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そうなのだろうか?
もしかして木佐さんは、初めから智明だと分かってたのかもしれない。だから今日、僕にそれとなく会社に来るように言って、智明を中に入れたのではないだろうか。
僕達を会わせるために・・・。
木佐さんは初めからこうなることを分かっていた?
「久しぶりに香ってきた佐奈の香りに思わず出てしまって、しまったと思ったんだ。だけど、その時見えた佐奈の姿に驚き過ぎて・・・!」
もう子供は出来ないと言われていた僕が臨月でぱんぱんのお腹だったら、そりゃびっくりするよね。
「佐奈が妊娠してたことも驚きだけど、目の前で破水して、そしてお産が始まって・・・。ついさっきまで佐奈の顔を一目見られればいいと思っていたのに、気がついたら子供の誕生に立ち会ってへその緒を切って・・・」
そう言って言葉を切ると、智明はじっと僕を見る。
「佐奈・・・もう決まってしまってるのかもしれないけど、もう一度僕にもチャンスをくれないか?僕から逃げた佐奈は僕の事が怖いかもしれないし、もしかしたらあの人の方が佐奈を幸せに出来るかもしれない。だけど、僕はもう絶対に佐奈を傷つけたりしない。怖がらせたりもしない。だからもう一度、僕を佐奈と子供の傍に置いて欲しい。佐奈が好きなんだ。佐奈がいなきゃダメなんだ。腕の中に抱いたあの子の重みと温もりを、僕にまた感じさせて欲しい」
いつも変わらぬ笑顔で僕の傍にいた智明。その智明の表情は今日だけでずいぶん変わった。そして今、智明の目には・・・。
真剣に僕を見つめる智明の潤んだ目に僕が映る。
僕の心はずっと同じ。
だけど、初めて聞く僕の知らない僕。
僕はまた発作を起こして智明を苦しめるかもしれない。もしかしたら、あの時のことを思い出して本当に智明のことが怖くなってしまうかもしれない。そして僕の今の気持ちが変わってしまうかもしれない。
だけど・・・。
赤ちゃんを抱っこした時の智明の顔が頭に浮かんだ。
智が好きだ。
この思いはきっと、あの時を思い出しても変わらない。
「僕は智が好きだよ。ずっと前から好きだった」
僕の言葉に智明は目を見開き、口をわずかに開けた。
信じられないと言った顔だ。
この顔はさっき会社で僕を見た時と同じ顔だな。
僕はなんだかおかしくなってしまった。
だって10年間変わらなかった智明の表情が、本当にここ数時間でころころ変わるんだから。
堪えきれずに吹き出して笑い始めた智明はからかわれたのかと思ったのか、分かりやすくシュンとなった。その姿がまたおかしくて笑いが止まらない。涙まで出てきた。
「智は知らなかったでしょ?僕が智を好きだったなんて。でも、僕も智が僕を好きなことを知らなかったからおあいこだね」
その言葉に、智明の表情は再び変わる。そして、僕の顔からも笑みが消える。涙だけが流れていく。
「僕は智が僕を好きになってくれないことがすごく苦しかった。僕だけが智を好きになって、智を求めてるのが辛かった。僕の身体の責任を取るためだけに僕の傍にいて、智が全てを犠牲にしていることが申し訳なくて・・・。だから僕は返してあげたかったんだ。智の人生を。僕はもう十分もらったから、あとの人生は自分のために使って欲しかった。それが僕からのクリスマスプレゼントだったんだ」
決して逃げたわけじゃない。
「僕は知らなかった。本当は智が僕を好きでいてくれてることも、発情期の時にあの時と同じように暴れて叫んでいたことも。だからこれからもまた発情期の度に僕は暴れるかもしれない・・・しれないけど、僕は智が好き。発情期の度に、たとえ出来ないと分かっていても智との子を望むくらい智が好きなんだ。医師が言ってた。今回僕が妊娠できたのは、僕の強い思いがそうさせた奇跡だって。奇跡を起こすくらい智が好き・・・だから・・・」
言葉が終わらないうちに、僕は強く智明に抱きしめられていた。苦しいくらいに強く抱きしめられてるけど、僕はどうしても言いたい。
「・・・だからもう一度、僕を智の傍にいさせて。智と一緒に子供を育てたい」
智明の身体が小刻みに震えて、肩がじんわりと温かな涙に濡れていく。僕はそんな智明の背に腕を回して力を込める。
「僕のうなじを噛んで。僕がもう智から離れないように繋ぎ止めて。僕が泣いても叫んでも暴れても僕を離さないで」
震える智明の腕の中で、僕も必死に智明にしがみつきながら心からの願いを訴える。
その訴えに智明の身体がビクリと震えるのが分かったけど、僕はさらに腕に力を込める。
「・・・いいのか?僕で」
か細い声が耳元で聞こえる。
「智がいい」
僕がきっぱりと言い切ると、智明は僕の肩口から顔を上げて僕を見る。その涙に濡れた目をまっすぐ見て、もう一度言う。
もしかして木佐さんは、初めから智明だと分かってたのかもしれない。だから今日、僕にそれとなく会社に来るように言って、智明を中に入れたのではないだろうか。
僕達を会わせるために・・・。
木佐さんは初めからこうなることを分かっていた?
