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シュウ君に手を引かれ公園を出ると、そこには一台の車が止まっていた。
後部座席に乗り込んだ所で、俺はホッと息をついた。
それに気づいたシュウ君が、俺の頭を優しく撫でてくれた。
「……レオを家に連れて行く事は、もう両親には許可を取ってある。だから、そんなに緊張しないでくれ。」
「ち、違うよ、シュウ君。俺、何だか安心しちゃって……。もう、あの家に帰らなくていいんだと思ったら……シュウ君の所に行けるんだと思ったら、気が抜けちゃって──。」
「レオ……あいつらは、もうお前には近づかない。あの家は……あの家族は、もうお前に何もしない、出来ないから。」
何も……?
シュウ君……あなたは、一体どこまで知ってるの?
俺が本当のレオだって、そして全部知った上で、俺を迎えに来て、家に置いてくれるんだよね?
だったら、おじ様との事だって知ってるよね……?
俺、あなたにだけはそれを知られたくなかったのに──!
俺の目に、また涙がジワリと浮かんだ。
「レオ、泣かないでくれ。これからは……俺にお前を守らせて欲しい。」
こんな汚い俺でも、守りたいと言ってくれるシュウ君。
こんな俺と、二度目の恋をしたいと、壊れた恋を育もうとしてくれるシュウ君──。
今の俺の心には、とてつもない罪悪感と……そして、大きな幸福とが渦巻いていた。
新たな涙がまた一つ浮かび……俺はそれを見られたくなくて、シュウ君の肩にそっと顔をうずめた──。
※※※
初めてお邪魔したシュウ君の家は、とても大きなお屋敷で……改めて、シュウ君はいいお家のお坊ちゃまだったんだなと自覚させられた。
それをシュウ君に言うと、彼は苦笑いしてこう言った。
「この家は兄が引き継ぐ。俺はこの家を出て……レオ、お前と二人で暮らすんだ。そう昔から決めている。だって……俺たちはいずれ結婚する、そう約束していただろう?だから、ここには住めないが……許してくれるか?」
「そんな……俺、シュウ君とだったら、どこだって嬉しいよ?」
すると、シュウ君は俺をじっと見て……ポツリと呟いた。
「やっぱり、レオは可愛いな。」
俺が、可愛い……?
「シュウ君、俺もう可愛くなんて……。だって、こんなに背が伸びて、シュウ君と同じくらいになっちゃったし、体つきも逞しくなって。だから、昔みたいに抱き上げたりも出来ないし……。」
そう言うと、シュウ君は少し考えこう言った。
「レオは確かに立派に成長したけど……それでも、俺よりは体が細いだろう?それに体格など、俺にとっては些細な事なんだ。レオ……今の自分の姿を、気にしていたのか……?」
「うん……。俺は、玲央みたいに成長出来なくて……昔の可愛らしい面影は、全くないから──。」
「そうか……それに気づけなくて、本当に悪かった。俺は……何もレオが、天使みたいに可愛いかったからという理由だけで好きになったんじゃないんだ。公園に一人で居た俺を気に掛け、優しくしてくれた……その温かい心を好きになったんだ。思えば……レオが毎日作ってくれたお弁当も、そういう気遣いが沢山詰め込まれたものだったな。」
シュウ君、分かってくれたんだ……嬉しい。
「俺……もうシュウ君には、二度とお弁当を作る事はないと、あなたの為に料理をする事はないと思いあの家を出たけど……俺、シュウ君の為に、また料理してもいい?また、食べてくれる?」
「レオ……勿論だ。またレオの手料理が食べられる事を、楽しみにしているから──。」
※※※
その後、俺はシュウ君のご両親やお兄様、そしてそのご家族の皆さんに紹介され、挨拶をした。
すると彼のお父様が俺を手招きし、こう言った。
「秀一郎はずっと、レオという子と結婚したい、その為ならこの家も捨てるとまで言っていたが……。しかしあの子はレオを愛する余り、間違いを犯した。それによって、君はさぞや傷ついただろう。父親として、私からも謝罪するよ。」
「そ、れは……確かに悲しい思いをしましたが、でも……もういいんです。それを嘆くより、この先彼が俺を愛し、俺が彼を愛する事で、その傷も癒えると……そう、信じていて──。それに……秀一郎様が助けてくれなければ、俺は一生あの人たちに何かされやしないかと怯えて生き、そして死を迎える事になったと思います。それを思うと、秀一郎様には感謝してるんです。」
「そう、思ってくれるかい?礼音君……どうか息子を頼んだよ。今回の事でも分かったろうが、いい意味でも悪い意味でも、あの子は真っ直ぐな子だ。そのせいで周りが見えなくなる事がるあから、そんな時は君があの子を支え、助けてやってくれないだろうか?」
後部座席に乗り込んだ所で、俺はホッと息をついた。
それに気づいたシュウ君が、俺の頭を優しく撫でてくれた。
「……レオを家に連れて行く事は、もう両親には許可を取ってある。だから、そんなに緊張しないでくれ。」
「ち、違うよ、シュウ君。俺、何だか安心しちゃって……。もう、あの家に帰らなくていいんだと思ったら……シュウ君の所に行けるんだと思ったら、気が抜けちゃって──。」
「レオ……あいつらは、もうお前には近づかない。あの家は……あの家族は、もうお前に何もしない、出来ないから。」
何も……?
