Condense Nation

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4章 ブラインド編

第9話  哺乳類の代価

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クマモトCN 空港

フュウン

 空港にフライヤーが到着する。
一般機ではない個人所有の物で管制塔の警戒度は意外にも緩い中、
足を運んでやって来た会長とアリシアの短い旅路が続く。
来た理由はCN解散への勧告、自身の足労で軍事行為をどうにか抑えようと
この地方にも訪れてきた。次は停戦勧告地となる九州に来たが、
入手した情報で司令会議が行われるカゴシマまで距離がある。
そこの空港はすでに閉鎖されており、ビークルで向かわねばならない。

「九州の西部であるここで話し合いですか、
 てっきりフクオカが重要地点だと思っていましたけど」
「入管可能の空港はここのみだそうだ、他エリアは全て制限。
 サクライ2等陸佐のみ入国を許可してもらえた」
「陸軍なのに空港の件を?」
「詳しくは分からんが、別人の者によって通せたそうだ。
 そもそもここはもう空軍を解体する方針をとろうとしているようだが」

天主殻支配から7年、自衛隊の解決策ももはや無効と化している間で
少なくともここのみ通行を許されたらしい。国の重役を名乗っていたら
警戒されて無理だったところ、社会学者という名目ならば入れたから
地域活性の見込めそうな役職で国の隙間に潜り込めた。
いつまでも通用できるとは思えないが、少しでも有利な行動ができるよう
偽装手段を選ぶのも大変になってくる。
それで、何故クマモトなのか疑問に思っても理由が分からないが。

「調べでも軍事利用の規模は他のエリアと比較して小さめですね。
 ここですら要人との話し合いでやっと到着させてもらったのに、
 それにしてもクマモトで会合だなんて」
「本来ならフクオカで行っていたはずだが、
 どういう所以かクマモトで話し合ってほしいと言われた」

九州で最も人口が多いフクオカだが、最近になってから近隣のエリアに
移って引っ越し始めた市民が増えてきたという。
現在、北部は人事によるトラブルが相次いで離散が目立ち始めて、
事件に巻き込まれる恐れもあるためにクマモトに来るよう言われた。
こちらも人口が少ないわけではないがそこそこの風景、
関東と異なって落ち着きのある緑が多く見られる。
会合場所もある役場の1つであまり事件も起こらず、
まだ治安が良いとみなされて障害もなく招かれた。
CNの責任者とコンタクトをとろうと現地へ赴く途中、
空港からすぐ外にある公共場で鳴き声が聴こえてくる。
小さな動物達が集まる光景を目にかけた。

「全て犬のようですね」
「九州は犬の名産地として有名だが、今の時期に何故?」

西側諸国となる九州地方は近代になってからどういった経緯か、
犬類の保護に力を入れ始めていた。
精工に造られていた犬型ロボットの誕生によるペットの代用で
文明開化の皮肉か、東側で潔癖症者の増加も相まって衛生的に徹底管理を
意識する特徴もみられ、現実の生物は不要とばかり捨てられた動物を
主に引き取って世話をするペットの存在を重要視していたのだ。
だが、見る限り数が尋常とは思えない量に思える。
本来なら関係のない場所であるものの、つい気になってしまう。
予定時間まで少し余裕もあり、どんな理由でそこにいるのか。
警戒心をもたれにくい初老の特権か、庭の敷地内に入り関係者に話しかけた。

「おじゃまします、ずいぶんと可愛らしい子達がおりますな」
「え、ええ。今後、このエリア周辺も制限がかけられるので、
 問題が起こらぬよう保護しています」

といった返答で毛むくじゃらの集まりと一緒になっている。
少し元気のなさそうな言い方で、ハッキリと目を合わせようともしない。
役場自ら動物保護など普通はしないはずで、動物園などの専門家が行う。
さらに一種類のみ収集というのも妙に思えていたが。

