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4章 ブラインド編
第10話 濁流と飛沫
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イワテCN 役場
会長とアリシアは東北にある役場に着く。
今日は岩手に来てCNの関係者と対談をしにやってきた。
この方面も議会関連は全て解体され、散開した自衛隊によって管理。
最低限の衣食住のみ優先してどうにか住処だけは整えている。
あれから各地方を回り、視察と訴えを行い続けてきたが
一応、説得巡回は一旦これで終わりにするつもり。
会長の足の都合もあり、これ以上各地を回る事ができなくなる。
事前にアポをとっていた場所でいつもの同じく司令官と会合。
入口から通されて部屋には3人の男達が座っていた。
「こんにちは、再生機構のイゼルファーですが」
「お待ちしておったぞ」
「あー、どーも」
「こんちはっす」
野太い声をした岩手司令官に迎えられる。
そして、山形と宮城の司令官もいた。
近隣といえど、敵対関係であるはずがどういう訳か一緒に応対。
今回は土地再生機構という名目で紛争解決を図る立場を演じて、
東北の現状を話してくれるそうだ。
「忙しい中、一企業の私達に応じてもらえてありがとうございます。
どうしても重要事項なものだけあり、直に訴えたいので」
「わざわざここまでご足労かける。
そうかしこまらんでも良い、こちらも出来る限りの事を話してあげよう」
「お気になさらずどーぞ」
岩手CN司令官、ローレンシュタインと名乗る男がそう告げる。
横2人と異なり、かなりの風格をもつ者が現在の東北を取り仕切ると言う。
現在、ここは約123万人と東北で最も多い数を誇り、
安全面も考慮して人口の大きなエリアで迎えられた。
私達が会談する場所をここに指定したのも威厳を示すつもりか、
集合体の中で封じて囲う様に招かれた感じもある気がする。
しかし、同盟していないのに周囲に対して敵対するつもりもなく、
こうして3人の責任者がこぞって一緒にいる時点で妙だと思った。
事情は以下の内容で明らかとなる。
「まだ周囲と同盟をするつもりがないと?」
「うむ、貿易面でも不透明な点もあるが、表面上では連結を行わず
独立分散を保ちつつ産業を推し進めててゆくつもりだ。
理由は少数精鋭からの発展、資源温存と高質職人体制のみ整えてから
飽和から併合する事で関東を始めとした他地方に警戒されにくく思わせて、
敵意を感じさせないよう配慮する」
「他地方に併合される恐れもあるのでは?」
「そこの心配はしていません、我々は常に東北全域を意識してまして
司令官どころか重要産業間も敵意無しと認識させてます。
フクシマとホッカイドウは少々難がありますが、
先の理由で意識の一体感をもってやっていきますから」
「いずれは同盟を行うつもりでしょうか?」
「ええ、しますね。でも、タイミングが大事なんで他地方が侵攻とか
来ない限り放置が有効性あるかなってそのままにして、
今はこうやって持ちつ持たれつやってます」
というスムーズ感のある理由を語る。
近畿と異なり、ずいぶんと飄々な言い方で身を置いていた。
ここは他地方に対する動向にあまり大きな関心をもたず、
向こうから侵攻などしない限り干渉する行為をしないようだ。
今回青森、秋田、福島、北海道の者が参加していないのが気になったが、
これまた大した事情もなく単に来られなかったらしい。
「そうだったのですね、過剰な連結で脅威だと思わせない案。
武力増強をあえて薄れさせて敵意を見せない方法ですか」
「イキナリ戦えって言われてもすんなり認めるわけないですからね。
ただでさえ自衛隊員も少ないですし、僕らがどうにか不安にさせないよう
生活を保障させて自生産だけは維持させてます。
多分、どこも同じようにやってるはずですので」
「ただ、まったく問題がないわけでもない。
敵性がこちらに来ないなどの保障だけはしかねないので、
他地方による資源強奪、横領はあってはならぬ事。
市民達の不安を感じさせぬよう既存の組織内から武力を生み出す。
交通機関はこちらなりの方針をもって新設するつもりだ」
「それは気になりますな、機関とは――?」
「誘い込み上手ですな、これは公開しても構わん情報だから良いな」
「鉄道兵団です、詳しくは明かせないとこありますけど、
ちょっとおいら達には考えあってやる計画もあるんす」
彼らは一帯に列車兵装を配置する予定をもつと言った。
鉄道は以前からすでに敷かれていた交通路で一部のみ線路を断絶して、
東北の安全維持と交易を穏便に行う計画を立ててかつての関東に学び、
発展への円滑化を実施しようと考えているという。
現在、関東から東北まで路線が引かれて行き来できていたが、
CN制定から断絶して福島付近は全て通行止め。
交通規制も変革されたので地方による円滑な動きを抑えていた。
東京の元幹部がいたというのも意外だったが、鉄道路線を一度破棄して
鉄道兵団として治安維持を務めようと改めて活動する。
それを関東が本当に理解できるのか心配さもあるが、
私達はこれ以上関われないのでテーマの中心まで杭入れなかった。
そして、私達は本題に入る。
肝心のCNという組織を解散するよう伝えた。
「という理由により、私達はCNを解散するよう要請します。
解析した規格で電磁妨害を回避し、当該物のゲートは塞がれ、
天主殻は危険性がなくなるので武力行使を中止して頂きたい」
「源はあるんですか?」
「海外派遣より新たに天主殻を制圧する部隊が対処します。
対空ユニットに特化したエキスパートチームが近日来国する予定で」
「組織の場所はどこですか?」
「私達はカットアウトを通じて従事する者なので詳細が不明で、
クライアント側も身分を他に明かさないよう要請されているので」
「身元不明の組織に仕えている危険性をもっていないんですか?」
「大元は政府管轄なのでテロリストの類ではありません。
天主殻解放のために派遣された者であります」
「しかし、自衛隊でもそのような連絡、アポは取っていなかったはずだが?
