まおうさまの勇者育成計画

okamiyu

文字の大きさ
102 / 190
第六章:奪われた王冠に、炎の誓いを――動乱の王都で少女は革命を選ぶ

第92話:父に捧ぐ剣、娘に贈る結婚式

しおりを挟む
「王都に着いたっすよ」

ラム・ランデブーで黒真珠をもらい、マサキ抜きの真勇者パーティーは王都へ帰った。ガルドとリリアンヌが結婚式を挙げるために。

「…セリナたちには悪いことをした。これはただでもらうには重すぎる。結婚祝いとしてもな……」

ガルドはリリアンヌの黒真珠のブローチを見て、そう言った。

「そう思うなら、次にセリナたちが結婚した時、もっといいものを返せばいいっす。金より気持ち。男はそれがわかってないっすね」

「そうですよ。愛はなにより大切な宝物です。神はそうおっしゃっていました」

「……そうなのか」

この旅でマサキだけでなく、自分も成長できたと、ガルドは実感していた。



式を挙げる前に、ふたりはそれぞれの両親に報告をすることに決めた。

「では、私は大司祭様に式場の予約をしておきますので、お先に失礼します」

マーリンと別れ、ふたりはまずガルドの家へ向かった。

『剣聖道場』

大きな看板が掲げられている。弓の名手であるガルドの父は、この国で“剣聖”と呼ばれた男――クラウス・ファルケンだ。

「ガー君、大丈夫? 無理なら……」

「……いい。俺は逃げるべきじゃない」

ガルドは少し迷ったが、リリアンヌを見て覚悟を決め、門を開けた。

「若だ!」

「若様、お帰りなさい!」

訓練中の門弟たちはガルドを見た途端、手元のことを一旦置いて彼に挨拶した。何重もの門をくぐり抜け、一番奥の道場に初老の男がひとりいた。

「どんなヅラ下げて帰ってきた! この親不孝息子が!」

ガルドと何年ぶりに会った父の、最初の言葉はそれだった。



「俺はリリと結婚する」

「向こうの婿養子にでもなるつもりか。親不孝なお前がやりそうなことだ。で? ファルケン家は誰が継ぐ? わしの剣術は誰が受け継ぐ?」

「レンならば、十分すぎるかと」

「バカ者!! この道場を女に継がせるというのか! わしをファルケン家代々の祖先たちに笑わせる気か!? お前が剣に精進していれば、こんなことにはならなかった」

「……俺は、剣に興味がない」

「これでも“剣聖”の息子か! わしには、こんな情けない息子はいない! 結婚など好きにすればいい。わしは行かん。剣をやりたいと思うまでは、もうここへ来るな」

「ああ……そのつもりだ」

ガルドは淡々と席を立った。

「ガー君……おじさん、お邪魔しましたっす」

リリアンヌも慌ててガルドの後を追った。



「……すまん、嫌な思いをさせた」

道場を出て、ガルドはリリアンヌに謝った。

「おじさんの性格は、うちが小さい頃から知ってるっす。それに、もうすぐ夫婦になるじゃん、うちら。これしきのことで謝るなっす」

「……そうだな。すま……いや、ありがと、リリ。愛してるよ」

「うちも愛してる。でも、うちも色々あって……」

リリアンヌの家も、決して穏やかではなかった。



バンッ!!

王都の外れにリリアンヌの家があった。……先まではね。

「オヤジ……」

リリアンヌの父。この国の賢者――オズワルド・エルドウィン。爆発系の禁呪が大好きで、よく家を爆発させていた。

「あれほど家で爆発魔法使うなって言ったのに、なんでわからないっすか!? オカン、それで旧家に帰ったっすよ。外でやれ外で!!」

「リリじゃないか……すまん、すまん。わしの封印した力が暴走してしまってな……」

瓦礫の下から立ち上がる小爺さん。ヒゲが半分焦げていたが、怪我がないのが不思議なくらいだった。

「おじさん、どうも」

「あんだは!! あの剣バカ家の息子じゃないか! まだうちのリリに付き纏うとは……やらんぞ! リリはわしの大切な娘で……!」

「娘さんをください、お父さん」

「誰が“お父さん”だ! 認めんぞ! わしは絶対……!」

「オカンに言いつけるっすよ。オヤジ、今年だけでも家を8回爆発させたって」

「母さんとは関係ないだろ、やめてくれ! お願いだ、前会った時、『年末には帰る』って約束してくれた……もう一人で寝る夜は嫌じゃ……!」

(……俺もいつか、ああなるのか?)

ガルドの心に、不安がよぎった。



「……仕方ない。他所の子ならともかく、リリの幼馴染でガル坊なら任せられるか……」

リリアンヌとの長い口論の末、父はついに折れた。

「だが残念、その日、わしは行けない」

「……なに? 大事な一人娘の晴れ舞台に、来ないのか」

「いや、その日はカズキ王とクセリオス公爵の会議がある。議会制の導入の話だ。これはこの国の未来に関わる重要な話。だから――待ってほしいのだ」

「それって……娘の結婚式より大事なことっすか。オヤジはいつもそう。仕事、研究、会議……うちやオカンに時間を割いてくれなかった。ねぇ、うちらは何番目なの? 全部終わってからようやく、うちらの番なの?」

リリアンヌは分かっていた。父に事情があることも、国のために尽くしていることも。

でも――その日だけは、他のどんなことよりも、自分を優先してほしかった。

父の仕事に、“一度だけでも”勝ちたかったのだ。

「もう知らない! オヤジが来ないなら来ないでいい! うちはガー君と結婚する! オヤジは仕事でも何でもすればいいじゃん!」

そう言い残し、リリアンヌは走り去った。

「……すまん、おじさん、俺は……」

「……追いなさい。わしには、追う資格がない」

オズワルドは静かに言った。

「……リリ。いいお父さんじゃなくて、ごめんな」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

木を叩いただけでレベルアップ⁉︎生まれついての豪運さんの豪快無敵な冒険譚!

神崎あら
ファンタジー
運動も勉強も特に秀でていないがめっちゃ運が良い、ただそれだけのオルクスは15歳になり冒険者としてクエストに挑む。 そこで彼は予想だにしない出来事に遭遇する。 これは初期ステータスを運だけに全振りしたオルクスの豪運冒険譚である。  

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
神に選ばれ、魔素の循環する界へと送り込まれたのは――現代の薬師。 剣も魔法も扱えない彼が憑依したのは、戦闘力ゼロの商人見習いの少年だった。 彼の武器は、知識と経験。商品を生み出し、人脈を築き、産業を広げていく。 「居場所を見つけたい」その願いが、やがて世界を変える力となる。 これは、一人の薬師が紡ぐ研究と開発、そして成長の物語。 【カクヨムでも掲載しています】 表紙は紹介文をもとに、ai【adobe firefly】で作成したものです。(参考程度に……)

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

いわゆる異世界転移

夏炉冬扇
ファンタジー
いわゆる異世界転移 森で目を覚まし、虫や動物、あるいは、魔物や野盗に襲われることなく 中規模な街につき、親切な守衛にギルドを紹介され さりげなくチート披露なパターンA。 街につくまえに知る人ぞ知る商人に 訳ありのどこぞの王族に会うパターンBもある。 悪役令嬢なるパターンCもある。 ステータスオープンなる厨二病的呪文もかなり初歩にでてくる。 ゲームの世界で培った知識が役に立つこともある、らしい。 現実問題、人はどうするか?

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...