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3章 東西都市国家大戦編
第58話 トウキョウ最終防衛機甲隊、ドミニオン1
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トウキョウCN 古宿エリア 軍事執行局管制室
ニトベは複数表示されているモニターを眺めて、
関東軍の侵入を大きく危惧し始めていた。
トウキョウの中心であるここ、古宿エリアにまで入られてしまい
オペレーターの状況報告をやっとの思いで見聞きする。
「No5、応答ありません。
下層階、特別営倉付近で通信を切った模様」
「No4は?」
「エドウィン副指令、ロストした模様。
交通局、第800部隊より再編成で対処に当たりました」
「ぐっ、アメリア副指令は!?」
「No3、ゲッコ製造開発室で対応に当たっている模様。
上層階に侵入した敵兵に数機発動しているとの事」
「グラハム副司令は何をしている?」
「No2、1人の青年と話をしているようです。
以前、チバCNよりアブダクトしてきた者・・・いえ、
御子息と何か問答しているようですが」
「こんな時に何を・・・?」
乱れ始めていた。
直属の上司も身内と口論してろくに外部とセッションできそうにない。
ガレオスも飛ばせずに一斉掃射するチャンスを失ってしまう。
No1は軍事行為に関与しないため、一か所で伏せるのみ。
しかし、数か所突破された場合も対策は整えてある。
予想外な展開がいくつか発生したものの、当然起こりうるケースとして
次の手を打ち、すでにこちらでは指示を発動させていた。
それは新型、AD100年製のライオットギアをトウキョウ要所に
出動して事に当たっているが。
「ドミニオンを起動、統制論理機関タワー前に配置しました。
古宿、甘谷、巷エリアにて移動中。ただ、許可は下されておりませんが
はたしてこれで――」
「私が全て責任を負う、上が決めないのなら次の手をもつ者だ。
もうこれしかない、リソースも40%になりつつある。
これを攻略されたら我々はおしまいだ」
指揮系統がどこも下りられない中で、もう猶予がない。
ただ、侵攻位置についてあまりにも軌跡が綺麗で疑問にわく。
関東軍は統制論理機関へと目指しているようだが、
ここが最重要区域と何故分かったのか?
「グラハム副指令の援護も必要かと・・・ニトベ隊長?」
「「いや、私が直接言ってこよう・・・」」
直に会って用件を伝えにいくと言う。
無線連絡の方が早いものの、何の意図があってそうするのか?
ニトベはそう言って管制室から出ていった。
古宿エリア 統制論理機関タワー前
「なんだコレは!?」
「ライオットギアか!」
関東兵達の前に立ちはだかったのは約20mの機体。
突然上空から降下してきた新たな敵に誰もが注目する。
装甲は銀色でまた白くもあり、人型と思えるものの下半身が妙だ。
レッドを無事、先に行かせた直後に現れた物を残る者達が
相手をする事になった。
「チッ、まだ隠し玉を持ってたってのかよ!?」
「次から次へと変わったタイプばっかりで変だよね、このCN。
でも、なんだろう・・・何かをモデルにしてる形みたいな」
「こんなコンクリートジャングルで今更!