混乱に乗じて来た密偵、スパイなど列島侵犯ではないのかね?」
「そこは・・・侵犯目的ではないのは断定できますが」
「考えられるとしたらオキナワ国軍かサドガ島のポートかな、
断定できるソースも証明できる物とか所持してませんよね。
あなた方、本当にどこから来たんですか?
すいませんが、実際やってる何か身分証明書を見せてほしいんですけど?」
重箱の隅をつつく様に指摘。
自衛隊の地理情報を基に来国事情を事細かく精査して調べるように聞く。
他の連中と違ってやたらと根掘り葉掘りに立場の底をうかがってくる。
サドガの名称に一瞬焦りを感じてしまう。
ブラインドの存在だけは知られるわけにはいかないので、
アリシアが表向きとなるアール・ヴォイドの名刺を差し出す。
「補正部品開発会社?」
「はい、私達は天主殻支配によって事業を解体されてしまい、
各地を回って物品提供と引き換えに平和的解決のため、
先の海外交渉人兼任も行っております」
と、いつもながらの建前で仮身分を見せる。
一方的な口論ではいつまでも応じてもらえないので、貿易面を示して
攻撃的なタクティカルマウントを和らげて解消させるのが最善。
金銭はP通貨に変わった点だけは素直に従って波風は立てない。
主なAURO製造も時として差し出さなければならないが、
私軍と計画だけは絶対に明かすわけにはいかない。
彼らに名刺を渡して身元不明な疑いの目を和らげさせる。
しかし、ミヤギ司令官が不審があると指摘してきた。
「あれ、アール・ヴォイドってトウキョウ西部にある会社ですよね?
確かアレかな・・・ライフルのスコープレンズで良いの探してて
おいら、昔そこへ行った事あって見学とか備品発注したんすよ」
「そう・・・ですが?」
「あなた、さっき再生機構とおっしゃってましたよね?
そこの会社って自生産だけで他国への羽伸ばししてないから、
海外政府との提携は一度もやってなかったはずです、直に聞きました。
再生機構は内閣が以前企画したけど、貿易十分で不必要となって
もう解散して終わっていたはずですね。編成再開したとしても
今は封鎖されて行き来できないのに、何か食い違ってませんか?」
(くっ!)
鋭い指摘を放ち、口が動かなくなる。
唇の太い男の言うように、確かにアール・ヴォイドに子会社はなく
会長の代から始まった組織だ。男の言う通りこの時代で貿易などできずに、
よりによって自衛隊の者がかかりつけて関わっていたとは
さすがに予測できない。ここから先の言い訳まで考えてこなかった。
このままではブラインドの事が気付かれる。
その時、会長は顔つきを変えて発言した。
「ですが、10年に渡る期間を経て事業を鞍替え。
我々は伝道師となって企画を変え、生まれ変わりました。
少しでも事態解決のために活動しようと――」
「事もあろうに伝道師って飛躍し過ぎじゃないですか?
元部品開発事業団なら普通は工場とか各地営業するものでは?」
「飛翔したのです、営業を終えてまでノレンを下げて今に至り!
あなた方の国はあんな詭弁に騙されるような世界ではない。
ここ東北も独特な文化、文芸品もおありでしょう!?
地域紛争などで場を図らずに創造で広がるべきなのです!
だから、私達は各地へ足を運び、隔離を止めようと回っているのです!
