24 / 169
第一章:覚醒せよ、灰かぶりの勇者――ゴーストタウンに隠された声
第20話:その判決に、異議ありッ!!
しおりを挟む
「これより、被告人マオウに対する"王女覗き事件"の公判を開廷しますわ」
開廷の宣言とともに、
モリア――たて眼鏡に裁判長のローブをまとった"悪魔"が、
勇者パーティー臨時法廷の幕を開けた。
楽しげな笑みと演出過多な演技は、
どう見ても公平な裁きとは思えない。
「被告人は、昨日の夕方六時ごろ、被害者の入浴中に――あられもない姿を覗いた疑いがありましてよ」
「異議あり! 私は無実だ!」
「判決を出すのはこの私です。黙っていてください、被告人」
「そもそも、なんで悪魔が裁判長をしてるんだ! それ、天使である僕の役目だろ!」
「今回、私だけが唯一事件に関与しておりませんから。中立の立場でございますわ」
「いや、君絶対全部知ってるだろ……! 私が無実なことも含めて!」
「うふふ。さぁ、どうでしょう? 私は知っていることを"知っている"だけ。では、原告の主張をどうぞ」
「はい、裁判長!」
レンが立ち上がり、鬼の形相でマオウを指さす。
「この男は、俺の裸を覗いたんだ! 事前に風呂の時間を察知し、先に潜み、機を見て犯行に及んだ!」
「異議ありッ!!」
マオウは立ち上がってポーズを決める。
どこかで見たような弁護士風だ。
「私は君がお風呂に入る予定など知らなかった! それどころか、君が無理に私をランニングに誘ったから疲れて風呂に入っただけ! よってその仮説は成り立たない!」
「待った!」
レンも負けじと手を挙げる。
「セリナは極度の綺麗好きだ! ランニングの有無にかかわらず、入浴は確実。証人・セリナの証言を求めます!」
「許可しますわ」
セリナが手を胸に当てて神妙に頷く。
「はい。汗をかいていなくても、お風呂は毎日入ります。衛生は日々の基本です」
「つまり、俺の入浴は予定通りだった。マオウがそれを予測していた可能性は高い!」
「異議あり!」
マオウは反論の手を緩めない。
「当時、私はすでに湯船に浸かっていた。覗きをする者が、のんびりお湯に浸かるわけがない。証人・ルキエルの証言を求める!」
「許可しますわ」
ルーが静かに手を挙げる。
「え? うん、確かにあの日は、僕が久しぶりにマスターと遊びたくて、お風呂に連れていったよ」
「ほら見ろ! 私がルーの来訪を予知して、一番風呂を確保するなんて不可能! それに、もし覗き目的なら、二番手を狙うのが常識だろう!」
「ぐぬぬ……!」
さすがのレンも反論が詰まる。
「むしろ、被害者は私のほうだ! 君が後から入ってきて、私の入浴を覗いたじゃないか!」
「抗議! なんで俺が、あんたみたいなおっさんの裸を覗かなきゃならねぇんだ!」
「待った!同じ言葉で返すぞ。なんで私が、君みたいな発育途中の子供の裸を覗きたいなどと思うか! 覗きたくなる場所がないのに!」
「このエロ大魔王があああああ!! この法廷が終わったら覚えてろよ!」
「やれやれ。論戦で勝てないからって暴力に訴えるとは……これだから人間は。もう時間の無駄だ、裁判長、判決を」
モリアが笑顔のまま言い放つ。
「では、判決を申し渡します。被告人マオウ――有罪です」
「ちょっ!? なぜ!? 私は覗きしていないぞ!」
「でも、原告の裸を"見た"んでしょう?」
「見てない! 湯気が濃すぎて何も見えなかった!それに、なんで裁判長が議論に参加している?そういう仕様じゃないだろ??」
「異議ありですわ~。あなたの性格なら、目が"見えない"なんてことがあっても、魔法で全体を見ていたじゃありませんか。乙女的にはアウトですわ。」
「いやいや待て、それってただの私怨だろ」
「ええ。実は最近、あなたが勇者とお姫様ばかり構っていて、あのバカ天使とすらお風呂に入った、私にはなにもしてくれてないじゃありませんか。なので……判決です」
「くらえ♥」
その声が夜空に消えるころ、
モリアの楽しげな「これにて閉廷♪」が響き渡った。
開廷の宣言とともに、
モリア――たて眼鏡に裁判長のローブをまとった"悪魔"が、
勇者パーティー臨時法廷の幕を開けた。
楽しげな笑みと演出過多な演技は、
どう見ても公平な裁きとは思えない。
「被告人は、昨日の夕方六時ごろ、被害者の入浴中に――あられもない姿を覗いた疑いがありましてよ」
「異議あり! 私は無実だ!」
「判決を出すのはこの私です。黙っていてください、被告人」
「そもそも、なんで悪魔が裁判長をしてるんだ! それ、天使である僕の役目だろ!」
「今回、私だけが唯一事件に関与しておりませんから。中立の立場でございますわ」
「いや、君絶対全部知ってるだろ……! 私が無実なことも含めて!」
「うふふ。さぁ、どうでしょう? 私は知っていることを"知っている"だけ。では、原告の主張をどうぞ」
「はい、裁判長!」
レンが立ち上がり、鬼の形相でマオウを指さす。
「この男は、俺の裸を覗いたんだ! 事前に風呂の時間を察知し、先に潜み、機を見て犯行に及んだ!」
「異議ありッ!!」
マオウは立ち上がってポーズを決める。
どこかで見たような弁護士風だ。
