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4章 ブラインド編
第11話 突入作戦準備
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しばらくの年月を送り、列島は軍事形態を少しずつ整えられて
様々な産業の縮小や紛争機運を見せ始めていった。
各地の街の巨大ディスプレイにMというロゴが表示、
CN法とよばれる新たな法律を訓示しているのを市民達が観ている。
誰しも喜びの表情を見せる者などいない、常に空による脅威を
突き付けられた無数の顔には明日を願う仰ぎだけがとどく。
事実上、政府は天から現れた謎の勢力に完全降伏。
上空への機動力が奪われてしまった現実に成す術もなく
国会や自衛隊は解体され、強引に定められた体制へと変わったのだ。
A.D10年 サド島ブラインド拠点 指令室
そして、人里とも言えない奥に潜む世界の解放を望む者達。
あれからブラインドメンバーも兵力、武力増強に注ぎ入れ続けて
結成から9年かけて準備を整えてゆく。
時間をかけ過ぎたのは否定しない、慎重に事を進める余りに遅くなった
段取りも少人数や技術進展の影響もある。
天を落とそうとしていた別組織の期待もあるにはあったものの、
関与するつもりがない自衛隊の動向も気をうかがっていたが、
完全に解散する知らせが目に入ってきた。
アリシア、ミゾレ、サップも住民の意向が思わしくない方に向いて
孤立された気持ちが込み上がってくる。
「政府はブレイントラストの要求に応じるそうです。
自衛隊も完全に解散、以降はCNに吸収されて身を置くようになります」
「「くっ、結局諦めたのね・・・」」
「あいつらに下っちまうのか、なんか賄賂でもにぎさせたってか?」
「おそらく監視カメラを奴らに乗っ取られたのよ。
奴らが最初に襲ってきた9年前に防衛省に乗りかかってきた機体が
データ抜き取りしてた話を聞いたの。
どれかに、そんな光景でも観られてたんじゃない?」
「最強クラスだったオキナワ国防軍はどうした?
あんだけミサイルぶっ放しに躍起になってたじゃねえか!?」
「撤退、機動停止技術が結局解析できなくなって降伏したわ。
長崎、五島に設置した物もそのまま放置して」
当時はまだAUROの動力も完全とはいえずに仕組みの進む
ブレイントラストが先んじて強制的に止めていたと推測。
おそらくは内部制御できる技術を取得されて抑えられて落とされた。
最後の頼りとされていた琉球の軍も上空への力が及ばずに、
各地の抵抗勢力も無力さに嘆いて天への侵攻を諦めていた。
それどころか政策の賛同者が増加し始めて民間企業もこぞって
軍事形態化が目立って台頭。人口形態もCNに徐々に寄せている。
あれから訴えもほとんど無意味に通用できなかった。
こうなれば後は私達のみで対処するしかない。
“のみ”といっても別エリアでの助っ人も含まれているが。
「オオモリ司令官、通信に出ます!」
「モニター表示して」
「「お待たせして申し訳ない」」
和歌山の責任者も画面越しで参加、もはやワカヤマと変わった中において
彼女の片腕が布で覆われた姿が観える。
中は銀色のセラミックで造られた義手で、会長の一技術によって再現。
こちら側の世界を知るメンバーの1人となった。
今回は直接参加できないものの、スタメン、サポート役として動向を
見守る事にした。アリシアが快く迎えて応答する。
「お待ちしていました、今回のミーティングは明日の実行を元に
平和への第一歩をこれより始めます」
「「御目付けの立場な言い方ですが、見込みはありますかな?」」
「・・・あると推測しています、私達は時代の先駆け。
かの天主殻と関係していた組織の者だったので懐を知っています。
相手に引けを取らない技術力をもつので」
「「合理主義ですね、無駄を削ぎ、代用となりえる存在すらも生み出し、
科学追求の果てに人員不必要とみなした世界が生まれてしまった。
かの目標も必然的に・・・双方による衝突は起こるのでしょう」」
「私達の国はいつもそうしてきました、この国で言うなら目には目を。
エネルギーにはエネルギーを与えるのが現実的措置、
大昔でもあなた方の国に大きな仕打ちをしてしまいました」
「・・・・・・」
意味は原爆投下、あくまでも古い記録の一部である話だが、
戦争は人類創世からも多く行われて私の国もここ列島に干渉。
広島と長崎にそれを落とした歴史があった。
理由は戦争を早く終わらせたかったから、粘着質で執念の塊をもつ
当時の者達を圧する方法がそれしかなかったから。
火薬は光も発する、そこを希望とみなすか絶望かは互いに異なるものだ。
「方法は・・・同じです、これが平和への迅速的方法ですので。
ところで、そちらの方はどれだけ隊員を応援していただけますか?」
「「15人です、機密情報ゆえに信用できる者はそれだけで」」
「わずかでも応じてもらえるのはありがたいです、
ポートも塞がれた今において私軍も満足に至れません」
「「その件について少々お聞きしたい事がございまして、
貴女方の兵装はずいぶんと黒々とした素材でできているようで
どの様にして作成されたのでしょう?」」
「え・・・保温材として用いるためにそういった色ですが。
