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「少し良くなってきた?」
「はい」
「ここはね、普通の病院の休診日・・・木曜日は診療して、水曜日を休診日にしてるんだ」
だから、水曜日の今日は休診日なのか。
「本当は総合病院に行こうかと思ったんだけど、バース科ならここの方がいいと思って」
そう言うと僕の名前が書かれた紙コップを渡してくれた。
「中に小窓があるからそこを開けて出すんだよ」
僕はそれを受け取ってトイレに入った。そして言われた通り紙コップを小窓から出して僕はトイレを出る。
するとまた木佐さんは僕を支えて、今度は診察室の前まで連れていってくれる。
「なんだかすみません」
社長なのにこんなことさせてしまって・・・。
「いいんだよ。むしろもっと頼って欲しい」
そう言いながら僕を診察室の前の椅子に座らせてくれる。
「大丈夫?辛くなったら言ってね」
「大丈夫です。ありがとうございます」
すると程なくして医師に呼ばれた。
「ごめんね、まだ名前聞いてなくて。後で問診票書いてもらっていいかな?あと、IDがあったら出してね」
医師は優しくそう言うとふわりと笑ってくれた。多分アルファなんだろうけど、全然偉そうにしてない。こんな親しみやすいアルファもいるんだ。
そんなことを思いながら僕は財布の中からIDを出して医師に渡した。
「水森佐奈くん、だね」
IDをパソコンに入力しながら名前を確かめると、僕を見た。
「結論から言うと、君は妊娠しているよ。最後の発情期はいつだったかな?」
え?
妊娠?
今、妊娠て言った?
「水森くん?最後の発情期はいつかな?」
何も答えない僕にもう一度聞いてくれた医師に僕は逆に尋ねた。
「妊娠・・・ですか?」
「そう。君は妊娠しているよ」
今度は確かに聞こえた『妊娠』という言葉。
「嘘です。有り得ません」
僕の声が震える。
「僕は妊娠できないはずなんです」
身体が小刻みに震える。
僕が妊娠なんて、そんなことあるはずない。
顔を強ばらせて震える僕の肩を、隣にいた木佐さんが落ち着かせるように抱いてくれる。
その様子に、医師が僕のカルテを調べ始める。そして過去の診療記録を見つけた。
「・・・子宮外妊娠をしたんだね」
その言葉に身体がびくりとなる。
「・・・卵管が破裂して、確かに自然妊娠は難しいようだ」
「もう、子供は産めないと言われました」
「確かに・・・。でもこの時の担当の医師は少しでも可能性が残せるように処置をしたようだ」
カルテを見ながら言う医師の言葉に、僕は医師を凝視した。
「若かった君に少しでも可能性を残そうと、無事だった卵巣を温存したようだ。だからと言って子宮と繋がっているわけじゃない。この状態からの自然妊娠はまず無理と言っていいだろう。でも現に君は今妊娠している。君の身体の中で何が起こっているかは分からないけど、確かにそこには新しい命が宿っているんだよ」
その医師の言葉に僕は無意識にお腹に手を当てた。
新しい命・・・赤ちゃん・・・。
「君は子供を望んだんじゃないか?人はね、強く願うとその想いの力で身体を変えることができるんだよ。治らないと言われた病気が治った例がいくつもある。君は子供を望み、そしてその思いが強くなって不可能を可能にしたんだ」
確かに僕はそう願った。叶わないと分かっていても、発情期の度に智明の子がこのお腹に宿って欲しいと願った。そんなこと無理なのは分かってるのに、だめだったと分かると落ち込み、また次の発情期に同じことを思う。その思いが、このお腹に命を宿した。
僕の目から涙が零れる。
「産めますか?僕はこの子を」
僕のお腹で育てることは出来るの?