何が来ようと爆破よ爆破!」
外周エリアで一度も見かけなかったという事はおそらく新型で、
いかにも本腰を入れた様な機体だ。最新型か、隙のなさそうな外見。
とはいえ、破壊して終わらせるのはいつもと同じ、
各隊は散開して相手の行動に備えて対応する。
バシュッ
マリサが目標にめがけて壁に張り付いたままドラゴンフライを射出。
しかし、避けられてしまう。
白黒の装甲、人型であるものの、脚部があらゆる方向へ降り曲がり、
黒い複数の円が露出して別の形状に変化する。
あれは脚部がタンクと同じ履帯に変形して瞬時に機動力を変化させ、
テンポやメリハリをこなして弾直撃を避けようとしているのだろう。
さらに腕部も変形して先端が砲身に変わった。
ヴァガガガガガガガガガガガガガガガガガ
「ミニガンを撃ってくるぞ!」
「皆、地上に立たないで! 散開ッ!」
建造物の背後や角まで下がって様子見。
少しでも巻き添えを受けないよう分隊を散らす。
機動力が今まで遭遇した型よりも速く、車がすぐに加速した様な
動きをとっていた。中に人がいるかまでは分からないが、
相当な機能を備えているかもしれない。
数発当たった爆発も装甲に損傷を与えた感じも薄く、
これだけで機動を止められそうにないようだ。
「こんな奴、初めてだな。機械っぽくねえぞ!」
「関節が変化して弱点がつかみにくい!」
「脚を壊してすんなりとコケてくれそうにないな。
なら、側から攻略する、長期戦になるぞ!」
規格もそうだが、ここまで技術に長けた理由も気になる。
何故、このCNだけがこんな独特で先鋭化されているのか?
しかし、今はそんな事を考えている猶予はなく、
まだトウキョウ兵も多くいるはず。
一度態勢を立て直して敵機から拡散していった。
一方で地上に上がってきたクロム、アイチ部隊は目標地点らしき
付近に到着する。3Dモールの反応もかつてない数で、過去の戦歴より
十分なリソースを見せきれていなかった。
後の行動も不安があり、関西方面への飛び火を懸念。
それすらさせないよう今回のラボリで終わらせるつもりであるが。
しかし、関東兵の影響もあって何やら白いシールドの様な装置のおかげで
トウキョウ中心部に隙間がいくつか表れ始めてきた。
「トム隊長の機器から回収したデータ解析で大まかなエリア情報を取得。
あの一際高い建設物にCNを創設した場所があるらしいが」
「あそこは兵器設備があまり見られません、役員が滞在する場所と予測」
部下の言葉通り、答えがすぐ見つかりそうに思えた。
まるで空への連携通路とばかり、約500mの建物がそびえている。
あの天主殻と密かにやりとりしている節もありそうで、
世界の根源、元凶がもうすぐ明らかになると期待も膨らんでゆく。
「ここでやられるわけにもいかない、関東との接触も起こるから
前進する前にこの辺りを先に洗っておくぞ」
「無線を受信、南部海岸もカナガワCNをクリアリング確保して
掩護の道を開いて、九州兵も直に合流するそうです」
「後発隊か、以前に向こうでも交戦があったらしいが。
タツキ、何か聞いているか?」
「それが不思議なんだ、ホッカイドウ兵達が――」
「敵襲ッ!」
再びトウキョウ兵達の銃声が聴こえてくる。
話し合いをする余裕もなく、外側からまた追撃されかけてしまった。
同時刻、関東兵も交戦再開してトウキョウの猛威に凌ぐ。
高速ライオットギアを攻略すべく、約500人がかりで挑む。
当然ながら、グンマ兵はジッとしてられない性分+空中優位性なので、
囮をするように機体を囲んでいた。
「マリサァ!?」
「ほいよぉ!」
パシッ
メンバーから放り投げられた弾薬を空中でキャッチ。
投げる方、受け取る方も訓練して外さずに連携する。
この区域はすでに速射砲を破壊し終えて、懸念するのは人兵のみだ。
100m高度も難なく飛びこなして優位性を上げてゆく、しかし。
ブシュッ
「うぶぶるぶるべぇ!?」
数発の塊がグンマ兵Lを貫いた。