「私は君がお風呂に入る予定など知らなかった! それどころか、君が無理に私をランニングに誘ったから疲れて風呂に入っただけ! よってその仮説は成り立たない!」
「待った!」
レンも負けじと手を挙げる。
「セリナは極度の綺麗好きだ! ランニングの有無にかかわらず、入浴は確実。証人・セリナの証言を求めます!」
「許可しますわ」
セリナが手を胸に当てて神妙に頷く。
「はい。汗をかいていなくても、お風呂は毎日入ります。衛生は日々の基本です」
「つまり、俺の入浴は予定通りだった。マオウがそれを予測していた可能性は高い!」
「異議あり!」
マオウは反論の手を緩めない。
「当時、私はすでに湯船に浸かっていた。覗きをする者が、のんびりお湯に浸かるわけがない。証人・ルキエルの証言を求める!」
「許可しますわ」
ルーが静かに手を挙げる。
「え? うん、確かにあの日は、僕が久しぶりにマスターと遊びたくて、お風呂に連れていったよ」
「ほら見ろ! 私がルーの来訪を予知して、一番風呂を確保するなんて不可能! それに、もし覗き目的なら、二番手を狙うのが常識だろう!」
「ぐぬぬ……!」
さすがのレンも反論が詰まる。
「むしろ、被害者は私のほうだ! 君が後から入ってきて、私の入浴を覗いたじゃないか!」
「抗議! なんで俺が、あんたみたいなおっさんの裸を覗かなきゃならねぇんだ!」
「待った!同じ言葉で返すぞ。なんで私が、君みたいな発育途中の子供の裸を覗きたいなどと思うか! 覗きたくなる場所がないのに!」
「このエロ大魔王があああああ!! この法廷が終わったら覚えてろよ!」
「やれやれ。論戦で勝てないからって暴力に訴えるとは……これだから人間は。もう時間の無駄だ、裁判長、判決を」
モリアが笑顔のまま言い放つ。
「では、判決を申し渡します。被告人マオウ――有罪です」
「ちょっ!? なぜ!? 私は覗きしていないぞ!」
「でも、原告の裸を"見た"んでしょう?」
「見てない! 湯気が濃すぎて何も見えなかった!それに、なんで裁判長が議論に参加している?そういう仕様じゃないだろ??」
「異議ありですわ~。あなたの性格なら、目が"見えない"なんてことがあっても、魔法で全体を見ていたじゃありませんか。乙女的にはアウトですわ。」
「いやいや待て、それってただの私怨だろ」
「ええ。実は最近、あなたが勇者とお姫様ばかり構っていて、あのバカ天使とすらお風呂に入った、私にはなにもしてくれてないじゃありませんか。なので……判決です」
「くらえ♥」
その声が夜空に消えるころ、
モリアの楽しげな「これにて閉廷♪」が響き渡った。
0
あなたにおすすめの小説
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
氷弾の魔術師
カタナヅキ
ファンタジー
――上級魔法なんか必要ない、下級魔法一つだけで魔導士を目指す少年の物語――
平民でありながら魔法が扱う才能がある事が判明した少年「コオリ」は魔法学園に入学する事が決まった。彼の国では魔法の適性がある人間は魔法学園に入学する決まりがあり、急遽コオリは魔法学園が存在する王都へ向かう事になった。しかし、王都に辿り着く前に彼は自分と同世代の魔術師と比べて圧倒的に魔力量が少ない事が発覚した。
しかし、魔力が少ないからこそ利点がある事を知ったコオリは決意した。他の者は一日でも早く上級魔法の習得に励む中、コオリは自分が扱える下級魔法だけを極め、一流の魔術師の証である「魔導士」の称号を得る事を誓う。そして他の魔術師は少年が強くなる事で気づかされていく。魔力が少ないというのは欠点とは限らず、むしろ優れた才能になり得る事を――
※旧作「下級魔導士と呼ばれた少年」のリメイクとなりますが、設定と物語の内容が大きく変わります。
転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。
山椒
ファンタジー
そのコンビニにいた人たち全員が異世界転移された。
異世界転移する前に神に世界を救うために呼んだと言われ特典のようなものを決めるように言われた。
その中の一人であるフリーターの優斗は異世界に行くのは納得しても世界を救う気などなくまったりと過ごすつもりだった。
攻撃、防御、速度、魔法、特殊の五項目に割り振るためのポイントは一億ポイントあったが、特殊に八割割り振り、魔法に二割割り振ったことでチートな箱庭をゲットする。
そのチートな箱庭は優斗が思った通りにできるチートな箱庭だった。
前の世界でやっている番組が見れるテレビが出せたり、両親に電話できるスマホを出せたりなど異世界にいることを嘲笑っているようであった。
そんなチートな箱庭でまったりと過ごしていれば迷い込んでくる女性たちがいた。
偽物の聖女が現れたせいで追放された本物の聖女やら国を乗っ取られて追放されたサキュバスの王女など。
チートな箱庭で作った現代技術たちを前に、女性たちは現代技術にどっぷりとはまっていく。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる