Condense Nation

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4章 ブレイントラスト編

第15話  統制の寵児

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 地上に生物の機体を放ってからしばらく時が過ぎた。
制圧に次ぐ鎮圧で反抗勢力の音も次第に薄まり、戦争はいとも容易く
障害となるものをねじ伏せてかつての旧体制を崩壊。
こちらの危害を受ける間も感じられない。
あらゆる動態を封じる術に空への侵攻が誰にも届かずに、
重力に縛り付けられたまま有無も言わせずに押さえつけ。
事が思うままにいきすぎて恐ろしいまでに事が進んでゆく。


セレファイス 指令室

「まだ反抗が続いておりますか」
「うむ、想定はしていたが、我々すら目にとどかぬ箇所での備蓄を
 どこかで備えているだろう。彼らもプライドをもつプロだ、
 そう簡単に降伏などしないのは分かっている。
 追撃したいところだが、この子の方も見なければな」

 コウシ所長が鷹の目で確認していた下界の状況を述べる。
天裁の成果は破壊と制圧でこなせていたものの、すぐに次の段階へ
ステップアップするにはあまり勧められないと言う。
当然、残存勢力がまだ各地に潜んでいるのは明白で、
そう簡単に降伏する気配を見せないのは想像がついている。
虱潰しらみつぶしに探して壊滅する手段もそうだが、手間も要する。
レイチェルの超小型偵察機ですら列島の隅々まで探索するのも厳しく、
地下などの隠し施設の1つでも造っているはず。
各地の様子として色々な理由で全てにライオットギアを送るのも
少々不都合にあたり、状況としては以下の通りである。

「関東、未だ小規模な戦闘が発生。
 東北、重要設備もほとんど不在で未介入。
 中部、軍備製造組織はすでに壊滅。
 近畿、電工施設関連のエリアのみ壊滅。
 四国、元から軍事施設もなく未介入。
 中つ国、医療法人と自衛隊との接点容疑のある組織のみ壊滅。
 九州、オキナワ国軍との抗戦が活発化。最重要警戒対象継続」

いわゆる軍事関連と思われる場所のみ定めて武力行使できなくなるよう
余計な被害を出さないように襲わせた。
ただ、政府の抵抗は未だにしぶとく籠城ろうじょうして続いており、
容易く征服されないよう画策し続けているのは想定内で、
互いに攻略意識を備える間にAI構築と法を整えておこうと画策する。
赤子を我らの祖へ成し遂げる。
プラチナレプリカント計画の最重要規格を今の内に進めて、
セレファイスを盤石たる存在と機能を完全なものにする必要があった。

「という状況でこちらも武力制圧だけで下界をまとめ上げるのは
 好ましくない。いつまでも同じ行動を繰り返すだけでは
 ひたすら荒れ果てるだけで集合する巣も築かねばならん。
 ネクストシーケンスはマザーシステムの構築だ」
「はい」

問題はまだある、下界に対する法整備もきちんと示す下地もそうで、
天裁も現段階の兵力では物足りずにいずれ全て破壊される。
まだセレファイス内部で製造を続けて増産するためのコントロールも必須で
次は生物型の完全なる行動制御だが、現3000機のみで終えるわけなく
自由繁栄への最終形態へ上り詰めるために成さねばならぬ事。
これからその段取りを行おうとある物を準備した。

「赤子を収容するケースが完成した。
 メディカルポッドと同類タイプで端末と接続できるよう製造、
 指令系統を全て可能とするマザーシステムとゆりかごの融合だ」
「ええ、白金の器と呼称します」

直径30cmの球状の容器は赤子を中央演算処理装置として
セレファイス制御、及び法統率役に収納させる物。
ここ最近行っていた事がそれを製造するためで、
マザーシステムを本格的に構築しようと企画を立てていた。
実はあの子を強奪する以前、アール・ヴォイドからとある情報を
入手していた。直感記憶と思考に関する詳細を調べるべく、
赤子のDNA情報を譲り受けた。
記憶の効率という大脳生理学の一貫としてダニエルとアリシアから
生体センサー企画で承諾してくれたものだ。

