まおうさまの勇者育成計画

okamiyu

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第六章:奪われた王冠に、炎の誓いを――動乱の王都で少女は革命を選ぶ

第114話:ガルドとリリアンヌ、三度目の正直

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陽光がきらめく初夏の午後、王都の教会は静かなる荘厳に包まれていました。
長く続いた戦乱と混乱の時代を経て、ようやく迎えたこの穏やかな日――その空気を祝福するように、ステンドグラス越しに差し込む光が祭壇を柔らかく照らします。
式場中央、真紅の絨毯が伸びる花道をゆっくりと歩いてくるのは、今日の主役――ガルドさんとリリアンヌさんです。
ガルドさんは白と黒の礼装に身を包んでいました。
背には弓を携え、胸元の守護騎士団の紋章バッジが、彼の新たな誓いを静かに物語ります。
いつもの無骨な印象とは違って、どこか柔らかく、幸せそうな笑顔が印象的でした。
対するリリアンヌは、伝統的な白いウェディングドレスながら、随所に彼女らしい仕掛けが。裾に散りばめられた氷の結晶の刺繍は、歩くたびに淡い光を放ち、まるで雪の妖精が舞い降りたかのようです。
胸元には、光を柔らかく吸い込むように輝く「黒真珠のブローチ」が留められています。
それは彼女がガルドさんから贈られた、特別な“誓い”なのです。
頭にはティアラの代わりに、小さな魔導冠が飾られていて、手には魔法の杖が握られていました。
聖堂の中央を、赤い絨毯の上でゆっくりと進むふたり。
その姿に、私は胸がいっぱいになってしまって……思わず祈るような気持ちで手を合わせていました。
そして、壇上で式を取り仕切っていたのは、聖女マーリンさんです。
彼女は水色の神官服を身にまとい、柔らかな微笑を浮かべながら語りかけました。
「お二人さん、せっかくの晴れ舞台に、なぜかこんなに武装なさっているんですか?」
ガルドは無言で視線を泳がせ、リリアンヌは即座に返した。
「それは、ね?信仰系だって後ろに槍隠してるっすよ!!」
「これは神様が『万が一のため』とおっしゃったからですよ」
教会内の参会者たちは黙って各自の武器をしまい込みました。クセリオスが残した傷跡は、確かに深いようでした。私は聖剣をいつでも使えるから大丈夫ですけど。
「では仕切り直して、本日は……数多の災厄を乗り越え、幾度もの別れと再会を経て、ここに立ったふたりの魂の誓いの場となります」
マーリンさんは優しく両手を広げ、光の魔法陣を展開しました。
「ここに誓いを立てる者よ。その指に、永遠を結ぶ輪を受け取りなさい」
ガルドさんが懐からリングケースを取り出し、リリアンヌさんの左手薬指に指輪をはめました。
そしてリリアンヌさんもまた、小さな笑みを浮かべながら、ガルドさんの指に銀の指輪を滑らせました。
「リリ!お父さんは…お父さんは…!」
「あなた、静かにしなさい!それに爆発だけは本当にやめてよね」
エイダさんがオズワルドさんの口を手で塞ぎながら、自分も涙ぐんでいます。

参列者席ではマサコさんが複雑な表情で拳を握りしめていました。
(師匠のウェディング姿…いや、まずは俺が一人前の男として認められないと)
「なに?マサコも花嫁になりたいある?」小梅さんがからかうように肩を突つきました。
「違うって!…ただ、男としての覚悟がなきゃ、って」
「ふーん?じゃあまずは小梅に勝てるようになってからね」
小梅さんの笑顔に、マサコさんはまた深く考え込みました。

祝福の拍手が鳴り止まない中、マリさんはシエノさんの袖をそっと引いていました。ステンドグラスの光が彼女の頬を優しく照らします。
「シエノ…私も、こんな素敵な式がしたいわ」
大胆なプロポーズに、シエノさんは苦笑いしながらも、マリさんの手をしっかりと包み込ました。
「ごめんね、今の僕にはこんな立派な式をあげられる財産がありません。」
「だったら私が全部出すわよ!」マリさんは目を輝かせて指折り数え始めた。「ドレスは王都の一流アトリエで、式場は明日でも予約できるし…」
シエノさんはマリさんの熱意に押されながらも、ゆっくりと首を振りました。
「急がなくていい。僕のこの気持ちは…」彼はマリの手を自分の胸に当て、「永遠に変わりませんから」
「もう!意気地なし!」
マリの声が少し響きすぎて、近くの参列者たちがクスクスと笑いだした。その中で一人、小さな少年が深いため息をつく。
「姉ちゃんのバージンロード、まだまだ先みたいだよ…」
トムは12歳にしてすでに大人びた視線で、結婚式のパンフレットをぱたぱたと扇いでいました。
「トム!余計なこと言わないの!」マリが弟を睨みつけました。
シエノはその様子を温かく見守りながら、そっとマリの肩に手を回しました。
「ねえ、約束しよう。僕がきちんと一人前になったら…」
「…その時は絶対に逃がさないからね」マリの目がきらりと光りました。

