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それを聞いてあっけに取られつつ、その時の木佐さんのペースに巻き込まれて事が進められていくことに戸惑っている智明の姿が想像できて、ちょっとおかしかった。
僕も今回すごくお世話になったので、保証人がこの二人で大賛成なんだけど、智明は木佐さんの立場を考えて本当に良かったのかと少し悩んでいる様子。
「木佐さんて、すごくいい人でしょ?」
こういうところ、本当に木佐さんらしい。
だけど智明はそう言った僕に複雑な顔をする。
「・・・思い切っていま佐奈に会いに来て良かったよ。もっと遅かったら、佐奈の心は木佐さんに奪われていたかもしれない」
真剣なそのつぶやきに確かにそうかも・・・と僕も思ってしまった。だけど・・・。
「僕は智が好きだよ」
もしものことなんか分からない。僕は今、智明が好きなんだから、それでいい。
僕はペンをとって婚姻届に署名をした。そしてはんこを押す。
入院手続きに必要だからってはんこ持ってきてて良かった。
僕がはんこを押すと、今度は智明が署名を始める。そして智明もはんこを押すのを見て智明も持っていた事に驚いたけど、智明はさっき買ってきたんだって。聞いたら僕のも一緒に買ってきてたらしい。ごめんね、持ってるって言っとけば良かったね。
そうして書き上がった婚姻届と共に二人で写真を撮ると、智明はそれを役所に出しに再び出かけていった。
待っている間、この数時間の事を思い出す。
その慌ただしさに、あのマンションで過ごした智明との10年の違いに驚いてしまう。
10年間なにも進展しなかったことが、この数時間であっという間に成されてしまった。
それに・・・。
僕はぺったんこのお腹に手を置いた。
子供はできないって言われてたのに、産んじゃったし。
今は新生児室で眠っているであろう我が子を思う。すると幸せな気持ちがふつふつと湧き上がってくる。あんまり幸せすぎて叫んでしまいたいくらい。だけど、実は一つ問題が・・・。
と、その時スマホにメッセージが届いた。
役所の時間外受付の窓口に婚姻届を出したところの写真だった。
わざわざ送ってこなくても良いのに、と思いながら『ありがとう』とメッセージを返した。
そして智明が帰ってきたら一緒に問題について考えてもらおう。
さて、どうしたものか・・・。
実は今回の僕の妊娠も出産も、実家には知らせていないのだ。それに加えてたった今、僕は智明と結婚してしまった。
戻ってきた智明にそれを伝えると、一瞬動きを止めて呆気にとられた様子。
だって、もし実家から智明の方へとそのことが伝わってしまったらと思ったら言えなかったのだ。
最初こそ言うか言わないかで悩んでたんだけど、その内それも忘れて本当についさっきまで実家に知らせることを忘れていた。
あまりのことに言葉も出ない様子だった智明も、その責任は自分にある思ったのか、素直に話して二人で怒られよう、と言ってくれた。
そしてその後は・・・。
電話で知らせて怒られて泣かれて、さらにその後すぐに駆けつけた両親にさらにまた怒られて泣かれて・・・だけど連れてきてもらった赤ちゃんを見た瞬間、両親はすっかり機嫌を直して今度は嬉し泣きで大変だった。
そのあと少し遅れてやってきた智明のご両親と共に赤ちゃんを囲みながら4人で大騒ぎ。
そりゃ別れたと思ったらいつの間にかよりを戻して結婚したと言うだけでも驚きなのに、実は出来ないはずの子どもが出来ました、すでに産まれています、なんて言われたのだ。両親達にしたら寝耳に水もいいところだ。
今回は良い知らせだったからまだいいけど、今後こんな隠し事はしないようにと散々釘を刺されてしまった。
親不孝をしてしまったことを自覚している僕はそのお叱りを真摯に受け止め、もう二度とこんなことはしないと約束した。
その後も両親たちは赤ちゃんを囲んで幸せそうに話している。それを少し離れて僕と智明が見ている。
その幸せの空間はかつて僕の夢の中でしか見られないものだった。
「夢みたい・・・」
無意識に出た僕のつぶやきを、智明は耳ざとく拾ってくれる。
「夢じゃないよ。この幸せは消えない」
