冶屋で武器や防具を作る時にも使われることがあるの、その材料となる魔法のカードが他の責任感や疑り深いという効果である可能性は低いと思うの、まぁ絶対ではないし、詳しい事は鑑定屋にでも行かないとわからないけどね」

 なるほど、実際戦闘時に責任感や疑り深い効果の魔法を使っても何の意味もないきがする、責任感が強いって事は危機的状況になると俺を置いて先にいけ~! とか言いそうだし、それを言った所で後に待つのは死だけだ、疑り深いに関しても同じでつまるところは疑心暗鬼、仲間をも疑い、信じれなくなる、そんな物を武器や防具に使う事は無いとは言えないが比較的その確率は低いだろうな。

 「ちゃんとした効果が保証できないって事が怖い所ではあるけど使ってみるのもいいかもしれないな」

 「え~、本当に大丈夫なの? ちゃんとした効果が解ってないんだよ?」

 「そうだな、ちょっと危うい感じはするな~」

 確かにそうなんだがあまり言われると決心が鈍りそうだ。

 「どっちにしても戦う前、つまり今使う事になるから効果を確認してから戦うかどうかを決めてもいいと思うの、駄目そうなら効果が切れるまで待って、普通に戦えばいいと思うしね」

 「ちなみに効果が切れるのってどれぐらいかわかる?」

 「それは解らないかな、カードにしても結構種類があるし、その効果の強さも色々あるって聞いた事あるしね、でも一番弱いラビの中で手に入れた物だからその効果もそれほど長くはないと思うかな」

 ハミィの言う通りなら最悪悪い効果があったとしてもその効果が切れるまでにそれほど時間はかからない、まぁそれはいい効果の場合だったとしても切れる時間は変わらないと言っているような気もするが、それなら使ってみるのもいいと思う。

 「わかった、使ってみるよ、でも効果はあまり持続しないみたいだからいい効果だと判断したら即突撃しよう、悪い効果の場合は申し訳ないけど効果が切れるまでちょっと待ってくれる?」


 「わかったよ、でも気をつけろよ? 絶対に無理はするなよ」

 「そうだね、無理だけはしないでね! 出口は解ってるし、駄目だったら今度また来ればいいしね~」

 地面にしゃがみ込みながら顔を合わせていた二人の眼差しを受け止め、自分の隣で片が触れ合うのではないかと思ってしまう距離にいたハミィの顔を窺う。

 「大丈夫だって信じてる」

 長い髪を自分で優しく撫でる様に触った後、(ああ、かわいい……)胸の少し上辺りに両手を当てて短く彼女はそう呟いた。

 手の当てた位置に何かあるのかと思ってしまうが今はその事はいいだろう、そして途中で思ってしまった事も今は忘れておこう。

 「それじゃ皆戦う準備はいいか?」

 再び各自の顔に目を移すと無言でうなずきだけが返って来る。

 「よし、それじゃあ行くぞ!」

 ハミィからカードを返してもらい、右手に持ち意識を集中させると手に持つカードは淡い真っ白な光を放ち、その光は俺の体へと移った後、全身を包み込んだ。
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