それが何か?」
「「光沢に見覚えがありまして、波長計測器で安山岩と判明して
おそらく近隣から摂取した可能性があると思ったのです」」
「・・・・・・」
アリシアは沈黙、突如問われた内容に言葉を失う。
七ヶ岳の工房まではさすがに教えていない、黒曜石に関しては
作戦の要でもないので余計な部分まで伝えていなかった。
話によると、以前ミエで磁鉄鉱の加工作業の手伝いをしていた時、
技術が特殊すぎてオオモリ司令官の耳にまでとどいていた。
場所は中部で近畿とは少し離れた所であるが、閉ざされた世界で
資源を巡る争乱が後を絶たずにブラインドも関与していると思われれば
縁を切られるかもしれない。現地から採ってきたなんて口にできず。
老女の真っ直ぐな目線から少しでも逸らせば怪しまれてしまう。
言い訳、誤魔化しとしては別の事で補うしかなかった。
「AURO生成です、一から説明はできませんが現地回収ではなく
空間内部から抽出して製造した物です。
こちらは気候が寒く体温維持のためにそれを必要としていますので」
「「左様ですか、近江の資源ではなかったようですね。
現在、こちらで横領が頻繁に起こって手が付けられなくなって」」
「私達はあなた方の資源にまで手を付けていません、
ここ近年、そちら近畿に足を運んだ事すらありませんけど」
「「そうですか、懸念してしまい申し訳ない」」
一度疑うととめどなく突っかかってくるのが女の執念。
同性どうしの補いを知ってか、ミゾレが追加して補佐。
「安山岩は火成岩の分類で、そちらで多く採取できる物質ではありません。
光沢も類似する種類が多く、無関係な物もあるので見間違いかと」
「「よしなに」」
直接近畿に干渉するような邪魔をするつもりもない。
色々あったのだろうが、実際にやらかした黒はここで明かされずに済む。
彼女に疑う素振りはない、この件は大事もなく終わる。
上もそうだが、下の災いも生まれてくる。
人は元から地上にへばりついて生きている。
重力を意識できずに楽に下を向く傾向にあるからいつまでも続く。
和歌山ですら援護にきてもらえる数が目ぼしい程。
極秘事項だけに一般招集ができないのも当然で、
やはり少人数で太刀打ちしなければならないようだ。
ブラインド隊員Aが入ってきて報告。
ウィーン
「会長が来られました」
「通して」
アリシアがここに来させるように指示、会長が入室した途端に
メンバー達は左右に分かれるように道を空けて迎える。
奥の椅子に座り、作戦開始までの段取りを速やかに確認させて
すぐにでも行えるよう完了の報告を告げた。
「実働部隊、クロノシンメトリー制御に異常なし。
セントラルトライアド、オールグリーン。
AUROエネルギー制御、全て理想値と平常値を温存。
問題なくすぐに出動できる態勢にあります」
「シーケンスは全て確認した、私の側からも異論はない。
皆、組織結成からよく今まで持ち堪えてくれた。
紆余曲折の難題が複数起こるも、達成への段階まで後わずか。
我が娘、そして地上の者達を解放へ導く道標、争いの火を消し伏せる、
いよいよファーストアタックの時が訪れた。
できれば今回で決着を着けたい」
「私達に起こせる企画はこれだけです。
目標にまで接近できる可能性と制圧のみはクリア段階に達せたと」
「うむ、かなりの時間を要したが、それなりの成果が出るはず。
ファーストミッションでどれだけ抑えられるかで今後も決まる。
彼らも内部で事を慎重に進めているだろう。
むやみに動かず、天主殻のわずかな動向も見逃さぬように」
「はい」
部隊に装備させているのは電磁射出するアサルトライフルと、
金属類に影響をもたらす電子炸裂効果をもつグレネード。
スナイパーライフルやガトリングガンはこなせる者が少なく、
設計も電磁式と上手に造れなかったためにそれらのみ。
自衛隊、及び装備庁と関われなかった規格は確かに満足とは言えない。
現実的に相手に通用できるか成果は先の先。
父としてさながらの言葉で、より目標意識が高まる。
こんな感覚になるのも初めてだ、当然なまでに組織をもつのもそうで
責任者を務める重さが感じる。
そして、肝心の作戦内容だが、砲撃の先手は望めない。
典型的な攻撃も歯が立たず、どんなミサイルでも動力をかき消されて
セントラルトライアドでも攻略できる可能性が低い。
よって、ゲートが開いた瞬間に部隊を突入させる。
敵わなかった場合、ケイトのEMIRを後発する手順をとって
一度強制的に封鎖して周囲のどこからか侵入する方法をとる。
しかし、そこも問題がまだある。
どんな手順が最も効率よく進めるのか確定手段がなかなか難しく、
息子を奪還するのもあるが、実行犯も全員捕まえなければならずに
現場介入は破壊だけで終わらせるわけにはいかない。
ミゾレが質問する。
「ところで、5人の連中はどこで捕縛を?」
「ファーストプランはセントラルトライアド突入後に内部で、
セカンドプランはゲート開放後に外に出てきたケース。
サードプランは開放時に天主機が出現して撃滅後に。
穏便に済むならセカンドだけど、どの道なのかは向こうの動向次第。
そうなったらシンプルに出てきた瞬間を捕らえるしかないわね」
「でもよ、あいつら今まで一度でも円盤から出たためしがあったか?