「それにしても、犬ばかり多いのは珍しいですね?
 縁もない空港付近へわざわざ集めている話は一度も聞いた事ないもので」
「・・・・・・」

職員の口がピタリと止まる。
会長の指摘を受けた職員は正直に口を開いた。










「「あまり大きな声で言いにくいですが・・・
  この子達は処分される事になりました」」
「!?」

処分という言葉に会長の頭が少し後ろに下がる。
直接的な言葉でなくとも、誰でもすぐに理解できるもので、
保護とは真逆の意味の言葉を聞かされた。
理由は世話ではなく真逆の方向。
犬達は排除されるために集められたのである。


カゴシマCN 役場

 時を同じくして場所は変わり、九州の中心部と扱われている
ここカゴシマに司令官達が集っていた。
会議の内容はやはり、動物達に関する議題である。

「「おまえらそれでもひとか?
  ながねんいっしょにくらしてたもんをあっさりとしょぶんするなんぞ、
  しょぎょうをこえたきちくやがな。
  けっきょくはひがしもんとおなじかんがえなんか、
  さいていげんのるーるってもんはないんか!?
  あ!? なんかゆうてみいやァ!」」

録音していた無線の会話が流れる。
犬を大量処分する事がヤマグチの者に知られたのだ。
オオイタにいたヤマグチの関係者がその件を紛れて耳にし、
暴動が発生してしまった。

「どうしましょう・・・?」
「これはいかんな・・・」

事の始まりは管理しきれなくなった動物の処理として活動、
野生化して人に危害を与える懸念によって役人に決められたものだった。
CN法はペットを飼うルールを許さず放逐するよう指示。
面倒をみてもらう候補も上がらずに他地方との貿易も次第に切らされて
食料供給も低減して管理側も途方に暮れている。
当然、全ての者が賛同するわけではない。
今まで微妙な雰囲気で均衡を保ってきた九州地方に、
人以外の事情から亀裂が生まれかけていたのだ。
どんなきっかけで急襲を受けるのか分からないゆえ、施策をつくろうと
複数の司令官達が話し合っている中、ナガサキの司令官が発言する。

「私に良いアイデアがあります」
「ん?」

全ての九州司令官は提案を聞く。
内容は彼らの動きを数秒間止めてしまう程にまで合理的なものを
度外視ながらも理解の内にまで味わわせるものであった。


数時間後 クマモトCN 役場庭園

 2人はクマモトにある役場に到着する。
見慣れた場所でもあり、通路に迷いなく辿り着けた。
実は会長にとって九州に来るのは初めてではなく、
講演会などで過去にも訪れていたからだ。
コウシの故郷であるオキナワもここの地方、琉球は海が広域にわたり
解放感を感じるリゾート地としても他の髄を許さない所。
生物としても特殊な種もいて個性もまた世界の風流さをもつ。
彼は時折渡り鳥についてよく語ってもいた。
広い空や海、身体が溶ける様に鬱屈さですら解き放たれる空間に憧れて
飛ぶという利便性のみでない自由度の味わいが精神の呪縛を解く。
おかげか、反重力を創造しただけの事がある。
そこへどんな由縁か、あの円盤をも築いて地上の者達を拘束してしまう。
宇宙計画の頓挫で何かが変わってしまったのか、当時にもっと親身に
事情をうかがってみるべきだったと後悔の部もある。
今日はそんな感傷事に浸りに来たのではない、彼ら一派への終結のため。
司令官達の会議は丁度終了し、事前にアポを入れていた
その内の責任者らしき人物の2人と中庭で接触する。

「どうも、社会学者の会長を務めている者です」
「どうもこんにちはクマモト司令官です」
「私はミヤザキ司令官だ、建設的な話ができれば幸いだ」

今回はきちんとした部屋というより立ち話的な雰囲気。
いつもの仮の立場で接する、CNの解散請願に来訪した理由を話してみた。
やはり、反応もいつもの通りで応じる気配もない。
今回は門前払いそのもので、軍事解体の一節すらどうしようもないと
私達の説得を受け入れる事はなかった。
今回は九州の代表者が全員ここにいるわけではない、
私達の相手をする気すらあまりない風にも思える。
しかし、ミヤザキ司令官は戦闘行為を勧めているわけでなく、
和平的な方針をもつ心得でいくと言う。