「もちろん。産めるよ。君の子宮は問題ないからね。でもちゃんと調べようか」
そう言うと医師は内診をしてくれた。機械が入ると診察室に赤ちゃんの心音が響き出す。
「心音、聞こえるね。大丈夫。今度は迷わずちゃんと子宮で寝ているよ」
迷わず・・・前はきっと迷ってしまったんだ。ごめんね。ちゃんと育ててあげられなくて。
「きっと一回迷って出られなかったから、今度こそママに会いに来てくれたんだよ」
それはまるで、前の子がもう一度僕のところに来てくれたみたいな言い方だ。
きっと医師は、僕のことを思ってそう言ってくれたんだろうけど・・・。
本当にそうだといい。
また僕のところに来てくれてありがとう。今度はちゃんと無事に大きくするからね。
僕は心の中でお腹の赤ちゃんに語りかけた。
「はい」
「ここはね、普通の病院の休診日・・・木曜日は診療して、水曜日を休診日にしてるんだ」
だから、水曜日の今日は休診日なのか。
「本当は総合病院に行こうかと思ったんだけど、バース科ならここの方がいいと思って」
そう言うと僕の名前が書かれた紙コップを渡してくれた。
「中に小窓があるからそこを開けて出すんだよ」
僕はそれを受け取ってトイレに入った。そして言われた通り紙コップを小窓から出して僕はトイレを出る。
するとまた木佐さんは僕を支えて、今度は診察室の前まで連れていってくれる。
「なんだかすみません」
社長なのにこんなことさせてしまって・・・。
「いいんだよ。むしろもっと頼って欲しい」
そう言いながら僕を診察室の前の椅子に座らせてくれる。
「大丈夫?辛くなったら言ってね」
「大丈夫です。ありがとうございます」
すると程なくして医師に呼ばれた。
「ごめんね、まだ名前聞いてなくて。後で問診票書いてもらっていいかな?あと、IDがあったら出してね」
医師は優しくそう言うとふわりと笑ってくれた。多分アルファなんだろうけど、全然偉そうにしてない。こんな親しみやすいアルファもいるんだ。
そんなことを思いながら僕は財布の中からIDを出して医師に渡した。
「水森佐奈くん、だね」
IDをパソコンに入力しながら名前を確かめると、僕を見た。
「結論から言うと、君は妊娠しているよ。最後の発情期はいつだったかな?」
え?
妊娠?
今、妊娠て言った?
「水森くん?最後の発情期はいつかな?」
何も答えない僕にもう一度聞いてくれた医師に僕は逆に尋ねた。
「妊娠・・・ですか?」
「そう。君は妊娠しているよ」
今度は確かに聞こえた『妊娠』という言葉。
「嘘です。有り得ません」
僕の声が震える。
「僕は妊娠できないはずなんです」
身体が小刻みに震える。
僕が妊娠なんて、そんなことあるはずない。
顔を強ばらせて震える僕の肩を、隣にいた木佐さんが落ち着かせるように抱いてくれる。
その様子に、医師が僕のカルテを調べ始める。そして過去の診療記録を見つけた。
「・・・子宮外妊娠をしたんだね」
その言葉に身体がびくりとなる。
「・・・卵管が破裂して、確かに自然妊娠は難しいようだ」
「もう、子供は産めないと言われました」
「確かに・・・。でもこの時の担当の医師は少しでも可能性が残せるように処置をしたようだ」
カルテを見ながら言う医師の言葉に、僕は医師を凝視した。
「若かった君に少しでも可能性を残そうと、無事だった卵巣を温存したようだ。だからと言って子宮と繋がっているわけじゃない。この状態からの自然妊娠はまず無理と言っていいだろう。でも現に君は今妊娠している。君の身体の中で何が起こっているかは分からないけど、確かにそこには新しい命が宿っているんだよ」
その医師の言葉に僕は無意識にお腹に手を当てた。
新しい命・・・赤ちゃん・・・。
「君は子供を望んだんじゃないか?人はね、強く願うとその想いの力で身体を変えることができるんだよ。治らないと言われた病気が治った例がいくつもある。君は子供を望み、そしてその思いが強くなって不可能を可能にしたんだ」
確かに僕はそう願った。叶わないと分かっていても、発情期の度に智明の子がこのお腹に宿って欲しいと願った。そんなこと無理なのは分かってるのに、だめだったと分かると落ち込み、また次の発情期に同じことを思う。その思いが、このお腹に命を宿した。
僕の目から涙が零れる。
「産めますか?僕はこの子を」
僕のお腹で育てることは出来るの?
「もちろん。産めるよ。君の子宮は問題ないからね。でもちゃんと調べようか」
そう言うと医師は内診をしてくれた。機械が入ると診察室に赤ちゃんの心音が響き出す。
「心音、聞こえるね。大丈夫。今度は迷わずちゃんと子宮で寝ているよ」
迷わず・・・前はきっと迷ってしまったんだ。ごめんね。ちゃんと育ててあげられなくて。
「きっと一回迷って出られなかったから、今度こそママに会いに来てくれたんだよ」
それはまるで、前の子がもう一度僕のところに来てくれたみたいな言い方だ。
きっと医師は、僕のことを思ってそう言ってくれたんだろうけど・・・。
本当にそうだといい。
また僕のところに来てくれてありがとう。今度はちゃんと無事に大きくするからね。
僕は心の中でお腹の赤ちゃんに語りかけた。
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