まおうさまの勇者育成計画

okamiyu

文字の大きさ
76 / 190
第四章:勝者も敗者も、恋を知る――月下の武闘会は乙女を育てる

第68話:陰陽逆転!マオウ、毛玉になる

しおりを挟む
デュエロポリスの町の中、宿を探していたセリナは、どこか沈んだ顔でつぶやいた。

「……また、レン君のこと……」

最近、私……おかしいです

マオウさんがレン君を優先するたびに、胸の奥がチクリと痛むんです。

(《俺はアイツのことが好きだ。この気持ちは――本物だ》)

あのときのレン君の言葉が、何度も頭をよぎります。

マオウさんは、どう思っているんでしょうか?

レン君のこと、好きなんでしょうか……?

もし二人が両想いだったら――

「セリナは、どうなるんでしょうか……」

二人が結ばれたら、私はもう、マオウさんのそばにいられなくなるのでしょうか。

旅が終われば、私と一緒にいる理由も……きっと消えてしまう。

(「セリナが大人になったら……マオウさんは、離れてしまいますか?」

「……そうなるかもしれないな」)

……それだけは、嫌なんです。

________________________________________

「おいっ、セリナじゃないか!」

町の通りで、突然声をかけられた。

振り返ると――黒髪の、すごく美人な女の子が立っていた。

……これって、マオウさんが言ってた“ナンパ”ってやつでしょうか?

でも、相手も女の子だし……それに――

「おい、セリナ! 俺だよ、俺!」

なによりお胸が……すごく大きいです。

「……オレオレ詐欺ですか? マオウさんに注意されてます。お金は振り込みません!」

「違うって! 俺だよ、マサキ! ちょっとワケあって女になってたんよ!」

「そんなはずないです! マサキ様は男の人です。女になるなんて――」

「俺もそう思ってたよ。でもあの女……あいつ、マジでまともじゃねえ。

お前がここにいるってことは、レンも来てるんだな? 頼むから、あの女と戦わせないでくれ。

王 小梅は……マジでヤバいんだ……!」

焦るように、マサキ様はレン君のことを気にかけていた。

________________________________________

「俺は女の子だ。女と恋する趣味なんて――」

屋上で立ち上がったレンは、ふと動きを止めた。

何か――自分の身体の異変に気づいたようだった。

「あれ? ダーリン、女の子だったあるか。でも、そんなの小梅には関係ないあるよ。それに――」

小梅は、傷の治療まで始めていた。……気で回復までできるのか。習っとけばよかった。

……くそ、レンを回収するしかない!

私は飛行魔法で屋上に駆けつけた。

「レン! 今は退くぞ!」

けれど、動揺したレンはパニック状態だった。まるで――ゴーストタウンでの、あの時のように。

「今の俺に……触らないでっ!」

その手が私の肩を押し返した瞬間――

「……え?」

私の姿が、ふっと変わった。

変身が――解けた!?

なぜ……?

「あれ? こんな現象、初めてあるね。普通は逆の性別になるだけなのに……」

「マオウ……!」

……そうか、これも“気”の影響か。

________________________________________

帝国には、陰陽の原理に基づいた“陰陽学”という学問がある。

人体には“陰の気”と“陽の気”が流れ、それらがバランスを保つことで“太極”をなす。

だが、武術で“気”を打ち込まれると、このバランスが乱れることがある。

極陰あるいは極陽に偏りすぎたとき――

肉体に、思わぬ“変化”が起こる。

つまり――

「ダーリンは、男の子になればいいあるね」

「マオウ! なんでこんなことに、なんで……毛玉になっちゃったんだ……!」

レンの体内にある気の乱れが、私の身体にまで伝播していた。

その乱れが、私の“変身”を解いたのだろう。……くそ、こんなの、すぐ戻せるのに。

だが――“毛玉”の姿を見られた直後に急に戻ったら、不自然すぎる。

「大丈夫ある。ダーリンと違って、あの人は気の影響が少ないある。すぐ戻るあるよ」

「“すぐ”って……いつよ!」

「ダーリンこわいある♡ 運が良ければ一週間。運が悪ければ……知らないあるね♪」

「ふざけるなっ、今すぐ戻せ!」

レンは自分の身体の異変よりも、小梅との再戦に固執していた。

言いたいことは山ほどあったが、私は口をつぐんだ。

「今のダーリンの体じゃ、小梅には勝てないあるね。続きは、大会で。

小梅に勝ったら――なんでも、聞いてあげるあるよ? ふふ♪」

そして小梅は、何事もなかったかのように踵を返し、私たちの前から去っていった。

……さて。

この“毛玉”の姿で、どうするべきか――

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

木を叩いただけでレベルアップ⁉︎生まれついての豪運さんの豪快無敵な冒険譚!

神崎あら
ファンタジー
運動も勉強も特に秀でていないがめっちゃ運が良い、ただそれだけのオルクスは15歳になり冒険者としてクエストに挑む。 そこで彼は予想だにしない出来事に遭遇する。 これは初期ステータスを運だけに全振りしたオルクスの豪運冒険譚である。  

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
神に選ばれ、魔素の循環する界へと送り込まれたのは――現代の薬師。 剣も魔法も扱えない彼が憑依したのは、戦闘力ゼロの商人見習いの少年だった。 彼の武器は、知識と経験。商品を生み出し、人脈を築き、産業を広げていく。 「居場所を見つけたい」その願いが、やがて世界を変える力となる。 これは、一人の薬師が紡ぐ研究と開発、そして成長の物語。 【カクヨムでも掲載しています】 表紙は紹介文をもとに、ai【adobe firefly】で作成したものです。(参考程度に……)

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

いわゆる異世界転移

夏炉冬扇
ファンタジー
いわゆる異世界転移 森で目を覚まし、虫や動物、あるいは、魔物や野盗に襲われることなく 中規模な街につき、親切な守衛にギルドを紹介され さりげなくチート披露なパターンA。 街につくまえに知る人ぞ知る商人に 訳ありのどこぞの王族に会うパターンBもある。 悪役令嬢なるパターンCもある。 ステータスオープンなる厨二病的呪文もかなり初歩にでてくる。 ゲームの世界で培った知識が役に立つこともある、らしい。 現実問題、人はどうするか?

迷宮遊戯

ヘロー天気
ファンタジー
ダンジョンマスターに選ばれた魂が生前の渇望を満たすべく、迷宮構築のシステムを使って街づくりに没頭する。 「別に地下迷宮である必要はないのでは?」

処理中です...