見誤ってタイミング悪く当たったのか、周囲の者達がよく確認すると
少し違っている様に思えた。
「何か・・・おかしいぞ?」
「「なんだありゃあ・・・弾が、追いかけてる」」
弾道が途中で曲がり始めて人に直撃させていた。
ホーミング性能とばかり、寸前すら許さない規格のようだ。
しかし、射出元まで戻ってこられるわけじゃなく懐に向かえば
いつもと同じく対処だろう。
「じゃあ、直接とっつかまえて切り落としてやるァ!」
ガシッ ビリリリィ
「ぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぉぉぶぼ!?」
敵機が放電して接近を退てしまう。
溶断対策もしっかりと対応するよう設計されていて、
飛びかかったグンマ兵Vは黒焦げになって地上へ落ちていった。
少し離れた建物の影からアイチ兵が様子をうかがう。
クロムは交戦の光景を観て通常の弾丸ではない事に気付く。
弾そのものにホーミング性能をもち、目標に向かって追尾する
仕組みがあると推測した。
「弾丸内部に赤外線センサーが仕込まれている。
発射後も熱源に向かって飛んでいくようになっている!?」
速度を生み出すのはあくまでもエジェクターの部分だが、
あれは弾の内部からさらに噴出させている。
製造費用もかなりかかるはずだろう、
トウキョウの精鋭は惜しみなくリソースを使い込んでいると推測。
筐体部分も何かを搭載している可能性もあり、すぐ交戦しないようにした。
その頃、関東兵達は少し離れた建造物の影に隠れながら
どう対処すれば良いか無線で相談し合う。
交戦場から散り散りになり、グンマだけでなくイバラギやトチギ、チバも
中心地から外側へ駆られて籠城。
現場指揮者は一応マリサを筆頭に、敵機を食い止める方法を考えていた。
攻撃、防御、あらゆる性能が桁違いでただの爆破攻撃も効かずに、
ことごとく対抗策を打ち止めされて行き場を失いかける。
「「こちらグンマ第2・・・マリサ嬢、退避完了しましたぜ」」
「おっけ、現場会議始めるわよ」
突然現れた強敵に、場当たり的な攻略法をここで考える。
おそらく最終防衛機能として要所に配置させていたようで、
待ち伏せしていたようだ。
「「ここまできて真打ち登場かよ、ありゃあ何だ!?」」
「「トウキョウの秘密兵器だろ、俺らが思ってるより強えぞ?」」
「「おかげでLとVもやられちまった・・・どうすんだ?」」
「あたしらが観た時、わずかだけど砲身のエイムが人のそれっぽくなくて
勝手に向いてるような感じだったわ」
「「やっぱ無人機か、こっちは人より兵器が多いもんな」」
「「でも、あの銃弾って横を通り過ぎても急に向きを変えてきたり
しませんよね?」」
いくら追尾してくるといっても直角に曲がったりUターンなどして
当てる事はできない。
外周にもトウキョウ兵がいつ襲撃してくるか分からない間で、
中心部の金属体を超えなければいつまで経っても終われない。
「「直に懐に潜り込んで溶断する可能性もありますが・・・」」
「電撃みたいな事やってきたじゃない!? どうやって近づくのよ!?
そういや、コクーンはまだ来ないの?」
「「超大型機体と交戦中です、脅威査定で向こうに掩護していると」」
「なによそれ!? 目標地点まで詰めろっての!」
「「だからって、銃もロケランもまともに当たらねえしな。
インファイトでやってくしかねえのか・・・」」
援軍の大型機はトウキョウの機体にほとんど回されていた。
性能が何であれ、機動力を生み出すのは装甲の内部。
でも、どこを停止させれば良いのか分からずに、
本部の解析が終わるまで待たなければならない。
こっちに多く持ってこいと文句を言いたいものの、
それまで身がもつか、果敢さが次第に縮まりつつある。
ここでさらに悪い情報も入る。
「「ねえ、関西の連中も来てるんだけど・・・」」
「「海岸沿いから関西兵が侵入しています!
