まおうさまの勇者育成計画

okamiyu

文字の大きさ
56 / 190
第二章:壊せ、偽りの楽園――不夜城に咲く嫉妬と誘惑の花

第51話:魔王の教育ビンタと、朝焼けの別れ

しおりを挟む
あれから――

アスモデウスは、ミリアムの写真を抱いて、ひとり地獄へ帰っていった。

落ち込んでいるかと思いきや、彼女は元気いっぱいに言い放った。

「ミリリンは天国に行ったから、今度は天界で再会して、二人でアイドルデビューするんだ~♪」

……君、色欲の悪魔で“72柱の王クラス”なんだから、天界には行けないだろ、とはツッコめなかった。

さすがにそれは、言葉を飲み込んだ。

 

朝の光が、かつての《不夜城》を照らす。

今では、栄華の面影などどこにもない。

残されたのは、蜘蛛の糸と、崩れたデコイたちの残骸だけ。

あの楽園のような空間は――まるで夢だったかのように、静かに消えていた。

ひとつだけ確かなことは、不夜城は、もう二度と姿を現すことはないだろうということ。

 

「にゃう~……」

アスモデウスを探して連日飛び回っていたルーは、燃え尽きたように眠っている。

さすがにそのままでは風邪をひきそうだったので、合流したセリナに任せた。

今回の事件が早期に解決したのは、この子の努力も大きかったかもしれない。

 

――そして。

あの“問題児”勇者の行方を確認するため、レンとともに《不夜城》の残骸を探索する。

やがて――

崩れた蜘蛛の糸の中から、ぐるぐる巻きになっている“約二名”を発見した。

……生きていたとは。実に残念だった。

 

せっかく助けてやったというのに、

「お前らに助けられなくても、俺なら自力で脱出できた」

などとぬかしてきた勇者もどきに、私は堪忍袋の緒が切れた。

 

「ッ……!!」

――平手打ち一発。

「えっ……!? ええええぇぇぇ!?」

レンも、もどきの仲間たちも、予想外の展開に目を丸くした。

 

「こっちは徹夜で残業だぞ!? 深夜手当もなし、残業代もゼロ!

 お前、“勇者”だろ!? なんでお姫様ポジション取ってんだよ!

 誰も捕らえられた王子なんて見たくないわ!!」

――二発目のビンタ。

 

「二度もぶったな……俺は……」

「親父にもぶたれたことないのに、だろ? 古いのよそのネタ。

 だからお前の教育を失敗した親父の代わりに教育を施ししている、人様に迷惑をかけるじゃない!」

――三発目のビンタ。

 

「俺を誰だと思って……!」

「王子? 勇者? 異世界人とのハーフ?

 ……知らんがな。そんな肩書きが魔王に通じると思ってんの? 笑わせんなよ。

 肩書きで何とかなるなら、今頃お前、繭みたいにぐるぐる巻きになってねぇよ!」

 

ビンタは音ゲーのごとく、リズムよく決まり――フルコンボに突入しかけた。

 

「やめっ……ごめんなさいっ! 俺が悪かった!!」

さすがの勇者もどきも、魔王のビンタの前には崩れ落ちるしかなかった。

 

「私じゃない。レンに謝れ」

「お前のくだらない命を、本気で心配していた唯一の人間だ。早くしろ」

「す、すみませんでした! もう、ビンタは勘弁してください……!」

 

――こうして、“問題児”王子は、魔王の教育によってほんの少しだけ大人になった。

少なくとも、ビンタの痛みと、感謝の言葉の大切さくらいは覚えたはずだ。

 

不夜城は消えた。

その主も、友も、もういない。

けれど、誰かの手の中には、笑顔の“記録”が残った。

物語は、次の章へと進み始める――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

木を叩いただけでレベルアップ⁉︎生まれついての豪運さんの豪快無敵な冒険譚!

神崎あら
ファンタジー
運動も勉強も特に秀でていないがめっちゃ運が良い、ただそれだけのオルクスは15歳になり冒険者としてクエストに挑む。 そこで彼は予想だにしない出来事に遭遇する。 これは初期ステータスを運だけに全振りしたオルクスの豪運冒険譚である。  

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
神に選ばれ、魔素の循環する界へと送り込まれたのは――現代の薬師。 剣も魔法も扱えない彼が憑依したのは、戦闘力ゼロの商人見習いの少年だった。 彼の武器は、知識と経験。商品を生み出し、人脈を築き、産業を広げていく。 「居場所を見つけたい」その願いが、やがて世界を変える力となる。 これは、一人の薬師が紡ぐ研究と開発、そして成長の物語。 【カクヨムでも掲載しています】 表紙は紹介文をもとに、ai【adobe firefly】で作成したものです。(参考程度に……)

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

いわゆる異世界転移

夏炉冬扇
ファンタジー
いわゆる異世界転移 森で目を覚まし、虫や動物、あるいは、魔物や野盗に襲われることなく 中規模な街につき、親切な守衛にギルドを紹介され さりげなくチート披露なパターンA。 街につくまえに知る人ぞ知る商人に 訳ありのどこぞの王族に会うパターンBもある。 悪役令嬢なるパターンCもある。 ステータスオープンなる厨二病的呪文もかなり初歩にでてくる。 ゲームの世界で培った知識が役に立つこともある、らしい。 現実問題、人はどうするか?

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...