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ほたるのひかり
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ガラス越しに見るかわいい赤ちゃん。
ママ似だね。
すやすや眠る赤ちゃんの顔はとても柔らかい。ママもすごく柔らかい雰囲気の、かわいいお顔をしている。
「かわいいねぇ」
隣で、やっぱり優しい表情で眺めている優人に言った。
背の高い彼はかっこいい。
学生時代からその造作は余り変わらず、20代と言っても通ってしまうかもしれない。ただやっぱり経験を積んだだけその貫禄が出るのか、それなりに落ち着いて若さにかける。
「さかなちゃんに似てるね」
赤ちゃんはいつまで見ていても飽きない。
僕達はそのまま赤ちゃんの面会時間が終わるまでガラス越しから見ていた。
本当はさかなちゃんに会いに来たんだけど、僕達がここに着いた時、目を真っ赤に腫らせたご婦人とその旦那さんと思われる人が、ちょうどさかなちゃんのことを看護師さんに尋ねているところだった。そして部屋を教えてもらった二人が足早にさかなちゃんの病室に入っていくのを見て、僕達は今日は赤ちゃんだけ見て帰ることにした。
僕は、さかなちゃんのことをあまりよく知らない。
知ってるのは、とてもかわいくて、しっかりしてて、すごい絵を描く人で、そして、大好きな、だけど別れてしまった人の子を妊娠していた人。
お腹に手をあてながら『大好きな人の子です』と言ったさかなちゃんはとてもキレイだった。だけど、その裏にある悲しみも見えてしまった。
僕は隣の優人を見た。
帰りの車。
僕を家まで送ってくれている。
さかなちゃんの絵があまりにもすごくてキレイで、どうしても本人に会いたくなって行った優人の会社で、僕はすぐに分かってしまった。
優人はさかなちゃんが好きなんだ。
さかなちゃんに向ける眼差しと仕草。そのどれもが優しくて、優人の思いが溢れ出ていた。
今度は上手くいくと思ったのに・・・。
大好きだけど別れたって言ってたから、今度はきっと優人の優しさにちゃんと応えてくれると思ったのに、元のさやに納まってしまったらしい。それも優人のお膳立てで。
ばかみたい。
優人が好きになるのはいつも、誰かを好きな子だ。
付き合ってる彼と上手くいかない子。浮気をされちゃった子。片思いをしている子。
なんでそんな子ばかり好きになるのか・・・。
優人はいつもその子たちの相談を受け、心を支えてあげる。だけど、その子たちが優人の思いに応えることない。だっていつも、優人はその子たちに自分の思いを伝えないから。
いつも心を隠してその子たちの力になってあげるんだ。そして、その子たちが幸せに向けて歩き出すのを、ただ黙って見守っているだけ。
でも今回はちゃんと相手に気持ちを伝えていたから、そんなこと初めてだから、優人も今度こそ本気だったんだと思う。
だけど・・・。
なんでお膳立てしちゃうかな・・・。
二人を会わせなきゃ、あのまま優人の思いを受け入れてくれそうだったのに・・・。
そう言ったら、
『だって、好きな子には幸せになってもらいたいでしょ?』
だって。
名は体をあらわすのか、本当に『優しい人』。
でもやっぱりばかだ。
そしてそのばかを、そばで見ている僕も・・・。
いつも優人を傍で見ていた。
初めて会った時から、僕は傍で優人が静かに失恋していくのを見ていた。
あの、人を安心させる微笑みの裏で何度涙を流してきたか、僕はずっと見てきた。そしていつも思う。次は上手く行きますように、と。
優人が誰かと幸せになったら、僕も前を向こう。そして、新しく誰かを好きになろう。
そう思ってるのに、なかなか優人は幸せになってくれない。
僕も大概ばかだと思う。
僕は少し大袈裟にため息をついた。
「もうそろそろ不毛な恋はやめたら?若くないんだから」
突然の僕の言葉に、その意味が分かる優人は苦笑いした。
「優人の恋の成就を待ってたら、僕のタイムリミットが来ちゃうよ」
僕のマンションの前で止まった車の中で、僕は優人の腿に手を置いた。
「もう僕にしときなよ。こんなに一途にずっと優人を思ってあげてるんだから」
びっくりしたように僕を見る優人に僕は微笑んだ。
蛍が光るのは求愛のため。
ずっと優人の幸せを待っていたけど、もう待ってあげない。