服装が俺達と違う、向こうからの連中で間違いありません!」」
「「漁夫の利かもしんねえけど、相手にする暇なんてねえぞ」」
西の敵対勢力が同じくトウキョウCNに来ていた事が分かった。
カナガワCNからも多く侵入してきたらしく、南部のトウキョウ兵配置も
多く削り始めているという。
いずれここにやってくるだろう、交戦もさらに避けられなくなる。
1人のモブトチギ兵が改めて視察に行こうとした時。
ドゴォン
「うごぉあっふぉぉぉ!?」
ウイィィン カシャッ ピピピ
白いシリンダーを縦に地上へ置き、中身を打ち上げるシャトル状に変形。
約2mの携帯型ミサイルを上空に放ち、再び目標へ追撃していた。
「「アイツ、上からも・・・」」
「俺らは上からも見られている、外にいる奴らは建物に入れェ!」
無事に逃げ込めた関東兵達は気も落ち着けずに周囲を見直す。
入り組んだ区画ばかりに、地方の者達は改めてトウキョウの複雑さ、
目が錯覚するような歪さに足の踏む感覚を鈍らせる。
どこにも休める場所がなく、疲れかけた脚を動かしてクリアリング確保場へ
わずかな隙間をも見つけようと探索してゆく。
「があっ、これがトウキョウか!」
「やっぱ規模が違いすぎるよぉ・・・」
恐ろしいのは兵力だけでなく、常に制限の連続がかかる地形。
壊して先へ進むなど簡単にはいかず、足を踏めるルートが曲がりくねった
回路の回廊ばかりで理性を保つのに精いっぱいだ。
ここまで来られたのはただのまぐれだったのか、またはあえて囲って
なぶりものにするつもりで誘い込まれたのか、今のリソースで勝てる
相手じゃないと判断して応援を呼ぼうと決める。
「こちらグンマCN、救援要請願います!」
「こちらイバラギ、ワタルの部隊はどこだ!?」
「こちらチバァ、昼寝てる奴ら全員呼んでこいッ!」
「こ、こちらトチギ、エリーちゃん来てくれえ!」
モブ兵も地元へ呼びかけるものの、応答がつながらずに僻地。
しかし、外部も熾烈な戦況が続いてすぐに来られそうになく、
コクーンも数十機解体された報告も上がってきた。
各CN筆頭分隊も別エリアでまだ活動していて心許ない。
「「どこでも良い、頼む・・・誰かぁ」」
孤立無援がこんなにも恐ろしい思いをしたのも初めてかもしれない。
数え切れない建造物やコンクリートブロックの設備は外見に変わりないが、
地方とは異なる設置の連続に不安と恐怖心も次第に生じてゆく。
たかが人工物だと分かっていても自然観無き世界で命を狙われている
現状から例えの言いにくい様。
場所、環境に馴染めないとこうも違うのか。戦意すらジワジワと削られて
もう周りを進む気も失いかける、頼れるのは援軍のみ。
一心を待ち望む無線から連絡が入ってきた。
「誰だ!?」
「「こちら東北部隊、私達ならすぐ向かえます!」」
「おおおお!」
建造物高所に東北兵が入ってきていた。
速射砲をいくつか制圧して上部からの介入に成功して
東北専用のライオットギアも投入してくれるらしい。
モブ兵達はつい周囲確認も忘れ、空からの救援を待ち望む。
「あんたらやっと来たか、いつかサクランボ食べにいくわ!」
「生還できればいくらでも食わせてやる。
さっきの砲撃で崩れかけてる所もある、できるだけ注意して進むぞ!」
しばらくして味方の数が増えて目標討伐をどうするか話し合う。
相手の規格や機動を覚えている限り打ち明けて出戻り、
彼らの援護が加われば必ずこの戦況を突破できるようになるはず。
メンバー達の顔色が明るくなり、再び奮起して行動再開すると。
メキョ ガラガラガラ
床が崩落して落下。
予想内がとても早く予想外に起こり、ふんだりけったりな状況。
怪我もなく下敷きにならずに尻餅を着いただけで済んだものの。
「「んだよ、クソッ・・・あ!?」」
カチャッ
瓦礫の埃が治まりかけた後の奥には異形な人型が複数立っている。
そこにいたのはトウキョウ兵とは違う格好をした兵だった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
捕らえられた野生の動物は連行されている途中で死亡する事もあります。
環境の極変化は生物にとってどんな種でも過酷な事象だと思います。
ニトベは複数表示されているモニターを眺めて、
関東軍の侵入を大きく危惧し始めていた。
トウキョウの中心であるここ、古宿エリアにまで入られてしまい