失った行動力を再び活性させるために」
「・・・・・・」
室内が静まる。
70歳の人生経験者による見識は強く、有権者すら一越えして覆う。
気迫と内容を一緒に交ぜた会長の説得に3人が止まった。
ほんの数十秒経ったか、ローレンシュタインが深く追及するのを止めて
あっけにとられた2人を後ろに両手で抑えの仕草をする。
「まあ、お気持ちは理解した。無数のメーカーが倒産してしまい
わずかな伝手を辿って必死で再構成したのも無理はなかろう。
しかし、やはりCN解散は応じられん」
「どうしても無理ですか?」
「近年の政治形態に、地方も限界を感じてきた。
あなた方同様、こちらは元から仕事不足に苦しまされてきて
超科学合理主義による分別化は人の報いすら奪う。
元自衛隊、トウキョウ役員の身であった我々も理不尽を強いられて
ようやくここに再起をもてるようになったのだ。
関東、トウキョウの独善的行為は私達において決して許されざる事。
冷たく厳しい環境下で生きてきた経験は譲れない思いがあるのでな」
何か確執でもあるのか、かつての仲間とは相容れるつもりがないと言う。
列島の中心地とも言えた東京との分断は政治の指揮系統から離れ、
本当に独立を図りたかったそうだ。科学の発展で人手が次々と省略され、
不要とみなされた地方から貧困にあえぐ者も少なくない。
自衛隊幹部どうしでも確執があり、他地方と連携する意思すらもたずに
東北一帯だけで独立したがっているとの事。
「だから、もうあの時を繰り返したくはない。
人は必ず端からこぼれ落ち、一極集中に生きる事は不可能。
CNを通して真の意味で生活の二文字を成立させられるのだ。
天主殻が一度攻撃したのは事実。
しかし、提唱した管理制度は多くの者の活躍を促し、暴力者の立場も
似た者同士で悠々と効率よく削り取ってもらえる。
まさに完全、集合という巣こそ人間という生物の在り方なのだ。
東北を攻撃された所はほとんどなかった、それは無実の罪でもある証。
御上は傲慢なる地上の者達のみ選別して裁きを与えて頂いたのだ。
今回、我々の供述はこれまでとする。
今日のところはお引き取り願いたい・・・」
「・・・理解しました、ではこれで」
諦めた様にゆっくりとした動きで席を立って部屋を後にする。
身分は会長の機転で正体が知られずに済んだ。
執拗に追及する彼らの質問にやっとやっとの答弁で誤魔化せたのは幸い。
とはいえ、CNは解散させられずにろくな成果があげられずに
門前払いを受けたのと同様だろう。
「「どこも応じてくれん・・・」」
「「やはり・・・私達だけでやるしか」」
結局、ワカヤマCNのオオモリ以外、手を組む者はいなかった。
東京への猜疑心は相当で各地方の組織は斡旋や独占からの解放こそ
大きく願ってCN化に頼ってしまったようだ。
凝結し過ぎた果てにヒビ割れが生じて砕けた塊の様。
想定していたよりもブラインドのメンバーが少なくなる。
彼らの言葉の通り空気も冷たく、人の熱がますます薄れてゆく様な
体感をもたらされている気がしてならなかった。
サド島 ブラインド拠点指令室
「な・・・後、3年もかかんのかよ」
「ハッキングツールがまだ完全に構築できてないのよ、
パスカルと共同で進めてきたコードに不一致する部分が出ちゃって。
ミシェルもほとんどここまで来なくなって参加どころじゃなく、
オオモリさんも今、向こうで仕事が増えたって」
サップはミゾレの報告を聞いて顔を歪める。
天主殻への停止計画までもうしばらく時を必要とするとの事で、
作戦開始までまた準備を延ばすと伝えられた。
3年という意味は主にプログラム構築を含めたものが大半、
マルウェアを有効化できる可能性を極力活かすために侵入コードを
組んできたものの、まだ完成まで持ち込めずにいる。
他もCNの事情が整理しきれずに人員管理が難しく、
ワカヤマの司令官も今、地元で問題が起きてこちらに関わる余裕もなく、
関係者達が一致して挑める万端がベストだという。
が、それぞれでまた問題も生じてこちらに手が足りずに
ブラインドメンバーがまとまれずに細かなところが不足。
くまなく見張らせていようと必ずどこかで不備が生じて対応に追われる。
いつもやらかして見つかった経験があるだけあって後の事ばかり
気にしていたサップが拠点の安否をうかがう。
「前もあったが、いきなりガタガタが起きちまって
頭脳派と行動派の間でズレが出てるんじゃねえのか?
部隊の連中もいつ任務始まんだって文句言ってるぞ」
「そんな事言ったってどうしようもないじゃない。
規格もオールクリアできなきゃ実戦配備に着けられないし、
チーフだってそこも念入りにみてるから妥協できないの」
「物作りを先に終わらせとけっての・・・まあ、すんなりといかねえな。
実働部隊の方はこれといった大きな問題はねえな。
後は、特殊能力追加計画とかオレツエー移植はどうなんだ?