もちろん、それは嘘。
直感記憶資質を利用したCPUの創造、最高意思決定機関への創造を
形にして有機型AI構想を下界に導かせる神領域の実現。
全ては赤子をこの器の中で管理、制御するためである。

「内容はメディカルポッドと近しいが、シナプス電位をセレファイス端末に
 接続した中央処理装置の機能か。今まで我々が手作業でまかなってきた事を
 今度からこの子が役割を果たそうとするのだな」
「生物の思考と機械制御、これらが極限に近しい性能を発揮する時、
 ネズミの隙も与えぬ管理体制を築けます。
 有機物と無機物の融合による究極のシステム」
「この赤子はまだ世界を知らぬ。
 大脳が成長しきる前に徹底的に情報を憶えさせる。
 言語、理数、法律、社会学などあらゆる分野を」

シリコンウェーハの代役となるのはこの子の脳。
イオンを注入して半導体状態となるのがシナプス電位の代替であり、
情報を行き来する電気的特性と脳神経を融合した仕様となる。
脳波測定、情報入出力はAUROで過去に開発したアイザックの
ブレインウェイヴアパラビリティリセプターで無線通信。
頭部にヘッドフォンの形状で装着させるので脳に電針を刺さずに済む。
さらにレイチェルの磁性流体でポッド周囲の極板を徹底的に小型化させ、
無数のAIに信号を送れる広域指定技術を組み込む。
ライオットギア製造もアメリアがマニュピレータ部をシステムに
組み込んでこの子が理想とするタイプがあった場合、自由に造らせるよう
自動工場も行わせるように決めた。
当然、最深部駆動だけは脳による最高意思決定機関。
エネルギーはある意味無限、基盤が生物なのだから栄養失調しない限り
死に至らず故障する恐れもほぼ起こらない。
脳は有機体で栄養を与え続ければロストしない限り半永久的に作動できる。
だからとはいえ、乳児に負担のかかる薬剤などすぐに投与できず。
メディカルポッドの調整に沿った成長システムに従う必要もある。
ただ、姿形は我々と等しいものにはなれない。
AUROの電気素子を効率よく流動させるにあたり、余分な行動が
情報管理するにあたって衰えてしまう懸念がみられた。
それは人間と同様の生活ぶりに並ぶ事が適切に足りえない。
腕や脚、胴体がどうしても感覚神経と運動神経の負担が脳に影響を及ぼし、
野生のそれと同化してしまい、記憶行為が活かせなくなる。

「よって、頭部だけを組み込むしかないのだな。
 容器の大きさも直径30cm制限なのは意外だったが」
「素材が用意できたのもその大きさがせいぜいでした、
 高純度のプラチナ条件で人型並みのメディカルポッドを
 用意するにも多額の費用と時間が要るため。
 白金の軸に相応しい存在にするにはこれが限界でした」

決して安物な基盤など用いるわけにはいかなかった。
AURO生成でも完成まで数十年もかかり、この子も成長しきって
通常の人間と平均化してしまうとシステムとして機能できず。
歩き、運動するという行動も脳に負担をもたらすゆえに、
情報吸収の最高率のためには余計な部分をもカット。
コードのみ統制できるよう機械化しなければならないのだ。
ニューロンとシナプスが最も活発な乳児の時期が決め手であり、
セレファイスの中枢機能を果たす役割となる今が勝負。
これさえ乗り越えれば、メインフェイズはほぼ終えたも同然。
世界を統制するべくブレイントラストの核を成すのだ。

(そして、プラチナレプリカントへ。
 生物の高純度たる進化をこうして歩んでゆく)

よくもここまで無謀とも言えるアイデアを生み出したものだ。
やむなき人生の終着点がここに到達するなど、本当に事実は小説より奇なり。
当初は人間の脳はどこまで可能性をもたせるか求め続けてきた。
そこに同胞達の技術に支えられてここまで開発が進んだ。
これは決して御都合などではなく、叡智者の集いと共に
生物達の習性や境遇によって誕生した事実より基づいてきた。
私は無言のまま装置を見続けている。
追求の果てが生物と機器の融合などまったく想定しようもない。
アイザックが主となる子に名称を付けようと言った。

