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そう思って僕はゆっくりとベッドを降りて着替えを始めた。
そして軽く食事を摂ったあと、スマホを見ながら考える。両親に連絡した方がいいよね。
さすがにもう智明も僕がいないのには気づいてると思うけど、実家に連絡したのかな?母さんたちはもう知ってるのかな・・・。
今日は土曜日だから父さんもいるよね。
僕はスマホを手に取って非通知で実家に電話を入れた。すると、すぐに電話から母の声がする。
『はい。水森です』
「あ・・・母さん、僕。佐奈」
その僕の声に母が大きな声を出す。
『佐奈!あなた一体どこにいるの?!』
その言葉に、既に僕のことを聞いてることが分かる。でも、なんて聞いてるんだろう?
「母さん、ごめん。・・・あのさ、母さんたちは僕のこと、どんな風に聞いてるの?」
『あなたが昨夜帰らなかったって、智明くんから電話が来たの』
帰らなかった、か・・・。
「それだけ?」
『それだけよ』
僕が家を出たことは言わなかったんだ。
「僕さ、家を出たんだ。智と別れる」
どこまで話せばいいんだろう。迷いながらも、とりあえず事実を話した。
『別れる、て・・・あなた達上手くやってたんじゃないの?』
「やってたよ。これ以上ないくらい」
『だったらどうして・・・』
母の言葉に言葉が詰まる。
だけど、今まで散々心配をかけてきた。もし僕がここで誤魔化したとしても、結局色々考えて心配してしまうのだ。だったら本当のことを話そう。
僕は、この10年の僕たちの関係を話した。
僕が智明を好きになってしまったこと。だけど智明は僕を好きになってくれなかったこと。なのに自分を犠牲にして僕に尽くしてくれたこと。
「辛いんだ、母さん。僕にやさしくしてくれればくれるほど、僕は辛くなる。だってそれは、僕を好きだからじゃないんだ。あの時の責任を取るためなんだよ」
話してるうちに涙が出てくる。もう枯れたと思ったのに・・・。
「智はね、すごく優しいの。僕に対して何でもしてくれて、怒ったりもしないし、苛立ったりもしない。この10年、本当に優しい智しか知らない。でも、それって智にとってはすごく辛いことだったんじゃないかと思うんだ。好きでもない相手に合わせて傍にいるなんて、どれだけ自分を押し殺してきたのかと思うと、僕も辛くて・・・。だから、お互い辛いなら、もうやめた方がいいでしょ?」
涙声になってしまっているのに母は気づいているのだろう。何も言わずに僕の話を聞いてくれる。
「僕はもう、高校受験に失敗して先が見えない子供じゃない。仕事もしてお金も稼げる。智のお世話にならなくても、十分生活できるんだよ。だから解放してあげたいんだ。僕という枷から。だから母さんたちも、もう智を責めないで。僕は大丈夫だから」
最後にそう締めくくると。母はようやく口を開いた。
『本当に大丈夫なの?』
「大丈夫だよ。家はちゃんとオメガ専用だし、仕事も決まってる。年明けから出社することになってるんだ」
『どこにいるのかは教えてくれないの?』
心配する母の言葉。だけど、僕は言えない。
「今はまだ言えない。母さんに言って智に知れたら、きっと智は僕のところに来てしまう。責任感の強い智は僕の話なんて聞いてくれないよ」
『あなた達、話し合ってないの?』
「話してない。僕が黙って出てきた」
『佐奈』
「母さん。智の責任感は筋金入りなんだ。僕が何を言っても、どんなに懇願しても、きっと聞いてくれない。智は僕の身体がこうなったのは自分のせいだと思ってる。だからいくら僕が一人でも生きていけると言ったって、きっと僕の傍から離れない」
僕が一人で寂しく人生を送らないように、ずっと傍に居てくれる。それが智明の責任の取り方なんだ。
『でも言ってないんでしょ?あなたの気持ちを』
僕の気持ち?
智明を好きだという気持ち?