「だが、反戦に関してはこちらも同意で臨戦態勢を整えていない。
 銃や爆弾を用いる行為は私も納得していないからな。
 実は私らも穏便に向かえるよう他の方法を模索するつもりでいる」
「そうでしたか、ならばこちらも激しく同意致します」
「態勢を整えずに別の何をしているのでしょう?」
「今、九州は人員が混乱状態で他地方と交戦どころじゃなく、
 オキナワ国軍とのやりとりでトラブルが続いてしまっています。
 敵地と近いといった理由でオキナワやカゴシマに身を寄せようと、
 多くの市民との受け入れで問題も起きてしまいまして」
「我々ミヤザキも、それなりに対応していく方針があるんだ。
 新しい試みもあるし、急を要してもろくな結果にもならないと
 カゴシマ司令も慌てさせない方針をもつと言っていた」
「ほう、それは如何いかなるものか興味がありますな。
 さてはどのような手法か少々気になります」
「こんな研究論文も見つかりました。
 哺乳類のアミノ酸配列から多動性障害を抑えようという話が
 ヒストペディアから掘り起こして記載されていました」
「・・・どこかで聞いたような気もしますが。
 いわゆる、興奮性を抑える方法があったんですか」
「まだ仮説にすぎませんけど、近日から大きな有効性を見込んで
 哺乳類から色々と吸収して研究するつもりでいます。
 完成すれば、いずれ大きな成果を上げられると思います」
(何の利用で? 精神安定剤でも作ろうというの?)

アリシアは心の中で呆れる。
意味は不明だが、人を落ち着かせようとした何かをするつもりらしい。
素人の思い付きなど危なすぎて相手にするのも無駄だ。
それにしても、会長の気になります論法は効果覿面てきめんだ。
会話をぐるっと迂回して極秘情報や核心を突く話術に見張るものがある。
以前もこんな事を考えていたような気もしたが私のスタイルは一定なまま。
方法に既知感があると思いながらも、続けてCN改革の開放を
話し合っている時、ロビーの外から大きな声が聴こえてきた。










イイダ「連れていかないで、連れていかないでよおおおお!」

1人の子どもが叫んでいた。職員を引き留めようとしていたのは
犬の命を落とされることを知っていたからだ。

「もう決まった事なんだ、誰も好きでこんな事などしてない。
 狂犬病の不安もあって我々にとっても危険なんだ・・・連れていけ」
「やめろやめろおおおおおおおぉぉぉぉ!!」

どれだけ叫ぼうと子ども1人の気持ちですらくつがえらない。
そこへ会議を終えた1人の司令官がやって来た。

「大丈夫よ坊や、もう悪いことは起こらない」
「ウソだ、ぼくは知ってるんだ!
 危ないからみんな消しちゃうんだろ!?」
「さっき、偉い人達と話をしてきたの。
 私達皆と一緒に暮らせるようにって。
 この子を傷付けたりはしない、私が守ってあげる」
「ホントに!?」

女性の優しい口調の効果も相まってか、
口論が起こらずに子どもは帰っていく。
観たところ、責任者らしき身なりで人の良さそうな司令官だと思い、
駄目元でも説得しようと同じく話しかけた。

「あなたも関係者ですかね?」
「そうです、私はナガサキで司令官を務めている者でして。
 あなた方は・・・今日会合にいらした方で?」
「私は社会学者の会長を務めている者です。
 和平交渉のため、せ参じました」
「・・・どこかでお会いしましたか?
 どことなく輪郭に見覚えが」
「・・・いえ、偶然でしょう。ところで先の話ですが、
 守るとおっしゃっていたのは本当ですか?」
「ええ、人と犬が共存できるシステムについて、私に良い案があるのです」
「それは一体どういう?」
「犬兵団の設立です」
「犬兵団・・・犬を軍事利用するのか!?」