連中の肉体改造計画とかもできてんのか?」
「クロノシンメトリー規格も脳神経外科医に頼んでやってるけど、
銃弾を避けるくらいのレベルに達せるみたい。もちろん無敵じゃないし、
生身で太刀打ちできるわけじゃないから兵器運用もそろえるわけで。
とにかく彼らもまだ研鑽を積んでもらうしかない。
成熟予測期を見積もってもやっぱり3年よ」
「屋根の上貼り付けにそんなにかかんのか。
まあ、そんな時間くらいまだ耐えられねえ事もないが。
ここがいつ見つかんのか、それだけは悩んでんだわ」
「だから、ここをサドガCNと密かに設定し直すのよ。
葉を隠すなら森の中、天主殻の敷いた組織形態に潜り込んで
敵性判断の目を欺く擬態を施すの」
「反逆行為で余計バレんじゃねーか?」
「ポイントは封鎖後よ、万が一突入作戦が達成できなかった時に
ケイトのEMIRでゲートを閉じたら、
すぐにここのサーバーからCN登録をするの。
内部の端末にハッキングできそうな項目があったから、
制御不能混じりにエリア情報も改竄させる手段もやろうと」
以前、ブレイントラストが名義を変更して資源注文していた件を逆手に
ハッキングツールを内部に取り付けた計画は成功した。
まだ侵入はしていないものの、一部の概要のみ取得。
ミゾレは組織登録について数年前から発覚した事を逆手にとるために、
サド島の名称も変更するらしい。
失敗したケースというのは隠れ方の変更といったもの。
というのは、組織設定の根本原因は単なる“陸や島が在る”点のみで、
人口数や産業の精査などほとんど図られていない事に気付く。
何も無いエリアから突然ロボットだのミサイルだの飛来したら、
真っ先に敵性判断されるのでCNを敷いて少しでも疑惑を逸らす。
誤射したといった言い訳がまだ通れそうな余地をもつのも手だという。
「そういや、前にAUROの分別コードを仕込むとか言ってたやつか。
んなモン無くても部隊総出で突っ込めや奴ら倒せんだろ。
それらで突撃してケリ着けんじゃねえのか?」
「簡単に言わないでよ、実働部隊の制圧が失敗した場合も
きちんと対策とらなきゃいけないでしょ?
突入失敗したら中に入れなくなるから、送り付けたケーブルから
ハッキングして内部データ抜き取りと報復回避に組織癒着。
その隙にCNに入り込んで敵性判断を誤らせるの。
チーフとも話を通して決めているから」
「ま~たアクロバットな手を思いつくな」
天主機が総勢いくつあるのかまで把握しきれていない。
精鋭といえど、たった50人でこなせられるかが不明の中において
戦闘成果の推測がどんなシミュレーションを経てもやはり完璧に至らず。
実働部隊の熟練度もある、実際内部に突入できたならそうする必要がないが、
単純な破壊手段だけでは返り討ち後にすぐ壊滅させられるだけ。
結成から6年もの歳月をかけて成功と失敗の両立を想定して、
どちらの流れが発生しても次の手をとれるよう計画を練ってきた。
他の手は打つつもりはない、叶えそうなケースのみ選定して搾り取り、
無駄な部分を省いて必要な事だけを念頭に置いて進める。
当初はこんな少人数で成功できるのか懸念まみれに満ちていて、
アリシアチーフの無念を借りて決起した動機は何も間違っていない。
最も相応しいのは地上の者達が紛争行為を止める事だが、
そこだけは数年経っても治まるどころか活性の一途ばかりたどっている。
人々は上を視ずに等しい高さの横ばかりだけ。
ミゾレもいつもアリシアの報告に目を閉じる内容ばかりだった。
次いで、後から後続してブラインドを補ってもらう者が見込めないのだ。
メンバーの誰しもうっすらと内心不安に思っていた部分、
ここがこれからの何より問題としていたところだ。
「ああ、こんなところか。俺らができる精一杯。
兵はこれ以上他から呼びかけ招集するつもりはねえのか?」
「オオモリさんの所も協力してもらえる援助はほとんど少ないわ、
元から地元から出ようともしないし、わだかまりに縛られっぱなしで
肝心なチーフの方もダメみたい、みんな天主殻の言いなりで」
「かぁ~~、どいつもこいつも」
アリシアチーフと会長の地方巡りもまったく効果なし、
残すところはここ、ブラインドの動向次第のみに限る。
常に限定された条件の中で、かつ気取られないように活動。
作戦を実行に移すまでの段取りはもう近くまで来ている。
言いきれるのは攻略可能性が60%を超えたという事。
もちろんこれは予測可能値で50を上回れば半分はクリアした意味。
途中変更はできない、あくまでも活用できる技術へ頼り、
大きなうねりはいずれどこかと衝突して飛び散る。
自衛隊ですら勝てなかった相手をしなければならない点に違いはないから。
サップは腕組みしながら空を眺める。
丁度視界の中に目標となるあの白金の円盤を落とすために、
今までの策だけで確実にこなせるのか念押しした。
「・・・・・・いけそうか?」
「・・・・・・結果は実行後に判明するのみ」
会話のやりとりはいつもこんな言い方ばかり。
実践で現場を直に視なければ何を言い合っても時間の浪費のみ、
ミスが生じないよう再確認は成功までの目を凝らし続けるだけ。
%といった数字をあてにしている者はメンバー達の中で目を光らせる程、
自信に満ちている者があまりいないのはどうしてか。
世界など全て数値で解明しきれていないから、いつまでも現場主義は
AIで解決を図れずに必ずどこかで人の目や疑念が入り込む。
それでも得体の知れない天への挑戦は確実に歩みを進めている。
他では相手の手段がこちらを上回らない事を願うしかない。
作戦開始まで後わずかまで迫る。
先の言葉通りに援助も少なく周囲から秘匿しながら
ただ1つ、世界解放への通りだけがうねりとなって目指していった。
会長とアリシアは東北にある役場に着く。
