まおうさまの勇者育成計画

okamiyu

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第一章:覚醒せよ、灰かぶりの勇者――ゴーストタウンに隠された声

番外編⑤:ヴェスカリアの影

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グラナールの中央区、重厚な造りの豪邸にて、一人の男が静かに新聞をめくっていた。



紙面を飾るのは、“ゴーストタウン幽霊事件”を解決した若き勇者――セリナ。

その姿は英雄然としていたが、彼の関心を引くには至らなかった。



「……公爵様」

「入れ」



応じた声の主は、この屋敷の主――クセリオス・ヴェスカリア公爵。

部屋に入ってきたのは、彼が最も信頼を寄せる老執事だった。



「例のゴーストタウン事件、解決したのは勇者一行で間違いありません。……あの、メイドの方です」

「そんなことは新聞を見れば分かる」



公爵は冷たく言い放つ。



「金で釣った下賤な冒険者どもが怨霊の餌になれば、町への被害も最小限に済むと思っていたが……。たった10ゴルドで、30年悩まされていた“厄介ごと”が片付くとは。むしろ、上々の投資だったな」



老齢とは思えぬ鋭さを湛えたその顔に、衰えは見られない。

瞳には冷酷な知略と底知れぬ狡猾さが光っていた。



「王子は期待外れだ。せっかくチャンスを与えたというのに……。聖女マーリンまで付けてやった、あんなメイド風情に後れを取るとは。やはり、異世界人の血はダメだな」

「公爵様、あまりに恐れ多いお言葉を……」



「セバス。王など飾りでいい。そこにいるだけで十分だ」



公爵の声は低く、しかし鋭く響く。



「前の勇者のように奴隷を解放とか、平民に知恵を与えとか――そんなことをされては、この王国の秩序が崩れる」

「……恐れながら、公爵様、これ以上は――」



執事の忠告は、鋭い視線で遮られた。



「……セバス。お前もあの異世界人の肩を持つつもりか? このクセリオス・ヴェスカリアと“平等”な立場に立ちたいと?」

「滅相もございません。私は、貴方様ただ一人に忠誠を誓う者。これまでも、これからも」



――その震える声は、恐怖の表れだった。

老執事は知っている。公爵に逆らった者たちの末路を。



「よろしい。お前とは、まだ長い付き合いができそうだ」



公爵は満足げにうなずくと、次の話題へ移った。



「次期国王は王子に決めねばならんな。我ら貴族階級の利益のためにも。……王子も王子でどうかしているが、私の息子シエルもまた度し難い。……奴はどうしている?」

「最近は、新しく入ったメイドを大層お気に召しているようで。確か名前は、“マリ”とか……」



「使用人の名などどうでもよい。だが、手を出すならかまわん」



公爵の目が冷たく光る。



「子を成すことだけは許すな。“穢れた血”を我がヴェスカリア家に入れるなど言語道断だ。……もし『娶る』などと世迷い言を口にしたら、その女は処分しろ」

「……かしこまりました」



深々と頭を下げた執事は、静かに部屋を後にした。



残された公爵は、ふたたび新聞へと目を落とす。

そこには小さく――“マオウ”の名が記されていた。



「ぼう、マオウ、か……。ただの魔王崇拝者か、あるいは……」



唇の端をわずかに吊り上げながら、クセリオス・ヴェスカリアは不敵に笑った。



「ふふ……実に、面白い」
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