僕も光を灯そう。
だから、気がついて。
僕の光に・・・。
了
ママ似だね。
すやすや眠る赤ちゃんの顔はとても柔らかい。ママもすごく柔らかい雰囲気の、かわいいお顔をしている。
「かわいいねぇ」
隣で、やっぱり優しい表情で眺めている優人に言った。
背の高い彼はかっこいい。
学生時代からその造作は余り変わらず、20代と言っても通ってしまうかもしれない。ただやっぱり経験を積んだだけその貫禄が出るのか、それなりに落ち着いて若さにかける。
「さかなちゃんに似てるね」
赤ちゃんはいつまで見ていても飽きない。
僕達はそのまま赤ちゃんの面会時間が終わるまでガラス越しから見ていた。
本当はさかなちゃんに会いに来たんだけど、僕達がここに着いた時、目を真っ赤に腫らせたご婦人とその旦那さんと思われる人が、ちょうどさかなちゃんのことを看護師さんに尋ねているところだった。そして部屋を教えてもらった二人が足早にさかなちゃんの病室に入っていくのを見て、僕達は今日は赤ちゃんだけ見て帰ることにした。
僕は、さかなちゃんのことをあまりよく知らない。
知ってるのは、とてもかわいくて、しっかりしてて、すごい絵を描く人で、そして、大好きな、だけど別れてしまった人の子を妊娠していた人。
お腹に手をあてながら『大好きな人の子です』と言ったさかなちゃんはとてもキレイだった。だけど、その裏にある悲しみも見えてしまった。
僕は隣の優人を見た。
帰りの車。
僕を家まで送ってくれている。
さかなちゃんの絵があまりにもすごくてキレイで、どうしても本人に会いたくなって行った優人の会社で、僕はすぐに分かってしまった。
優人はさかなちゃんが好きなんだ。
さかなちゃんに向ける眼差しと仕草。そのどれもが優しくて、優人の思いが溢れ出ていた。
今度は上手くいくと思ったのに・・・。
大好きだけど別れたって言ってたから、今度はきっと優人の優しさにちゃんと応えてくれると思ったのに、元のさやに納まってしまったらしい。それも優人のお膳立てで。
ばかみたい。
優人が好きになるのはいつも、誰かを好きな子だ。
付き合ってる彼と上手くいかない子。浮気をされちゃった子。片思いをしている子。
なんでそんな子ばかり好きになるのか・・・。
優人はいつもその子たちの相談を受け、心を支えてあげる。だけど、その子たちが優人の思いに応えることない。だっていつも、優人はその子たちに自分の思いを伝えないから。
いつも心を隠してその子たちの力になってあげるんだ。そして、その子たちが幸せに向けて歩き出すのを、ただ黙って見守っているだけ。
でも今回はちゃんと相手に気持ちを伝えていたから、そんなこと初めてだから、優人も今度こそ本気だったんだと思う。
だけど・・・。
なんでお膳立てしちゃうかな・・・。
二人を会わせなきゃ、あのまま優人の思いを受け入れてくれそうだったのに・・・。
そう言ったら、
『だって、好きな子には幸せになってもらいたいでしょ?』
だって。
名は体をあらわすのか、本当に『優しい人』。
でもやっぱりばかだ。
そしてそのばかを、そばで見ている僕も・・・。
いつも優人を傍で見ていた。
初めて会った時から、僕は傍で優人が静かに失恋していくのを見ていた。
あの、人を安心させる微笑みの裏で何度涙を流してきたか、僕はずっと見てきた。そしていつも思う。次は上手く行きますように、と。
優人が誰かと幸せになったら、僕も前を向こう。そして、新しく誰かを好きになろう。
そう思ってるのに、なかなか優人は幸せになってくれない。
僕も大概ばかだと思う。
僕は少し大袈裟にため息をついた。
「もうそろそろ不毛な恋はやめたら?若くないんだから」
突然の僕の言葉に、その意味が分かる優人は苦笑いした。
「優人の恋の成就を待ってたら、僕のタイムリミットが来ちゃうよ」
僕のマンションの前で止まった車の中で、僕は優人の腿に手を置いた。
「もう僕にしときなよ。こんなに一途にずっと優人を思ってあげてるんだから」
びっくりしたように僕を見る優人に僕は微笑んだ。
蛍が光るのは求愛のため。
ずっと優人の幸せを待っていたけど、もう待ってあげない。
僕も光を灯そう。
だから、気がついて。
僕の光に・・・。
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