260 / 280
4章 ブラインド編
第2話 アルティメットパートナー
しおりを挟む
ニイガタCN サド島
「おいロボット、この書類をチーフに渡しといてくれねえか?」
ガシッ ムシャムシャ
「あああああああああああああああ!?」
アンドロイドは書類を食べてしまった。
ハンチング帽子をかぶった男が手間を省こうとしてわたした書類を
手にした途端、口に入れてグシャグシャにする。
消化器官もあるはずがないのに、口にほおばり噛みついて
異様な行動をとってしまう。せっかく作成した書類が台無しだ。
そんな怒りを同僚に向ける。
「おいパスカル、紙喰われちまったぞ!
コイツ壊れてんじゃねーのか!?」
「「またバグか・・・」」
ブロンドヘアーの七三分けした男がうんざりした顔で応える。
話によると、製造したアンドロイドに異変が生じて
試験紙にすぐ噛み付く癖が現れたと言う。
人手不足を人型で補正しているものの、こうした不具合の連続で
任務も効率良く進められずにいる。
「やはり旧型は問題が多く生じて扱いきれない。
こんな規格が世に出回る前に差し押さえて良かった。
サップ、怪我はないか?」
「俺は平気だが、持ち前が良くねえわ。せっかく持ってきたってのによ。
なんで、試験紙なんざ噛むんだ?」
「元は、水素イオンを口から取り入れさせて
人と同じ様に燃料を蓄える実験をしていた。
正常に動作可能か、適正PH値の測定をさせるために
プログラムしたのだが、どういうわけかそれから異常行動を起こす時が
度々見られるようになった。
検査してみると、繊維に含むヘミセルロースに
反応しているらしいが、根本的詳細はもって分からん」
「んなプログラム、丸ごと消しちまえっての!
検査なぞ、普通の機械にやらせりゃ良いだろ!?」
「そこを修正しても、何度も同じ行動を繰り返してしまうのだ。
独立思考規格を見直しても同様にな。
それだけ、自律型というのは構造が難解だ」
「なんかよく分かんねえが、もう1回持ってくるわ。
ったく、メンドくせえな・・・」
サップは渋々引き返していった。
おそらく、ドキュメントだけわたしてサッサと帰ろうとしたのか、
結局は今でもその解決策は見つからずに時が進んでいく。
1週間後
ゴクッ
「で、手に入れたのはこちらだ」
情報屋のサップがコーヒーを飲みながら書類を見せる。
関東から脱出したメンバーは入国所縁ある新潟に身を寄せて
人目を忍びつつ動向を探っていた。
ブレイントラストの個人情報を提示、かつてはすぐ側で勤めてた
ポジションに次いでいたアリシアが身をもって経験した時の
詳細を説明した。
「「当時の状況・・・思い出したくはないけど、5人いた。
部屋に入るや、突然ダニエルを手にかけて私の子を・・・。
内1人は最高責任者のコウシ。
だけど、主導者は雰囲気から違うものだった」」
「統括者とは別の者ですか?」
小声ながらもどうにか当時を語ってゆく。
5人の列に並んでいた位置からブレイントラストの所長ではない。
アリシアの助手であるミゾレが詳細を聞いてみると、
情報を割り出したパスカルが指し示した。
「中心人物はこのクロノスとよばれる男だそうです。
医務室の中央に立ち、主任と呼ばれていたそうで
何かを指揮していた様子があったとの事」
クロノス、ブレイントラストの中心人物。
大脳生理学を専攻し、心理学も追求して来国したという。
かつてアリシアも対面し、紳士的に振る舞われた者。
そして、息子の誘拐を指示した実行者だ。
発言していた直感記憶素質が双子の片方にあると言われて、
私を抑えて強引に連れていってしまった。
残る4人も共犯者なのは分かっていて、何かしら計画を企んでいるのだが
アブダクトしていった行動原理が不明であった。
サップがリーダーであるクロノスのページを指して質問する。
「よく分かんねえ点は、このクロノスっていう男が
クロノシンメトリーっつう神経症をもっているようだが、
なんなんだそれは?」
「時計の針が他の誰よりも遅く動いて見えるっていう錯覚をもってる。
かつて緊張が続く生活を送って、視界に異常をもたらしたとか。
向こうで会った時、そう聞いたの」
「該当する神経症状は決して珍しい現象ではありませんね。
不意の外観では私もそう見えますけど、
奴にとってはもっと遅く動いて見えるんですか?」
ミゾレが男の特徴を言及、普段から規則的に動いているはずの物が
一瞬のみ静止している様に見える錯覚の1つ。
細長くリズミカルに動く物体の停止が人一倍大きく、
何かしらの原因で誰よりも肥大化した緊張感をもっていたのだろう。
しかし、とある出来事でそれがパタッとなくなったと言う。
動物との出会いがそうさせたらしいが、以上はよく分からずにいた。
パスカルは他の4人についてやはりそれぞれ生物との関連に不審をもち、
今回の事件に接点をもっている部分を指摘した。
「これは私の推論ですが、もしかすると彼らは自身の研究過程において
何かしら動物に執着をもっている傾向にある可能性があるようです」
「動物だと?」
「奴ら5人の内、4人が生物の原理を応用してそれぞれの研究を
事件発生以前から大事起こらず成し遂げていた事があります」
「完成品を公開してなくそのままってか、何の目的だ?」
「ブレイントラストの所長であるコウシは同時に隣接する生物管理所の
責任者でもあり、暴漢に施設を襲われた経歴があった模様。
特待生として例の4人が関わっていたと記録されています」
あまりにも原因特定のヒントが少ないものの、行動の末端から
辿れそうな部署や成果物のどこかに見出した。
意外な不審点を挙げる彼に、誰もが納得しそうにない。
そこから動機が浮上しそうな線もありそうだが明確さが無し。
ミゾレがドキュメントを読み上げる。
「アメリア・フェルナンデスは爬虫類の性質で人工皮膚の創造。
アイザック・ガレアーノは昆虫の性質で内心通信技術を創造。
レイチェル・エバンスは水生生物の性質で質量収縮を創造。
コウシ・カンナギもAUROを応用した反重力を創造して、
あの天主殻とよばれる設備を築いたと推測されます」
「コウシのおっさんは何の動物だ?」
「はっきりと断言できないけど、おそらくは鳥かもしれない。
数年前に飼っていた事は覚えていたから」
「クロノスは何やってたんだ?」
「母国では妄想性の心理研究をしていたとしか経歴がなく、
他と違って実際に物自体は創造していなかったようで、
これといった成果は表記してありません。
ん、後はライオンを飼育していたと書いてますね」
「なンで猛獣なんぞ!?」
地上を制覇するような現物には着手した件がなく、
ミゾレはマネージメントとして立場に就いていたのではと言う。
メンバー達の経歴も独特なる内容だが、いずれも生物に偏った成果で
どんな経緯なのか、わずかな共通点だけ理解できた。
ただ、あくまでも推測でチーフの子ども誘拐の線は判明できずに
現段階では微量な情報しかつかめていない。
ライオンの件については全くもって不明。
パスカルもクロノスの性質とアリシアの子どもの接点について
どこも関わりがないと言った。
「個人見解ですが、チーフの体験談より仮定できる事は
直感記憶性質をあの施設内で活かそうと企んでいるはず。
時間の研究か、同様な神経発達の研究か、いずれにしても
まだ幼い赤子を育てるのはデータ、情報の類を何か利用するために
教育を施そうとしている可能性があります。
よって、すぐロストされる恐れはないと希望できますが」
「絶対忘れねえってのはある意味、CPUみてえな能力だろな。
あいつらの動物園が襲われた恨み晴らしにチーフの息子を使って
あの動物みてえな機械を操って復讐しようと。
そんで、あのでかいUFOに乗って征服でもおっぱじめたってか?」
「適当な事言わないでよ!
だからといって一部の公共場所しか狙ってないのも変でしょ!?」
「だな」
ミゾレが険しい顔で叱る。
彼女の言う通り、単なる壊滅目的で襲ったとは思えない。
破壊という物理攻撃を起こしても何もメリットが感じられずに、
宇宙へ飛び立つ素振りもなく一定の高度を保つばかりだった。
そして、あの妙な合成音声によるアナウンス。
機械的かつ少なくとも意思をもってそうな声で、
人々に御触を伝えて軍国主義を唱えている。
まだ黒幕が裏にいる線も十分に感じていた。
肝心の打つ手は内部の元凶を引きずり出せば済むものの、
ブラインドだけで立ち向かうには困難だ。
「今んとこ、分かるのはそれだけか・・・。
しっかし、呼ばれがてら気付いたが、あんなの相手にすんのはキツイぞ。
どう考えても俺達だけじゃ人手が足りなくねえか?」
「予定では今日、まだヘルプが来るそうですが?」
「一応、サポート役としてアンドロイドを2体製造した科学者を
今日招待しておいたわ。ロボット開発者が1人ここに来るの」
アリシアは助っ人を頼んでいたようだ。
あの強大な力をもつブレイントラストを相手にするには
こんな面子だけでこなせられず、さらなる要員を呼ぶ算段にでた。
知能をもつ機体という規模で太刀打ちしようとする。
話によると生体工学に携わっていた者でかなりの知識者との事。
ミゾレやパスカルに劣らず、相当な能力をもつらしいが。
ほんの数分経った後、ラボに3人入ってきた。
「こんちわー、回りくどい挨拶は嫌いだから本題に入るよ!」
電動車椅子に座りながら入ってきたのは子ども同然の者。
13歳の科学者が助言しに来てくれた。
サップの目線が下がり、場違いとみなすように聞き出した。
「なんだ、このガキは?」
「回りくどい挨拶はダメって言ったでしょ!
時間が惜しいんだからホラホラ、本題に入って!」
椅子に装着された点滴を腕にはめて受けている。
彼がアンドロイド研究の第1人者、ミシェルという名だ。
通称:点滴を受けるカエル、人間そっくりな人工体製造に関わる
元ブレイントラストの研究員。
陸と水の境界から相関物を生み出す者という異名をもたれていた。
私達から観た第一印象はブロンドボブカットの少年。
まさに少年のそれとしか思えない可愛げのある幼い顔だ。
ミゾレも珍しそうに外観を指摘する。
「点滴を受けてるのは、病気かなにか?」
「ボクは食事しないんだ、食べるだけ時間の無駄だし。
そんなのどうでもいいでしょ、それよりこれ!」
「この人達はどなた?」
「ドロイドだよ、ボクが造った最高性能のタイプ。
旧型よりもディープラーニングの規格をさらに先鋭化して、
噛みつきバグももう起こらない仕様にまでできあがったの。
人間が思いつかない分野を2人に補助してもらうから」
「こいつらはアンドロイドだったのか!?」
側にいた2人(?)のアンドロイドが完成したと差し出してきた。
名前はダーマ、アヴィーという。
銀色の全身スーツに黒髪と金髪の男女が整然と立ち、
ブラインドをサポートするアンドロイドとして今回連れてきた。
一応、普通に話す事ができるようで自己紹介を始める。
「俺はダーマだ、マスターに創造された超高性能アンドロイド。
呼び名はそのままで良い、不確定要素を含む言い回しは愚問でな」
「ワタシはアヴィー、彼と同じく創造されしモノ。よろしく」
「マジで人間と見分けがつかねえな、中身どうなってんだ?」
「その質問はここで言えないよ、日が暮れるから。
今日はAI構想であのルンバを落とす会議なんでしょ?」
「この子も最近こっちに異動してきたのよ。
ここの整備もまだ完全じゃないから理解してちょうだい」
「分かってるよ、東京最高峰と比較するのもナンセンスだし。
ただでさえ隠れの身で高望みなんて不可能だから」
「ん、どういう事だ?」
「この子も元、ブレイントラスト所属。
アンドロイド基本設計は向こうで始めていたの」
「なんだと!?」
「という訳」
ミシェルもブレイントラストの研究者だった。
空襲前、向こうで大量の離職者が起きた出来事をきっかけに
良さそうとここへ転勤したらしい。
向こうの評判が駄々下がり、先が無いと早々に判断。
アリシアは早々に稀代の才をもつと見込んで招待し、
アール・ヴォイドへ転勤してきたのだ。
自己紹介もそこそこに、対策のするために何をするのか会議をする。
「で、今回の御題は?」
「まずは、先のクロノスの性質について。
事前に伝えた通り、奴らの概要をつかむ事から始めているけど、
あなた達、アンドロイドの観点からしてこの現象はどう捉えているの?」
「視神経の異常からくる、遅延錯覚だ。
簡単に言えば、視覚に対する残像の誤認。
アドレナリンの分泌が不確定に起こるとそういう現象が発生する」
「モンキーハンティングみたいに、動く残像の誤認は
細くて小さい物ほど起こりやすいものなの。
ワタシ達にとっては、0コンマ秒の視覚作用でも誤認は起こらないけど、
人間にとっては脳内物質の相互作用上、発生することがあるみたい」
「それはスローモーションに見える作用ってこと?」
「そうだな、映像の認識とは光が通る水晶膜を信号化させて
そこに物があると思い込む。より意識を集中すれば認識力も向上し、
位置取りをマス目の様に把握できる。
アドレナリン受容体を視神経と別の物質へ発達させれば、
理論的には0.1秒の世界も認識できるだろう」
「どう、ほとんど人間らしくなったでしょ?」
(素晴らしい・・・)
生物にとっては目に光を受けて周囲の光景を認知する。
緊張感を更に高めて1マス1マスに切り取った画像の様に観させる。
パスカルも内心、AIを感心。
ブラインドは通常より長けた能力を培う算段を立てていた。
状況判断力に長けた兵士を生み出そうと企画。
自衛隊とは違い、大規模な自軍をもっていない組織では高度に
立ち回れる精鋭化で特殊性に頼る他になかったのだ。
少人数ながらにその力を与えれば戦場では大いに役に立つはず。
どんなにわずかな存在も糧を最大限に活用せねばならなかった。
当然、我が子ですら例外ではない。
サップは呆れた顔で小馬鹿にするように発言。
「ま~たずいぶんとぶっとんだ設定だな。
マンガでありがちな“止まって見えるぜ!”が実現すんのか」
「科学者も一度で答えを見つけられるものじゃないの。
何事も仮定、仮説から入って思わぬ道へ辿り着くものなのだから」
「この国のマンガは想像力旺盛だからね。
すぐにポリコレや政治思想が入る向こうと違って、
抽象的独創が実存主義も突き抜けて意外な発見してるもん。
そんな影響でこっちに来た人もけっこういるよ」
「そう、塊は空の思想に塗り替えられて新世代のエネルギー源、
AUROを実現した。追従するかのように他者も求めてきて、
ブレイントラストもそういった変わり者ばかり招集してきた。
私は・・・わずかな可能性すら賭けてみたい」
「と、言いますと?」
「アドレナリン受容体を研究して、あの子にも適用するわ。
空間認知を私達ブラインドが先駆けて実現する」
「息子さんにもですか?」
「ええ・・・」
アンドロイド達には人体実験及び、肉体改造の担当を任せる方針にする。
私は判断力、反射神経を向上させる技術をここで開発して
高度な機動隊員を増やす算段を立てようとした。
向こうにはなかった規格や企画を少しでも計画し、無数の知恵の輪で
引きずり落としていかなければならない。
「ただ、私達の存在はあまり公に出てはいけないの。
一般企業として参加するのは良いけど、
このチームだけは決して口外しないように。
そのためにブラインドというコードネームを設定したのだから」
「自衛隊や政府とは連携しないんだね?」
「ミシェル、あなたも海外から就任してきたと聞いていたから
大丈夫だと思うけど、どこかの公共機関と接触した事はある?