出たら出たでCNの連中にあっけなく御用にされるぜ?」
サップの言うように、ブレイントラストは一度も外出していない。
奇襲時にゲートが開いていた時も出現するのは機体のみ。
AUROの供給でずっと身を潜ませているから結局はこちらから
手を打たない限り、永久に空域より支配されるだけだ。
ゲートの広さは約50m、3機も十分入れるスペースはあるものの、
エンジンを急停止される恐れだけはまだ残る。
理想的な展開であるセカンドなら、炙り出せば良い。
天主機を全て討伐して5人が苦し紛れに何かに搭乗して下界に降りて
悠々と捕縛する算段はすでに打ってあった。
あの下野動物園へある装置を向こうに送り付けていた戦略をとり、
内部のCPUへ干渉する方法を案じていた。
「私が作成したハッキングツールケーブルを内蔵させた物を送付した。
10000kmまで遠隔操作できるソフトでブレイントラストの
マルウェア感染を試みる。コウシ君が用いている物は近年の規格と
ほとんど変わりがなく、彼自身もプログラミングに精通する者でもない。
ミシェル君がこちらに来てくれたので、自律行動に関する研究以外の
ウォールに干渉できる可能性があるだろう。
まあ・・・私に隠れて学んでいたとならば話は別だが」
「ああ、そうか。AIを止めりゃ、あいつらなんもできねえしな、ですね」
「でも、疑問もいくつか浮かび上がりますね。
あんな空中で孤立した奴らが全員寿命でロストした場合、
そこからどのように管理をするつもりでしょうか?」
ミゾレは後継者不足について聞く。
確かに彼女の言うように地上から再びメンバーを選抜する余裕など
あまり考えにくい。強引にアブダクトすれば可能かもしれないが、
通常なら裏切られてあっけなく内部崩壊するはず。
ミシェルという名を耳にしたサップはあの子の様子を聞く。
「そういや、あいつはどうした?」
「自室待機している、もうここに来る体力がないから
モニターメールの送受信でこちらと連携している」
普段から寝たきりのミシェルをここに居させるのも酷で呼んでいない。
23歳の若さでありながら彼の身体は普通の人ではなく、
生まれつきの体質なので私達と同じ扱いにはできなかった。
サップはサボリじゃないかと一瞬疑ったが、事情はすでに前から知っていて
老衰の大変さは自身ですら年季を通じてイヤでも感じてくる。
飯はきちんと口に入れて食え、と何度も注意していたにもかかわらず
点滴だけで栄養を摂取し続けてまともに食事をしていなかった。
そんな時、彼から通信が届いた。
「「こちらミシェル、作戦はまだ始めてないよね?」」
「あなたの意見を無視してまで進めるつもりはないわ。
準備は最終段階、チェックも終わって会議をしている最中よ。
体の調子はどう?」
「「悪いけどボクはここから応援させてもらうよ。
でも、決して寝たきりの役立たずなんかじゃない、
ダーマとアヴィーをそっちに行かせてボクの指示を全部与えたから」」
「大丈夫、無理してもらわなくても良いわ・・・ありがとね」
自動車椅子で来る体力も気力も覚束ないそうだ。
ただ、無能で居座っているわけではなく、身体の代替が2体いるから
天主殻周囲の情報を全て調査させるという。
彼らからして戦略は情報収集、武力解決と同様に少しでも弱点や欠点を
よく発見して有利に導かせる。
会長もいるので今回はほとんど口を開かずに先行きを見守るという。
話を戻して追及すべきブレイントラスト主要メンバーの5人は
支配した理由と目的、今後の理念を果たすために動いているはず。
内の動機の1つとなる生物に関連した件について知りたいものの、
そこが相変わらず理解しがたくヒントもろくにつかめない。
本当に理解し難い理念で結ばれているようだが、真相は闇の中のさらに底。
今日の最終話題として考えられる限りの線を考察する。
「・・・という作戦で以上となります。
他に質問があれば今すぐに聞きますが、ありますか?」
数秒間だけメンバー達は黙る。
オオモリもミシェルも特に発言を始める様子もなく、
作戦内容にこれといった異議を挙げる者はいない。
代わりにサップが別の件について聞き出した。
「作戦の事は良いけどよ、あの・・・生き物にこだわる理由とか
けっこうほっぽりだしたまんまになってるが、どうなんだ?」
「今ここで問う事?」
「そりゃ、奴らふんじばって後から聞きゃ良いだけだけどよ。
あいつらも理念とかこだわりでそういった物を形にしてんだ。
逆に、生物の仕組みから欠点を辿れねえかってな」
毎度のパラドックス感もメンバー達の意表を突く。