オペレーターの状況報告をやっとの思いで見聞きする。
「No5、応答ありません。
下層階、特別営倉付近で通信を切った模様」
「No4は?」
「エドウィン副指令、ロストした模様。
交通局、第800部隊より再編成で対処に当たりました」
「ぐっ、アメリア副指令は!?」
「No3、ゲッコ製造開発室で対応に当たっている模様。
上層階に侵入した敵兵に数機発動しているとの事」
「グラハム副司令は何をしている?」
「No2、1人の青年と話をしているようです。
以前、チバCNよりアブダクトしてきた者・・・いえ、
御子息と何か問答しているようですが」
「こんな時に何を・・・?」
乱れ始めていた。
直属の上司も身内と口論してろくに外部とセッションできそうにない。
ガレオスも飛ばせずに一斉掃射するチャンスを失ってしまう。
No1は軍事行為に関与しないため、一か所で伏せるのみ。
しかし、数か所突破された場合も対策は整えてある。
予想外な展開がいくつか発生したものの、当然起こりうるケースとして
次の手を打ち、すでにこちらでは指示を発動させていた。
それは新型、AD100年製のライオットギアをトウキョウ要所に
出動して事に当たっているが。
「ドミニオンを起動、統制論理機関タワー前に配置しました。
古宿、甘谷、巷エリアにて移動中。ただ、許可は下されておりませんが
はたしてこれで――」
「私が全て責任を負う、上が決めないのなら次の手をもつ者だ。
もうこれしかない、リソースも40%になりつつある。
これを攻略されたら我々はおしまいだ」
指揮系統がどこも下りられない中で、もう猶予がない。
ただ、侵攻位置についてあまりにも軌跡が綺麗で疑問にわく。
関東軍は統制論理機関へと目指しているようだが、
ここが最重要区域と何故分かったのか?
「グラハム副指令の援護も必要かと・・・ニトベ隊長?」
「「いや、私が直接言ってこよう・・・」」
直に会って用件を伝えにいくと言う。
無線連絡の方が早いものの、何の意図があってそうするのか?
ニトベはそう言って管制室から出ていった。
古宿エリア 統制論理機関タワー前
「なんだコレは!?」
「ライオットギアか!」
関東兵達の前に立ちはだかったのは約20mの機体。
突然上空から降下してきた新たな敵に誰もが注目する。
装甲は銀色でまた白くもあり、人型と思えるものの下半身が妙だ。
レッドを無事、先に行かせた直後に現れた物を残る者達が
相手をする事になった。
「チッ、まだ隠し玉を持ってたってのかよ!?」
「次から次へと変わったタイプばっかりで変だよね、このCN。
でも、なんだろう・・・何かをモデルにしてる形みたいな」
「こんなコンクリートジャングルで今更!
何が来ようと爆破よ爆破!」
外周エリアで一度も見かけなかったという事はおそらく新型で、
いかにも本腰を入れた様な機体だ。最新型か、隙のなさそうな外見。
とはいえ、破壊して終わらせるのはいつもと同じ、
各隊は散開して相手の行動に備えて対応する。
バシュッ
マリサが目標にめがけて壁に張り付いたままドラゴンフライを射出。
しかし、避けられてしまう。
白黒の装甲、人型であるものの、脚部があらゆる方向へ降り曲がり、
黒い複数の円が露出して別の形状に変化する。
あれは脚部がタンクと同じ履帯に変形して瞬時に機動力を変化させ、
テンポやメリハリをこなして弾直撃を避けようとしているのだろう。
さらに腕部も変形して先端が砲身に変わった。
ヴァガガガガガガガガガガガガガガガガガ
「ミニガンを撃ってくるぞ!」
「皆、地上に立たないで! 散開ッ!」
建造物の背後や角まで下がって様子見。
少しでも巻き添えを受けないよう分隊を散らす。
機動力が今まで遭遇した型よりも速く、車がすぐに加速した様な
動きをとっていた。中に人がいるかまでは分からないが、
相当な機能を備えているかもしれない。
数発当たった爆発も装甲に損傷を与えた感じも薄く、
これだけで機動を止められそうにないようだ。
「こんな奴、初めてだな。機械っぽくねえぞ!」
「関節が変化して弱点がつかみにくい!」
「脚を壊してすんなりとコケてくれそうにないな。
なら、側から攻略する、長期戦になるぞ!」
規格もそうだが、ここまで技術に長けた理由も気になる。
何故、このCNだけがこんな独特で先鋭化されているのか?