ナガサキ司令官の案とは犬を戦争の一部に加えようとする策だ。
処分する方針を避けるためには共に軍部へ加入させる事で、
非難も悲嘆も和らげて抑えようという。

「“犬は可愛いから手を出せない”。
 同族嫌悪どうぞくけんおの盛んな我々と違い、
 犬に対する見方が中に抑止力も含まれています。
 他のCNも同様に思うはずです」
「そんな抑止が通用するなど、一部にすぎん。
 先で犬を傷付けたりしないと言ったではないか!?」
「確かに“犬を傷付けないと”申しました。
 ですが、“敵対関係に傷付けられない”とは発言していません」
「ただのすり替えではないか!
 軍事行為で犬を浪費する事は命の消耗しょうもうと結局同じだ!」
「命の浪費の点では確かに同じです。
 ですが、倫理としては異なる部分があります」
「倫理?」
「はい、自ら手を出すのと他者から手を出されるというシンプルな違いです」

自分達で奪うより、敵から奪われる方が罪の意識が小さくて済む
という倫理の片鱗を諭した。

「共栄とはいかなくも、共存にはなれます。
 たとえ一時しのぎであっても、長く命を繋ぐのに変わりはありません。
 私達の手にかけるよりは良いでしょう?
 では失礼します」
「・・・・・・」

会長の沈黙の隙を見計らうように、その場を後にする。
処分をまぬがれても、変われない犬の立場の行く先をどうにかして
考えようとするのが先決だと手を打とうとした。
しかし、兵団という単純な組織構成で終わるものではなかった。
ただの設立として終わるかと思いきや、全CNをまたぐ程に
話は予想もつかない方向へ進んでしまう。


ナガサキCN 指令室

「非実用資源と呼称しています。
 天主殻に新たな案を提案し、採用してもらいます」
「「ひじつようしげんですか?」」

 ナガサキ司令官はモニターでMと話をしている。
CN法について不足分を補正する用件があると呼び出して、
有るはずの無いものを資源という奇妙な単語を発した。

「「事象するワードを新たに規制する案ですか。
  この非実用と名付けたのは何でしょう?」」
「ADHDをご存知ですよね?
 常識的、規律的行動ができない生物にみられる乱行動です」

ADHD、注意欠陥多動性障害ちゅういけつじょたどうせいしょうがいとよばれる言葉を一度規制、
無関係な要素を排除しろとナガサキ司令官は推奨したのだ。
彼女は軍事行動においてまとまりの悪い言葉や存在する物を排除して、
詳細は一定の理解力、行動力をもつ集いを優先して
平均という言葉を用いて理由付けする。
九州はまず犬兵団から言葉の通じにくい生物の扱う枠から始めて
行動力の低い犬、高い犬を足並みの枠から外し、
個性データから一度削除する策である。
ADHDに限らずこういった異質な行動をとろうとするモノは
不必要で役に立たず、今後の活動で規制するよう催促。
神経症状に関する項目を“非実用”と無い様に仮付けして
言葉そのものを抑えろと提案した。

「多動性というものは平均より外れた“低能なもの、優秀なもの”、
 どちらにも見られる傾向があります。
 組織に乱れが生じてはなりません、生物に非ずADHDを否定し、
 役立たずやお荷物を一度度外視して犬などの生物へ代行。
 よって、軍事行為に生物的不必要な情報をどちらも排して
 非実用資源として無効化にする方向で扱っています」

モニター画面に保健所に入れられていた犬の生活をグラフで
表した山なりの放物線を表示した。中心部の頂点の部分は
“お手、お座り”など基本的な動作を行えた犬ばかりで、
左右の能力が良い犬、悪い犬は独自の行動ばかりとっている。
無視、暴れて噛みつき、多数平均の犬とは異なる動きだ。
よって、中心極限定理から個性の排除を推進するという。

「「確かに左右の割合が低いイヌには独自の行動パターンが見受けられます。
  度数が多い分布が重要だという中心極限定理と生態の分布に
  関連性を当てはめた理由は何でしょう?」」
「犬というのは我々人間と同じく群れで生活しています。
 しかし、やはり極一部の犬は多動性をもつものが現れます。
 この放物線の様に」
「「ふむふむ」」
「従順な行動をとれる平均的こそ集合を統治する。
 分布の多き中心極限こそ、規律の理想値。
 規則を守るべくは犬も同じカテゴリー。
 同じ動きをとり、等しき並列行動ができる。
 管理という同一性をかんがみれば、やはりCN法と同様に
 度数の多いものをより優先に採用すべきではないでしょうか?」
「「そういう事でしたか、これは素晴らしい法案です。すぐに採用致します」」

