眠れぬ夜の召喚先は王子のベッドの中でした……抱き枕の俺は、今日も彼に愛されてます。

櫻坂 真紀

文字の大きさ
1 / 10

1

しおりを挟む
 ベッドの上で、どうにも眠れずにゴロゴロしていた俺──。

 すると突然ベッドが光り……慌てて掛け布団を捲ったら、そこには漫画とかに出てくるような、魔法陣(?)みたいなのがあって……。

 驚きの声を上げる余裕もないまま、俺はその中にスルリと吸い込まれた──。

※※※

 何……?
 何か……やたらとフカフカして、あったかい。

 それに、すっごくいい香りがする。

 俺は、そおっと目を開けてみた。

「ようこそ、優衣ゆい。」

「な、何……?あ、あなた誰ですか!?」

 って……ここ、ベッドの上!?

 いや……俺、見知らぬこの人に、ギュウって抱き締められてる状態なんだけど──!?

 俺はジタバタと暴れ、彼の腕から何とか抜け出した。

 そしてそんな俺を見て、彼は一瞬悲し気な表情を浮かべたけれど……すぐに優しい笑顔を浮かべ、俺を見た。

「驚かせてしまってごめんね、優衣。君と会えた事が嬉しくて……つい抱き締めてしまったんだ。俺はね、この国の第一王子ルーカス。……ルーと呼んでくれればいいよ。」

 え……王子様なのに、そんな呼び方していいの?

 でも彼の目は、俺にそう呼ばれる事を、凄く期待して……ううん、待ち望んでいるようだった。

「ル、ルー……。俺、どうしてここに……ルーのベッドに居るの?」

「それはね……俺が召喚魔法を使って、優衣をここに招いたからだよ。優衣……俺はね、君に是非ともお願いしたい事があるんだ。」

「お、お願い……?」

 王子であるルーが、初対面の俺にお願いって……。

 っていうか……今、召喚魔法って言ったよね?
 ここは、そういう事が出来る異世界……って事でいいのかな──?

「あの……俺に出来る事なら、力になりますけど……。それで望みを叶えたら……俺、元の世界に帰れるんですか?」

「……そうだね。ちゃんと返すよ。」

「じゃあ……ルーのお願い、聞くね。俺に、一体何がして欲しいの?」

 俺の言葉に、彼は目を輝かせ……ニッコリと、幸せそうな笑みを浮かべた。

 あ、れ……?
 何か、今の笑顔……俺、前にも見た事が──。

「優衣にはね……俺の、夜の相手をして欲しいんだ。」

※※※

 ……はい?

 今、ルー……夜の相手って、言った?

 それってつまり、俺に、そういう事をしろと──?

「俺、帰ります。っていうか、帰らせて下さい。今すぐ、あの魔方陣出してよ──!」

 俺は近くにあった枕で、ルーをポカポカと叩いた。

「ゆ、優衣……そういう意味じゃなく……!お、俺の言い方が悪かった!誤解だから、落ち着いて──!」

「誤解……?」

 俺は、枕をギュウッと抱き締め、ルーをジトリと見た。

「実はね……最近、よく眠れないんだ。それで、優衣を……君を傍に置き、抱き締めていたら、よく眠れるんじゃないかと思ってね。」

「それって……いわゆる抱き枕、的な?」

「まぁ……そういう事だね。」

「で、でも、何で俺なの?ルーは王子様なんだから……そういう相手、呼べばいくらで来てくれるんじゃ──」

 俺の言葉に、ルーは悲しげな顔を浮かべ、こう言った。

「そうだね……。でも……そうやって来てくれた者は皆、俺が王子だから、次期王だから来てくれるだけで……決して、俺自身の事は、愛してはくれないからね──。」

「ル、ルー……?」

 俺、何か悪い事言っちゃったみたいだ──。

※※※

「あの……ごめんね?お、俺で良ければ、いくらでもギュッてしていいよ?俺、寝相いいし、いびきもかなないし、寝言だって言わない!ちゃんと、いい抱き枕になれるよ?」

 そう言って、俺はルーに向かって手を広げた。

「優衣……それって、抱き締めてもいいって事かい?」

 俺は若干の恥かしさに頬を染め、コクリと頷いた。

「じゃあ、遠慮なく。」

 ルーは俺を抱き締め、そのままベッドにゴロンと横になった。

「お休み、優衣。」

 そしてルーは、俺のおでこにチュッとキスをすると、目を閉じ……やがて彼からは、穏やかな寝息が聞こえて来た。

 い、今……ルーが……俺のおでこに、キ、キスを──!
 
