まおうさまの勇者育成計画

okamiyu

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第一章:覚醒せよ、灰かぶりの勇者――ゴーストタウンに隠された声

第19話:魔王、走る。そして死ぬ

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勇者一行の前に現れたのは、

五体の巨大なオーガだった。



レン

コマンド選択:

•戦闘    :月閃

•スキル▼  :影月翔

•魔法    :満月斬華

•道具    :月華一刀▼

•逃げる   :秘剣・朧月の舞



レンは「月華一刀」を使用した!

【Cut In!】

•オーガAに9876ダメージ!

•オーガBに9315ダメージ!

•オーガCに9542ダメージ!

•オーガDに9634ダメージ!

•オーガEに9992ダメージ!



戦利品:

•オーガの肉×5

•オーガの棍棒×2



「最高!この剣で肉を断つこの感触――たまらないね。この一切のために生きているぜ。」



血飛沫の中で微笑むレン。

満足げだった。



「……まるで変態殺人鬼のセリフだな。これだから人間は」

マオウが呆れたように言う。



「マオウさん!失礼です、お肉屋さんかも知れませんよ?」

セリナの天然ボケに、

レンはさらに表情を歪めた。



「失礼のは、ふたりともよ」



これが、新たに結成された

“勇者パーティー”の、

いつもの日常である。



「へぇ、この娘に剣を教えたいの?」

レンがセリナに目を向ける。



「はい! 私、強くなりたいんです!」

セリナが真っ直ぐに返した。



「じゃあ、まずは体力作りからだ。あんた、戦士としての筋肉が足りてないだろ。そんな状態じゃ、剣を何度も振ったらすぐバテるぞ。今日からランニングだ」

「了解です、教官!」



「おい、そこの魔法使いもついてこい。逃げようとすんなよ」

「魔法使いに体力なんて必要ないだろ?」

「お前はこのままだと、ただ丸くなるだけだ。ダイエットしろ」



そして走った。



「ああ、いい汗かいた~。よくついてこれたね。初心者にはハードなメニューだったのに」

レンが驚く。



「はい! 教官! 普段から家事をしているので、体力には自信があります!」

セリナは満面の笑み。



「偉いな。細くてか弱そうに見えたけど、見直したよ……って、あいつは?」

「れ、レン君! マオウさんが……死んでます!」



マオウは全身から湯気を立て、

地面に倒れていた。



どうやら、魔法なしの運動は、

魔王様には過酷すぎたらしい。

だが、誇りをかけて完走はしたようだ。



今この瞬間が、

人類が魔王を倒せる最も現実的なタイミングだった――

とは、誰も気づいていない。



「さて、運動の後のご飯って最高だよね♪」

「レン君、お風呂には入りましたか?」

「いいじゃん、一日くらい入らなくても。今はご飯ご飯~♪」

「不潔です。汗をかいたら、ちゃんと洗い流さないといけません」



珍しく、セリナが怒気を込めて睨んだ。

その気迫に、レンも押される。



「……えぇ~、セリナだってまだ入ってないじゃん」

「私は皆さんの汚れた服を洗っていたので、残念ですが、最後に入ります。はい、お風呂に入らない子は、ご飯抜きですよ」

「ぐぬぬ……なんかセリナにこう言われると逆らえない……」



そのころ、

完全に力尽きたマオウは寝転がっていた。



「……マスター、生きてる?」

「……」



返事がない。

ただの屍のようだ。



「マスターは僕と千年戦っても平気だったのに。やっぱり魔法が使えないと弱いね。でも、そんな弱点も僕は好きかも」



ルーはくすりと笑い、

マオウの背中に座った。



「僕の羽、洗ってくれる? 毛玉の姿で」

「魔王をタワシ扱いするな……それに、そん姿で誰かに見られたら……!」



悶えるマオウだったが、

それでもルーの羽を丁寧に手洗いしていた。

身内に甘いのは、魔王の性分かもしれない。



しかし、静かな湯船のひとときは――

突如、崩れた。



「な……なぜ、あんだがここに!?」



湯に浸かるマオウの前に、

石鹸の泡に包まれた“姫”が現れた。



「マオウさん、先に入ったんですね。でも、レン君も男の子ですし、裸の付き合いで仲が深まるかもしれませんね」

無邪気に言うセリナ。



「……私も男の子だったら、一緒に入れたのに。残念です」



夕食の準備をしながら、

セリナはこれから起きる風呂場の惨劇を、

まったく知らなかった――。
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