しかし、今はそんな事を考えている猶予はなく、
まだトウキョウ兵も多くいるはず。
一度態勢を立て直して敵機から拡散していった。
一方で地上に上がってきたクロム、アイチ部隊は目標地点らしき
付近に到着する。3Dモールの反応もかつてない数で、過去の戦歴より
十分なリソースを見せきれていなかった。
後の行動も不安があり、関西方面への飛び火を懸念。
それすらさせないよう今回のラボリで終わらせるつもりであるが。
しかし、関東兵の影響もあって何やら白いシールドの様な装置のおかげで
トウキョウ中心部に隙間がいくつか表れ始めてきた。
「トム隊長の機器から回収したデータ解析で大まかなエリア情報を取得。
あの一際高い建設物にCNを創設した場所があるらしいが」
「あそこは兵器設備があまり見られません、役員が滞在する場所と予測」
部下の言葉通り、答えがすぐ見つかりそうに思えた。
まるで空への連携通路とばかり、約500mの建物がそびえている。
あの天主殻と密かにやりとりしている節もありそうで、
世界の根源、元凶がもうすぐ明らかになると期待も膨らんでゆく。
「ここでやられるわけにもいかない、関東との接触も起こるから
前進する前にこの辺りを先に洗っておくぞ」
「無線を受信、南部海岸もカナガワCNをクリアリング確保して
掩護の道を開いて、九州兵も直に合流するそうです」
「後発隊か、以前に向こうでも交戦があったらしいが。
タツキ、何か聞いているか?」
「それが不思議なんだ、ホッカイドウ兵達が――」
「敵襲ッ!」
再びトウキョウ兵達の銃声が聴こえてくる。
話し合いをする余裕もなく、外側からまた追撃されかけてしまった。
同時刻、関東兵も交戦再開してトウキョウの猛威に凌ぐ。
高速ライオットギアを攻略すべく、約500人がかりで挑む。
当然ながら、グンマ兵はジッとしてられない性分+空中優位性なので、
囮をするように機体を囲んでいた。
「マリサァ!?」
「ほいよぉ!」
パシッ
メンバーから放り投げられた弾薬を空中でキャッチ。
投げる方、受け取る方も訓練して外さずに連携する。
この区域はすでに速射砲を破壊し終えて、懸念するのは人兵のみだ。
100m高度も難なく飛びこなして優位性を上げてゆく、しかし。
ブシュッ
「うぶぶるぶるべぇ!?」
数発の塊がグンマ兵Lを貫いた。
見誤ってタイミング悪く当たったのか、周囲の者達がよく確認すると
少し違っている様に思えた。
「何か・・・おかしいぞ?」
「「なんだありゃあ・・・弾が、追いかけてる」」
弾道が途中で曲がり始めて人に直撃させていた。
ホーミング性能とばかり、寸前すら許さない規格のようだ。
しかし、射出元まで戻ってこられるわけじゃなく懐に向かえば
いつもと同じく対処だろう。
「じゃあ、直接とっつかまえて切り落としてやるァ!」
ガシッ ビリリリィ
「ぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぉぉぶぼ!?」
敵機が放電して接近を退てしまう。
溶断対策もしっかりと対応するよう設計されていて、
飛びかかったグンマ兵Vは黒焦げになって地上へ落ちていった。
少し離れた建物の影からアイチ兵が様子をうかがう。
クロムは交戦の光景を観て通常の弾丸ではない事に気付く。
弾そのものにホーミング性能をもち、目標に向かって追尾する
仕組みがあると推測した。
「弾丸内部に赤外線センサーが仕込まれている。
発射後も熱源に向かって飛んでいくようになっている!?」
速度を生み出すのはあくまでもエジェクターの部分だが、
あれは弾の内部からさらに噴出させている。
製造費用もかなりかかるはずだろう、
トウキョウの精鋭は惜しみなくリソースを使い込んでいると推測。
筐体部分も何かを搭載している可能性もあり、すぐ交戦しないようにした。
その頃、関東兵達は少し離れた建造物の影に隠れながら
どう対処すれば良いか無線で相談し合う。
交戦場から散り散りになり、グンマだけでなくイバラギやトチギ、チバも
中心地から外側へ駆られて籠城。
現場指揮者は一応マリサを筆頭に、敵機を食い止める方法を考えていた。
攻撃、防御、あらゆる性能が桁違いでただの爆破攻撃も効かずに、
ことごとく対抗策を打ち止めされて行き場を失いかける。
「「こちらグンマ第2・・・マリサ嬢、退避完了しましたぜ」」
「おっけ、現場会議始めるわよ」
突然現れた強敵に、場当たり的な攻略法をここで考える。
おそらく最終防衛機能として要所に配置させていたようで、
待ち伏せしていたようだ。
「「ここまできて真打ち登場かよ、ありゃあ何だ!?」」
「「トウキョウの秘密兵器だろ、俺らが思ってるより強えぞ?」」
「「おかげでLとVもやられちまった・・・どうすんだ?」」
「あたしらが観た時、わずかだけど砲身のエイムが人のそれっぽくなくて
勝手に向いてるような感じだったわ」
「「やっぱ無人機か、こっちは人より兵器が多いもんな」」
「「でも、あの銃弾って横を通り過ぎても急に向きを変えてきたり
しませんよね?」」
いくら追尾してくるといっても直角に曲がったりUターンなどして
当てる事はできない。
外周にもトウキョウ兵がいつ襲撃してくるか分からない間で、
中心部の金属体を超えなければいつまで経っても終われない。
「「直に懐に潜り込んで溶断する可能性もありますが・・・」」
「電撃みたいな事やってきたじゃない!? どうやって近づくのよ!?
そういや、コクーンはまだ来ないの?」
「「超大型機体と交戦中です、脅威査定で向こうに掩護していると」」
「なによそれ!? 目標地点まで詰めろっての!」
「「だからって、銃もロケランもまともに当たらねえしな。
インファイトでやってくしかねえのか・・・」」
援軍の大型機はトウキョウの機体にほとんど回されていた。
性能が何であれ、機動力を生み出すのは装甲の内部。
でも、どこを停止させれば良いのか分からずに、
本部の解析が終わるまで待たなければならない。
こっちに多く持ってこいと文句を言いたいものの、
それまで身がもつか、果敢さが次第に縮まりつつある。
ここでさらに悪い情報も入る。
「「ねえ、関西の連中も来てるんだけど・・・」」
「「海岸沿いから関西兵が侵入しています!