「言ってないよ。あっちは好きになんてなるつもりがないのに、僕だけ好きになっちゃったなんて、恥ずかしくて言えない」
それに惨めだ。
そして軽く食事を摂ったあと、スマホを見ながら考える。両親に連絡した方がいいよね。
さすがにもう智明も僕がいないのには気づいてると思うけど、実家に連絡したのかな?母さんたちはもう知ってるのかな・・・。
今日は土曜日だから父さんもいるよね。
僕はスマホを手に取って非通知で実家に電話を入れた。すると、すぐに電話から母の声がする。
『はい。水森です』
「あ・・・母さん、僕。佐奈」
その僕の声に母が大きな声を出す。
『佐奈!あなた一体どこにいるの?!』
その言葉に、既に僕のことを聞いてることが分かる。でも、なんて聞いてるんだろう?
「母さん、ごめん。・・・あのさ、母さんたちは僕のこと、どんな風に聞いてるの?」
『あなたが昨夜帰らなかったって、智明くんから電話が来たの』
帰らなかった、か・・・。
「それだけ?」
『それだけよ』
僕が家を出たことは言わなかったんだ。
「僕さ、家を出たんだ。智と別れる」
どこまで話せばいいんだろう。迷いながらも、とりあえず事実を話した。
『別れる、て・・・あなた達上手くやってたんじゃないの?』
「やってたよ。これ以上ないくらい」
『だったらどうして・・・』
母の言葉に言葉が詰まる。
だけど、今まで散々心配をかけてきた。もし僕がここで誤魔化したとしても、結局色々考えて心配してしまうのだ。だったら本当のことを話そう。
僕は、この10年の僕たちの関係を話した。
僕が智明を好きになってしまったこと。だけど智明は僕を好きになってくれなかったこと。なのに自分を犠牲にして僕に尽くしてくれたこと。
「辛いんだ、母さん。僕にやさしくしてくれればくれるほど、僕は辛くなる。だってそれは、僕を好きだからじゃないんだ。あの時の責任を取るためなんだよ」
話してるうちに涙が出てくる。もう枯れたと思ったのに・・・。
「智はね、すごく優しいの。僕に対して何でもしてくれて、怒ったりもしないし、苛立ったりもしない。この10年、本当に優しい智しか知らない。でも、それって智にとってはすごく辛いことだったんじゃないかと思うんだ。好きでもない相手に合わせて傍にいるなんて、どれだけ自分を押し殺してきたのかと思うと、僕も辛くて・・・。だから、お互い辛いなら、もうやめた方がいいでしょ?」
涙声になってしまっているのに母は気づいているのだろう。何も言わずに僕の話を聞いてくれる。
「僕はもう、高校受験に失敗して先が見えない子供じゃない。仕事もしてお金も稼げる。智のお世話にならなくても、十分生活できるんだよ。だから解放してあげたいんだ。僕という枷から。だから母さんたちも、もう智を責めないで。僕は大丈夫だから」
最後にそう締めくくると。母はようやく口を開いた。
『本当に大丈夫なの?』
「大丈夫だよ。家はちゃんとオメガ専用だし、仕事も決まってる。年明けから出社することになってるんだ」
『どこにいるのかは教えてくれないの?』
心配する母の言葉。だけど、僕は言えない。
「今はまだ言えない。母さんに言って智に知れたら、きっと智は僕のところに来てしまう。責任感の強い智は僕の話なんて聞いてくれないよ」
『あなた達、話し合ってないの?』
「話してない。僕が黙って出てきた」
『佐奈』
「母さん。智の責任感は筋金入りなんだ。僕が何を言っても、どんなに懇願しても、きっと聞いてくれない。智は僕の身体がこうなったのは自分のせいだと思ってる。だからいくら僕が一人でも生きていけると言ったって、きっと僕の傍から離れない」
僕が一人で寂しく人生を送らないように、ずっと傍に居てくれる。それが智明の責任の取り方なんだ。
『でも言ってないんでしょ?あなたの気持ちを』
僕の気持ち?
智明を好きだという気持ち?
「言ってないよ。あっちは好きになんてなるつもりがないのに、僕だけ好きになっちゃったなんて、恥ずかしくて言えない」
それに惨めだ。
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