まおうさまの勇者育成計画

okamiyu

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第一章:覚醒せよ、灰かぶりの勇者――ゴーストタウンに隠された声

第20話:その判決に、異議ありッ!!

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「これより、被告人マオウに対する"王女覗き事件"の公判を開廷しますわ」



開廷の宣言とともに、

モリア――たて眼鏡に裁判長のローブをまとった"悪魔"が、

勇者パーティー臨時法廷の幕を開けた。



楽しげな笑みと演出過多な演技は、

どう見ても公平な裁きとは思えない。



「被告人は、昨日の夕方六時ごろ、被害者の入浴中に――あられもない姿を覗いた疑いがありましてよ」

「異議あり! 私は無実だ!」

「判決を出すのはこの私です。黙っていてください、被告人」

「そもそも、なんで悪魔が裁判長をしてるんだ! それ、天使である僕の役目だろ!」

「今回、私だけが唯一事件に関与しておりませんから。中立の立場でございますわ」

「いや、君絶対全部知ってるだろ……! 私が無実なことも含めて!」

「うふふ。さぁ、どうでしょう? 私は知っていることを"知っている"だけ。では、原告の主張をどうぞ」



「はい、裁判長!」



レンが立ち上がり、鬼の形相でマオウを指さす。

「この男は、俺の裸を覗いたんだ! 事前に風呂の時間を察知し、先に潜み、機を見て犯行に及んだ!」



「異議ありッ!!」



マオウは立ち上がってポーズを決める。

どこかで見たような弁護士風だ。

「私は君がお風呂に入る予定など知らなかった! それどころか、君が無理に私をランニングに誘ったから疲れて風呂に入っただけ! よってその仮説は成り立たない!」



「待った!」



レンも負けじと手を挙げる。

「セリナは極度の綺麗好きだ! ランニングの有無にかかわらず、入浴は確実。証人・セリナの証言を求めます!」

「許可しますわ」



セリナが手を胸に当てて神妙に頷く。

「はい。汗をかいていなくても、お風呂は毎日入ります。衛生は日々の基本です」

「つまり、俺の入浴は予定通りだった。マオウがそれを予測していた可能性は高い!」



「異議あり!」



マオウは反論の手を緩めない。

「当時、私はすでに湯船に浸かっていた。覗きをする者が、のんびりお湯に浸かるわけがない。証人・ルキエルの証言を求める!」

「許可しますわ」



ルーが静かに手を挙げる。

「え? うん、確かにあの日は、僕が久しぶりにマスターと遊びたくて、お風呂に連れていったよ」

「ほら見ろ! 私がルーの来訪を予知して、一番風呂を確保するなんて不可能! それに、もし覗き目的なら、二番手を狙うのが常識だろう!」



「ぐぬぬ……!」



さすがのレンも反論が詰まる。

「むしろ、被害者は私のほうだ! 君が後から入ってきて、私の入浴を覗いたじゃないか!」

「抗議! なんで俺が、あんたみたいなおっさんの裸を覗かなきゃならねぇんだ!」

「待った!同じ言葉で返すぞ。なんで私が、君みたいな発育途中の子供の裸を覗きたいなどと思うか! 覗きたくなる場所がないのに!」



「このエロ大魔王があああああ!! この法廷が終わったら覚えてろよ!」

「やれやれ。論戦で勝てないからって暴力に訴えるとは……これだから人間は。もう時間の無駄だ、裁判長、判決を」



モリアが笑顔のまま言い放つ。

「では、判決を申し渡します。被告人マオウ――有罪です」

「ちょっ!? なぜ!? 私は覗きしていないぞ!」

「でも、原告の裸を"見た"んでしょう?」

「見てない! 湯気が濃すぎて何も見えなかった!それに、なんで裁判長が議論に参加している?そういう仕様じゃないだろ??」

「異議ありですわ~。あなたの性格なら、目が"見えない"なんてことがあっても、魔法で全体を見ていたじゃありませんか。乙女的にはアウトですわ。」

「いやいや待て、それってただの私怨だろ」

「ええ。実は最近、あなたが勇者とお姫様ばかり構っていて、あのバカ天使とすらお風呂に入った、私にはなにもしてくれてないじゃありませんか。なので……判決です」



「くらえ♥」



その声が夜空に消えるころ、

モリアの楽しげな「これにて閉廷♪」が響き渡った。
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