シュウ君……あなたは、一体どこまで知ってるの?
俺が本当のレオだって、そして全部知った上で、俺を迎えに来て、家に置いてくれるんだよね?
だったら、おじ様との事だって知ってるよね……?
俺、あなたにだけはそれを知られたくなかったのに──!
俺の目に、また涙がジワリと浮かんだ。
「レオ、泣かないでくれ。これからは……俺にお前を守らせて欲しい。」
こんな汚い俺でも、守りたいと言ってくれるシュウ君。
こんな俺と、二度目の恋をしたいと、壊れた恋を育もうとしてくれるシュウ君──。
今の俺の心には、とてつもない罪悪感と……そして、大きな幸福とが渦巻いていた。
新たな涙がまた一つ浮かび……俺はそれを見られたくなくて、シュウ君の肩にそっと顔をうずめた──。
※※※
初めてお邪魔したシュウ君の家は、とても大きなお屋敷で……改めて、シュウ君はいいお家のお坊ちゃまだったんだなと自覚させられた。
それをシュウ君に言うと、彼は苦笑いしてこう言った。
「この家は兄が引き継ぐ。俺はこの家を出て……レオ、お前と二人で暮らすんだ。そう昔から決めている。だって……俺たちはいずれ結婚する、そう約束していただろう?だから、ここには住めないが……許してくれるか?」
「そんな……俺、シュウ君とだったら、どこだって嬉しいよ?」
すると、シュウ君は俺をじっと見て……ポツリと呟いた。
「やっぱり、レオは可愛いな。」
俺が、可愛い……?
「シュウ君、俺もう可愛くなんて……。だって、こんなに背が伸びて、シュウ君と同じくらいになっちゃったし、体つきも逞しくなって。だから、昔みたいに抱き上げたりも出来ないし……。」
そう言うと、シュウ君は少し考えこう言った。
「レオは確かに立派に成長したけど……それでも、俺よりは体が細いだろう?それに体格など、俺にとっては些細な事なんだ。レオ……今の自分の姿を、気にしていたのか……?」
「うん……。俺は、玲央みたいに成長出来なくて……昔の可愛らしい面影は、全くないから──。」
「そうか……それに気づけなくて、本当に悪かった。俺は……何もレオが、天使みたいに可愛いかったからという理由だけで好きになったんじゃないんだ。公園に一人で居た俺を気に掛け、優しくしてくれた……その温かい心を好きになったんだ。思えば……レオが毎日作ってくれたお弁当も、そういう気遣いが沢山詰め込まれたものだったな。」
シュウ君、分かってくれたんだ……嬉しい。
「俺……もうシュウ君には、二度とお弁当を作る事はないと、あなたの為に料理をする事はないと思いあの家を出たけど……俺、シュウ君の為に、また料理してもいい?また、食べてくれる?」
「レオ……勿論だ。またレオの手料理が食べられる事を、楽しみにしているから──。」
※※※
その後、俺はシュウ君のご両親やお兄様、そしてそのご家族の皆さんに紹介され、挨拶をした。
すると彼のお父様が俺を手招きし、こう言った。
「秀一郎はずっと、レオという子と結婚したい、その為ならこの家も捨てるとまで言っていたが……。しかしあの子はレオを愛する余り、間違いを犯した。それによって、君はさぞや傷ついただろう。父親として、私からも謝罪するよ。」
「そ、れは……確かに悲しい思いをしましたが、でも……もういいんです。それを嘆くより、この先彼が俺を愛し、俺が彼を愛する事で、その傷も癒えると……そう、信じていて──。それに……秀一郎様が助けてくれなければ、俺は一生あの人たちに何かされやしないかと怯えて生き、そして死を迎える事になったと思います。それを思うと、秀一郎様には感謝してるんです。」
「そう、思ってくれるかい?礼音君……どうか息子を頼んだよ。今回の事でも分かったろうが、いい意味でも悪い意味でも、あの子は真っ直ぐな子だ。そのせいで周りが見えなくなる事がるあから、そんな時は君があの子を支え、助けてやってくれないだろうか?」
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