天主機も生物から骨格を創造したはずで、関節部などの軋みやすい
箇所への集中攻撃も作戦内容に取り入れている。
しかし、外観があんな隙のない円盤の塊で生物の類似点もうかがえずに
どう欠点を見つけろというのも至難の業だろう。
ミゾレも相変わらず馬鹿な事言うなと最もらしい反論で返す。
「ダーマの報告で真円率100%と近似値込みで言われたあんなのに、
生物の特徴なんてどうこう言われてもどうにもならないわよ。
生物型への対処は前から散々調べて決定していたでしょ?」
「いや、俺が言いてえのは、その、こだわるポイントがどこかにあって、
んで、機械として形にしてっからそんな中に奴らの脆いところとか
あるような気がしてよ」
「だから、その脆弱点も調査してるじゃないの。
もう実行開始前だってのに変な事述べないでよ」
「ぐぬぅん、俺の主張がこんなザマに、珍しく言葉が出ねえ・・・」
つまり、生物関連から洗い出せばもっと良い方法もあるのではと
今更ながらしつこいテーマとして題材にしてきた。
言う通り、せいぜい参考にしたのはクロノスの体質の部分だけ。
いざ、生物の囚われを画期的アイデアにするなんて言っても
マンガやゲームと違って簡単に思いつくわけではない。
通常より生物どころか無機質な塊がそびえている外観だから、
円といった完璧に近い形状の攻略法というのもまた思考を悩ませる。
言い出しっぺすら言い分がまとまっておらずに、
話の内容が次第に明後日の方向へ行きがちになりつつある。
ただ、会長が何か思う節もあるらしく経験談を述べる。
「私も気になってはいたが、コウシ君は反重力以外にAI構想も打ち込んで
機体・・・生物型を機動させたい気持ちをもっていた。
サップ君の懸念も多少のヒントはあるだろう。
確証はないが、おそらくオートソリューションシステムに沿った
何かをアプローチするのではないだろうか」
「そこでチーフの子を利用すんじゃねえのか?」
「ちょっと――!」
「いいわ、サップの言う通りかもしれない。
私の子だもの、直感記憶素質で何かを用いるんでしょう」
ミゾレの忠告をすぐ留めて促す。
私は動揺もなくサップの言い分を受け止めてありえるかもしれない現象を
悟りを含めたように冷静さをもちつつ想定。
ミラーツインと呼称された1人をどうにか利用して完全体に臨むよう
何かしら施しているはずなのはとうに分かっていた。
決して失わない記憶とAIプログラムの関連性を絞って検討しても、
正確な入力や実行精度で管理システムに携わる役割としか限定されず。
またここも答えは見つからない、攻略法に関われないのなら
いくら案じても無駄な時を送るだけだ。
「もう他にはないわね?」
「ないです」
「ないっす」
どんな狙いがあろうと型を全て制圧させれば恐るるに足らず。
そういった形というフレームの様を精神哲学してから塞げば、
後は無機質さとにらめっこする消化試合と同様だ。
もう昔の戦争とは違う、人そのものを傷付けるのではない。
金属へのダメージを主に生物身体への無力化を起こすだけだ。
「5人の捕縛を最優先、終わり次第天主殻の停止と息子の救助。
姿を現したら作戦開始する!」
「了解です」
最終確認を越えて一度メンバーを解散。
ただ、今すぐ入口を塞いでも意味がない。
あの子が人質にされてるから総攻撃など破壊するのは無理。
ケイトの作成したEMIRでゲートだけ先に封じても円盤の動力までは
抑えきれずに我が子をまるごと宙の棺桶に入れてしまうだけだ。
内部にもAURO生成ジェネレーターがあり、無限に生産を続けるので
先に5人全員捕まえなければ無意味で、規格根本を発生させる者を
全て押さえなければ籠城からの製造と繰り返しとなる。
被害者数はどこまで増えてしまうのか不安も残る。
どんな理由にしろ、奪還する結末に変わりなし。
ここまで来るのに10年もかかってしまった。
(あの子も10才になる、この手で取り戻せても私の事を知らない。
母を名乗り、家族として迎え入れて・・・また暮らせるのか)
あの子にとっては向こうが本当の家だと思っているだろう。
カルガモの子の様に刷り込み、思い込んだらそれが全てだと決める。
直感記憶が本物ならば、私の顔も覚えてもらっているはず。
わずかに目だけ開いていた時もあった。
ほんの少しだけ、かすかな間だけだったものの、それだけで
母だと認識してもらえるものなのか。
名前を呼んだら拒絶されずに応答してもらえるのか?
ご飯を作って差し出したらすんなりと食べてもらえるか?
一緒に同じ家で暮らそうと言っても住んでもらえるのか?