今日は岩手に来てCNの関係者と対談をしにやってきた。
この方面も議会関連は全て解体され、散開した自衛隊によって管理。
最低限の衣食住のみ優先してどうにか住処だけは整えている。
あれから各地方を回り、視察と訴えを行い続けてきたが
一応、説得巡回は一旦これで終わりにするつもり。
会長の足の都合もあり、これ以上各地を回る事ができなくなる。
事前にアポをとっていた場所でいつもの同じく司令官と会合。
入口から通されて部屋には3人の男達が座っていた。
「こんにちは、再生機構のイゼルファーですが」
「お待ちしておったぞ」
「あー、どーも」
「こんちはっす」
野太い声をした岩手司令官に迎えられる。
そして、山形と宮城の司令官もいた。
近隣といえど、敵対関係であるはずがどういう訳か一緒に応対。
今回は土地再生機構という名目で紛争解決を図る立場を演じて、
東北の現状を話してくれるそうだ。
「忙しい中、一企業の私達に応じてもらえてありがとうございます。
どうしても重要事項なものだけあり、直に訴えたいので」
「わざわざここまでご足労かける。
そうかしこまらんでも良い、こちらも出来る限りの事を話してあげよう」
「お気になさらずどーぞ」
岩手CN司令官、ローレンシュタインと名乗る男がそう告げる。
横2人と異なり、かなりの風格をもつ者が現在の東北を取り仕切ると言う。
現在、ここは約123万人と東北で最も多い数を誇り、
安全面も考慮して人口の大きなエリアで迎えられた。
私達が会談する場所をここに指定したのも威厳を示すつもりか、
集合体の中で封じて囲う様に招かれた感じもある気がする。
しかし、同盟していないのに周囲に対して敵対するつもりもなく、
こうして3人の責任者がこぞって一緒にいる時点で妙だと思った。
事情は以下の内容で明らかとなる。
「まだ周囲と同盟をするつもりがないと?」
「うむ、貿易面でも不透明な点もあるが、表面上では連結を行わず
独立分散を保ちつつ産業を推し進めててゆくつもりだ。
理由は少数精鋭からの発展、資源温存と高質職人体制のみ整えてから
飽和から併合する事で関東を始めとした他地方に警戒されにくく思わせて、
敵意を感じさせないよう配慮する」
「他地方に併合される恐れもあるのでは?」
「そこの心配はしていません、我々は常に東北全域を意識してまして
司令官どころか重要産業間も敵意無しと認識させてます。
フクシマとホッカイドウは少々難がありますが、
先の理由で意識の一体感をもってやっていきますから」
「いずれは同盟を行うつもりでしょうか?」
「ええ、しますね。でも、タイミングが大事なんで他地方が侵攻とか
来ない限り放置が有効性あるかなってそのままにして、
今はこうやって持ちつ持たれつやってます」
というスムーズ感のある理由を語る。
近畿と異なり、ずいぶんと飄々な言い方で身を置いていた。
ここは他地方に対する動向にあまり大きな関心をもたず、
向こうから侵攻などしない限り干渉する行為をしないようだ。
今回青森、秋田、福島、北海道の者が参加していないのが気になったが、
これまた大した事情もなく単に来られなかったらしい。
「そうだったのですね、過剰な連結で脅威だと思わせない案。
武力増強をあえて薄れさせて敵意を見せない方法ですか」
「イキナリ戦えって言われてもすんなり認めるわけないですからね。
ただでさえ自衛隊員も少ないですし、僕らがどうにか不安にさせないよう
生活を保障させて自生産だけは維持させてます。
多分、どこも同じようにやってるはずですので」
「ただ、まったく問題がないわけでもない。
敵性がこちらに来ないなどの保障だけはしかねないので、
他地方による資源強奪、横領はあってはならぬ事。
市民達の不安を感じさせぬよう既存の組織内から武力を生み出す。
交通機関はこちらなりの方針をもって新設するつもりだ」
「それは気になりますな、機関とは――?」
「誘い込み上手ですな、これは公開しても構わん情報だから良いな」
「鉄道兵団です、詳しくは明かせないとこありますけど、
ちょっとおいら達には考えあってやる計画もあるんす」
彼らは一帯に列車兵装を配置する予定をもつと言った。
鉄道は以前からすでに敷かれていた交通路で一部のみ線路を断絶して、
東北の安全維持と交易を穏便に行う計画を立ててかつての関東に学び、
発展への円滑化を実施しようと考えているという。
現在、関東から東北まで路線が引かれて行き来できていたが、
CN制定から断絶して福島付近は全て通行止め。
交通規制も変革されたので地方による円滑な動きを抑えていた。
東京の元幹部がいたというのも意外だったが、鉄道路線を一度破棄して
鉄道兵団として治安維持を務めようと改めて活動する。
それを関東が本当に理解できるのか心配さもあるが、
私達はこれ以上関われないのでテーマの中心まで杭入れなかった。
そして、私達は本題に入る。
肝心のCNという組織を解散するよう伝えた。
「という理由により、私達はCNを解散するよう要請します。
解析した規格で電磁妨害を回避し、当該物のゲートは塞がれ、
天主殻は危険性がなくなるので武力行使を中止して頂きたい」
「源はあるんですか?」
「海外派遣より新たに天主殻を制圧する部隊が対処します。
対空ユニットに特化したエキスパートチームが近日来国する予定で」
「組織の場所はどこですか?」
「私達はカットアウトを通じて従事する者なので詳細が不明で、
クライアント側も身分を他に明かさないよう要請されているので」
「身元不明の組織に仕えている危険性をもっていないんですか?」
「大元は政府管轄なのでテロリストの類ではありません。
天主殻解放のために派遣された者であります」
「しかし、自衛隊でもそのような連絡、アポは取っていなかったはずだが?
混乱に乗じて来た密偵、スパイなど列島侵犯ではないのかね?」
「そこは・・・侵犯目的ではないのは断定できますが」
「考えられるとしたらオキナワ国軍かサドガ島のポートかな、
断定できるソースも証明できる物とか所持してませんよね。
あなた方、本当にどこから来たんですか?
すいませんが、実際やってる何か身分証明書を見せてほしいんですけど?」
重箱の隅をつつく様に指摘。
自衛隊の地理情報を基に来国事情を事細かく精査して調べるように聞く。
他の連中と違ってやたらと根掘り葉掘りに立場の底をうかがってくる。
サドガの名称に一瞬焦りを感じてしまう。
ブラインドの存在だけは知られるわけにはいかないので、
アリシアが表向きとなるアール・ヴォイドの名刺を差し出す。
「補正部品開発会社?」
「はい、私達は天主殻支配によって事業を解体されてしまい、
各地を回って物品提供と引き換えに平和的解決のため、
先の海外交渉人兼任も行っております」
と、いつもながらの建前で仮身分を見せる。
一方的な口論ではいつまでも応じてもらえないので、貿易面を示して
攻撃的なタクティカルマウントを和らげて解消させるのが最善。
金銭はP通貨に変わった点だけは素直に従って波風は立てない。
主なAURO製造も時として差し出さなければならないが、
私軍と計画だけは絶対に明かすわけにはいかない。
彼らに名刺を渡して身元不明な疑いの目を和らげさせる。
しかし、ミヤギ司令官が不審があると指摘してきた。
「あれ、アール・ヴォイドってトウキョウ西部にある会社ですよね?
確かアレかな・・・ライフルのスコープレンズで良いの探してて
おいら、昔そこへ行った事あって見学とか備品発注したんすよ」
「そう・・・ですが?」
「あなた、さっき再生機構とおっしゃってましたよね?
そこの会社って自生産だけで他国への羽伸ばししてないから、
海外政府との提携は一度もやってなかったはずです、直に聞きました。
再生機構は内閣が以前企画したけど、貿易十分で不必要となって
もう解散して終わっていたはずですね。編成再開したとしても
今は封鎖されて行き来できないのに、何か食い違ってませんか?」
(くっ!)
鋭い指摘を放ち、口が動かなくなる。
唇の太い男の言うように、確かにアール・ヴォイドに子会社はなく
会長の代から始まった組織だ。男の言う通りこの時代で貿易などできずに、
よりによって自衛隊の者がかかりつけて関わっていたとは
さすがに予測できない。ここから先の言い訳まで考えてこなかった。
このままではブラインドの事が気付かれる。
その時、会長は顔つきを変えて発言した。
「ですが、10年に渡る期間を経て事業を鞍替え。
我々は伝道師となって企画を変え、生まれ変わりました。
少しでも事態解決のために活動しようと――」
「事もあろうに伝道師って飛躍し過ぎじゃないですか?
元部品開発事業団なら普通は工場とか各地営業するものでは?」
「飛翔したのです、営業を終えてまでノレンを下げて今に至り!
あなた方の国はあんな詭弁に騙されるような世界ではない。
ここ東北も独特な文化、文芸品もおありでしょう!?
地域紛争などで場を図らずに創造で広がるべきなのです!
だから、私達は各地へ足を運び、隔離を止めようと回っているのです!
失った行動力を再び活性させるために」
「・・・・・・」
室内が静まる。
70歳の人生経験者による見識は強く、有権者すら一越えして覆う。
気迫と内容を一緒に交ぜた会長の説得に3人が止まった。
ほんの数十秒経ったか、ローレンシュタインが深く追及するのを止めて
あっけにとられた2人を後ろに両手で抑えの仕草をする。
「まあ、お気持ちは理解した。無数のメーカーが倒産してしまい
わずかな伝手を辿って必死で再構成したのも無理はなかろう。
しかし、やはりCN解散は応じられん」
「どうしても無理ですか?」
「近年の政治形態に、地方も限界を感じてきた。
あなた方同様、こちらは元から仕事不足に苦しまされてきて
超科学合理主義による分別化は人の報いすら奪う。
元自衛隊、トウキョウ役員の身であった我々も理不尽を強いられて
ようやくここに再起をもてるようになったのだ。
関東、トウキョウの独善的行為は私達において決して許されざる事。
冷たく厳しい環境下で生きてきた経験は譲れない思いがあるのでな」
何か確執でもあるのか、かつての仲間とは相容れるつもりがないと言う。
列島の中心地とも言えた東京との分断は政治の指揮系統から離れ、
本当に独立を図りたかったそうだ。科学の発展で人手が次々と省略され、
不要とみなされた地方から貧困にあえぐ者も少なくない。
自衛隊幹部どうしでも確執があり、他地方と連携する意思すらもたずに
東北一帯だけで独立したがっているとの事。
「だから、もうあの時を繰り返したくはない。
人は必ず端からこぼれ落ち、一極集中に生きる事は不可能。
CNを通して真の意味で生活の二文字を成立させられるのだ。
天主殻が一度攻撃したのは事実。
しかし、提唱した管理制度は多くの者の活躍を促し、暴力者の立場も
似た者同士で悠々と効率よく削り取ってもらえる。
まさに完全、集合という巣こそ人間という生物の在り方なのだ。
東北を攻撃された所はほとんどなかった、それは無実の罪でもある証。
御上は傲慢なる地上の者達のみ選別して裁きを与えて頂いたのだ。
今回、我々の供述はこれまでとする。
今日のところはお引き取り願いたい・・・」
「・・・理解しました、ではこれで」
諦めた様にゆっくりとした動きで席を立って部屋を後にする。
身分は会長の機転で正体が知られずに済んだ。
執拗に追及する彼らの質問にやっとやっとの答弁で誤魔化せたのは幸い。
とはいえ、CNは解散させられずにろくな成果があげられずに
門前払いを受けたのと同様だろう。
「「どこも応じてくれん・・・」」
「「やはり・・・私達だけでやるしか」」
結局、ワカヤマCNのオオモリ以外、手を組む者はいなかった。
東京への猜疑心は相当で各地方の組織は斡旋や独占からの解放こそ
大きく願ってCN化に頼ってしまったようだ。
凝結し過ぎた果てにヒビ割れが生じて砕けた塊の様。
想定していたよりもブラインドのメンバーが少なくなる。
彼らの言葉の通り空気も冷たく、人の熱がますます薄れてゆく様な
体感をもたらされている気がしてならなかった。
サド島 ブラインド拠点指令室
「な・・・後、3年もかかんのかよ」
「ハッキングツールがまだ完全に構築できてないのよ、
パスカルと共同で進めてきたコードに不一致する部分が出ちゃって。
ミシェルもほとんどここまで来なくなって参加どころじゃなく、
オオモリさんも今、向こうで仕事が増えたって」
サップはミゾレの報告を聞いて顔を歪める。
天主殻への停止計画までもうしばらく時を必要とするとの事で、
作戦開始までまた準備を延ばすと伝えられた。
3年という意味は主にプログラム構築を含めたものが大半、
マルウェアを有効化できる可能性を極力活かすために侵入コードを
組んできたものの、まだ完成まで持ち込めずにいる。
他もCNの事情が整理しきれずに人員管理が難しく、
ワカヤマの司令官も今、地元で問題が起きてこちらに関わる余裕もなく、
関係者達が一致して挑める万端がベストだという。
が、それぞれでまた問題も生じてこちらに手が足りずに
ブラインドメンバーがまとまれずに細かなところが不足。
くまなく見張らせていようと必ずどこかで不備が生じて対応に追われる。
いつもやらかして見つかった経験があるだけあって後の事ばかり
気にしていたサップが拠点の安否をうかがう。
「前もあったが、いきなりガタガタが起きちまって
頭脳派と行動派の間でズレが出てるんじゃねえのか?
部隊の連中もいつ任務始まんだって文句言ってるぞ」
「そんな事言ったってどうしようもないじゃない。
規格もオールクリアできなきゃ実戦配備に着けられないし、
チーフだってそこも念入りにみてるから妥協できないの」
「物作りを先に終わらせとけっての・・・まあ、すんなりといかねえな。
実働部隊の方はこれといった大きな問題はねえな。
後は、特殊能力追加計画とかオレツエー移植はどうなんだ?