「ところで、この子どもの名はなんていうんですっけ?」
「名前か、そういえばネームプレートにも書かれていなかったな」

本当なら名付けられるはずの赤子を無理やり強奪してきた。
だから無名で当然のはず。CPUは型番号などで十分だと所長が思ったが、
事なかれに発言しようとしたそんな時、アメリアが1つの名前を提案する。

Memeミームっていうのはどう?
 意味は“遺伝子”とか“伝わる”などね」
「良いセンスだな。コードネームは略してMでどうです?」
「・・・・・・」
「主任、聞いてるのー?」
「あ・・・ああ聞いている。ミームか・・・良いぞ」

実は聞き逃していた、本当に機能が果たせるのか気掛かりとなる。
内心に記憶容量ですらどんな人間であろうと限界があるのは当然。
CPUの無機物ですらそうなのに、有機物のタンパク質で覚えるのは
通常では不可能の領域にまで浸透できる特異点があるからだろう。

「じゃあ、略称してMで。よろしくね、Mちゃん♪」

だからとはいえ、遺伝子解析の信憑性はこの時代において
ほぼ98%の正確性をもつので、深く懸念しても意味がない。
いつもの思慮深さ、コウシ所長の発言した終わりなき思想に
また惑わされていたようだ。“メンバーに相談しろ”、こんな簡単な事が
何故いつもするつもりがないのか、コミュニケーション不足の私は
些細ささいな事でおろそかにしているところがある。
また無言でMを見詰める、これから無数の知識を入力する相手に
今できるのは器の適合だけだ、事を見守るのみである。










2か月後

「ギャアアアアアアアアアアアア」
「「ううう・・・ひっく」」
「「ハンパねえなコリャ・・・」」

 Mが悲鳴を上げている、白金の器が“人になるべき型”を押さえつけて
本来の姿、有様を拒絶しているのだ。
球状にさせる理由は脳機能を万全にさせる思考形態維持のため。
腕も脚も無く、動的原理を全て思考に費やすニューロン発達型として
完全に近づく円こそ有機体最高の維持である。
脳を中心部から始めとして360°に拡張されたシナプス小胞で、
直感記憶資質を最大限に引き出させるようにした。
骨格部分は手術でどうにか除去して軟体動物のそれであるが、
肉圧に苦しむこの子に同情を感じ取る暇などない。
自分でも驚くほどに頭が冴えていて、禁忌をもものともせず。
倫理観を頭の隅に追いやったかのような感覚なのであろうか。
何のためらいもなく、対策の指示をだす。

「鎮痛剤を投与せよ、決して器の外に出してはならない」
「了解」

ショック死を起こさせないよう痛みだけは抑えさせる。
あらゆる身体を取り除かれて脳も補おうと失った感覚を赤子に
伝えているのだろう。
可哀想といえばそうだが、偉業を成すためにも異形すらも創造。
この状況では倫理など必要がない。
それはただの二元論にすぎず、コウシ所長が言っていた通りに
成果も後からついてくるので今悩んでも仕方がないので、
自身の感情をも抑えて計画を進めてゆくだけだ。
一時的な善悪に左右されるのみで変革はいつまでも訪れない。
世界を統制するための痛みも必要だ。


10ヶ月後

 Mの肉体は白金の球体にくるまるかの様に丸くなっていた。
個体がその器の適応に成功し、異常反応も起こらない。
もう苦痛で泣き叫ぶ声も出さなくなった。
こういった適応性に関しては、有機物とは柔軟だ。
自分は小さくうなずき、そろそろ次の段階に踏み出す準備を指示した。

「脳波正常値がもう安定し続けてCPUはもう安定期になった。
 Mの脳に更なるプログラムコードを追加する」
「あ、ちょっと待って下さい!
 今ここにはもうケーブルがなくなっていますよ」
「ケーブルならある、格納庫に以前取り寄せていた物が
 まだあったはずだが?」
「あそこにありますよ、取ってきます」

格納庫

 アイザックが隣の部屋へ行って不足分を取りに向かう。
生物型を増産するにはまだまだサーバー増設が必要で、
少しでもMの脳内に伝えるコードを増やさなければならない。
こうしてたまにちょくちょく部品を足しては調整の連続、
不具合が生じないようにうかがっては追加したりもする。
が、届いていた機材を一目見て視線がしばらく止まった。
ピタリと手が止まり、なんだか違和感に思う。

 (ん、このタイプってどこ製だ?)