ステンドグラスの光に照らされながら、大司祭フィロメナはマーリンの姿を優しく見つめました。
「素敵ですね…私も昔、仲間たちの式を執り行ったことを思い出します」
その目には、カズキ王の簡素な誓いの儀式、クラウスが剣を置いて誓約書に署名した日、オズワルドが式場で爆発を起こしかけた騒動――数十年分の祝福の記憶が浮かんでいました。
「フィロメナ、そろそろ自分も花嫁になったらどうだ?」
カズキ王がふと冗談めかして言うと、フィロメナさんは神聖な微笑みのまま即答しました。
「結構です。私は神に仕える身。それとも――」
ふと悪戯な光が瞳をよぎり、
「そういえば王妃様、実は昔この方に『チートスキルで君のハート盗んでやる』と告白されたことが…」
「ちょっとフィロメナ!?」
「あらまあ」
クリスティア王妃の微笑みが一瞬で凍りつきました。
「陛下…『裏庭』でじっくりお話ししましょうか?」
カズキが「いやこれはただの若気の―」と弁明する間もなく、王妃に優しく――しかし確実に締め上げられるように連れ去られていました。
フィロメナは満足げに頷き、
「ふふ…神の御心のままに」
と聖典をぱたんと閉じました。

「あら、羨ましいのかしら」モリアがワイングラスを傾けながら、私とレンに意味深な視線を投げかけました。
「男の方服装が自分に似合うそうで普通にショックを受けた…」レン君は髪をいじりながらつぶやきました。「いっそ髪を伸ばそうかな、でも手入れが大変そうだし。」
「あれ?マオウさんは?」
「バカ天使とお姫様の弟君のお守りをしています。彼は何気に子供の面倒見いいですね。私との間では子供が産めないのが残念ですわ。」
「モリアさんはウェディングドレスを着たことないですか。」ふとウェディングドレスの話になると、モリアの目が妖しく光りました。
「神が悪魔の幸せを祝福すると思います?あのバカ天使もふりふりの服が大嫌いで式を上がることはないでしょう。全部お二人さんに任せますわ。ふふ」
「私は着たいです、でも今マオウさんに言っても「セリナ君、君にはまだ早い」と言われそうです。」
「わかる、あいつ真顔で恥ずかしいこと言えるのに、下心がないのよ、もうちょっとその求めてもいいのに」レンが突然顔を赤くしました。何やら恥ずかしい想像をしたらしいです。
「彼はいい意味でも悪い意味でも純粋です。だから好きな相手に邪な考えを抱きません。純粋な愛、プラトニックな関係。こっちとしては生殺しですわ。だから…」ふと口を噤み、グラスを傾けます。「…いいえ、何でもないですわ」

「あなたがたの誓いは、世界を照らす希望の一灯となりました」
光がふたりの頭上に舞い、祝福の羽が舞い落ちます。
鐘の音が鳴り響き、参会者たちはそれぞれの想いを胸に、その瞬間を見守りました。
「おめでとう!」
「おめでとうございます!」
「おめでとうございます…」
「おめでとう♪」
式場の扉が開き、外から祝砲と花びらの風が吹き込みました。
これから始まる新たな日々の門出にふさわしい、清らかであたたかな祝福の風でした――。
「新たな門出に立つお二人に、神と人と、そして未来の子どもたちの祝福がありますように。
 ここに──誓いの言葉を交わしてください」
リリアンヌさんは照れくさそうに、それでもまっすぐにガルドさんの瞳を見つめました。
そして、そっと小さな声で何かを呟きました。
私の席からは聞こえませんでしたが、ガルドさんの頬がほんのり赤く染まるのが見えて──
きっと、それが何よりの答えだったのでしょう。
やがて、マーリンさんの手がふわりと空を描き、祝福の光が二人を包みます。
「では……お互いの愛を確かめる、“誓いのキス”を──」
リリアンヌさんが目を伏せ、ほんの一歩、ガルドさんの方へと歩み寄ります。
ガルドさんも、彼女の手を静かに取り、優しく微笑んで──
──そっと、唇を重ねました。
拍手と歓声が、まるで雪崩のように湧き上がります。

いよいよ結婚式のクライマックス、花嫁のブーケトスが始まろうとしていました。ブーケを受け取った人は次に幸せになれるという言い伝えに、参加者たちの熱気が高まります。
「さあ、次はブーケトスっすよ!」
リリアンヌさんが悪戯そうに笑い、花束を構えました。参加者たちが一斉に姿勢を低くしました。
「お願い、私の所へ来て!シエノのアホに任せてたら、いつ結婚できるかわからないわ」マリさんが前のめりになりながら必死に祈りました。
「頑張れ、小梅の弟子なら情けないところを見せるな、ある!」
「いやいや師匠が出るべきでは…!?」マサコが半強制的に押し出されました。
「速さなら俺が一番だぜ、悪いがこれだけは譲れない。」レン君は既にスタートダッシュの体勢でした。
「あれ?モリアさんは出ないですか?」私でさえ欲しいというのに、モリアさんは余裕たっぷりです。
「結果が知っている勝負にでません。いいえ、誰か勝ったのを知っていたからこそ絶対でませんわ」
(モリアさんは相変わらず意味深なことを..)
「投げるっすよ、えい!」リリアンヌさんがブーケを放ると、少女たちは一斉に動き出しました。しかし――
「え?くれるの?」まだ空中にあるブーケを、ふわりと天使様がキャッチしました。
「ねえねえマスター、こんなの貰っちゃった」
「よかったね、ルー、後でお礼を言いに行きなさい」
「凄い、僕も欲しい、レン姉ちゃんまだあるの?」ユウキ君が天使様のブーケを羨ましそうにレン君の袖を引っ張ってねだります。
「俺だって欲しいんだよ…ちくしょう!」
こうして、女の子たちの仁義なき戦いは男の子の天使様の一人勝ちという予想外の結末で幕を閉じたのでした。
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