淡い願望、実はそうだったという事実が欲しいだけだ。
実際に再会したらどんな顔で迎えてもらえるのか。
私似か、夫似か、生まれたばかりでよく判断できなかった事も
計画が成功したら答えはもうすぐやってくる。
期待と共に不安も混ざり、白金への中へようやく目がとどく。
作戦開始時刻は明日への日付がまさに変わりゆく直後、
あの子がよく見える時間帯である0:00に決定した。
様々な産業の縮小や紛争機運を見せ始めていった。
各地の街の巨大ディスプレイにMというロゴが表示、
CN法とよばれる新たな法律を訓示しているのを市民達が観ている。
誰しも喜びの表情を見せる者などいない、常に空による脅威を
突き付けられた無数の顔には明日を願う仰ぎだけがとどく。
事実上、政府は天から現れた謎の勢力に完全降伏。
上空への機動力が奪われてしまった現実に成す術もなく
国会や自衛隊は解体され、強引に定められた体制へと変わったのだ。
A.D10年 サド島ブラインド拠点 指令室
そして、人里とも言えない奥に潜む世界の解放を望む者達。
あれからブラインドメンバーも兵力、武力増強に注ぎ入れ続けて
結成から9年かけて準備を整えてゆく。
時間をかけ過ぎたのは否定しない、慎重に事を進める余りに遅くなった
段取りも少人数や技術進展の影響もある。
天を落とそうとしていた別組織の期待もあるにはあったものの、
関与するつもりがない自衛隊の動向も気をうかがっていたが、
完全に解散する知らせが目に入ってきた。
アリシア、ミゾレ、サップも住民の意向が思わしくない方に向いて
孤立された気持ちが込み上がってくる。
「政府はブレイントラストの要求に応じるそうです。
自衛隊も完全に解散、以降はCNに吸収されて身を置くようになります」
「「くっ、結局諦めたのね・・・」」
「あいつらに下っちまうのか、なんか賄賂でもにぎさせたってか?」
「おそらく監視カメラを奴らに乗っ取られたのよ。
奴らが最初に襲ってきた9年前に防衛省に乗りかかってきた機体が
データ抜き取りしてた話を聞いたの。
どれかに、そんな光景でも観られてたんじゃない?」
「最強クラスだったオキナワ国防軍はどうした?
あんだけミサイルぶっ放しに躍起になってたじゃねえか!?」
「撤退、機動停止技術が結局解析できなくなって降伏したわ。
長崎、五島に設置した物もそのまま放置して」
当時はまだAUROの動力も完全とはいえずに仕組みの進む
ブレイントラストが先んじて強制的に止めていたと推測。
おそらくは内部制御できる技術を取得されて抑えられて落とされた。
最後の頼りとされていた琉球の軍も上空への力が及ばずに、
各地の抵抗勢力も無力さに嘆いて天への侵攻を諦めていた。
それどころか政策の賛同者が増加し始めて民間企業もこぞって
軍事形態化が目立って台頭。人口形態もCNに徐々に寄せている。
あれから訴えもほとんど無意味に通用できなかった。
こうなれば後は私達のみで対処するしかない。
“のみ”といっても別エリアでの助っ人も含まれているが。
「オオモリ司令官、通信に出ます!」
「モニター表示して」
「「お待たせして申し訳ない」」
和歌山の責任者も画面越しで参加、もはやワカヤマと変わった中において
彼女の片腕が布で覆われた姿が観える。
中は銀色のセラミックで造られた義手で、会長の一技術によって再現。
こちら側の世界を知るメンバーの1人となった。
今回は直接参加できないものの、スタメン、サポート役として動向を
見守る事にした。アリシアが快く迎えて応答する。
「お待ちしていました、今回のミーティングは明日の実行を元に
平和への第一歩をこれより始めます」
「「御目付けの立場な言い方ですが、見込みはありますかな?」」
「・・・あると推測しています、私達は時代の先駆け。
かの天主殻と関係していた組織の者だったので懐を知っています。
相手に引けを取らない技術力をもつので」
「「合理主義ですね、無駄を削ぎ、代用となりえる存在すらも生み出し、
科学追求の果てに人員不必要とみなした世界が生まれてしまった。
かの目標も必然的に・・・双方による衝突は起こるのでしょう」」
「私達の国はいつもそうしてきました、この国で言うなら目には目を。
エネルギーにはエネルギーを与えるのが現実的措置、
大昔でもあなた方の国に大きな仕打ちをしてしまいました」
「・・・・・・」
意味は原爆投下、あくまでも古い記録の一部である話だが、
戦争は人類創世からも多く行われて私の国もここ列島に干渉。
広島と長崎にそれを落とした歴史があった。
理由は戦争を早く終わらせたかったから、粘着質で執念の塊をもつ
当時の者達を圧する方法がそれしかなかったから。
火薬は光も発する、そこを希望とみなすか絶望かは互いに異なるものだ。
「方法は・・・同じです、これが平和への迅速的方法ですので。
ところで、そちらの方はどれだけ隊員を応援していただけますか?」
「「15人です、機密情報ゆえに信用できる者はそれだけで」」
「わずかでも応じてもらえるのはありがたいです、
ポートも塞がれた今において私軍も満足に至れません」
「「その件について少々お聞きしたい事がございまして、
貴女方の兵装はずいぶんと黒々とした素材でできているようで
どの様にして作成されたのでしょう?」」