連中の肉体改造計画とかもできてんのか?」
「クロノシンメトリー規格も脳神経外科医に頼んでやってるけど、
銃弾を避けるくらいのレベルに達せるみたい。もちろん無敵じゃないし、
生身で太刀打ちできるわけじゃないから兵器運用もそろえるわけで。
とにかく彼らもまだ研鑽を積んでもらうしかない。
成熟予測期を見積もってもやっぱり3年よ」
「屋根の上貼り付けにそんなにかかんのか。
まあ、そんな時間くらいまだ耐えられねえ事もないが。
ここがいつ見つかんのか、それだけは悩んでんだわ」
「だから、ここをサドガCNと密かに設定し直すのよ。
葉を隠すなら森の中、天主殻の敷いた組織形態に潜り込んで
敵性判断の目を欺く擬態を施すの」
「反逆行為で余計バレんじゃねーか?」
「ポイントは封鎖後よ、万が一突入作戦が達成できなかった時に
ケイトのEMIRでゲートを閉じたら、
すぐにここのサーバーからCN登録をするの。
内部の端末にハッキングできそうな項目があったから、
制御不能混じりにエリア情報も改竄させる手段もやろうと」
以前、ブレイントラストが名義を変更して資源注文していた件を逆手に
ハッキングツールを内部に取り付けた計画は成功した。
まだ侵入はしていないものの、一部の概要のみ取得。
ミゾレは組織登録について数年前から発覚した事を逆手にとるために、
サド島の名称も変更するらしい。
失敗したケースというのは隠れ方の変更といったもの。
というのは、組織設定の根本原因は単なる“陸や島が在る”点のみで、
人口数や産業の精査などほとんど図られていない事に気付く。
何も無いエリアから突然ロボットだのミサイルだの飛来したら、
真っ先に敵性判断されるのでCNを敷いて少しでも疑惑を逸らす。
誤射したといった言い訳がまだ通れそうな余地をもつのも手だという。
「そういや、前にAUROの分別コードを仕込むとか言ってたやつか。
んなモン無くても部隊総出で突っ込めや奴ら倒せんだろ。
それらで突撃してケリ着けんじゃねえのか?」
「簡単に言わないでよ、実働部隊の制圧が失敗した場合も
きちんと対策とらなきゃいけないでしょ?
突入失敗したら中に入れなくなるから、送り付けたケーブルから
ハッキングして内部データ抜き取りと報復回避に組織癒着。
その隙にCNに入り込んで敵性判断を誤らせるの。
チーフとも話を通して決めているから」
「ま~たアクロバットな手を思いつくな」
天主機が総勢いくつあるのかまで把握しきれていない。
精鋭といえど、たった50人でこなせられるかが不明の中において
戦闘成果の推測がどんなシミュレーションを経てもやはり完璧に至らず。
実働部隊の熟練度もある、実際内部に突入できたならそうする必要がないが、
単純な破壊手段だけでは返り討ち後にすぐ壊滅させられるだけ。
結成から6年もの歳月をかけて成功と失敗の両立を想定して、
どちらの流れが発生しても次の手をとれるよう計画を練ってきた。
他の手は打つつもりはない、叶えそうなケースのみ選定して搾り取り、
無駄な部分を省いて必要な事だけを念頭に置いて進める。
当初はこんな少人数で成功できるのか懸念まみれに満ちていて、
アリシアチーフの無念を借りて決起した動機は何も間違っていない。
最も相応しいのは地上の者達が紛争行為を止める事だが、
そこだけは数年経っても治まるどころか活性の一途ばかりたどっている。
人々は上を視ずに等しい高さの横ばかりだけ。
ミゾレもいつもアリシアの報告に目を閉じる内容ばかりだった。
次いで、後から後続してブラインドを補ってもらう者が見込めないのだ。
メンバーの誰しもうっすらと内心不安に思っていた部分、
ここがこれからの何より問題としていたところだ。
「ああ、こんなところか。俺らができる精一杯。
兵はこれ以上他から呼びかけ招集するつもりはねえのか?」
「オオモリさんの所も協力してもらえる援助はほとんど少ないわ、
元から地元から出ようともしないし、わだかまりに縛られっぱなしで
肝心なチーフの方もダメみたい、みんな天主殻の言いなりで」
「かぁ~~、どいつもこいつも」
アリシアチーフと会長の地方巡りもまったく効果なし、
残すところはここ、ブラインドの動向次第のみに限る。
常に限定された条件の中で、かつ気取られないように活動。
作戦を実行に移すまでの段取りはもう近くまで来ている。
言いきれるのは攻略可能性が60%を超えたという事。
もちろんこれは予測可能値で50を上回れば半分はクリアした意味。
途中変更はできない、あくまでも活用できる技術へ頼り、
大きなうねりはいずれどこかと衝突して飛び散る。
自衛隊ですら勝てなかった相手をしなければならない点に違いはないから。
サップは腕組みしながら空を眺める。
丁度視界の中に目標となるあの白金の円盤を落とすために、
今までの策だけで確実にこなせるのか念押しした。
「・・・・・・いけそうか?」
「・・・・・・結果は実行後に判明するのみ」
会話のやりとりはいつもこんな言い方ばかり。
実践で現場を直に視なければ何を言い合っても時間の浪費のみ、
ミスが生じないよう再確認は成功までの目を凝らし続けるだけ。
%といった数字をあてにしている者はメンバー達の中で目を光らせる程、
自信に満ちている者があまりいないのはどうしてか。
世界など全て数値で解明しきれていないから、いつまでも現場主義は
AIで解決を図れずに必ずどこかで人の目や疑念が入り込む。
それでも得体の知れない天への挑戦は確実に歩みを進めている。
他では相手の手段がこちらを上回らない事を願うしかない。
作戦開始まで後わずかまで迫る。
先の言葉通りに援助も少なく周囲から秘匿しながら
ただ1つ、世界解放への通りだけがうねりとなって目指していった。
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