推し様の幼少期が天使過ぎて、意地悪な義兄をやらずに可愛がってたら…彼に愛されました。

櫻坂 真紀

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「ジュリアス……また背が伸びたね。それに、筋肉も付いた?」

 俺は、ジュリアス様の腕の筋肉をペトリと触った。

 本当に格好いいな……ジュリアス様。
 幼い頃は天使で、成長したらイケメンって……もう最高だよ──!

「俺だってあれから魔力も強まって、少しは魔法も習得したのに……今じゃジュリアスの方が、兄に間違われるくらいだし。」

「兄上は、今くらいが丁度いいですよ。ほら……こうして、俺の腕にスッポリ収まるくらいが──。」

「ッ……!ジュ、ジュリアスったら!」

 ジュリアス様に抱き締められ照れる俺に、彼はニコリと微笑んだ。

 最近気付いたんだけど……このジュリアス様は、スキンシップが激しい──?

 ゲームの中じゃ、主人公のシオンに対してツンデレのツンが多めで、こんなふうに抱き締めたり微笑んだり……あんまり無かったじゃん!?

 いや、勿論俺としては嬉しいし、大歓迎なんだけど……でも、このままでいいのかな──?

 というのも、俺とジュリアス様はもうすぐ「ニーチェ学園」に編入する。

 俺の魔力と、ジュリアス様の剣の腕が買われ、その学園から是非入学をと言われたんだけど……。

 ニーチェ学園かぁ……そこに入学すれば、俺たちは間違いなく主人公のシオンに出会う事になる。

 そうなったら……ジュリアス様は、いつまで俺の事、こうして抱きしめてくれるのかな──。

 この腕にこうして抱かれるのは、本来なら悪役令息の俺、ロイスじゃなくて……皆に愛されるシオンで──。

 そう思ったら、俺の目に思わず涙が浮かんだ。

「兄上?どうしたのです……ッ、大丈夫ですか!?」

 黙り込んだ俺を不思議に思ったジュリアス様がその涙に気付き、驚きの声を上げ、こちらを見つめて来る。

「うん……。ジュリアスがね、俺の事を好きでいてくれるのが、すっごく嬉しくてさ。」

「当たり前です。俺は昔から……そして今も、あなたが大好きですので──。」

※※※

 大好き、か……。
 前世では、一回も言われた事のない言葉だったな──。 

 俺の両親は、物心つく前に離婚した。

 家を出て行った父は、仕事ばかりで俺の事など全く興味なかったし……母も俺の事を、いつもお荷物だと言っていた。
 結局、その母も病気に罹って……俺に一言も大好きって言ってくれる事無く、あっけなく死んでしまった。

 その後俺は色々な家を転々とし、最後に遠い親戚の家に引き取られ……そこの家のおじさんは俺を毛嫌いし、おばさんは最低限の世話はしてくれたけど、実の子の様には愛してくれなかった。

 おまけにその家に居た一人息子には、気に喰わないと虐め抜かれ……あれは、まさに地獄だったな──。

 何とか高校には通わせて貰えたけど、俺の家の事情をクラスの皆は薄々気づいてた様で……そんな俺と友達になろうとしてくれる奴は誰もいなかった。
 勇気を出し話しかけても、わざとらしく避けられたり、迷惑そうな顔をされたり……だから、いつの間にかそういう事をするのは辞めた。

 そんな俺の唯一の癒し、心の救いが、あのBLゲームのジュリアス様だったんだよな。

 俺と同じで、あまり幸せじゃない幼少期を送り、それでも俺と同じように学園生活を送る彼──。
 
 そんな彼に、勝手に親近感が湧いて……いつの間にか好きになってた。

 それがまさか、こうして同じ世界で、同じ時を生きてるなんてさ──。

「……まさに、奇跡だよねぇ。」

「兄上……?」

「ジュリアス……できたら、俺の事をずっと大好きでいてね?特別な好きは、別の子に捧げていいから……どうか俺の事、ずっと大好きなお兄ちゃんでいて?」

 ジュリアス様は驚き、そして一瞬切なそうな表情を浮かべたが……俺を先程よりも、ずっと強く抱きしめてくれた──。
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