「え・・・保温材として用いるためにそういった色ですが。
それが何か?」
「「光沢に見覚えがありまして、波長計測器で安山岩と判明して
おそらく近隣から摂取した可能性があると思ったのです」」
「・・・・・・」
アリシアは沈黙、突如問われた内容に言葉を失う。
七ヶ岳の工房まではさすがに教えていない、黒曜石に関しては
作戦の要でもないので余計な部分まで伝えていなかった。
話によると、以前ミエで磁鉄鉱の加工作業の手伝いをしていた時、
技術が特殊すぎてオオモリ司令官の耳にまでとどいていた。
場所は中部で近畿とは少し離れた所であるが、閉ざされた世界で
資源を巡る争乱が後を絶たずにブラインドも関与していると思われれば
縁を切られるかもしれない。現地から採ってきたなんて口にできず。
老女の真っ直ぐな目線から少しでも逸らせば怪しまれてしまう。
言い訳、誤魔化しとしては別の事で補うしかなかった。
「AURO生成です、一から説明はできませんが現地回収ではなく
空間内部から抽出して製造した物です。
こちらは気候が寒く体温維持のためにそれを必要としていますので」
「「左様ですか、近江の資源ではなかったようですね。
現在、こちらで横領が頻繁に起こって手が付けられなくなって」」
「私達はあなた方の資源にまで手を付けていません、
ここ近年、そちら近畿に足を運んだ事すらありませんけど」
「「そうですか、懸念してしまい申し訳ない」」
一度疑うととめどなく突っかかってくるのが女の執念。
同性どうしの補いを知ってか、ミゾレが追加して補佐。
「安山岩は火成岩の分類で、そちらで多く採取できる物質ではありません。
光沢も類似する種類が多く、無関係な物もあるので見間違いかと」
「「よしなに」」
直接近畿に干渉するような邪魔をするつもりもない。
色々あったのだろうが、実際にやらかした黒はここで明かされずに済む。
彼女に疑う素振りはない、この件は大事もなく終わる。
上もそうだが、下の災いも生まれてくる。
人は元から地上にへばりついて生きている。
重力を意識できずに楽に下を向く傾向にあるからいつまでも続く。
和歌山ですら援護にきてもらえる数が目ぼしい程。
極秘事項だけに一般招集ができないのも当然で、
やはり少人数で太刀打ちしなければならないようだ。
ブラインド隊員Aが入ってきて報告。
ウィーン
「会長が来られました」
「通して」
アリシアがここに来させるように指示、会長が入室した途端に
メンバー達は左右に分かれるように道を空けて迎える。
奥の椅子に座り、作戦開始までの段取りを速やかに確認させて
すぐにでも行えるよう完了の報告を告げた。
「実働部隊、クロノシンメトリー制御に異常なし。
セントラルトライアド、オールグリーン。
AUROエネルギー制御、全て理想値と平常値を温存。
問題なくすぐに出動できる態勢にあります」
「シーケンスは全て確認した、私の側からも異論はない。
皆、組織結成からよく今まで持ち堪えてくれた。
紆余曲折の難題が複数起こるも、達成への段階まで後わずか。
我が娘、そして地上の者達を解放へ導く道標、争いの火を消し伏せる、
いよいよファーストアタックの時が訪れた。
できれば今回で決着を着けたい」
「私達に起こせる企画はこれだけです。
目標にまで接近できる可能性と制圧のみはクリア段階に達せたと」
「うむ、かなりの時間を要したが、それなりの成果が出るはず。
ファーストミッションでどれだけ抑えられるかで今後も決まる。
彼らも内部で事を慎重に進めているだろう。
むやみに動かず、天主殻のわずかな動向も見逃さぬように」
「はい」
部隊に装備させているのは電磁射出するアサルトライフルと、
金属類に影響をもたらす電子炸裂効果をもつグレネード。
スナイパーライフルやガトリングガンはこなせる者が少なく、
設計も電磁式と上手に造れなかったためにそれらのみ。
自衛隊、及び装備庁と関われなかった規格は確かに満足とは言えない。
現実的に相手に通用できるか成果は先の先。
父としてさながらの言葉で、より目標意識が高まる。
こんな感覚になるのも初めてだ、当然なまでに組織をもつのもそうで
責任者を務める重さが感じる。
そして、肝心の作戦内容だが、砲撃の先手は望めない。
典型的な攻撃も歯が立たず、どんなミサイルでも動力をかき消されて
セントラルトライアドでも攻略できる可能性が低い。
よって、ゲートが開いた瞬間に部隊を突入させる。
敵わなかった場合、ケイトのEMIRを後発する手順をとって
一度強制的に封鎖して周囲のどこからか侵入する方法をとる。
しかし、そこも問題がまだある。
どんな手順が最も効率よく進めるのか確定手段がなかなか難しく、
息子を奪還するのもあるが、実行犯も全員捕まえなければならずに
現場介入は破壊だけで終わらせるわけにはいかない。
ミゾレが質問する。
「ところで、5人の連中はどこで捕縛を?」
「ファーストプランはセントラルトライアド突入後に内部で、
セカンドプランはゲート開放後に外に出てきたケース。
サードプランは開放時に天主機が出現して撃滅後に。
穏便に済むならセカンドだけど、どの道なのかは向こうの動向次第。
そうなったらシンプルに出てきた瞬間を捕らえるしかないわね」
「でもよ、あいつら今まで一度でも円盤から出たためしがあったか?
