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第二章:壊せ、偽りの楽園――不夜城に咲く嫉妬と誘惑の花
第50話:恋愛相談所は閉店しました
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「アスにゃんの恋愛相談所、本日をもって開店にゃん♡」
地獄の片隅に、奇妙な店がまたひとつ開店した。
店長は、色欲の悪魔アスモデウス。
唯一の店員は――
「アスモデウス様。……なんですか、この奇妙な店は」
――元・聖女、ミリアムだった。
* * *
当然だが、客は来ない。
「ねえミリリン、どうして誰も来ないの? 恋愛相談所だよ? 素敵な名前なのに!」
事務机に寝そべり、ソファのようにくつろぐアスモデウスが尋ねる。
「……場所が地獄だからではないでようか。誰も恋愛相談に来るはずがありません。それとスカート、見えてます」
「いいじゃん地獄だって! 悪魔だって恋したっていいじゃん?
ていうかさ、ミリリンが第一号のお客さんになっちゃえば解決だよ! 特別に無料で相談に乗ってあげるっ♡」
「結構です。恋などしたこともありませんし、したとしてもアスモデウス様にだけは絶対相談したくありません」
「まずは見た目から変えようよ~。ミリリン、もったいないよ!」
「……聞いてませんね。え、分かりますとも。」
――いつものように、折れるのはミリアムの方だった。
* * *
相談所の更衣室で、かつての聖女は、アスモデウスの趣味で着せ替え人形と化していた。
「アスモデウス様。このスカート、短すぎます。……下着が、見えてます」
「ダイジョーブダイジョーブ♪ 似合ってる似合ってる♡
いまの異世界じゃ、ミリリンと同い年の女の子はみんなこれ着てるよ!」
「そんなわけあるかっ。どう見ても風俗嬢みたいじゃないですか。普段着のはずがないでしょう!」
セーラー服を着てミリアムの抗議に、アスモデウスは満面の笑顔でとあるアイテムを取り出す。
「ほんとだってば~。モリリンと◯谷に行ったとき、プリクラ撮ったJKの女の子たちみんなこんな格好だったもん! ほらこれ!」
見せられたのは――スマートフォン。
この世界には存在しないはずの品だったが、アスモデウスが持っていても、もはや驚かない。
「そうだっ! アタシとミリリンもダチじゃん! せっかくだから写真撮ろ♪ 記念記念♡」
「遠慮します。なんだか魂を吸われそうな気がして」
「大丈夫大丈夫! ミリリン可愛いし、SNSに上げたらぜったいバズるから♡」
――半ば強引に。
ミリアムは、人生で最初で最後の“写真”を撮った。
* * *
そして――時は今。
レンに敗れ、力尽きかけたミリアムのもとに。
百年を共に過ごした、ただ一人の悪魔が別れを告げに現れる。
「……アス……モデウス様……」
「ミリリン……!」
アスモデウスは、その身体をそっと抱きしめた。
あの日、契約した時から、いつかこの別れが来ることは分かっていた。
だが、いざその時を迎えると、
色欲の悪魔ですら、その悲しみを抑えることはできなかった。
「アスモデウス様が……泣いてるなんて、初めて見ました……
いつも人の話を聞かないあなたでも、悲しむのですね……知りませんでした。……ダチ失格です……」
そう言って微笑むミリアムの目尻にも、小さな雫がひとすじ流れていた。
「いやだ……行かないで……!