「久しぶりに香ってきた佐奈の香りに思わず出てしまって、しまったと思ったんだ。だけど、その時見えた佐奈の姿に驚き過ぎて・・・!」
もう子供は出来ないと言われていた僕が臨月でぱんぱんのお腹だったら、そりゃびっくりするよね。
「佐奈が妊娠してたことも驚きだけど、目の前で破水して、そしてお産が始まって・・・。ついさっきまで佐奈の顔を一目見られればいいと思っていたのに、気がついたら子供の誕生に立ち会ってへその緒を切って・・・」
そう言って言葉を切ると、智明はじっと僕を見る。
「佐奈・・・もう決まってしまってるのかもしれないけど、もう一度僕にもチャンスをくれないか?僕から逃げた佐奈は僕の事が怖いかもしれないし、もしかしたらあの人の方が佐奈を幸せに出来るかもしれない。だけど、僕はもう絶対に佐奈を傷つけたりしない。怖がらせたりもしない。だからもう一度、僕を佐奈と子供の傍に置いて欲しい。佐奈が好きなんだ。佐奈がいなきゃダメなんだ。腕の中に抱いたあの子の重みと温もりを、僕にまた感じさせて欲しい」
いつも変わらぬ笑顔で僕の傍にいた智明。その智明の表情は今日だけでずいぶん変わった。そして今、智明の目には・・・。
真剣に僕を見つめる智明の潤んだ目に僕が映る。
僕の心はずっと同じ。
だけど、初めて聞く僕の知らない僕。
僕はまた発作を起こして智明を苦しめるかもしれない。もしかしたら、あの時のことを思い出して本当に智明のことが怖くなってしまうかもしれない。そして僕の今の気持ちが変わってしまうかもしれない。
だけど・・・。
赤ちゃんを抱っこした時の智明の顔が頭に浮かんだ。
智が好きだ。
この思いはきっと、あの時を思い出しても変わらない。
「僕は智が好きだよ。ずっと前から好きだった」
僕の言葉に智明は目を見開き、口をわずかに開けた。
信じられないと言った顔だ。
この顔はさっき会社で僕を見た時と同じ顔だな。
僕はなんだかおかしくなってしまった。
だって10年間変わらなかった智明の表情が、本当にここ数時間でころころ変わるんだから。
堪えきれずに吹き出して笑い始めた智明はからかわれたのかと思ったのか、分かりやすくシュンとなった。その姿がまたおかしくて笑いが止まらない。涙まで出てきた。
「智は知らなかったでしょ?僕が智を好きだったなんて。でも、僕も智が僕を好きなことを知らなかったからおあいこだね」
その言葉に、智明の表情は再び変わる。そして、僕の顔からも笑みが消える。涙だけが流れていく。
「僕は智が僕を好きになってくれないことがすごく苦しかった。僕だけが智を好きになって、智を求めてるのが辛かった。僕の身体の責任を取るためだけに僕の傍にいて、智が全てを犠牲にしていることが申し訳なくて・・・。だから僕は返してあげたかったんだ。智の人生を。僕はもう十分もらったから、あとの人生は自分のために使って欲しかった。それが僕からのクリスマスプレゼントだったんだ」
決して逃げたわけじゃない。
「僕は知らなかった。本当は智が僕を好きでいてくれてることも、発情期の時にあの時と同じように暴れて叫んでいたことも。だからこれからもまた発情期の度に僕は暴れるかもしれない・・・しれないけど、僕は智が好き。発情期の度に、たとえ出来ないと分かっていても智との子を望むくらい智が好きなんだ。医師が言ってた。今回僕が妊娠できたのは、僕の強い思いがそうさせた奇跡だって。奇跡を起こすくらい智が好き・・・だから・・・」
言葉が終わらないうちに、僕は強く智明に抱きしめられていた。苦しいくらいに強く抱きしめられてるけど、僕はどうしても言いたい。
「・・・だからもう一度、僕を智の傍にいさせて。智と一緒に子供を育てたい」
智明の身体が小刻みに震えて、肩がじんわりと温かな涙に濡れていく。僕はそんな智明の背に腕を回して力を込める。
「僕のうなじを噛んで。僕がもう智から離れないように繋ぎ止めて。僕が泣いても叫んでも暴れても僕を離さないで」
震える智明の腕の中で、僕も必死に智明にしがみつきながら心からの願いを訴える。
その訴えに智明の身体がビクリと震えるのが分かったけど、僕はさらに腕に力を込める。
「・・・いいのか?僕で」
か細い声が耳元で聞こえる。
「智がいい」
僕がきっぱりと言い切ると、智明は僕の肩口から顔を上げて僕を見る。その涙に濡れた目をまっすぐ見て、もう一度言う。
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