例えば自衛隊方面と関わり合いなどないわね?
アンドロイドAI技術を知人に伝えているとか」
「い、言ってないけど、どうして?」
「ブラインドは人型骨格の製造をかつてブレイントラストと共同して
ロボットを製造してたの。もし、これが自衛隊に情報を回していたら
列島各地に発散してしまう恐れがあるから」
管理の手から離れた者に持て余す技術を与えるのは危険と諭す。
古くの歴史よりこの国は政府から離脱して自衛隊幹部達が斡旋して、
自ら崩壊した事実があるから。続けてミゾレが質問。
「天主殻が襲来する前に販売予定だったキューティードールとかいう
アンドロイド規格にあなたの名があったけど?」
「あ、あれは旧型で異常が出ちゃって販売中止したんだ!
あっちは民間企業で国にAIコードを全部提出してないから大丈夫」
この子に人型規格をやたらと広報させないよう忠告。
兵器関連に繋がるものを外部に出さない注意点を推す。
元から大きな組織に余計な介入をすると逆に利用されて飲み込まれる。
ただでさえ市民と接点の多い側が力を入れようものなら、
ブレイントラストを崩壊させた後にも問題を起こすからだ。
私は以前と同様、政府や自衛隊と共同する気は起きない。
元から神輿に乗る能無しを持ち上げる気など起こらず、
あくまでも頭脳補正、促進のための技術重視。
ダニエルもそういった理想をもって研究に打ち込んでいた。
確かに懐は寂しく覚束ない点もある。
それでも、目立たずに動く必要性が高かった。
「私達は今、混沌と化した世界を終わらせる救世主の集い。
だから、必要最低限の隠密行動で作戦を起こしていくわ」
「わ、分かったよ」
「奴らの技術、情報は多く秘匿されている内に私達が没収させる。
叡知は知識者のために在るべき。
まあ、私情を交えてしまったのは悪かったわね。
今日のところ、提携したい話はこれだけね?」
「はい」
「終わりか、人を超えし者を生み出そうの会だったな」
「冗談はなく私達は未知なる橋をわたるつもりでいく。
会議は一旦終わりにするわ、詳しくは追って連絡する。
まだどこかに生物型がいるかもしれないから帰りに気を付けてね」
「認証した」
「光陰のムラが残るし、ボクも一旦戻るよ。じゃあねー!」
というわけで、今回の議論はこれで終了する。
ミシェル達は不備なしとばかり言って帰っていった。
13歳の身でありながら大人の見識をも上回る技術力と知能に、
サップが腰に手を当てて感慨。
「すごそうな小僧だったな」
「そうね、あの子が向こうに付かなかったのは大きな幸い。
子どもながら先見の明をもっているのは確かよ」
話によると特待生制度に疑問をもって入らなかったらしい。
他にも口うるさい女もいて側にいたくなかったようだ。
食事も惜しんで研究に没頭するあまり身体は人並みより低く、
コミュニケーションも多くなかった節もあったという。
新たに加わった両生類と共に頼りになるメンバーに称賛。
3人もそれぞれの部屋へ戻る、父から連絡がきた。
「「状況はどうかね?」」
「アンドロイド設計者が今こちらに来て会談を終えました。
ブラインド加入に成功、生体工学に配置させる予定です」
「「うむ、かつての引用はどこまでも終わらずに寄せるように」」
「ええ、私も利用できるものは何でも利用するつもりなので」
まだ東京西部で仕事をしている間から段取りを伝えた。
通信を切る、しばらくは下拵えを優先して準備するのを先決。
しばしの休憩をもち、ミシェルの言葉を振り返す。
その何気ない一言を聞いたアリシアはテーブルに肘をつく。
「「ムラが残る・・・か」」
私はカップの中に残るコーヒーのムラを観て思いふける。
経験という斑は脳からそう簡単に離れていかない要素。
無機物は完全に溶けないときがある。
乾き、尖った砂糖がコップを洗おうとする皮膚を傷つけるものだ。
アリの群れがいればあっけなく溶かして持ち去ってゆく。
しかし、小賢しく集るだけではブレイントラストの様に
不意と巨大な塊に踏みつぶされてしまうだけ。
奴らは私の命だけ逃して悠々と去っていった。
残存というものは形として残り、放置された物がむやみに留まらず
時に跳ね返ってくる事を直々に教えてやらねばならない。
「おいロボット、この書類をチーフに渡しといてくれねえか?」
ガシッ ムシャムシャ
「あああああああああああああああ!?」
アンドロイドは書類を食べてしまった。
ハンチング帽子をかぶった男が手間を省こうとしてわたした書類を
手にした途端、口に入れてグシャグシャにする。
消化器官もあるはずがないのに、口にほおばり噛みついて
異様な行動をとってしまう。せっかく作成した書類が台無しだ。
そんな怒りを同僚に向ける。
「おいパスカル、紙喰われちまったぞ!
コイツ壊れてんじゃねーのか!?」
「「またバグか・・・」」
ブロンドヘアーの七三分けした男がうんざりした顔で応える。
話によると、製造したアンドロイドに異変が生じて
試験紙にすぐ噛み付く癖が現れたと言う。
人手不足を人型で補正しているものの、こうした不具合の連続で
任務も効率良く進められずにいる。
「やはり旧型は問題が多く生じて扱いきれない。
こんな規格が世に出回る前に差し押さえて良かった。
サップ、怪我はないか?」
「俺は平気だが、持ち前が良くねえわ。せっかく持ってきたってのによ。
なんで、試験紙なんざ噛むんだ?」
「元は、水素イオンを口から取り入れさせて
人と同じ様に燃料を蓄える実験をしていた。
正常に動作可能か、適正PH値の測定をさせるために
プログラムしたのだが、どういうわけかそれから異常行動を起こす時が
度々見られるようになった。
検査してみると、繊維に含むヘミセルロースに
反応しているらしいが、根本的詳細はもって分からん」
「んなプログラム、丸ごと消しちまえっての!
検査なぞ、普通の機械にやらせりゃ良いだろ!?」
「そこを修正しても、何度も同じ行動を繰り返してしまうのだ。
独立思考規格を見直しても同様にな。
それだけ、自律型というのは構造が難解だ」
「なんかよく分かんねえが、もう1回持ってくるわ。
ったく、メンドくせえな・・・」
サップは渋々引き返していった。
おそらく、ドキュメントだけわたしてサッサと帰ろうとしたのか、
結局は今でもその解決策は見つからずに時が進んでいく。
1週間後
ゴクッ
「で、手に入れたのはこちらだ」
情報屋のサップがコーヒーを飲みながら書類を見せる。
関東から脱出したメンバーは入国所縁ある新潟に身を寄せて
人目を忍びつつ動向を探っていた。
ブレイントラストの個人情報を提示、かつてはすぐ側で勤めてた
ポジションに次いでいたアリシアが身をもって経験した時の
詳細を説明した。
「「当時の状況・・・思い出したくはないけど、5人いた。
部屋に入るや、突然ダニエルを手にかけて私の子を・・・。
内1人は最高責任者のコウシ。
だけど、主導者は雰囲気から違うものだった」」
「統括者とは別の者ですか?」
小声ながらもどうにか当時を語ってゆく。
5人の列に並んでいた位置からブレイントラストの所長ではない。
アリシアの助手であるミゾレが詳細を聞いてみると、
情報を割り出したパスカルが指し示した。
「中心人物はこのクロノスとよばれる男だそうです。
医務室の中央に立ち、主任と呼ばれていたそうで
何かを指揮していた様子があったとの事」
クロノス、ブレイントラストの中心人物。
大脳生理学を専攻し、心理学も追求して来国したという。
かつてアリシアも対面し、紳士的に振る舞われた者。
そして、息子の誘拐を指示した実行者だ。
発言していた直感記憶素質が双子の片方にあると言われて、
私を抑えて強引に連れていってしまった。
残る4人も共犯者なのは分かっていて、何かしら計画を企んでいるのだが
アブダクトしていった行動原理が不明であった。
サップがリーダーであるクロノスのページを指して質問する。
「よく分かんねえ点は、このクロノスっていう男が
クロノシンメトリーっつう神経症をもっているようだが、
なんなんだそれは?」
「時計の針が他の誰よりも遅く動いて見えるっていう錯覚をもってる。
かつて緊張が続く生活を送って、視界に異常をもたらしたとか。
向こうで会った時、そう聞いたの」
「該当する神経症状は決して珍しい現象ではありませんね。
不意の外観では私もそう見えますけど、
奴にとってはもっと遅く動いて見えるんですか?」
ミゾレが男の特徴を言及、普段から規則的に動いているはずの物が
一瞬のみ静止している様に見える錯覚の1つ。
細長くリズミカルに動く物体の停止が人一倍大きく、
何かしらの原因で誰よりも肥大化した緊張感をもっていたのだろう。
しかし、とある出来事でそれがパタッとなくなったと言う。
動物との出会いがそうさせたらしいが、以上はよく分からずにいた。
パスカルは他の4人についてやはりそれぞれ生物との関連に不審をもち、
今回の事件に接点をもっている部分を指摘した。
「これは私の推論ですが、もしかすると彼らは自身の研究過程において
何かしら動物に執着をもっている傾向にある可能性があるようです」
「動物だと?」
「奴ら5人の内、4人が生物の原理を応用してそれぞれの研究を