服装が俺達と違う、向こうからの連中で間違いありません!」」
「「漁夫の利かもしんねえけど、相手にする暇なんてねえぞ」」
西の敵対勢力が同じくトウキョウCNに来ていた事が分かった。
カナガワCNからも多く侵入してきたらしく、南部のトウキョウ兵配置も
多く削り始めているという。
いずれここにやってくるだろう、交戦もさらに避けられなくなる。
1人のモブトチギ兵が改めて視察に行こうとした時。
ドゴォン
「うごぉあっふぉぉぉ!?」
ウイィィン カシャッ ピピピ
白いシリンダーを縦に地上へ置き、中身を打ち上げるシャトル状に変形。
約2mの携帯型ミサイルを上空に放ち、再び目標へ追撃していた。
「「アイツ、上からも・・・」」
「俺らは上からも見られている、外にいる奴らは建物に入れェ!」
無事に逃げ込めた関東兵達は気も落ち着けずに周囲を見直す。
入り組んだ区画ばかりに、地方の者達は改めてトウキョウの複雑さ、
目が錯覚するような歪さに足の踏む感覚を鈍らせる。
どこにも休める場所がなく、疲れかけた脚を動かしてクリアリング確保場へ
わずかな隙間をも見つけようと探索してゆく。
「があっ、これがトウキョウか!」
「やっぱ規模が違いすぎるよぉ・・・」
恐ろしいのは兵力だけでなく、常に制限の連続がかかる地形。
壊して先へ進むなど簡単にはいかず、足を踏めるルートが曲がりくねった
回路の回廊ばかりで理性を保つのに精いっぱいだ。
ここまで来られたのはただのまぐれだったのか、またはあえて囲って
なぶりものにするつもりで誘い込まれたのか、今のリソースで勝てる
相手じゃないと判断して応援を呼ぼうと決める。
「こちらグンマCN、救援要請願います!」
「こちらイバラギ、ワタルの部隊はどこだ!?」
「こちらチバァ、昼寝てる奴ら全員呼んでこいッ!」
「こ、こちらトチギ、エリーちゃん来てくれえ!」
モブ兵も地元へ呼びかけるものの、応答がつながらずに僻地。
しかし、外部も熾烈な戦況が続いてすぐに来られそうになく、
コクーンも数十機解体された報告も上がってきた。
各CN筆頭分隊も別エリアでまだ活動していて心許ない。
「「どこでも良い、頼む・・・誰かぁ」」
孤立無援がこんなにも恐ろしい思いをしたのも初めてかもしれない。
数え切れない建造物やコンクリートブロックの設備は外見に変わりないが、
地方とは異なる設置の連続に不安と恐怖心も次第に生じてゆく。
たかが人工物だと分かっていても自然観無き世界で命を狙われている
現状から例えの言いにくい様。
場所、環境に馴染めないとこうも違うのか。戦意すらジワジワと削られて
もう周りを進む気も失いかける、頼れるのは援軍のみ。
一心を待ち望む無線から連絡が入ってきた。
「誰だ!?」
「「こちら東北部隊、私達ならすぐ向かえます!」」
「おおおお!」
建造物高所に東北兵が入ってきていた。
速射砲をいくつか制圧して上部からの介入に成功して
東北専用のライオットギアも投入してくれるらしい。
モブ兵達はつい周囲確認も忘れ、空からの救援を待ち望む。
「あんたらやっと来たか、いつかサクランボ食べにいくわ!」
「生還できればいくらでも食わせてやる。
さっきの砲撃で崩れかけてる所もある、できるだけ注意して進むぞ!」
しばらくして味方の数が増えて目標討伐をどうするか話し合う。
相手の規格や機動を覚えている限り打ち明けて出戻り、
彼らの援護が加われば必ずこの戦況を突破できるようになるはず。
メンバー達の顔色が明るくなり、再び奮起して行動再開すると。
メキョ ガラガラガラ
床が崩落して落下。
予想内がとても早く予想外に起こり、ふんだりけったりな状況。
怪我もなく下敷きにならずに尻餅を着いただけで済んだものの。
「「んだよ、クソッ・・・あ!?」」
カチャッ
瓦礫の埃が治まりかけた後の奥には異形な人型が複数立っている。
そこにいたのはトウキョウ兵とは違う格好をした兵だった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
捕らえられた野生の動物は連行されている途中で死亡する事もあります。
環境の極変化は生物にとってどんな種でも過酷な事象だと思います。
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