置いてあったプラグの部品を見て疑問に思う。
セレファイス蜂起前から生物管理所つたいで作らせていた契約会社の
名前が今回だけ別の表記で載っていた。
アライグマ・サップ、なんだか意味不な社名でこんな組織など
一度も見ていなかった気がする。もしかするとアール・ヴォイドの所か、
アリシア関連ならマズイが、管理所とは関わっていないはずだ。
しかし、ケーブルの中身はきちんと作られて通電も可能と思えたから
大丈夫だろうとさほど気にもとめずに主任へ渡した。



「では始めます・・・聴こえるか、M?
 私はクロノス、お前の親である。言っている言葉が分かるか?」
「「ことば・・・わかる」」

まだ1年くらい経っていない間で片言な反応ながらもワードを認識。
実際口がないMの脳波をアンプから発せられた音は確実に
我々の耳の中にまでとどいた。シンプルに言えば濁った合成音声で、
覚えさせた言語の構成を外部に出力させている状態。
ファーストステップとしてもちろん言語から教える。
絵や図などの細かい部分は端末から送信して学ばせた。
本当に一度教えたら二度と忘れない習性は万能者の象徴と例えて
性のありそうな状態で世界のあらゆる分野を直に教えてゆく。


1か月後

 Mはもうすっかり人の言葉を話せるようになっていた。
口調も大人レベルに近い耳聞きで、学者肌の節も感じる。
生物であり機械の制御装置である記憶力の凄まじさに私は目を見張る。

「良く覚えたな、言葉はすでに完璧だ。
 次は生物について学ぼうか」
「「生物情報のコードを認証する」」
「次は法律について学ぼう。数億もあるが、可能だな?」
「「認証可能、覚える」」
「無数の物体がある。
 それぞれを不規則に動作する並列AI処理も学べるか?」
「「おそらく可能、やってみる」」

伝えた情報を難なくスルスルと吸収し続けるM。
忘却ぼうきゃくという現象は一片すら見られずにCPUと同等の様を表して
様子見するメンバー達も前代未聞の能力に、大きな関心をもつ。

「ほほう、これ程の能力・・・脳力だとは」
「本当になんでも憶えてこなせちゃうなんて、
 才能の差に嫉妬しちゃうくらいだわ。
 アイツの悔しがる顔も観たかったかも」
「まるで、父親みたいですね♪
 まあ、俺らが全員親みたいなもんか」
「「もう苦しんでいないですよね・・・グスン、それだけでも十分です」」

メンバー達の言葉通り、父親になった気分そのものを味わう自身がいる。
過去にも乳児の誘拐のケースはあったが、
当事者の気持ちが今となって理解してしまうとは皮肉だ。
しかし、時すでにおそき。
世界の管理のため、ただの誘拐に当てはめる訳にはいかない。
それと、下界に対しての示しもする必要があった。

「そうだ、お前に1つ頼みたい事がある。
 現在、我々はここ、セレファイスに滞在し続けている。
 下界には愚かに知識を正しく活かせない者達がいるのは教えたな?
 そこで理解させてもらうためにアナウンスもしてもらおう」
「「アナウンス? 意味は広報、世間に伝える情報や意義と記述」」
「ああ、法を彼の者達に示しを与えて将来へのいしずえを教え込む。
 必要と不要を完全に選別させる組織を君自身の言葉で
 伝えてもらいたいのだ」
「「必要、不要、残すべきものと捨てるべくもの・・・ヒト科へ」」

以前から下界への通達文をどうすべきか課題の一部でもあった。
我々が下界に降りて直に申し出る方法も考えたが、奇襲を受ける危険性が
圧倒的に強く、インターネットサーバー経由で掲示するのが最善だと
アナウンス法を用いようと決めていた。
そこに足して、新組織は自衛隊と異なる軍事組織ゆえに
現場へ視察する役も必要で残存勢力が完全に消化されているか
確認もしなければならないのだ。