そう言って肩を抱いてくれた智明の温もりに僕はそっと目を瞑る。そして、目を開けても消えない光景に、僕の心は幸せでいっぱいになった。
了
僕も今回すごくお世話になったので、保証人がこの二人で大賛成なんだけど、智明は木佐さんの立場を考えて本当に良かったのかと少し悩んでいる様子。
「木佐さんて、すごくいい人でしょ?」
こういうところ、本当に木佐さんらしい。
だけど智明はそう言った僕に複雑な顔をする。
「・・・思い切っていま佐奈に会いに来て良かったよ。もっと遅かったら、佐奈の心は木佐さんに奪われていたかもしれない」
真剣なそのつぶやきに確かにそうかも・・・と僕も思ってしまった。だけど・・・。
「僕は智が好きだよ」
もしものことなんか分からない。僕は今、智明が好きなんだから、それでいい。
僕はペンをとって婚姻届に署名をした。そしてはんこを押す。
入院手続きに必要だからってはんこ持ってきてて良かった。
僕がはんこを押すと、今度は智明が署名を始める。そして智明もはんこを押すのを見て智明も持っていた事に驚いたけど、智明はさっき買ってきたんだって。聞いたら僕のも一緒に買ってきてたらしい。ごめんね、持ってるって言っとけば良かったね。
そうして書き上がった婚姻届と共に二人で写真を撮ると、智明はそれを役所に出しに再び出かけていった。
待っている間、この数時間の事を思い出す。
その慌ただしさに、あのマンションで過ごした智明との10年の違いに驚いてしまう。
10年間なにも進展しなかったことが、この数時間であっという間に成されてしまった。
それに・・・。
僕はぺったんこのお腹に手を置いた。
子供はできないって言われてたのに、産んじゃったし。
今は新生児室で眠っているであろう我が子を思う。すると幸せな気持ちがふつふつと湧き上がってくる。あんまり幸せすぎて叫んでしまいたいくらい。だけど、実は一つ問題が・・・。
と、その時スマホにメッセージが届いた。
役所の時間外受付の窓口に婚姻届を出したところの写真だった。
わざわざ送ってこなくても良いのに、と思いながら『ありがとう』とメッセージを返した。
そして智明が帰ってきたら一緒に問題について考えてもらおう。
さて、どうしたものか・・・。
実は今回の僕の妊娠も出産も、実家には知らせていないのだ。それに加えてたった今、僕は智明と結婚してしまった。
戻ってきた智明にそれを伝えると、一瞬動きを止めて呆気にとられた様子。
だって、もし実家から智明の方へとそのことが伝わってしまったらと思ったら言えなかったのだ。
最初こそ言うか言わないかで悩んでたんだけど、その内それも忘れて本当についさっきまで実家に知らせることを忘れていた。
あまりのことに言葉も出ない様子だった智明も、その責任は自分にある思ったのか、素直に話して二人で怒られよう、と言ってくれた。
そしてその後は・・・。
電話で知らせて怒られて泣かれて、さらにその後すぐに駆けつけた両親にさらにまた怒られて泣かれて・・・だけど連れてきてもらった赤ちゃんを見た瞬間、両親はすっかり機嫌を直して今度は嬉し泣きで大変だった。
そのあと少し遅れてやってきた智明のご両親と共に赤ちゃんを囲みながら4人で大騒ぎ。
そりゃ別れたと思ったらいつの間にかよりを戻して結婚したと言うだけでも驚きなのに、実は出来ないはずの子どもが出来ました、すでに産まれています、なんて言われたのだ。両親達にしたら寝耳に水もいいところだ。
今回は良い知らせだったからまだいいけど、今後こんな隠し事はしないようにと散々釘を刺されてしまった。
親不孝をしてしまったことを自覚している僕はそのお叱りを真摯に受け止め、もう二度とこんなことはしないと約束した。
その後も両親たちは赤ちゃんを囲んで幸せそうに話している。それを少し離れて僕と智明が見ている。
その幸せの空間はかつて僕の夢の中でしか見られないものだった。
「夢みたい・・・」
無意識に出た僕のつぶやきを、智明は耳ざとく拾ってくれる。
「夢じゃないよ。この幸せは消えない」
そう言って肩を抱いてくれた智明の温もりに僕はそっと目を瞑る。そして、目を開けても消えない光景に、僕の心は幸せでいっぱいになった。
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