CN法に組み込み、生物情報を盾にする事で増産と削減を
コントロールしようという狙いだった。
一度決定すればヤマグチCNも反抗せずに応じるしかないのだ。
犬も兵器の一部として扱える。
こうして犬兵団は誕生したのである。


翌日 サド島 ブラインド拠点

「・・・・・・」

 会長とアリシアは突然変更された項目を観て啞然とする。
各地のモニター画面でMが広報し、生物の軍事利用を許可。
気も止めぬ早さで天主殻は新たな制定を下した。
結局、犬は兵団の一部として認められ、軍用として扱う方針が
決まってしまった。アールヴォイドも法に食い込む策はなく、
天主殻の中枢が関わる機能に介入するのは不可能である。
もう、くつがえす事などできない。

「ここも、結局新たに軍事行為が増加してしまいました。
 九州は変わっていってしまうのでしょう」
「「このまま終わらせるわけにはいかんな・・・」」

提案者はおそらくあの女、ナガサキ司令官だと推測。
サド島への脅威とは思えないものの、生物すら軍事利用される現実に
紛争解決への道などより遠くなるのが目に見えている。
ただ黙っているのも忍びない。
強引な取り締まりもできない中、少しでも向こうで何かを介入させたい。
会長は内心に新たな規格を案じ始めてゆく。


1ヶ月後 クマモトCN 某所

 しばらくぶりに会長が九州を訪れる。
アリシアは同行せず、1人だけの来訪であの役場に向かってゆく。
ただ、今日は無意味にやって来たのではない。
会長の横に小さな動物が並んで歩いていた。

「おや、この子は?」




















「オルンといいます。
 是非ともこの子も連れて行ってもらえないでしょうか?」
「オルンという名ですか、これはまた可愛い子で」

会長が新たに連れて来た1匹の犬を引き取る飼育員。
新たに設立した眷属けんぞくを加えてほしいと請願する。
もちろん喜んで飼育員は引き取った。

「分かりました、この子は任せて下さい」
「では、よろしくお願いします」

1人と1匹に見送られて帰る。
もちろん、オルンは本物の犬ではなく自律型アンドロイド。
道中で会長はあの子に込めた概要を意識して歩いていた。


 (あの子の中にはAUROルオが入っている。
 真実は必ず露呈ろていされるのが摂理というものだ)

実は機械犬の中にある情報を入れていた。
犬が目前で経験した記録を内部に残し、歪な教育過程がどこかで
捉えて無機質の世界より発覚するはず。
AUROはエネルギーと情報を共に内包、レントゲンでも画像は
通常の生物と同様で破壊されない限り気付かれない。
ミゾレの技術も含めて、身体偽装を施していた。
おそらくブレイントラストでも見破れる者はいないだろう。
もし、前線に送られた生物の中に異質な型が混ざっていたら?
自身達の行いに過ちがあったと教える可能性を賭けてみる。
今の私でもこうする事しかできないものの、
振り幅が大きくみえるだけの虚構な法は必ず報いが訪れる。
いつか九州に真実が明かされるのを願いつつ、
私は別の役目のためにアール・ヴォイドに帰還していった。










その光景を近場の林から隠れて観ていたカメラマンがいた。
遠ざかって再び監視していた後、所属する組織と連絡する。

「こちらトウキョウ第666部隊、例の2人はスパイの可能性が有ると推測」

「所属CNも不明です、各CNに回って何かを説得している様で
 外国人の可能性もあります。私はどうすれば・・・え、帰還ですか?
 ・・・はい」










「はい、ありがとうございます・・・・・・No10」



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公園や学校の遊具が役に立たないから撤去される。
実際にあった話で、想像力やガス抜きを塞ぐと人は伸びなくなる。
多数だから正しいといってわずかな可能性も消してしまう、
狭い思考で立場に立つとこうなるのが理解できます。
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