 俺は恥ずかしくてベッドの上をゴロゴロと転がり回りたくなったけど……でも、ルーの幸せそうな寝顔を見て、それは辞めた。

 だってよく見たら、目の下、隈が出来てる……。

 ルー、本当にずっと眠れてなかったんだ。

「ルー……俺、ちゃんと抱き枕するから。だから……いい夢見てね?」

 そして俺は、ルーの温かさと、あのいい香りに包まれ……知らない内に、夢の世界へと旅立った──。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生×召喚

135
BL
大加賀秋都は生徒会メンバーに断罪されている最中に生徒会メンバーたちと異世界召喚されてしまった。 周りは生徒会メンバーの愛し子を聖女だとはやし立てている。 これはオマケの子イベント?! 既に転生して自分の立ち位置をぼんやり把握していた秋都はその場から逃げて、悠々自適な農村ライフを送ることにした―…。 主人公総受けです、ご注意ください。

KINGS〜第一王子同士で婚姻しました

Q矢(Q.➽)
BL
国を救う為の同盟婚、絶対条件は、其方の第一王子を此方の第一王子の妃として差し出す事。 それは当初、白い結婚かと思われた…。 共に王位継承者として教育を受けてきた王子同士の婚姻に、果たしてライバル意識以外の何かは生まれるのか。 ザルツ王国第一王子 ルシエル・アレグリフト 長い金髪を後ろで編んでいる。 碧眼 188cm体格はしっかりめの筋肉質 ※えらそう。 レトナス国第一王子 エンドリア・コーネリアス 黒髪ウェーブの短髪 ヘーゼルアイ 185 cm 細身筋肉質 ※ えらそう。 互いの剣となり、盾となった2人の話。 ※異世界ファンタジーで成人年齢は現世とは違いますゆえ、飲酒表現が、とのご指摘はご無用にてお願いいたします。 ※高身長見た目タチタチCP ※※シリアスではございません。 ※※※ざっくり設定なので細かい事はお気になさらず。 手慰みのゆるゆる更新予定なので間開くかもです。

使用人の俺を坊ちゃんが構う理由

真魚
BL
【貴族令息×力を失った魔術師】  かつて類い稀な魔術の才能を持っていたセシルは、魔物との戦いに負け、魔力と片足の自由を失ってしまった。伯爵家の下働きとして置いてもらいながら雑用すらまともにできず、日々飢え、昔の面影も無いほど惨めな姿となっていたセシルの唯一の癒しは、むかし弟のように可愛がっていた伯爵家次男のジェフリーの成長していく姿を時折目にすることだった。  こんなみすぼらしい自分のことなど、完全に忘れてしまっているだろうと思っていたのに、ある夜、ジェフリーからその世話係に仕事を変えさせられ…… ※ムーンライトノベルズにも掲載しています

悪役のはずだった二人の十年間

海野璃音
BL
 第三王子の誕生会に呼ばれた主人公。そこで自分が悪役モブであることに気づく。そして、目の前に居る第三王子がラスボス系な悪役である事も。  破滅はいやだと謙虚に生きる主人公とそんな主人公に執着する第三王子の十年間。  ※ムーンライトノベルズにも投稿しています。

嫌いなアイツと一緒に○○しないと出れない部屋に閉じ込められたのだが?!

海野(サブ)
BL
騎士の【ライアン】は指名手配されていた男が作り出した魔術にで作り出した○○しないと出れない部屋に自分が嫌っている【シリウス】と一緒に閉じ込められた。

触れるな危険

紀村 紀壱
BL
傭兵を引退しギルドの受付をするギィドには最近、頭を悩ます来訪者がいた。 毛皮屋という通り名の、腕の立つ若い傭兵シャルトー、彼はその通り名の通り、毛皮好きで。そして何をとち狂ったのか。 「ねえ、頭(髪)触らせてヨ」「断る。帰れ」「や~、あんたの髪、なんでこんなに短いのにチクチクしないで柔らかいの」「だから触るなってんだろうが……!」 俺様青年攻め×厳つ目なおっさん受けで、罵り愛でどつき愛なお話。 バイオレンスはありません。ゆるゆるまったり設定です。 15話にて本編(なれそめ)が完結。 その後の話やら番外編やらをたまにのんびり公開中。

神子は再召喚される

田舎
BL
??×神子(召喚者)。 平凡な学生だった有田満は突然異世界に召喚されてしまう。そこでは軟禁に近い地獄のような生活を送り苦痛を強いられる日々だった。 そして平和になり元の世界に戻ったというのに―――― …。 受けはかなり可哀そうです。

悪役令嬢の兄、閨の講義をする。

猫宮乾
BL
 ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。

処理中です...