事件発生以前から大事起こらず成し遂げていた事があります」
「完成品を公開してなくそのままってか、何の目的だ?」
「ブレイントラストの所長であるコウシは同時に隣接する生物管理所の
責任者でもあり、暴漢に施設を襲われた経歴があった模様。
特待生として例の4人が関わっていたと記録されています」
あまりにも原因特定のヒントが少ないものの、行動の末端から
辿れそうな部署や成果物のどこかに見出した。
意外な不審点を挙げる彼に、誰もが納得しそうにない。
そこから動機が浮上しそうな線もありそうだが明確さが無し。
ミゾレがドキュメントを読み上げる。
「アメリア・フェルナンデスは爬虫類の性質で人工皮膚の創造。
アイザック・ガレアーノは昆虫の性質で内心通信技術を創造。
レイチェル・エバンスは水生生物の性質で質量収縮を創造。
コウシ・カンナギもAUROを応用した反重力を創造して、
あの天主殻とよばれる設備を築いたと推測されます」
「コウシのおっさんは何の動物だ?」
「はっきりと断言できないけど、おそらくは鳥かもしれない。
数年前に飼っていた事は覚えていたから」
「クロノスは何やってたんだ?」
「母国では妄想性の心理研究をしていたとしか経歴がなく、
他と違って実際に物自体は創造していなかったようで、
これといった成果は表記してありません。
ん、後はライオンを飼育していたと書いてますね」
「なンで猛獣なんぞ!?」
地上を制覇するような現物には着手した件がなく、
ミゾレはマネージメントとして立場に就いていたのではと言う。
メンバー達の経歴も独特なる内容だが、いずれも生物に偏った成果で
どんな経緯なのか、わずかな共通点だけ理解できた。
ただ、あくまでも推測でチーフの子ども誘拐の線は判明できずに
現段階では微量な情報しかつかめていない。
ライオンの件については全くもって不明。
パスカルもクロノスの性質とアリシアの子どもの接点について
どこも関わりがないと言った。
「個人見解ですが、チーフの体験談より仮定できる事は
直感記憶性質をあの施設内で活かそうと企んでいるはず。
時間の研究か、同様な神経発達の研究か、いずれにしても
まだ幼い赤子を育てるのはデータ、情報の類を何か利用するために
教育を施そうとしている可能性があります。
よって、すぐロストされる恐れはないと希望できますが」
「絶対忘れねえってのはある意味、CPUみてえな能力だろな。
あいつらの動物園が襲われた恨み晴らしにチーフの息子を使って
あの動物みてえな機械を操って復讐しようと。
そんで、あのでかいUFOに乗って征服でもおっぱじめたってか?」
「適当な事言わないでよ!
だからといって一部の公共場所しか狙ってないのも変でしょ!?」
「だな」
ミゾレが険しい顔で叱る。
彼女の言う通り、単なる壊滅目的で襲ったとは思えない。
破壊という物理攻撃を起こしても何もメリットが感じられずに、
宇宙へ飛び立つ素振りもなく一定の高度を保つばかりだった。
そして、あの妙な合成音声によるアナウンス。
機械的かつ少なくとも意思をもってそうな声で、
人々に御触を伝えて軍国主義を唱えている。
まだ黒幕が裏にいる線も十分に感じていた。
肝心の打つ手は内部の元凶を引きずり出せば済むものの、
ブラインドだけで立ち向かうには困難だ。
「今んとこ、分かるのはそれだけか・・・。
しっかし、呼ばれがてら気付いたが、あんなの相手にすんのはキツイぞ。
どう考えても俺達だけじゃ人手が足りなくねえか?」
「予定では今日、まだヘルプが来るそうですが?」
「一応、サポート役としてアンドロイドを2体製造した科学者を
今日招待しておいたわ。ロボット開発者が1人ここに来るの」
アリシアは助っ人を頼んでいたようだ。
あの強大な力をもつブレイントラストを相手にするには
こんな面子だけでこなせられず、さらなる要員を呼ぶ算段にでた。
知能をもつ機体という規模で太刀打ちしようとする。
話によると生体工学に携わっていた者でかなりの知識者との事。
ミゾレやパスカルに劣らず、相当な能力をもつらしいが。
ほんの数分経った後、ラボに3人入ってきた。
「こんちわー、回りくどい挨拶は嫌いだから本題に入るよ!」
電動車椅子に座りながら入ってきたのは子ども同然の者。
13歳の科学者が助言しに来てくれた。
サップの目線が下がり、場違いとみなすように聞き出した。
「なんだ、このガキは?」
「回りくどい挨拶はダメって言ったでしょ!