「そこを確認するための目も必要で、
 各地方への組織制御体をどうにかつくれないかと計画している。
 我々は直に行けない、お前の機体制御で監視できるよう考えている」
「「残存、自衛隊・・・新体制の軍事組織。
  元から存在する集まりを・・・つくりかえる」」
「ああ、傲慢、腐敗の蔓延する世界を浄化したい。
 下界の有り様は伝えた通り、もうどうにもならない状況に陥っている。
 例えばだ、モニター越しでもお前の言葉で伝えるシステムを作り、
 我々の在り方を広報した方法が相応しいと考えているのだ」
「「管理、乱れが生じないように整理。
  制御、整理するための動作、方法、仕事。
  目、形として確認のできる範囲、枠」」

単語の意味を1つ1つ挙げて再確認。
もう一度教えて、先は何て言った、などの言葉をまったく使わない。
スルスルと無尽蔵に吸収してゆく様はAUROと同等に比較できると
思いたくなるレベルだ。
もっと教えたいとつい思い込んでしまうものの、
知恵熱発生過多で後期障害が起こってはならない。
さすがに酷だろうから今日は後1つだけにしようと決める。
最後に元親の研究内容も一応伝えておく事にした。










「次はこれについて学んでもらおう。
 電子についてだ、先の原子核に分布する素粒子の件であるが、
 事情で中断された内容がある。我々はそれを金の砂と呼んでいる」
「「金の砂? 原子番号79の元素、第11族元素に属する金属元素。
  金の中にれきの様な粒子は含まれていないはず。
  類似ワードの砂金以外、データベースに記載されてない」」
「砂とは“電子を自由するから”という意味だ。
 自由電子は原子間に束縛されない名称であるが、我々も事情ゆえに
 企画倒れしてしまったものだ。
 かつて安全圏製作として取り掛かっていた研究でな」

金の砂、ダニエルの研究を実子に任せようとさりげなく画策する。
我々5人に詳しい内容を知る者は誰もいないが、
DNA情報を引き出す際に所長が詳細を抜き取っていた。
Mは事情を知らない、ただ与えられた知識を吸収するだけ。
ただ、万能者たるこの子にとって教えておけばいずれ大きな何かを
構築してもらえると踏んでそうしておく。
さすがに逸脱した研究だけあって反応に困る発言をする。

「「分からない、電子殻をどう防壁として扱うのか」」
「そうだな、そこに定義がないので我々も答えを出せない。
 詳細を入力するから見ておいてくれ」
「「見ておく?」」
「これはまだ完成しているのではないのでな。
 すぐにとは言わない。その機会が来れば製造するようにな」

当然、彼の件についてあんまりなので話すつもりもないので
自分達が頓挫とんざしたという事にしておく。
さすがに突然不思議なワードを伝えれば誰でも困惑するだろう。
いくら何でも伝達なしに下界へ物事など導けず。
少々伝える順番が強引すぎかもしれない。
コウシ所長も入力手順が早いと指摘。

「ふふ、いくらこの子とはいえど、未知の技術に対して
 すぐに理解できるはずもないな。少々たかぶりすぎではないか」
「あまりにも情報吸収率が高く、先んじて伝えてしまいました。
 教え癖でもあるのか、やはりエリートの優秀さはどんな障害があろうと
 とても滑らかに解決してくれるような感じがします」

生まれて初めてPCを使った時の感覚。
こちらの命令通りに表示した時の喜びに近しいものを思い出す。
金の砂、カーボンニュートラル構想から防衛機能をもつと聞いていた
ものが私のせいで頓挫してしまったのは確かに残念なところでもある。
だが、計画は計画。危うい立場の当時で、プラチナレプリカント計画に
付き添い、わらをもつかむ様に人生をつかむ他にできない。
だから、代行する者に任せる事で異なる成果を出すしかないのだ。
ダニエルが以前に完成間近と言っていたから、
この子もおそらく優れた遺伝子同様に引き継いでくれるだろう。
高密度な数式を1つ1つ目を凝らす様に、
何の疑いもなく確認していった。

「「保留付き認証」」
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