出たら出たでCNの連中にあっけなく御用にされるぜ?」
サップの言うように、ブレイントラストは一度も外出していない。
奇襲時にゲートが開いていた時も出現するのは機体のみ。
AUROの供給でずっと身を潜ませているから結局はこちらから
手を打たない限り、永久に空域より支配されるだけだ。
ゲートの広さは約50m、3機も十分入れるスペースはあるものの、
エンジンを急停止される恐れだけはまだ残る。
理想的な展開であるセカンドなら、炙り出せば良い。
天主機を全て討伐して5人が苦し紛れに何かに搭乗して下界に降りて
悠々と捕縛する算段はすでに打ってあった。
あの下野動物園へある装置を向こうに送り付けていた戦略をとり、
内部のCPUへ干渉する方法を案じていた。
「私が作成したハッキングツールケーブルを内蔵させた物を送付した。
10000kmまで遠隔操作できるソフトでブレイントラストの
マルウェア感染を試みる。コウシ君が用いている物は近年の規格と
ほとんど変わりがなく、彼自身もプログラミングに精通する者でもない。
ミシェル君がこちらに来てくれたので、自律行動に関する研究以外の
ウォールに干渉できる可能性があるだろう。
まあ・・・私に隠れて学んでいたとならば話は別だが」
「ああ、そうか。AIを止めりゃ、あいつらなんもできねえしな、ですね」
「でも、疑問もいくつか浮かび上がりますね。
あんな空中で孤立した奴らが全員寿命でロストした場合、
そこからどのように管理をするつもりでしょうか?」
ミゾレは後継者不足について聞く。
確かに彼女の言うように地上から再びメンバーを選抜する余裕など
あまり考えにくい。強引にアブダクトすれば可能かもしれないが、
通常なら裏切られてあっけなく内部崩壊するはず。
ミシェルという名を耳にしたサップはあの子の様子を聞く。
「そういや、あいつはどうした?」
「自室待機している、もうここに来る体力がないから
モニターメールの送受信でこちらと連携している」
普段から寝たきりのミシェルをここに居させるのも酷で呼んでいない。
23歳の若さでありながら彼の身体は普通の人ではなく、
生まれつきの体質なので私達と同じ扱いにはできなかった。
サップはサボリじゃないかと一瞬疑ったが、事情はすでに前から知っていて
老衰の大変さは自身ですら年季を通じてイヤでも感じてくる。
飯はきちんと口に入れて食え、と何度も注意していたにもかかわらず
点滴だけで栄養を摂取し続けてまともに食事をしていなかった。
そんな時、彼から通信が届いた。
「「こちらミシェル、作戦はまだ始めてないよね?」」
「あなたの意見を無視してまで進めるつもりはないわ。
準備は最終段階、チェックも終わって会議をしている最中よ。
体の調子はどう?」
「「悪いけどボクはここから応援させてもらうよ。
でも、決して寝たきりの役立たずなんかじゃない、
ダーマとアヴィーをそっちに行かせてボクの指示を全部与えたから」」
「大丈夫、無理してもらわなくても良いわ・・・ありがとね」
自動車椅子で来る体力も気力も覚束ないそうだ。
ただ、無能で居座っているわけではなく、身体の代替が2体いるから
天主殻周囲の情報を全て調査させるという。
彼らからして戦略は情報収集、武力解決と同様に少しでも弱点や欠点を
よく発見して有利に導かせる。
会長もいるので今回はほとんど口を開かずに先行きを見守るという。
話を戻して追及すべきブレイントラスト主要メンバーの5人は
支配した理由と目的、今後の理念を果たすために動いているはず。
内の動機の1つとなる生物に関連した件について知りたいものの、
そこが相変わらず理解しがたくヒントもろくにつかめない。
本当に理解し難い理念で結ばれているようだが、真相は闇の中のさらに底。
今日の最終話題として考えられる限りの線を考察する。
「・・・という作戦で以上となります。
他に質問があれば今すぐに聞きますが、ありますか?」
数秒間だけメンバー達は黙る。
オオモリもミシェルも特に発言を始める様子もなく、
作戦内容にこれといった異議を挙げる者はいない。
代わりにサップが別の件について聞き出した。
「作戦の事は良いけどよ、あの・・・生き物にこだわる理由とか
けっこうほっぽりだしたまんまになってるが、どうなんだ?」
「今ここで問う事?」
「そりゃ、奴らふんじばって後から聞きゃ良いだけだけどよ。
あいつらも理念とかこだわりでそういった物を形にしてんだ。
逆に、生物の仕組みから欠点を辿れねえかってな」
毎度のパラドックス感もメンバー達の意表を突く。
天主機も生物から骨格を創造したはずで、関節部などの軋みやすい
箇所への集中攻撃も作戦内容に取り入れている。
しかし、外観があんな隙のない円盤の塊で生物の類似点もうかがえずに
どう欠点を見つけろというのも至難の業だろう。
ミゾレも相変わらず馬鹿な事言うなと最もらしい反論で返す。
「ダーマの報告で真円率100%と近似値込みで言われたあんなのに、
生物の特徴なんてどうこう言われてもどうにもならないわよ。
生物型への対処は前から散々調べて決定していたでしょ?」
「いや、俺が言いてえのは、その、こだわるポイントがどこかにあって、
んで、機械として形にしてっからそんな中に奴らの脆いところとか
あるような気がしてよ」
「だから、その脆弱点も調査してるじゃないの。
もう実行開始前だってのに変な事述べないでよ」
「ぐぬぅん、俺の主張がこんなザマに、珍しく言葉が出ねえ・・・」
つまり、生物関連から洗い出せばもっと良い方法もあるのではと
今更ながらしつこいテーマとして題材にしてきた。
言う通り、せいぜい参考にしたのはクロノスの体質の部分だけ。
いざ、生物の囚われを画期的アイデアにするなんて言っても
マンガやゲームと違って簡単に思いつくわけではない。
通常より生物どころか無機質な塊がそびえている外観だから、
円といった完璧に近い形状の攻略法というのもまた思考を悩ませる。
言い出しっぺすら言い分がまとまっておらずに、
話の内容が次第に明後日の方向へ行きがちになりつつある。
ただ、会長が何か思う節もあるらしく経験談を述べる。
「私も気になってはいたが、コウシ君は反重力以外にAI構想も打ち込んで
機体・・・生物型を機動させたい気持ちをもっていた。
サップ君の懸念も多少のヒントはあるだろう。
確証はないが、おそらくオートソリューションシステムに沿った
何かをアプローチするのではないだろうか」
「そこでチーフの子を利用すんじゃねえのか?」
「ちょっと――!」
「いいわ、サップの言う通りかもしれない。
私の子だもの、直感記憶素質で何かを用いるんでしょう」
ミゾレの忠告をすぐ留めて促す。
私は動揺もなくサップの言い分を受け止めてありえるかもしれない現象を
悟りを含めたように冷静さをもちつつ想定。
ミラーツインと呼称された1人をどうにか利用して完全体に臨むよう
何かしら施しているはずなのはとうに分かっていた。
決して失わない記憶とAIプログラムの関連性を絞って検討しても、
正確な入力や実行精度で管理システムに携わる役割としか限定されず。
またここも答えは見つからない、攻略法に関われないのなら
いくら案じても無駄な時を送るだけだ。
「もう他にはないわね?」
「ないです」
「ないっす」
どんな狙いがあろうと型を全て制圧させれば恐るるに足らず。
そういった形というフレームの様を精神哲学してから塞げば、
後は無機質さとにらめっこする消化試合と同様だ。
もう昔の戦争とは違う、人そのものを傷付けるのではない。
金属へのダメージを主に生物身体への無力化を起こすだけだ。
「5人の捕縛を最優先、終わり次第天主殻の停止と息子の救助。
姿を現したら作戦開始する!」
「了解です」
最終確認を越えて一度メンバーを解散。
ただ、今すぐ入口を塞いでも意味がない。
あの子が人質にされてるから総攻撃など破壊するのは無理。
ケイトの作成したEMIRでゲートだけ先に封じても円盤の動力までは
抑えきれずに我が子をまるごと宙の棺桶に入れてしまうだけだ。
内部にもAURO生成ジェネレーターがあり、無限に生産を続けるので
先に5人全員捕まえなければ無意味で、規格根本を発生させる者を
全て押さえなければ籠城からの製造と繰り返しとなる。
被害者数はどこまで増えてしまうのか不安も残る。
どんな理由にしろ、奪還する結末に変わりなし。
ここまで来るのに10年もかかってしまった。
(あの子も10才になる、この手で取り戻せても私の事を知らない。
母を名乗り、家族として迎え入れて・・・また暮らせるのか)
あの子にとっては向こうが本当の家だと思っているだろう。
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一緒に同じ家で暮らそうと言っても住んでもらえるのか?
淡い願望、実はそうだったという事実が欲しいだけだ。
実際に再会したらどんな顔で迎えてもらえるのか。
私似か、夫似か、生まれたばかりでよく判断できなかった事も
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