時間が惜しいんだからホラホラ、本題に入って!」
椅子に装着された点滴を腕にはめて受けている。
彼がアンドロイド研究の第1人者、ミシェルという名だ。
通称:点滴を受けるカエル、人間そっくりな人工体製造に関わる
元ブレイントラストの研究員。
陸と水の境界から相関物を生み出す者という異名をもたれていた。
私達から観た第一印象はブロンドボブカットの少年。
まさに少年のそれとしか思えない可愛げのある幼い顔だ。
ミゾレも珍しそうに外観を指摘する。
「点滴を受けてるのは、病気かなにか?」
「ボクは食事しないんだ、食べるだけ時間の無駄だし。
そんなのどうでもいいでしょ、それよりこれ!」
「この人達はどなた?」
「ドロイドだよ、ボクが造った最高性能のタイプ。
旧型よりもディープラーニングの規格をさらに先鋭化して、
噛みつきバグももう起こらない仕様にまでできあがったの。
人間が思いつかない分野を2人に補助してもらうから」
「こいつらはアンドロイドだったのか!?」
側にいた2人(?)のアンドロイドが完成したと差し出してきた。
名前はダーマ、アヴィーという。
銀色の全身スーツに黒髪と金髪の男女が整然と立ち、
ブラインドをサポートするアンドロイドとして今回連れてきた。
一応、普通に話す事ができるようで自己紹介を始める。
「俺はダーマだ、マスターに創造された超高性能アンドロイド。
呼び名はそのままで良い、不確定要素を含む言い回しは愚問でな」
「ワタシはアヴィー、彼と同じく創造されしモノ。よろしく」
「マジで人間と見分けがつかねえな、中身どうなってんだ?」
「その質問はここで言えないよ、日が暮れるから。
今日はAI構想であのルンバを落とす会議なんでしょ?」
「この子も最近こっちに異動してきたのよ。
ここの整備もまだ完全じゃないから理解してちょうだい」
「分かってるよ、東京最高峰と比較するのもナンセンスだし。
ただでさえ隠れの身で高望みなんて不可能だから」
「ん、どういう事だ?」
「この子も元、ブレイントラスト所属。
アンドロイド基本設計は向こうで始めていたの」
「なんだと!?」
「という訳」
ミシェルもブレイントラストの研究者だった。
空襲前、向こうで大量の離職者が起きた出来事をきっかけに
良さそうとここへ転勤したらしい。
向こうの評判が駄々下がり、先が無いと早々に判断。
アリシアは早々に稀代の才をもつと見込んで招待し、
アール・ヴォイドへ転勤してきたのだ。
自己紹介もそこそこに、対策のするために何をするのか会議をする。
「で、今回の御題は?」
「まずは、先のクロノスの性質について。
事前に伝えた通り、奴らの概要をつかむ事から始めているけど、
あなた達、アンドロイドの観点からしてこの現象はどう捉えているの?」
「視神経の異常からくる、遅延錯覚だ。
簡単に言えば、視覚に対する残像の誤認。
アドレナリンの分泌が不確定に起こるとそういう現象が発生する」
「モンキーハンティングみたいに、動く残像の誤認は
細くて小さい物ほど起こりやすいものなの。
ワタシ達にとっては、0コンマ秒の視覚作用でも誤認は起こらないけど、
人間にとっては脳内物質の相互作用上、発生することがあるみたい」
「それはスローモーションに見える作用ってこと?」
「そうだな、映像の認識とは光が通る水晶膜を信号化させて
そこに物があると思い込む。より意識を集中すれば認識力も向上し、
位置取りをマス目の様に把握できる。
アドレナリン受容体を視神経と別の物質へ発達させれば、
理論的には0.1秒の世界も認識できるだろう」
「どう、ほとんど人間らしくなったでしょ?」
(素晴らしい・・・)
生物にとっては目に光を受けて周囲の光景を認知する。
緊張感を更に高めて1マス1マスに切り取った画像の様に観させる。
パスカルも内心、AIを感心。
ブラインドは通常より長けた能力を培う算段を立てていた。
状況判断力に長けた兵士を生み出そうと企画。
自衛隊とは違い、大規模な自軍をもっていない組織では高度に
立ち回れる精鋭化で特殊性に頼る他になかったのだ。
少人数ながらにその力を与えれば戦場では大いに役に立つはず。
どんなにわずかな存在も糧を最大限に活用せねばならなかった。
当然、我が子ですら例外ではない。
サップは呆れた顔で小馬鹿にするように発言。
「ま~たずいぶんとぶっとんだ設定だな。
マンガでありがちな“止まって見えるぜ!”が実現すんのか」
「科学者も一度で答えを見つけられるものじゃないの。
何事も仮定、仮説から入って思わぬ道へ辿り着くものなのだから」
「この国のマンガは想像力旺盛だからね。
すぐにポリコレや政治思想が入る向こうと違って、
抽象的独創が実存主義も突き抜けて意外な発見してるもん。
そんな影響でこっちに来た人もけっこういるよ」
「そう、塊は空の思想に塗り替えられて新世代のエネルギー源、
AUROを実現した。追従するかのように他者も求めてきて、
ブレイントラストもそういった変わり者ばかり招集してきた。
私は・・・わずかな可能性すら賭けてみたい」
「と、言いますと?」
「アドレナリン受容体を研究して、あの子にも適用するわ。
空間認知を私達ブラインドが先駆けて実現する」
「息子さんにもですか?」
「ええ・・・」
アンドロイド達には人体実験及び、肉体改造の担当を任せる方針にする。
私は判断力、反射神経を向上させる技術をここで開発して
高度な機動隊員を増やす算段を立てようとした。
向こうにはなかった規格や企画を少しでも計画し、無数の知恵の輪で
引きずり落としていかなければならない。
「ただ、私達の存在はあまり公に出てはいけないの。
一般企業として参加するのは良いけど、
このチームだけは決して口外しないように。
そのためにブラインドというコードネームを設定したのだから」
「自衛隊や政府とは連携しないんだね?」
「ミシェル、あなたも海外から就任してきたと聞いていたから
大丈夫だと思うけど、どこかの公共機関と接触した事はある?
例えば自衛隊方面と関わり合いなどないわね?