まだまだ、一緒にやりたいこといっぱいあるのに! 恋愛相談所だって、アタシ一人じゃまわんないよ……!」
「誰…も来…ませ…んよ、あん…な変…な店、アスモデウス様は……いつもわがままですね。……でも、もう……これで…終わりです」
彼女は、最後の力を振り絞って、懐から一枚の写真を取り出した。
「あの写真……切られなくて、よかった……
これで、私が消えても……写真の中の私は、アスモデウス様の隣に、ずっと……いられますから……」
そう言って、彼女は微笑みながら、光の粒子となって朝の空へ消えていった。
「――ああああぁぁぁぁ……!」
その写真を胸に抱きしめながら、
色欲の悪魔は、今日……一人の“ダチ”を失った。
契約者と悪魔。
それだけだったはずのふたりの間に――たしかに、友情はあった。
地獄の片隅に、奇妙な店がまたひとつ開店した。
店長は、色欲の悪魔アスモデウス。
唯一の店員は――
「アスモデウス様。……なんですか、この奇妙な店は」
――元・聖女、ミリアムだった。
* * *
当然だが、客は来ない。
「ねえミリリン、どうして誰も来ないの? 恋愛相談所だよ? 素敵な名前なのに!」
事務机に寝そべり、ソファのようにくつろぐアスモデウスが尋ねる。
「……場所が地獄だからではないでようか。誰も恋愛相談に来るはずがありません。それとスカート、見えてます」
「いいじゃん地獄だって! 悪魔だって恋したっていいじゃん?
ていうかさ、ミリリンが第一号のお客さんになっちゃえば解決だよ! 特別に無料で相談に乗ってあげるっ♡」
「結構です。恋などしたこともありませんし、したとしてもアスモデウス様にだけは絶対相談したくありません」
「まずは見た目から変えようよ~。ミリリン、もったいないよ!」
「……聞いてませんね。え、分かりますとも。」
――いつものように、折れるのはミリアムの方だった。
* * *
相談所の更衣室で、かつての聖女は、アスモデウスの趣味で着せ替え人形と化していた。
「アスモデウス様。このスカート、短すぎます。……下着が、見えてます」
「ダイジョーブダイジョーブ♪ 似合ってる似合ってる♡
いまの異世界じゃ、ミリリンと同い年の女の子はみんなこれ着てるよ!」
「そんなわけあるかっ。どう見ても風俗嬢みたいじゃないですか。普段着のはずがないでしょう!」
セーラー服を着てミリアムの抗議に、アスモデウスは満面の笑顔でとあるアイテムを取り出す。
「ほんとだってば~。モリリンと◯谷に行ったとき、プリクラ撮ったJKの女の子たちみんなこんな格好だったもん! ほらこれ!」
見せられたのは――スマートフォン。
この世界には存在しないはずの品だったが、アスモデウスが持っていても、もはや驚かない。
「そうだっ! アタシとミリリンもダチじゃん! せっかくだから写真撮ろ♪ 記念記念♡」
「遠慮します。なんだか魂を吸われそうな気がして」
「大丈夫大丈夫! ミリリン可愛いし、SNSに上げたらぜったいバズるから♡」
――半ば強引に。
ミリアムは、人生で最初で最後の“写真”を撮った。
* * *
そして――時は今。
レンに敗れ、力尽きかけたミリアムのもとに。
百年を共に過ごした、ただ一人の悪魔が別れを告げに現れる。
「……アス……モデウス様……」
「ミリリン……!」
アスモデウスは、その身体をそっと抱きしめた。
あの日、契約した時から、いつかこの別れが来ることは分かっていた。
だが、いざその時を迎えると、
色欲の悪魔ですら、その悲しみを抑えることはできなかった。
「アスモデウス様が……泣いてるなんて、初めて見ました……
いつも人の話を聞かないあなたでも、悲しむのですね……知りませんでした。……ダチ失格です……」
そう言って微笑むミリアムの目尻にも、小さな雫がひとすじ流れていた。
「いやだ……行かないで……!
まだまだ、一緒にやりたいこといっぱいあるのに! 恋愛相談所だって、アタシ一人じゃまわんないよ……!」
「誰…も来…ませ…んよ、あん…な変…な店、アスモデウス様は……いつもわがままですね。……でも、もう……これで…終わりです」
彼女は、最後の力を振り絞って、懐から一枚の写真を取り出した。
「あの写真……切られなくて、よかった……
これで、私が消えても……写真の中の私は、アスモデウス様の隣に、ずっと……いられますから……」
そう言って、彼女は微笑みながら、光の粒子となって朝の空へ消えていった。
「――ああああぁぁぁぁ……!」
その写真を胸に抱きしめながら、
色欲の悪魔は、今日……一人の“ダチ”を失った。
契約者と悪魔。
それだけだったはずのふたりの間に――たしかに、友情はあった。
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