アンドロイドAI技術を知人に伝えているとか」
「い、言ってないけど、どうして?」
「ブラインドは人型骨格の製造をかつてブレイントラストと共同して
ロボットを製造してたの。もし、これが自衛隊に情報を回していたら
列島各地に発散してしまう恐れがあるから」
管理の手から離れた者に持て余す技術を与えるのは危険と諭す。
古くの歴史よりこの国は政府から離脱して自衛隊幹部達が斡旋して、
自ら崩壊した事実があるから。続けてミゾレが質問。
「天主殻が襲来する前に販売予定だったキューティードールとかいう
アンドロイド規格にあなたの名があったけど?」
「あ、あれは旧型で異常が出ちゃって販売中止したんだ!
あっちは民間企業で国にAIコードを全部提出してないから大丈夫」
この子に人型規格をやたらと広報させないよう忠告。
兵器関連に繋がるものを外部に出さない注意点を推す。
元から大きな組織に余計な介入をすると逆に利用されて飲み込まれる。
ただでさえ市民と接点の多い側が力を入れようものなら、
ブレイントラストを崩壊させた後にも問題を起こすからだ。
私は以前と同様、政府や自衛隊と共同する気は起きない。
元から神輿に乗る能無しを持ち上げる気など起こらず、
あくまでも頭脳補正、促進のための技術重視。
ダニエルもそういった理想をもって研究に打ち込んでいた。
確かに懐は寂しく覚束ない点もある。
それでも、目立たずに動く必要性が高かった。
「私達は今、混沌と化した世界を終わらせる救世主の集い。
だから、必要最低限の隠密行動で作戦を起こしていくわ」
「わ、分かったよ」
「奴らの技術、情報は多く秘匿されている内に私達が没収させる。
叡知は知識者のために在るべき。
まあ、私情を交えてしまったのは悪かったわね。
今日のところ、提携したい話はこれだけね?」
「はい」
「終わりか、人を超えし者を生み出そうの会だったな」
「冗談はなく私達は未知なる橋をわたるつもりでいく。
会議は一旦終わりにするわ、詳しくは追って連絡する。
まだどこかに生物型がいるかもしれないから帰りに気を付けてね」
「認証した」
「光陰のムラが残るし、ボクも一旦戻るよ。じゃあねー!」
というわけで、今回の議論はこれで終了する。
ミシェル達は不備なしとばかり言って帰っていった。
13歳の身でありながら大人の見識をも上回る技術力と知能に、
サップが腰に手を当てて感慨。
「すごそうな小僧だったな」
「そうね、あの子が向こうに付かなかったのは大きな幸い。
子どもながら先見の明をもっているのは確かよ」
話によると特待生制度に疑問をもって入らなかったらしい。
他にも口うるさい女もいて側にいたくなかったようだ。
食事も惜しんで研究に没頭するあまり身体は人並みより低く、
コミュニケーションも多くなかった節もあったという。
新たに加わった両生類と共に頼りになるメンバーに称賛。
3人もそれぞれの部屋へ戻る、父から連絡がきた。
「「状況はどうかね?」」
「アンドロイド設計者が今こちらに来て会談を終えました。
ブラインド加入に成功、生体工学に配置させる予定です」
「「うむ、かつての引用はどこまでも終わらずに寄せるように」」
「ええ、私も利用できるものは何でも利用するつもりなので」
まだ東京西部で仕事をしている間から段取りを伝えた。
通信を切る、しばらくは下拵えを優先して準備するのを先決。
しばしの休憩をもち、ミシェルの言葉を振り返す。
その何気ない一言を聞いたアリシアはテーブルに肘をつく。
「「ムラが残る・・・か」」
私はカップの中に残るコーヒーのムラを観て思いふける。
経験という斑は脳からそう簡単に離れていかない要素。
無機物は完全に溶けないときがある。
乾き、尖った砂糖がコップを洗おうとする皮膚を傷つけるものだ。
アリの群れがいればあっけなく溶かして持ち去ってゆく。
しかし、小賢しく集るだけではブレイントラストの様に
不意と巨大な塊に踏みつぶされてしまうだけ。
奴らは私の命だけ逃して悠々と去っていった。
残存というものは形として残り、放置された物がむやみに留まらず
時に跳ね返ってくる事を直々に教えてやらねばならない。
0
あなたにおすすめの小説
スプラヴァン!
鳳
SF
西暦2100年。
日本の夏季は50℃付近に達し、超高温注意報が発令される。
異常な熱波で熱中症による外への行動制限が過剰にかかり、
日本各地であらゆるスポーツが中止されてゆく中、
政府はウォーターバトルフィールド開催を宣言。
水鉄砲で打ち合うスポーツを行う壮大な水打ち計画を実施した。
多くの人たちがイベントに乗じて打ち合い、冷涼に愉快する。
体力不足を補おうと、全国学校の科目としても登録。
あたかも、水のごとく国の中に浸透し続けていった。
一方、トウキョウ内で成績が上がらない学校があり、
エアコンに浸りきった気分でうだつが上がらずに向上心もなくなる
児童たちもふえてゆく。
どうにもならず無力にふぬけたところ、1人の転校生がやってきた。
同じく各地方で水にふれ合う者たちも様々な出来事に
巡り会い、少年、少女時代の一時を熱風にゆられて送る。
あの日、楽しかった夏へ。ありえたかもしれない水物語。
この作品は7月1日~8月31日の間のみ投稿します。
季節に合わせて是非お読み下さい。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる